【135】古代エジプトの贈り物、デボー神殿。マドリード最終日記(2025.8.22)

スペイン(イギリス)

マドリードで過ごす最後の日は、少しゆったりと始まった。

朝は生ハムとサングリアを片手に、宿の共用スペースでブログを書きながら過ごす。

11時過ぎに荷物を預け、王宮前の広場からアルムデナ大聖堂へ。

外観だけでも迫力のある王宮に目を奪われ、堂内では現代的なステンドグラスや鮮やかな天井画に心を奪われた。

その後は王宮北側のモンターニャ公園へ。

ここには、なんとエジプトから贈られた本物の古代神殿「デボー神殿」が移築されており、内部の壁画やヌビア地方のジオラマを見て深く感動した。

観光を締めくくったのは、ローカルに大人気の立ち飲みバー「El Tigre」。

ワイン1杯に山盛りのタパスが付いてきて、マドリードの熱気ある酒場を体感できた。

夕方には高速鉄道iryoに乗って3時間の移動でバルセロナへ。

大都市から大都市へ駆け抜けた一日は、歴史と文化と人の温かさに満ちていた。

王宮を外から眺め、荘厳なアルムデナ大聖堂へ

今日はマドリード最終日。

朝は生ハムの残りと、残しておいたサングリアを飲み干し、ちょっとした贅沢な朝ごはんに。

11時までは宿の共用スペースでブログを書きながらのんびり過ごした。

夕方には高速鉄道でバルセロナへ向かう予定なので、それまでバックパックを宿に預けようとしたら、なんと荷物預けに3ユーロ(=515円)が必要とのこと。

少し驚いたけれど、コインロッカーに比べればはるかに安全で安心できるので、お金を払って預け、マドリード最後の街歩きに出発した。

王宮の入口で手荷物検査

宿から10分ほど歩いて、まずは王宮へ向かった。

内部の見学は有料だが、外観だけなら無料で楽しめる。

敷地に入る手前には手荷物検査の列ができていて、右側はチケットを持つ人用、左側は持っていない人用。

私は左側に並び、無事に敷地の中へ。

王宮

検査を抜けると広場が広がり、その向こうに堂々たる王宮の姿が現れる。

白い石造りの建物はバロックと新古典主義の要素をあわせ持ち、重厚でありながら優雅さを漂わせていた。

外から眺めるだけでも、その迫力に圧倒される。

王宮前の広場からの眺め

広場の一角には展望スペースがあり、そこからは王宮裏手の森が一望できる。

この森はもともと王室の狩猟場だったそうで、豊かな緑が広がる景色に、歴史の重みを感じた。

マドリード王宮の向かいに建つアルムデナ大聖堂

広場を挟んで王宮の正面にそびえるのが、アルムデナ大聖堂。

王権と宗教という二つの象徴が向かい合う光景は、マドリードならではの荘厳さを醸し出している。

王宮広場の出口は大聖堂側にあり、そこからいったん道路側へぐるっと回り込むと、大聖堂の正面入口にたどり着く。

入場は無料だが、入口に寄付金箱があったので1ユーロ(=171円)を入れて見学することに。

ミサが行われていた大聖堂内

中へ入ると、ちょうどミサの最中だった。

金色に輝く聖母像を中央に、豪華な祭壇装飾が並び、その左右には弧を描く階段が空間を立体的に演出していた。

観光客も信者も静かに祈りを捧げ、厳かな空気に包まれていた。

モダンなステンドグラス

ここで特に驚かされたのは、ステンドグラスの色使いとデザインだった。

伝統的な宗教画のイメージとは違い、まるで抽象画のよう。

スペインの現代美術の感性が、この聖なる空間の中で息づいているのを強く感じた。

中央の主祭壇

中央の主祭壇には十字架のキリスト像があり、その背後には鮮やかなフレスコ画と天井画。

天井を見上げると、幾何学的な模様と鮮やかな色彩が広がり、「現代に建てられた大聖堂」という印象をはっきりと刻みつける。

ゴシック風の柱やアーチとモダンな装飾が絶妙に融合し、アルムデナ大聖堂ならではの魅力となっていた。

「100 Montaditos」でローカル気分のタパス昼食

100 Montaditos

王宮と大聖堂を見学した後は、昼食をとることに。

立ち寄ったのは、スペイン全土に展開する人気チェーン「100 Montaditos」。

その名の通り、100種類以上のミニサンドやタパスを楽しめるお店で、地元の人々の日常にも溶け込んでいる。

タパスとフレッシュオレンジジュースの昼食

私はスペインの定番トルティーヤ(じゃがいものオムレツ)と、牛ホホ肉のタパス、そしてフレッシュオレンジジュースを注文。

これだけ食べて、なんと3.3ユーロ(=590円)。

驚きの安さでお腹も満たされた。

さらにビールやワインも格安で、お酒好きにはたまらないタパスバー。

気軽に立ち寄れるうえに財布にも優しく、スペインの食文化をぐっと身近に感じられる場所だった。

モンターニャ公園の丘に佇む古代エジプト・デボー神殿

階段を登りデボー神殿へ

食後は王宮の北側にあるモンターニャ公園へ。

階段を登りきると、そこに現れるのはなんと古代エジプトの神殿だった。

古代エジプトの遺跡「デボー神殿」

丘の上にぽつんと佇む異国風の石造建築。それがデボー神殿(Templo de Debod)。

もともとはエジプト南部ヌビア地方に建てられた本物の古代神殿で、太陽神アモンや女神イシスを祀るために紀元前2世紀ごろに造られた。

1960年代、アスワン・ハイダム建設でナイル川流域の遺跡が水没の危機にさらされたとき、ユネスコが「ヌビア遺跡救済キャンペーン」を実施。

スペインもイシス神殿などの移設作業に尽力した。

その功績への感謝として、エジプト政府からこの神殿が寄贈され、1972年にマドリードに移築されたのだ。

ヨーロッパの博物館にあるエジプトの遺物の多くは「略奪」の歴史を背負っているけれど、この神殿はそれとは違う。

協力の証としてここに建つことに、心があたたかくなった。

アブシンベル神殿やフィラエのイシス神殿で守られた奇跡を目にし、マドリードで受け継がれた証に出会った。

その歴史のつながりを旅の中で実際にたどれたことが、私にとって忘れられない特別な体験になった。

国を越えて人々が力を合わせて遺跡を守った、その事実は人類にとって大切で美しい出来事だと思う。

入口でEチケットを提示して中へ

入口でEチケットを提示して中へ入る。

神殿内部の見学は無料だが、事前に公式サイトから時間指定で予約しないと入場できない。

しかもサイトはスペイン語のみ、英語は一切なし。

スマホから操作したため余計に大変で、予約完了までにかなり手こずった。

内部:壁画が残る神聖な空間(礼拝室)

内部では「オシリスの礼拝室」と呼ばれる一室に入れる。

保存状態は完璧ではないが、薄暗い空間に古代の祈りがまだ生きているかのようだった。

壁画:アディカラマニ王がイシスにパンを捧げる場面

壁画には、古代ヌビアの王アディカラマニが女神イシスにパンを捧げる姿が描かれている。

玉座に座る女神と供物を捧げる王、その構図に神聖な儀式の空気が漂っていた。

ヌビア地方のジオラマ

展示室には、水没前のヌビア地方を再現したジオラマもあった。

デボー神殿やアブシンベル神殿、フィラエ島のイシス神殿などが点在していた様子が立体的に表されている。

文明の発展によって失われるものがある一方で、それを守ろうと世界中の人々が手を取り合ったからこそ、いまこうして遺跡が残っている。

マドリードでその成果を目にできたことに、深く感動した。

緑豊かなモンターニャ公園

見学を終えて、公園内を散歩。

木陰は心地よく涼しく、ほっと息をつける時間だった。

公園の展望所からの王宮ビュー

展望所からは王宮の美しい姿を見渡せる。

まだ高速列車まで時間があったので、少し早めの夕食をとることにした。

ローカル酒場El Tigreで山盛りタパス

グラン・ビア通り

高級ホテルや劇場、映画館、ショッピングモールが並ぶマドリード随一の大通り「グラン・ビア」を歩き、向かったのはローカルに大人気の「El Tigre Sidra Bar」。

El Tigre Sidra Bar

ここは、ドリンクを1杯頼むと豪快なタパスが山盛りで付いてくることで有名な立ち飲みバーだ。

熱気に包まれる店内

店内は地元客でぎゅうぎゅう。

立ち飲みスタイルで、熱気と活気にあふれ、観光地とは違うマドリードの日常を感じられる。

4.5ユーロで山盛りタパスとワイン!

ワインを1杯注文しただけで料金は4.5ユーロ(=773円)。

フォークが突き刺さったままの山盛りタパスがドンと置かれ、その豪快さに思わず笑ってしまった。

一人で飲んでいると、隣の男性から「今夜オペラに行くけど一緒にどう?」と声をかけられる。

行きたい気持ちはあったけれど、このあとバルセロナへ移動予定。

泣く泣く断ったが、オペラに誘われたのは人生初で、そのこと自体が嬉しい思い出になった。

お腹いっぱいになり宿へ戻って荷物をピックアップし、アトーチャ駅へ向かう。

高速鉄道iryoでマドリードからバルセロナへ

アトーチャ駅高速鉄道入口の荷物検査

アトーチャ駅の高速鉄道専用入口には、空港のような荷物検査がある。

改札に並ぶ人々

その先で改札に並び、Eチケットをスキャンしてホームへと降りていく。

Eチケットをスキャンし、ホームへ降りる
「iryo」社の高速鉄道に乗車

今回利用したのはスペインの新興鉄道会社「iryo」。

赤い車体が印象的で、車内はスタイリッシュかつ快適。

座席

マドリードを17時22分に出発し、バルセロナ・サンツ駅には20時20分到着。

およそ3時間の移動で料金は7,069円。

距離を考えればとても良心的で、高速鉄道の便利さを改めて実感した。

歩いて宿へ向かう

到着したサンツ駅から宿までは徒歩30分。

地下鉄に乗ろうか迷ったが節約して歩くことにした。

ところが、あと数百メートルというところで豪雨に遭遇。

折り畳み傘を差していたのに全身びしょ濡れ、ゴアテックスの靴も中まで水が染みてしまった。

さらに手提げバッグに入れていた充電プラグが壊れるトラブルまで発生。

充電プラグが壊れたので新しいものを購入

慌てて近くのスーパーで新しいものを購入。

コード付き充電プラグが24.9ユーロ(=4,279円)とかなり高くついた。

カーサ・グラシアの女子ドミ(4人部屋)

バルセロナでの宿はグラシア地区にある「カーサ・グラシア」。

旧市街やサグラダ・ファミリア、グエル公園のちょうど真ん中あたりに位置し、立地は便利。

女子ドミは4人部屋でバスルーム付き。

この日は到着が遅かったので共用ルームの探検は翌日以降にして、すぐに眠りについた。

明日はついに、念願のサグラダ・ファミリアへ!

8月22日:使ったお金

この日は4泊分の宿代や高速鉄道のチケットなど、大きな出費が重なった。

・荷物預け代:3ユーロ(=515円)
・アルムデナ大聖堂寄付:1ユーロ(=171円)
・昼食代(タパス等):3.3ユーロ(=590円)
・夕食代(タパス等):4.5ユーロ(=773円)
・電車代(マドリード→バルセロナ):7,069円
・宿泊代(4泊分):168.28ユーロ(=30,437円)
・宿泊税:22ユーロ(=3,780円)
・スーパー買い物代(充電機等):31.39ユーロ(=5,394円)

合計:48,729円