今日はスペイン南部アルヘシラスのバスターミナルから、英国海外領ジブラルタルへ日帰り小旅へ。
まずは出発前に腹ごしらえ。
バスターミナルから徒歩5分、スペイン側アルヘシラスのローカル市場「Mercado de Abastos」で、地元客に混じってシーフードタパスと“夏ワイン”のブランチを楽しむ。
ジブラルタルの国境はスペインの出国印のみで入国印なしという不思議さ。
空港滑走路を歩いて横切り、2番バスでエウローパ岬へ。
展望台からは海峡の向こうにモロッコの山影がくっきり。
中心部ではステンドグラスが美しい教会と英国風の街並みを散策し、Gibraltar Tea Companyのクリームティーでひと息。
夕方にアルヘシラスへ戻り、青と白のアズレージョが映えるアルタ広場で余韻を味わってから荷物を回収。
19:45発のALSA夜行に乗り込み、翌朝のリスボンを目指す、移動と出会いがぎゅっと詰まった一日。
アルヘシラスで荷物を預け、市場「Mercado de Abastos」でブランチ
朝10時、宿をチェックアウトして向かったのは、すぐ隣のアルヘシラスのバスターミナル。
今日はここから英国領のジブラルタルへ日帰りで出かけ、観光を終えたら夜行バスでアルヘシラス発・ポルトガルのリスボンへ移動するという、なかなかハードな一日だ。

バックパックはターミナルのコインロッカーに預けることに。
まずはチケットカウンターでロッカー専用コインを3.2ユーロ(=552円)で購入。
ついでに窓口に掲示されていたアルヘシラス↔ラ・リネア(国境近くの町)行きバスの時刻表もチェックすると、平日は30分に1本ほどの頻度で走っているようで、ひと安心。

荷物を入れて、専用コインをロッカーに投入し、鍵を抜く。
物理キーなので、失くさないようポケットの奥にしっかりしまったら、まずは腹ごしらえへ。
ブランチ目当てに、バスターミナルから徒歩5分の市場、Mercado de Abastosへ向かう。

地元の人が通う日常の市場。
建物の前には野菜や果物の露店がずらりと並び、朝から活気に満ちている。

館内の各店舗には、朝どれの魚介や季節の野菜、ハムやチーズがぎっしり。
アルヘシラスは漁港の街だけあって、海の幸は新鮮・安い・おいしいの三拍子だ。

場内のバルでは、そんな食材を使ったタパスが気軽に楽しめる。
平日の朝だというのに、地元の人たちがワイン片手にタパスをつまんでいて、そのゆるい空気感が日本とまるで違って面白い。
前日は閉店時間が早くて来られず、今日は満を持してのシーフードタパスである。
市場のバル「BAR TRUDIS」の女主人に「シーフードタパスが食べたい」と伝えると、「11時からなら作れるわよ」とのこと。
英語がまったく通じず、翻訳アプリ総動員で四苦八苦していると、常連さんたちが周りに集まってきて、あれこれ手助けしてくれる。
気づけば、彼らと一緒に飲みながら出来上がりを待つことになっていた。

常連さんが食べていたスイカを、私にも取り分けてくれた。
たぶんサービス(笑)
隣の男性は小魚のフライを一匹おすそ分けしてくれて、「皮をむいて、身にレモンをたっぷり絞って食べるんだよ」と食べ方までレクチャー。

さらに別の女性からは、紙ナプキンで折ったバラのプレゼントまで。
観光地ではないアルヘシラスだからこそ、こんなローカルな交流が生まれるのがうれしい。
女店主と常連たちは、BGMに合わせて踊ったり歌ったり。
流れゆく時間まで柔らかい。

今日のブランチは、アルヘシラス名物のシーフードフライ。
小魚、イカ、白身魚のフライに、焼きトマト。
さらにバゲットと手作りのバジルソースも添えられてきた。
まずはレモンをぎゅっと絞って頬張り、途中で味変にバジルソースを。
ファンタで割った夏ワインもぐいぐい進む。
これで6.5ユーロ(=1,121円)は驚きのコスパ。
観光地ではなかなか出会えない価格と満足度だ。
人の温かさに癒され、心もお腹もすっかり満たされたところで、いよいよジブラルタルへ向かう。
M-120でラ・リネアへ:国境越えと“滑走路を歩く”ジブラルタル体験

ジブラルタルへは、まず国境手前の町ラ・リネアまでバス移動。
路線は「M-120」。
12時発の便に乗り込み、運賃2.6ユーロ(=448円)は乗車時にドライバーへ支払う。
約50分でラ・リネアのバス停に到着。
ここから国境のイミグレまでは歩いて5分ほどだ。

ジブラルタルは、イベリア半島の南端、地中海の入口に位置するイギリスの海外領土。
国境のイミグレーション(入国審査)では、ユーロ圏居住者とそれ以外でレーンが分かれており、ユーロ圏の人たちの手続きはかなり簡素化されているようだった。
私はまずスペインの出国スタンプを受け、「この先でもう一度、イギリス入国のスタンプが押されるのかな」と思っていたのだけど、そんなカウンターは見当たらず、そのままあっという間に建物の外へ。
どうやらジブラルタルでは入国スタンプがないらしい。
帰りにスペインの入国スタンプは押してもらえるのだけれど、パスポート上は“どこにいたのか不明な空白期間”が生まれることに。
なんとも不思議な気分だった。

ジブラルタル側に入ってすぐ目の前に現れるのは、まさかの空港滑走路。
国土の狭いジブラルタルでは、市街地へ向かうためにこの滑走路を徒歩で横切るという、なかなかできない体験が待っている。
旅の思い出に残る“滑走路横断”。
ドキドキしながら一歩ずつ進むのがまた楽しい。

滑走路越しに見えるのは、ジブラルタルのランドマークである一枚岩「ロック・オブ・ジブラルタル」(標高約426m)。
頂上からはスペインと、海の向こうのモロッコまで一望できる…のだけど、ケーブルカー料金が高めで混雑もしているらしいので、今回はパスしてエウローパ岬へ向かうことにした。
2番バスでエウローパ岬へ:海峡の展望台、灯台、白亜のモスク

滑走路を抜けて5分ほど歩くと、Glacis Roadのバス停に到着。
ここから2番バスでエウローパ岬へ向かう。
幸いほとんど待たずにバスが来てくれた。
運賃は片道1.8ジブラルタル・ポンド(=310円)。
イギリス領なので通貨はポンドだが、カード決済が使えて助かった。
公用語は英語で、やり取りもしやすい。
バスは市街地を抜けると、傾斜のある山道をぐいぐい登っていく。
岩山の向こう側がエウローパ岬だ。
岬のバス停で下車すると、展望台は目と鼻の先。

海風が心地よく抜ける展望台からは、ヨーロッパとアフリカが向かい合うジブラルタル海峡を一望。
下のフロアには、ジブラルタルの地理や歴史、自然を紹介する小さな展示があり、風の強い日でも落ち着いて見学できる。

海上には大型タンカーが行き交い、その先の水平線にアフリカ大陸・モロッコの山並みがくっきり。
タンジェ近郊のスパーテル岬からはスペインを眺め、ここエウローパ岬からはモロッコを眺める──大陸から大陸へ、海を越えてきた達成感がふわっと湧いてきた。

岬の先端に立つ灯台は、いま工事中で足場に覆われているものの、ランドマークとしての存在感は健在。

白亜のモスク、背後の山並み、そしてどこまでも青い海。
少しのあいだ景色を堪能してから、再び2番バスで中心部へ戻る。
帰りのバスも待ち時間ほぼゼロで到着してくれてありがたかった。
ジブラルタル中心部さんぽ:メインストリートと教会、Gibraltar Tea Companyで一服

中心地近くで下車して、メインストリートやアイリッシュ・タウンを散策。
ブリティッシュとアンダルシアの空気が混ざり合い、パブとタパスが同居する独特の街並みが面白い。

メインストリート沿いに建つカトリック教会、セント・メアリー・ザ・クラウンズへ。

こじんまりとして可愛らしい内部には、光を受けてきらめくステンドグラスがあり、思わず足を止めて見入ってしまった。

歩き疲れたら、Gibraltar Tea Companyでアフタヌーンティーのひと休み。

ジブラルタルクリームティセット
人気メニューは「ジブラルタル・クリームティーセット」。
焼きたてスコーンに、ロッダス(Rodda’s)のクロテッドクリームとジャム、ポットの紅茶という王道の組み合わせ。
とくにロッダスのクリームはコクが深くなめらかで、スコーンとの相性が抜群。
イギリス本土から空輸されるため現地では少し高価かもしれないが、このセットは8.75ポンド(=1,509円)と良心的で、手軽に“英国気分”を味わえた。

食後はGrand Casemates Gates(旧称Waterport Gate)をくぐって中心街を出て、国境方面へ。
1727年、英軍が海側の出入口として開いたゲートで、今も“ジブラルタルの玄関口”として多くの人が行き交う。
帰路も行きと同じルートで国境を越えてバスに乗り、アルヘシラスへ。
イミグレの混雑に備えて少し早めに戻ったのだけど、この日はガラガラで、アルヘシラスには17時半には到着してしまった。
青と白のアズレージョが映えるアルタ広場へ戻り、ALSA夜行でリスボンへ

バスの時間までまだ余裕があったので、アルヘシラスの街をぶらぶら散歩。
中心にあるアルタ広場は、青と白のタイル装飾(アズレージョ)が広場全体を彩る、とても美しい空間だ。
ベンチや欄干、街灯の台座、そして中央で水をたたえる“オブジェ”のような噴水まで、細部にいたるまでアズレージョ。
1930年の改装で、いま目にする姿がほぼ整えられたという。
アズレージョは、イベリア半島でイスラーム(ムデハル)文化の影響を受けて広まった装飾で、いまもポルトガルやスペイン南部アンダルシアの街角でよく出会える。
幾何学模様や植物文様がリズミカルに連なり、日常の風景にさりげなく品の良さを添えてくれるのが魅力だ。
広場の角に建つパルマ教会の時計塔も見どころ。
18世紀に製作され、1804年に塔へ据え付けられた大時計は、いまも正確に時を刻み続け、この街の頼もしいシンボルになっている。
街歩きを終えたらコインロッカーへ戻って荷物を回収し、次はアルヘシラス港へ向かう。
長距離バスはバスターミナル発着の便と港発着の便があり、今回のalsa社のリスボン行きは港からの出発だ。

Tickets24Hの青い看板が出ている建物の中に、alsaのカウンターを発見。
ここでバスの停車位置を確認すると、出発の約10分前に港のターミナル前、バスが並ぶエリアにやって来るとのこと。
それまでフェリーターミナル内の待合室でひと休みすることにした。

ターミナル2階のベンチはエアコンが効いていて快適。
昼間の観光で汗ばんでいたけれど、シャワーを浴びられる場所も見当たらないので、そのまま出発ギリギリまでクールダウン。
体力を温存できて助かった。

バスは出発5分前に到着。
チケットは事前にネット予約していたので、ドライバーにEチケットを見せて乗車する。

座席は指定席、Wi-Fi完備で、エアコンもしっかり効いた快適空間。
バスは19時45分にアルヘシラスを出発し、いくつかの街を経由して、翌朝6時にポルトガルのリスボンへ到着する予定だ。
アルヘシラスでは乗客が少なかったものの、セビーリャなどの大都市で続々と人が乗り込み、あっという間に満席に。
満席になるとWi-Fiがやや不安定になって少し不便。
でも国境越えはユーロ圏内ということもあって停車や検査はなく、バスはそのままするすると走り続け、気づけばポルトガルへ。
アフリカでは国境ごとにVISAや手続きでバタバタしていたので、ユーロ圏の手軽さには正直びっくりする。
明日からはいよいよポルトガル観光。
ユーラシア大陸最西端の国は、日本からはなかなか“ついで”で行ける距離ではないから、今回の旅にしっかり組み込んだ。
リスボンとポルトをめぐったら、またスペインへ戻る予定。
期待で胸をふくらませながら、バスの揺れに身を任せて眠りについた。
8月12日:使ったお金
ジブラルタルでのバス代やカフェ代はクレジットカードで支払えたので、キャッシングせずに済んだのがうれしい。
なお、バス代(アルヘシラス→リスボン)は、ポルトガルでの合計に含めるため13日分に計上します。
・コインロッカー:3.2ユーロ(=552円)
・昼食代(シーフードフライ):6.5ユーロ(=1,121円)
・バス代(アルヘシラス↔ラ・リネア):5.2ユーロ(=897円)
・バス代(ジブラルタル↔エウローパ岬):3.6ポンド(=621円)
・カフェ代(ティー&スコーンセット):8.75ポンド(=1,509円)
合計:4,700円
これまでの旅費の合計

モロッコからスペイン(第一回)までの旅費の合計は50,019円でした。
・国際フェリー代(タンジェ→アルヘシラス):5,293円
・スペインでの滞在費(1泊):クレカ払い10,022円+キャッシング34,704円=44,726円
合計:50,019円
日本出国からスペイン(第一回)までの旅費の総合計は、1,771,381円でした。
※キャッシングした200ユーロ(=34,704円分)の残金は、ポルトガルで使い回し予定。