ヘナタトゥーをしようと思い立ち、メディナの路地にふらりと入った土産屋で、まさかの大失敗。
右手に残されたのは、見本とは似ても似つかぬ、子どもの落書きのようなぐちゃぐちゃ模様だった……。
それでも諦めきれず、今度はちゃんとしたスパ「Spa Rayhane」でリベンジ。
繊細で美しい模様を丁寧に描いてもらい、右手のひどい跡にも上書きで救済のヘナ。
中庭では猫が噴水の水を飲み、サービスのミントティーに癒やされる極上の時間もついてきた。
午後は仕立て屋でワンピースのリメイクをお願いし、ミントティーで一服。
沈没まっしぐらな空気の中、「このままじゃヤバい」と自分に言い聞かせてマラケシュ行きのバスチケットも無事確保。
夜はシーフードレストランでエイのケッパーソース添えを堪能し、物欲しげに見つめる猫にひとくちお裾分け。
今日は、ヘナ、猫、ミントティー…好きなものに囲まれた、エッサウィラらしい一日だった。
ヘナタトゥー失敗!右手に残った“落書き”の痕跡
朝、ふと思い立って、ヘナタトゥーをしようと歩き出した。
……といっても、私の宿はすでにメディナのど真ん中。
ちょっと路地を歩けば、ヘナの看板を掲げた店がすぐに見つかる。
「どの店も大差ないだろう」と深く考えず、ふらっと入ったのが間違いだった。
デザイン見本を見せてもらい、気に入ったものを指さして金額を聞くと、100ディルハム(=1,644円)とのこと。
特に疑いもせず了承し、施術スタート。

使われたのは、注射器のようなシリンジタイプの容器。
そこにヘナペーストを詰めて、先端から少しずつ押し出しながら、細かい線を描いていくスタイル。
店員の手にも綺麗なヘナが施されていたので、完全に油断していた。
「これなら大丈夫そう」と、何の疑いもなく身をゆだねてしまったのだ。
ところが、右手薬指から描き始めたその瞬間──目を疑った。
出てきたのは、「これ、子どもの落書き…?」と絶句するほどのひどい出来栄え。
数年前、モロッコで初めてヘナを描いてもらって以来、その魅力にハマり、自分でも買って何度か練習していた私から見ても、あまりに雑すぎた。
これ、私が初めて描いたときのほうが断然うまい。(‘A`)
そう思った瞬間、軽く絶望した。
ぐちゃぐちゃになっていく右手を見て、思わず「STOP!」と叫んでしまった。
「見本と全然違う」と伝えると、「今度はちゃんと描くから」と左手を差し出すよう言われたけれど、もし左手まで台無しにされたら、もう立ち直れない気がした。
申し訳ないとは思いつつ、せめて材料費として5ディルハムだけ置いて、足早にその場を後にした。
ヘナは一度描けば、最低でも一週間は残る。
せっかく描くなら、美しい模様をまといたい。
今回ばかりは痛感した──ヘナタトゥーのお店選びは、慎重にすべきだ (T_T)
炭火でじっくりタコランチ&爽やかジェラート

気を取り直して、漁港の魚市場へ。
大ぶりでぷりぷりしたタコが目に留まり、35ディルハム(=575円)で購入。

そのまま市場のすぐ横にある炭火焼き場へ。
スタッフに手渡すと、下処理をしてじっくり焼いてくれる。

網からはみ出しそうなサイズのタコを、炭火でじゅうじゅうと焼き上げていく様子は食欲をそそる。

「一人で食べきれるだろうか…」と少し不安になりつつ、焼き上がったらライムをたっぷり絞って、豪快にいただく。
が、タコは想像以上にしっかりとした歯ごたえ。
噛んでも噛んでもなかなか飲み込めない(笑)
私は顎関節症もちで、ひどい時には口が開かなくなることもあるので、途中で顎が疲れてきてしまい、少しだけ残してしまった。
とはいえ味は抜群!
フランスパンと搾りたてのオレンジジュースを添えたら、立派なごちそうに。
隣のテーブルには、マラケシュから旅行に来ていたモロッコ人男性がいて、会話も弾んだ。
彼がお裾分けしてくれたエビもとても美味しくて、思わぬご縁に感謝しながら、楽しいランチタイムとなった。

食後のデザートは、街角のジェラート屋で。

選んだのはパイナップルジェラート。
10ディルハム(=164円)。
一口食べると、口の中が一気に爽やかに。
すっきり甘い幸せなひとときだった。
スパでリベンジ!丁寧なヘナと癒しのティータイム

そして今度こそ、ちゃんとしたスパでヘナをしてもらおうと選んだのが「Spa Rayhane」。
入口をくぐると、おしゃれで洗練された空間が広がっていて、一瞬「高そう…!」と身構えたけど、値段は意外と良心的。
安心してお願いすることにした。
ヘナの施術者は常駐していないようで、スタッフさんが電話を一本かけると、数分後には駆けつけてくれた。
デザインによって手間が違うので料金も異なるが、あらかじめ伝えていた予算(100ディルハム=1,644円)の範囲で、気に入った模様を選ばせてもらえた。

今回の施術者は、しっかりと技術のある“あたり”の人。
注射器型の器具にヘナペーストを詰めて、先端から少しずつ押し出しながら、繊細な模様を丁寧に描いてくれた。

完成した左手のヘナは、自分では到底描けないような細かいデザインで、見ているだけで心がときめいた。

そして驚いたことに、右手のひどいヘナを見て哀れに思ったのか、
「こっちも描いてあげるよ」と、なんとサービスで右手にも上書きしてくれた。
スパのオーナーも「これはひどすぎるわね…」と苦笑いしながら、同情してくれた。
これまで何度かヘナをしてきたし、自分でも描いたことがあるから、あのときすぐに「これはヤバい」と気づけた。
でも、もし初めてだったら、「ヘナってこんなものなのかな」と納得してしまっていたかもしれない。
そう思うと、あのヘナを受け入れてしまう人もいるのかと思うと、ちょっとゾッとする。
いまも、薬指にはうっすらと“あの跡”が残っている。
今思えば、途中で写真を撮っておけばよかった。
あの“伝説級のヘナ”、今となってはネタにしたかった…。
でも、こうして丁寧に上書きしてもらえて、あのときのショックがすーっと癒えていった。
気持ちまで上書きしてくれたようで、本当に救われた。

ヘナを乾かす間は、サービスでミントティーが出された。
美しい中庭のソファでのんびりとティータイム。

噴水では、猫が水をペロペロと飲んでいる。
この猫、ずっとソファの端っこでくつろいでいた子で、どうやら飼い猫ではないけれど、隅にキャットフードが置かれていて、きちんと大切にされている様子。
さすが、世界一猫にやさしい街・エッサウィラ。
猫がいる風景まで、絵になる。
「ネットに口コミを書いてくれたら、フットマッサージ20分サービスするわよ」とオーナーが声をかけてくれた。
右手のヘナまでサービスしてくれて、ミントティーも出してくれて、しかも施術のクオリティは文句なし。
もう大満足すぎて即OK。

口コミを投稿すると、2階の個室に案内され、フットマッサージがスタート。
「今日はヘナもマッサージもして、完全に“美”の日だなぁ」なんて思いながら、至福の時間を堪能した。
ワンピースを仕立て直す、小さな職人仕事に感動
ヘナの後は、メディナ内の仕立て屋さんを訪ねた。
目的は、ケープタウンで買ったお気に入りのワンピースのリメイク。
そのワンピースは可愛いけれど、デザイン的にチューブトップブラじゃないと着づらくて、着回しに困っていた。
胸のリボンを切り取って、それを再利用する形で直してもらうことに。

仕立て屋さんは足踏みミシンを使って、丁寧に縫ってくれた。
私が実際にワンピースを着た状態で、メジャーでしっかり長さを測り、体に合わせて仕上げてくれる。
さすが職人の手仕事。
自分でちくちく縫うのとは、レベルが桁違い。
料金は20ディルハムだったのに、手持ちは15ディルハムか100ディルハムしかなくて、申し訳なく「あとで持ってくるね」と言ったら、「15でいいよ」と笑顔で言ってくれた。
それでも気が引けた私は、すぐ近くのジュース屋へ駆け込み、オレンジジュースでお金を崩して戻った。
追加で10ディルハムを渡して、さらに搾りたてのジュースを差し入れすると、彼はとても嬉しそうに受け取ってくれた。
沈没しかけた心に決着。マラケシュ行きバスを購入

午後は、居心地のいい軽食屋「Chez Jawad」へ。
ここは一昨日も来たお店。
なぜか落ち着く空気感があって、また足が向いてしまった。

大きな角砂糖とたっぷりのミントをポットに詰めた、甘〜いミントティーを飲みながら、のんびり過ごす午後。
「このまま、エッサウィラで沈没していたい……」
そんな考えが頭をよぎる。
でも、さすがにそろそろ次の街に移動しないと、本当に沈没してしまう気がして、意を決してバスチケットを買いに行くことにした。
先に買ってしまえば、もう逃げられないから。
まずは新市街にあるCTMのチケット売り場へ向かう。
ところが、CTMは夜の便しか運行していないという。
どうしようかと迷っていると、スタッフが「Supratoursなら昼間の便がたくさんあるよ」と教えてくれた。
ライバル会社なのに、親切な人だ。

Supratoursのオフィスは旧市街のすぐそば。
バスに乗るにも便利な立地。
しかも2時間に1本くらいのペースでマラケシュ行きが出ているらしい。
その場で、7月30日11時発のチケットを、100ディルハム(=1,644円)で購入。
これで、エッサウィラとの別れも決定。
エイのケッパーソース添えで締めくくる港町の夜

夕食は、シーフードが美味しいと評判の「Resto Vague Bleue」へ。

メインを注文すると、自動的に前菜3種とパン、さらに2種類のオレンジジュースまで出てくるという太っ腹なサービス。

この日のメインは「エイのケッパーソース添え」。
ほろっと柔らかい身に、軟骨のコリコリ食感。
クセのない白身に、ケッパーの酸味がよく合って、ぺろりと平らげた。

足元では、物欲しげな瞳で見上げてくる可愛い猫。
エジプトのダハブにいた猫みたいに強引に奪いにくるわけでもなく、ただじっと見つめてくるだけ。
その健気さに負けて、思わずひとくちお裾分けしてしまった。
エッサウィラの猫たちは、食べ物をねだる時もお行儀がいい。
きっと、この街の人々が猫にやさしく接しているからだろう。
道のあちこちで、誰かが猫にごはんをあげていた。
この街には、猫好きが沈没する理由がちゃんとある。
7月26日:使ったお金
今日はヘナタトゥーにワンピースのリメイク、満足度の高い出費ばかりだった。
・ヘナタトゥー:5ディルハム(=82円)
・タコ:35ディルハム(=575円)
・焼き代:10ディルハム(=164円)
・オレンジジュース:20ディルハム(=328円)
・ジェラード:10ディルハム(=164円)
・ヘナタトゥー:100ディルハム(=1,644円)
・ワンピースリメイク:25ディルハム(=411円)
・差し入れ:15ディルハム(=246円)
・ミントティー:15ディルハム(=246円)
・バス代(エッサウィラ→マラケシュ):100ディルハム(=1,644円)
・夕食(エイのケッパーソース添え):70ディルハム(=1,151円)
合計:6,655円