朝から向かったのは、バルセロナを代表する観光スポット・グエル公園。
自然と調和するガウディ建築の数々に心を奪われながら、カラフルな波打つベンチや柱の広間、そしてドラゴン階段などをじっくり巡った。
地元のスーパーで買ったラップサンドを片手に、緑に囲まれたピクニックエリアでのんびりブランチ。
丘の上からはバルセロナの街並みと、遠くにそびえるサグラダ・ファミリアの塔が見えた。
そのあとは世界遺産・サン・パウ病院の外観を見学し、帰り道で再びサグラダ・ファミリアの前へ。
ガウディの足跡がこの街にどれだけ深く残っているかを改めて感じた。
夜は宿の共用スペースでスーパーで買ってきたごはん、そしてグラシア地区のローカルバル「Raspall」へ。
おいしいタパスとカヴァで、バルセロナ最後の夜をしみじみ締めくくった。
ガウディ最初の住宅・カサ・ビセンスを経てグエル公園へ

今日は朝からグエル公園へ。
園内にはピクニックエリアがあると聞いていたので、そこで食べる用にスーパーでラップサンドとジュースを調達した。

グエル公園へ向かう道すがら、ガウディが最初に手がけた住宅「カサ・ビセンス」の前を通った。
レンガ造りの建物に、カラフルなタイルがちりばめられた外観はとても印象的。
直線的なデザインの中にも、自然をモチーフにした装飾がさりげなくあしらわれていて、若きガウディの実験精神が感じられる。

グエル公園のチケットは時間指定の予約制。
できれば朝の静かな時間に訪れたかったので、10日前に公式HPから予約しておいた。
開園は9時。
5分前に入口に着くと、すでに同じ時間帯のチケットを持った人たちが並んでいた。
EチケットのQRコードを見せて入場し、まずは名物の波打つベンチを目指して歩き出す。
波のベンチと柱の広間、ガウディの水をめぐる設計思想

波打つベンチがある広場は、グエル公園の中でも特に有名な場所。
開園直後で人も少なく、とても静かな空気が流れていた。
曇り空なのは少し残念だったけれど、直射日光がなかったぶん涼しくて、外歩きにはぴったりの気候。
ベンチに座って広場を眺めたり、のんびり写真を撮ったりして、気持ちのいい時間を過ごした。
この広場は「ギリシャ劇場(Teatre Grec)」とも呼ばれ、もともとはここに暮らす予定だった住民たちが集まる野外劇場として設計されたという。
グエル公園は、建築家アントニ・ガウディと、パトロンである実業家エウゼビ・グエルによって1900年に着工された。
自然と調和した高級住宅街をつくるという壮大な構想のもとに始まったが、当時この丘の上は不便な立地で、水道などのインフラも整っていなかったため、なかなか買い手がつかなかった。
最終的に売れた住宅は2軒のみで、事業としては残念ながら失敗に終わってしまう。
それでも、グエルはもともと大富豪だったため破産には至らず、その後この土地をバルセロナ市に寄贈。
現在のように、公園として整備されることになった。
今ではグエル公園は、世界中から観光客が訪れる人気スポットに。
夢の住宅街としては実現しなかったけれど、誰もが訪れられる芸術と自然の空間として、かたちを変えて今も生き続けている。
そんなふうにして残ったものがあるというのも、なんだか素敵だなと思う。

グエル公園の名物、波打つベンチ。
朝の静けさの中で、観光客も少なく、ゆっくり写真が撮れた。

このベンチは、ガウディらしい「トレンカディス技法(割れた陶器片を使ったモザイク)」で装飾されていて、色とりどりの模様がリズムを刻むように連なっている。

波打つベンチの縁には、「水はけ溝」と呼ばれる細い溝が走っている。
雨が降るとその水は、小さな穴からベンチ下の柱の中を通って地下へと流れ、公園の下にある「貯水槽」へと集められる仕組み。
自然の力を無駄にせず、設計に取り込むガウディの発想に感嘆する。

その貯水槽が設けられているのが、「柱の広間(Sala Hipòstila)」の地下部分。
ドーリア式の柱が86本も並び、まるで古代神殿のような荘厳な空間が広がっている。
この空間は、もともと市場として使われる予定だった場所で、上部の広場を支える構造であると同時に、排水や貯水といった機能面も担っている。
当時この丘の一帯にはまだ水道が整っておらず、水の確保が課題だったことから、雨水を再利用するためにこの貯水槽が設計された。
集められた水は、園内の噴水や植物の水やりなどに使われていたという。
自然との共生、持続可能な暮らしを見据えたガウディの先進的な思想が、この空間にも静かに息づいている。
グエル公園の魔法空間、ドラゴン階段と洗濯女の回廊

グエル公園のシンボルといえば、この「ドラゴン階段」。
とはいえ、どう見てもトカゲっぽく見えるこのモザイク像、実は「サラマンダー(火の精霊)」という神話の生き物を表しているらしい。
カラフルなトレンカディスで飾られ、光の加減でキラリと輝く姿がとってもきれい。

ただ……よく見ると、右手のお手々がケガしていた。
記念写真を撮るときに、つい触ってしまう人が多いのかもしれない。
ガウディの大切な作品を、これ以上こわさないように。
写真を撮るときは、やさしく見守るだけにしたいなと思う。

ドラゴン階段の前にある入口エリアには、まるで絵本の世界から飛び出してきたような、不思議でかわいい建物が2つ並んでいる。
左の大きな建物は、もともとは門番小屋で、今はグエル公園のミュージアムとして一般公開されている。
右の塔付きの建物は旧管理事務所で、現在はお土産ショップとして利用されている。
どちらもモザイクがちりばめられ、屋根は波打つような独特の形。
とくに屋根の縁にあしらわれた白い装飾や、キノコみたいな煙突はまるでお菓子の家のようで、実際に「お菓子の家」とも呼ばれているそう。

ミュージアムの3階の窓からは、公園の象徴ともいえる「波打つベンチ」や、その下の「柱の広間」、そして色鮮やかな「ドラゴン階段」までが一望できる。
グエル公園の見どころがぎゅっと詰まった、まさに絶景ポイントだった。
実際、このエリアは公園の中でも最も見どころが集中していて、ベンチのある広場からドラゴン階段までの道のりには、見逃せないスポット「洗濯女の回廊」もある。

洗濯女の回廊は、斜めに立つ柱が並ぶ、不思議な迫力を持ったアーチ状の通路。
静けさの中に、力強さを秘めたような空間だった。

この通路の名前の由来となったのが、柱の1本に寄りかかる「洗濯女」の彫刻。
壺のようなものをかかえて静かに佇むその姿には、どこか人間味と温もりが感じられた。

さらに奥へ進むと、柱が渦を巻くようにねじれた、不思議なデザインの通路が現れる。
まるでトルネードのようなこの構造は、単なる装飾ではなく、上にある遊歩道や庭園の土、植物の重みを支えるための構造柱でもあるという。
自然のかたちから学び、機能性と美しさを両立させる──そんなガウディの哲学が、この空間にも息づいていた。
売れたのはたった2軒──その先のピクニックエリアでひと休み

グエル公園はとても広く、山の斜面に沿って迷路のような遊歩道が整備されている。
その遊歩道を進んでいくと、「ガウディの家博物館」にたどり着く。
ここは建築家アントニ・ガウディが実際に約20年間暮らしていたおうちで、現在は博物館として公開されている。
ただし、グエル公園の入場とは別料金のため、今回は中には入らず外観だけを見学。

鉄でできた門は、ちょうちょの羽のようにも、葉っぱのようにも見えるやさしい曲線のデザインで、とても美しかった。

さらに坂をのぼっていくと、もう一軒かわいらしいお家が姿をあらわす。
こちらは、当時ガウディの友人が購入したもので、公園内にある数少ない「実際に売れた住宅」のひとつ。
事業としては失敗に終わったグエル公園の中で、売れた家はこの家とガウディ邸の2軒だけだった。

このあたりは山の上の高台にあたるため、バルセロナの街並みが遠くまで見渡せる。
そして、遠くにはいまも建設中のサグラダ・ファミリアの塔の姿が──ガウディの足跡が、この街のあちこちに残されていることを、あらためて感じさせられた。

自然あふれる遊歩道を歩いていくと、ひらけたピクニックエリアに到着。

ここでは持ち込んだ食べ物を食べることができるので、今朝スーパーで買っておいたラップサンドとジュースで、軽めのブランチにした。
本来は温めて食べるタイプのラップサンドだけど、この日は暑かったので冷たいままでも意外と美味しかった。
2個入りだったけど、さすがにお腹いっぱいで1個だけ食べて、残りはお持ち帰り。
食後は、公園内でいちばん高い場所にある「十字架の丘」にものぼってみた。
そのあと再び、波打つベンチの広場まで戻ってきたところで、「そろそろ帰ろうかな」と思ったけれど、なんだかまだ名残惜しくて……。
結局もう一周、公園をぐるりと歩き回ってしまった。
気づけば3時間半も滞在。
これはもう、チケット代のもとはじゅうぶんとれた気がする。
グエル公園のあとは、サン・パウ病院と再びサグラダ・ファミリアへ

グエル公園のあとは、世界遺産に登録されているサン・パウ病院へ。
建築を手がけたのは、前日に訪れたカタルーニャ音楽堂と同じく、リュイス・ドメネク・イ・モンタネール。

今回は中には入らず、外観だけを見てまわったけれど、赤レンガとカラフルなモザイクが映える、病院とは思えないほど美しい建物だった。

帰り道、ちらっとサグラダ・ファミリアの前を通った。
昨日はカサ・バトリョやカサ・ミラ、そして今日はグエル公園やガウディが暮らした家など、彼の建築をたくさん見てまわった。
だからこそ、最後に改めて見るサグラダ・ファミリアは、やっぱり別格だった。
どの作品も個性的なのに、どこか自然と響きあうようなやさしい曲線とあたたかさをまとっている。
ガウディがどれほど独創的で、唯一無二の建築家だったのかを、改めて実感した。
そんな天才のガウディでも、グエル公園の住宅街プロジェクトは時代が追いつかず、失敗に終わっている。
でもその失敗があることで、少し人間味を感じられて、ほっとするような気持ちにもなる。
そして、そんな彼の才能を誰よりも信じ、支え続けたグエル氏という存在。
もしグエル氏がいなければ、あれほど多くの名作が世に生まれることはなかったかもしれない。
バルセロナの街には、ガウディの建築があふれている。
これからも、彼の作品をひと目見ようと、世界中からたくさんの人が訪れるのだろう。
ガウディとグエル。
ふたりが残してくれたこの街の宝物は、きっとこれからも守り継がれていく。
そんなことを思いながら、宿へと帰った。

帰りにスーパーで食料を買って、宿の共用スペースでごはんタイム。
朝の残りのラップサンドをあたため、シーザーサラダ、飲むヨーグルト、炭酸レモンジュースで軽めの昼食(というか、もう時間的には夕食)。

泊まっているカーサ・グラシアは、共用スペースがとてもおしゃれで、どこを切り取っても絵になる空間。

観光に夢中であまり宿でゆっくりできなかったのが、ちょっと惜しまれるくらい。

緑あふれるテラス席もあって、とても居心地がよかった。
立地も便利だったし、またバルセロナに来ることがあったら、今度はもっと宿でものんびりしたいなと思う。
宿があるグラシア地区は地元の人が多く暮らすエリアなので、探せばローカル価格のバルもたくさんあるのがうれしい。
1日の締めくくりはローカルバルで乾杯!

そんなグラシア地区で最後の夜に訪れたのは、「Raspall」というローカルに人気のタパスバー。
宿から歩いてすぐの場所にあり、店内は地元の人でにぎわっていた。
英語が通じなかったので、ChatGPTを駆使してなんとか注文。
ここはドリンクを1杯注文すると、好きなタパスを1品選べるスタイル。

1杯めはベルガモットと塩漬け赤エビ。
塩気の効いた赤エビはお酒との相性抜群。

2杯めはスパークリングワインの「カヴァ」と、マグロのたたき。
このマグロが大当たりで、表面が香ばしく炙られ、中は脂がのっていてとても美味しかった。
バルセロナでは毎日、朝から晩まで観光づくし。
今日の夕方に少し宿で一息つけたのが、唯一のゆっくりタイムだったかも。
ガウディ作品は本当はどれも中に入ってじっくり見たかったけれど、今回は時間や予算の関係で、入れたのはサグラダ・ファミリアとグエル公園のみ。
でも、ガウディの本を何冊か読んでから、またいつか、カサ・ミラやカサ・バトリョといった建築も中まで見学してみたいと思う。
明日は早朝からバレンシアへ移動。
目的は、あの有名なトマト祭りに参加すること……!
わくわくしながら、眠りについた。
8月25日:使ったお金
外食は夜のタパスバーのみで、出費はかなりおさえめ。
・スーパー買い物代(ラップサンド等):3.6ユーロ(=620円)
・グエル公園入場料:18ユーロ(=3,091円)
・スーパー買い物代(サラダ等):5.48ユーロ(=944円)
・夕食代(お酒2杯):6.5ユーロ(=1,119円)
合計:5,774円