【137】バルセロナでガウディ建築とローマ遺跡めぐり、夜は大聖堂クラシック鑑賞(2025.8.24)

スペイン(イギリス)

バルセロナにはサグラダ・ファミリアやグエル公園など、有名だけれど入場料が高めの観光名所が多い。

毎日中に入るのはお財布に厳しいので、この日は観光費をおさえるために外観だけを眺めたり、無料で楽しめるスポットを中心に街歩きを楽しむことにした。

宿の近くにあるカサ・ミラやカサ・バトリョを外観から堪能し、ランブラス通りではジョアン・ミロのモザイクや、若き日のガウディが手がけた街灯を眺め、さらにグエル邸へ。

足を延ばすと、旧市街にはローマ都市バルキノの遺構が残る歴史博物館もあり、古代から中世までの街の変遷を肌で感じられた。

歩き疲れたあとは、地元のバルで名物フエットと、甘くて飲みやすいミルクのお酒「レチェ・デ・パンテーラ」を味わいひと休み。

そして夜は偶然見つけたクラシックコンサートへ。

18世紀の大聖堂に響く名曲の数々は、フラメンコとはまた違うスペインの魅力を教えてくれた。

お金をかけなくても、芸術と歴史に彩られた濃密な一日を過ごせたことが何よりの喜びだった。

波打つ外観に圧倒される──カサ・ミラとカサ・バトリョ

昨日はサグラダ・ファミリアを訪れ、明日はグエル公園へ行く予定。

どちらも入場料がなかなか高いので、今日はできるだけお金をかけずに、街歩きの中でガウディ作品を中心に楽しむことにした。

朝食はお菓子をつまむ程度で軽くすませ、10時半頃に宿を出発。

カサ・ミラ(ガウディ作)

最初の目的地は、宿のすぐ近くにあるカサ・ミラ。

波打つような有機的な外観は、まるで自然の岩山をそのまま削り出したかのようで、ただ通りから見上げるだけでも迫力に圧倒される。

中庭をのぞくひととき

今回は中に入らなかったけれど、1階のお土産ショップの窓から中庭をのぞくことができた。

吹き抜けの空間をぐるりと囲む建物、そこから降り注ぐ柔らかな光。

外観の力強さとはまた違い、穏やかで幻想的な美しさを感じた。

カサ・バトリョ(ガウディ作)

次に足を運んだのは、カサ・バトリョ。

おとぎ話の世界から飛び出したような建物で、波打つ曲線のバルコニーや、龍の背びれを思わせる屋根のフォルムが印象的。

色鮮やかなモザイクタイルが太陽にきらめき、まるで建物そのものが息をしているように見えた。

ランブラス通りからゴシック地区へ、芸術と歴史をたどる道

Mosaic de Joan Miró(ミロ作)

ランブラス通りの足元に広がるジョアン・ミロのモザイク。

赤や青の鮮やかな円が描かれ、多くの人は気づかずに通り過ぎてしまうけれど、実はこれもバルセロナを象徴する大切な芸術作品。

レイアール広場

レイアール広場には、若き日のガウディが設計した街灯が立っている。

ガウディ設計の街灯

鉄製の支柱には赤い装飾が施され、頂点には翼を広げたドラゴンがランプを守るように据えられている。

曲線的で力強い造形には、すでにのちの独創的な建築を予感させる片鱗が見え隠れしていた。

グエル邸(ガウディ作)

ランブラス通りのほど近くに建つ「グエル邸」も、ガウディの初期作品のひとつ。

のちに続く名作群の出発点といえる場所だ。

カタルーニャの紋章に不死鳥をあしらった装飾

正面の門には、カタルーニャの紋章に不死鳥をあしらった装飾が掲げられ、まるで屋敷を守るように力強い存在感を放っている。

依頼主のエウゼビ・グエルは、グエル公園やコロニア・グエル教会なども任せた大スポンサーであり、ガウディにとって生涯の理解者。

この邸宅は、二人の深い信頼関係を象徴する建築でもある。

コロンブスの記念塔

ランブラス通りを下り、ガウディ作品を眺めつつ歩いているうちに、気づけば海にたどり着いていた。

そこで出迎えてくれるのが「コロンブスの記念塔」。

塔の上には、新大陸を指さすコロンブス像が立っている。

コロンブスがアメリカ航路を発見したあと、最初に帰還しスペインへ報告した港が、実はここバルセロナだったそうだ。

メルセ聖母大聖堂(Basilica of Our Lady of Mercy)

旧市街に佇むメルセ聖母大聖堂は、18世紀に建てられたバロック様式の教会。

街の守護聖人である「聖母メルセ」を祀っている。

ちょうどミサの時間だった

訪れたときはちょうどミサが行われていて、荘厳な空気に満ちていた。

クラシックコンサートのチラシ

厳かな雰囲気に包まれながら大聖堂を後にすると、道端で一枚のクラシックコンサートのチラシを発見。

なんと会場は今夜、この大聖堂だという。

チラシのQRコードを読み込むと、GET YOUR GUIDE経由でチケットを3,359円で購入できることがわかり、しかも演目は誰もが知る有名曲ばかり。

歴史ある教会でクラシック演奏を聴けるなんて、初めての体験。

迷うことなく、すぐにチケットを手に入れた。

Pont del Bisbe

るんるん気分でゴシック地区の名所「Pont del Bisbe(司教橋)」をくぐり抜け、そのまま昼食へ。

100 Montaditos

向かったのは、マドリードでも立ち寄ったチェーン店「100 Montaditos」。

ナチョスとハンバーガーとレモンティー

今回はナチョスとハンバーガー、そしてレモンティーを注文。

お会計はなんと5ユーロ(=859円)。

このボリュームでこの値段は、やっぱり驚くほど安い。

カタルーニャ音楽堂(モンタネール作)

食後はカタルーニャ音楽堂へ。

ロビーにある階段

色鮮やかな外観と、ロビーにある優雅な階段に思わず目を奪われる。

設計したのは、ガウディの師でもある建築家リュイス・ドメネク・イ・モンタネール。

ガウディ作品とは異なる華やかさと繊細さを併せ持つモデルニスモ建築の傑作で、世界遺産にも登録されている。

カタルーニャ地方のクリスマス伝統人形「カガネ」

街歩きの途中で立ち寄ったのは、クリスマスの馬小屋飾りに欠かせない伝統人形「カガネ(Caganer)」を扱うお店。

農作物の豊穣を願い、畑に肥やしを与える象徴として“うんちポーズ”の姿で置かれる人形だ。

色んなキャラのカガネ人形

店内には伝統的な農夫姿のほか、マリオやドラゴンボールなど現代キャラを模したユーモラスなカガネもずらり。

あまりのバリエーションに思わず笑ってしまう。

記念にカガネ柄のボールペンを購入。

ちょっとシュールだけれど、カタルーニャらしいユーモアが詰まったお土産になった。

ローマ都市バルキノの遺構を歩く、バルセロナ市歴史博物館

バルセロナ市歴史博物館

旧市街にある「バルセロナ市歴史博物館」は、地下からローマ時代の都市遺構が発掘されたことで有名なスポット。

毎週日曜の午後3時以降は入場無料で見学できるのも嬉しい。

古代イベリア人・ローマ時代の遺物

まずは地上階で古代イベリア人やローマ時代の出土品を眺め、その後、階段を降りていよいよ地下へ。

ローマ時代の都市バルキノ(Barcino)の遺構

そこには紀元前1世紀末〜紀元後1世紀ごろに建設されたローマ都市「バルキノ(Barcino)」の遺構が広がっている。

排水路

排水路、魚醤(ガルム)の工房跡、ワイン醸造所の跡など、2000年前の暮らしを物語る構造物がそのまま残されており圧巻。

魚醤(ガルム)工房の跡(魚を塩漬けにして発酵させたソース工場)
ワイン醸造所の跡
街の模型

さらに地下には当時の街並みを再現した模型も置かれ、遺構を歩く際に全体像をイメージできるようになっている。

想像以上に広く見応えがあるので、訪れるなら時間に余裕をもって回るのがおすすめ。

サンタ・アグラシア礼拝堂

見学を終えて地上に戻ると、中世から残る小さな「サンタ・アグラシア礼拝堂」がある。

地下のローマ遺構から中世の礼拝堂へとつながる体験は、バルセロナの歴史の流れを肌で感じさせてくれた。

フエットとレチェ・デ・パンテーラ、地元バルで味わう夕食

Casa del Molinero

夜のクラシックコンサートまで少し時間があったので、教会近くのバー「Casa del Molinero」で夕食。

フエット(生サラミ)とトマトパン、そして白ワイン

注文したのは、フエット(生サラミ)とトマトを塗ったバゲット、そして白ワイン。

初めて食べたフエットは、生ハムとサラミの中間のような味わいで、表面には白カビがびっしり。

最初は少し身構えたけれど、一口でその旨みに衝撃を受けた。

量は多めだったが美味しすぎてぺろりと完食。

添えられたトマトパンとの相性も抜群で、ワインがどんどん進んでしまう。

二杯目を選ぼうとメニューを見ていると「Leche de Pantera(レチェ・デ・パンテーラ)」という不思議なお酒を発見。

Leche de Pantera(レチェ・デ・パンテーラ)

これはスペイン陸軍が飲んでいたとされるミルクベースのお酒で、甘さの中にしっかりアルコールが効いている。

味はまるでカルーアミルクのようで危険なくらい飲みやすい。

今では出す店も少ないそうで、見かけたらぜひ試してほしい一杯だ。

メルセ聖母大聖堂で体験した、心震えるクラシックコンサート

教会でのクラシック演奏会に感動

お腹も満たされ、開演15分前にメルセ聖母大聖堂へ。

私は一番安いチケットを購入していたので、前から16列目以降の自由席に座った。

やがて定刻通りにコンサートが始まる。

舞台に立つのは、バイオリン3人、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの計6人。

そこから流れてきたのは誰もが耳にしたことのある名曲ばかり。

🎼 プログラム

  • パッヘルベル《カノン》
  • モーツァルト《ディヴェルティメント》ニ長調
  • ヘンデル《オンブラ・マイ・フ》
  • ヴィヴァルディ《四季》より「春」「夏」
  • バッハ《G線上のアリア》
  • シューベルト《アヴェ・マリア》
  • モーツァルト《レクイエム》より「ラクリモーサ」
  • ラヴェル《ボレロ》
  • ベートーヴェン交響曲第5番「運命」第1楽章

クラシック初心者でも十分楽しめる豪華ラインナップで、まるで音楽で世界一周しているような気分。

高い天井と石造りの空間に音が反響し、全身を包み込むように響いてくる。

とりわけ印象深かったのは声楽のパート。

「オンブラ・マイ・フ」と「アヴェ・マリア」は女性歌手によって歌われ、その美しい声が教会全体に広がり、神聖さがいっそう際立った。

そして数ある曲の中でも特に心に残ったのは、シューベルトの《アヴェ・マリア》とモーツァルトの《ラクリモーサ》。

いずれも宗教曲であり、この教会という舞台で聴いたからこそ、その荘厳さと神聖さが何倍にも増して胸に響いた。

最後を飾ったのはヴィヴァルディの《夏》。

灼熱の太陽を思わせるような激しい演奏で幕を閉じ、汗を飛び散らせながら弾くヴァイオリニストの姿は神がかって見えた。

外に出ると、街はすでに夜の静けさに包まれていた。

余韻を胸に歩きながら、「スペインといえばフラメンコだけど、私はクラシックを選んだんだな」と少し誇らしい気持ちになった。

ガウディ建築めぐり、ローマ遺跡、街歩き、そして教会でのクラシック──お金をあまり使わなくても、こんなに濃い一日を過ごせたことが嬉しくて仕方なかった。

8月24日:使ったお金

歴史ある教会でのクラシック演奏をお得に聴けて大満足。

・メルセ聖母大聖堂寄付:0.2ユーロ(=34円)
・昼食代(タパス等):5ユーロ(=859円)
・お土産代(ボールペン):3ユーロ(=515円)
・夕食代(フエット等):14.7ユーロ(=2,527円)
・クラシックコンサートチケット代:3,359円

合計:7,294円