ついに迎えたサハラ砂漠2泊3日ツアー初日。
宿泊・朝夕の食事・キャメルライド・サンドボード付きで一人17,946円という破格のツアーに、少し不安を抱きつつも参加してみることに。
道中ではモロッコ最高峰のアトラス山脈を越え、世界遺産のアイト・ベン・ハッドゥを自由散策。
迷路のような土の村や、伝統的なベルベルの住居に心惹かれ、灼熱のなかで食べたフルーツサラダの味も忘れがたい。
夜はダデスの快適な宿で、エアコン付きの個室とプールに驚き、夕食後にはベルベル音楽と踊りの夜が待っていた。
民族衣装を着て踊った夜は、旅のハイライトのひとつになった。
明日はいよいよサハラ砂漠の大地へ。
旅はまだ始まったばかり──。
激安サハラ砂漠ツアーに出発!マラケシュからの朝
今日はついに、2泊3日のサハラ砂漠ツアーへ出発の日。
このツアーは、GET YOUR GUIDE経由で申し込んだAndo社が主催するもので、一人あたり17,946円という破格の値段。
宿泊代、朝夕の食事、サハラ砂漠でのキャメルライド(日没と日の出の両方!)やサンドボードまで含まれていて、この金額で本当に採算が取れているのか不思議になるレベルだった。
とはいえ、口コミの評価も高かったので、思い切って参加してみることに。

朝7時過ぎ、ホテルを出発して、ツアーの集合場所である「Lycée Mohammed 5」へ向かう。

出発まで少し時間があったので、集合場所の向かいにあったローカル食堂で朝ごはんをとることに。

注文したのは、乾燥そら豆をじっくり煮込んだとろみのあるスープ「ビサーラ」。
パンをちぎってスープにひたし、熱々をいただく。
ミントティーもつけて、合計11ディルハム(=181円)という安さ。
庶民の味って、やっぱり優しい。

8時過ぎ、集合時間を少し過ぎた頃に、ようやくツアーの車が到着。
運転していたのは、なんと日本人の奥さんを持つというホスィーンさん。
少しだけ日本語も話せて、穏やかな雰囲気の人だった。
私はどうやら最後のピックアップだったようで、車内にはすでに大勢のお客さんが乗っていた。
なんと7人グループのイタリア人が2組。
しかもどちらも大学の仲間同士らしく、いかにも20歳前後の陽キャたちで、朝からテンション全開。
14人のイタリア人若者たちは、犬の遠吠えをしたり、音楽を爆音でかけて全員で大合唱したりと、とにかく賑やか(‘A`)
その異文化テンションについていけず、私は助手席でひとり、静かに小さくなって座るしかなかった。
無の境地で黙り込む私を、時おり気にかけて声をかけてくれるドライバーさんの存在だけが、唯一の救いだった。
アトラス山脈越え──サハラへと続く絶景ドライブ

車は途中トイレ休憩をはさみながら、ツアー最初の目的地「アイト・ベン・ハッドゥ」へと向かっていく。

その道中で越えていくのが、モロッコで最も高い山脈・アトラス山脈。
標高が上がるにつれて、乾いた空気の中にひんやりと冷たい風が吹き抜け、険しい山肌が迫ってくる。

山道沿いには、鉱石のような石をずらりと並べた屋台がところどころに現れ、旅人たちの目を引く。

中が空洞で、内側に結晶がびっしり育ったものもあり、ジオードのようにも見える。
詳しい鉱物名はわからないけれど、自然の造形美に思わず見とれてしまった。

さらに進んでたどり着いた2回目の展望スポットでは、標高2260mの地点から、くねくねと続くヘアピンカーブの道を見下ろすことができた。
圧巻の絶景に、思わず息をのむ。
迷路のような土の村、アイト・ベン・ハッドゥを歩く

そしてようやく12時半、ツアー最初の目的地・アイト・ベン・ハッドゥに到着。
世界遺産にも登録されている、赤茶けた日干しレンガの集落だ。
ここでは、1人2ユーロで現地ガイド付きの団体ツアーに参加できるのだけど、私は以前にも来たことがあるし、今回は気ままに歩いてみたかったので、自由行動を選ぶことにした。
ホスィーンからは「3時までに観光と昼食を終えて、レストラン前に集合してね」と言われ、WhatsAppの連絡先も交換済み。
これで何かあっても安心だ。
ひとまず一人で集落の探検に出発!

山の斜面にへばりつくように、赤茶色の家々がぎっしりと並ぶ。
土と日干しレンガでできた壁は乾いた大地と溶け合い、まるで自然と一体化しているかのよう。
遠くから見ると、集落そのものが岩肌の一部のように見える。

狭く入り組んだ階段や、トンネルのような抜け道を進んでいくと、まるでRPGのダンジョンを探索しているような気分になる。

ふと開けた中庭や、アーチ状の窓をのぞかせる邸宅跡が現れ、ここがかつてキャラバン隊の中継地として栄えたことを実感する。
今も何軒かの家には人が住んでいて、観光地でありながら、どこか“生きた村”のあたたかみが残っているのも、この場所の魅力だと思う。

途中、「ベルベルハウス」と呼ばれる見学施設に立ち寄ってみた。
昔ながらの住居を再現した建物で、入場料は20ディルハム(=330円)。

中に入ると、外の灼熱とは対照的に、ひんやりとした空気が流れていた。
土やわらでできた厚い壁は、直射日光を遮って内部の温度を一定に保ってくれる。
石や土は熱の伝導が遅いため、昼間でも屋外より少し涼しく感じるのだ。
でもそれは「エアコンのように快適」ではなく、「暑さが少しマシになる」程度の涼しさ。
それでも、太陽に焼かれた体をクールダウンさせるには、ありがたい空間だった。

2階に上がると、ちゃぶ台のような低いテーブルとスツールが置かれた部屋があり、きっとここでミントティーを囲んで家族や客人と過ごしていたのだろう。
壁に飾られたカラフルな旗は、ベルベル人の誇りを表す民族旗。
地中海、山、砂漠を象徴する三色の上に、「自由」の象徴である「ヤズ」の文字が力強く刻まれていた。
2度目の訪問となるアイト・ベン・ハッドゥだったが、前回行けなかった場所も回れて、新鮮な気持ちで楽しめた。
昼食は各自自由だったので、私は自分で好きなお店を選ぶことができた。
というのも、他のツアー客であるイタリア人たちはガイド付きで観光していて、終わった後に決められたレストランに案内される流れのようだったからだ。

私が選んだのは、「café restaurant chez moussa」。
アイト・ベン・ハッドゥを一望できる、見晴らしの良いレストランだ。

あまりの暑さに、注文したのはフルーツサラダとオレンジジュースだけ。
これで90ディルハム(=1,486円)と、かなりの観光地価格だけど、この絶景がついてくるなら納得……かもしれない。
3時に集合場所のレストランへ戻ったものの、イタリア人たちはまだのんびり食事中。
結局、出発は1時間遅れの4時になった。
このツアー、参加者は私以外みんなイタリア人。
もはや“イタリアタイム”で動いているのだと諦めるしかない。
この旅の3日間、スケジュール通りにいかないことは覚悟した方がよさそうだ(‘A`)
まさかの豪華宿!プールと夕食ビュッフェに癒される

午後7時半、ダデスにある今夜の宿「Maison d’hôtes & Restaurant Chez L’habitant Amazigh」に到着。
これが驚くほどしっかりした宿で、エアコン付き、プライベートバスルーム付きの快適な個室!
まさかこのツアー代にこんな部屋が含まれているとは思わず、びっくり。

しかも中庭にはプールまであって、イタリア人たちは大興奮!
到着後、ウェルカムのミントティーをいただいたあとは、みんなさっそくプールに飛び込んでいた。
私はというと、8時45分から夕食があるので、その前にシャワーを浴びてすっきりしたくてプールはパス。
とはいえ、今日のように暑い日は、泳げる環境があるのは本当にありがたい。

夕食は、ルーフトップでいただくモロッコ料理のビュッフェ。
炭火で温められたタジン鍋の中には、アツアツのおかずがたっぷり。

サラダ、タジン、クスクス、スープ、デザートなど、種類も豊富で、夜風に吹かれながらゆったり味わう夕食はとても心地よかった。
民族衣装で踊り明かす、ベルベル音楽の夜

食後には、なんとベルベルの伝統音楽の生演奏まで始まった。
家族経営の宿らしく、スタッフの方々が太鼓やカルカバ(金属のカスタネット)を使って、力強くリズミカルな音を響かせる。
その場にいる全員が自然と手拍子を始めるような、楽しくてにぎやかな音楽。
砂漠の夜や祭りを思わせるような雰囲気で、演奏している人たち自身もとても楽しそうだった。
気づけば、ドライバーのホスィーンも演奏に加わり、みんなで音楽に合わせて踊りだしていた。

この日はさらに、ベルベルの民族衣装も着させてもらうことに!

ターバンを巻き、みんなでベルベル人になりきって、陽気なイタリア人たちや宿の子どもたちと一緒に踊り明かした。
まさかこんなに盛りだくさんな一日になるとは。
明日は断崖絶壁のトドラ渓谷を観光したあと、いよいよサハラ砂漠へ──。
期待に胸をふくらませながら、眠りについた。
7月31日:使ったお金
2泊3日のツアー代金が17,946円は、どうやって採算とっているのかと思うほど破格!!
・サハラ砂漠ツアー代:17,946円
・朝食代(ビサーラ等):11ディルハム(=181円)
・水:10ディルハム(=165円)
・トイレチップ(2回分):3ディルハム(=49円)
・ベルベルハウス入場料:20ディルハム(=330円)
・昼食代(フルーツ等):90ディルハム(=1,486円)
・ミントティー:15ディルハム(=247円)
合計:20,404円