チュニジアのリゾート都市スースで過ごす日々。
毎日海を眺めながらのんびり滞在しつつ、観光らしいことは控えめに、それでも心に残る体験がいくつもあった。
まずは港から出航する海賊船クルーズ。
爆音の音楽とともに海へ漕ぎ出し、希望者は船から海へ飛び込み、そして待っていたのは針山やガラスの破片を使った衝撃のパフォーマンスショー。
非日常すぎる光景に目を疑いながらも、気がつけば3時間があっという間に過ぎていた。
夜はメディナの屋上レストランで大きな魚がのったフィッシュクスクスをいただき、翌日は旧市街のレストランでブリックと濃厚な海老スープ。
さらに翌々日はパスタ専門店で本格的なシチリア風パスタに舌鼓。
観光よりも宿でのんびりすることを優先した結果、海と食事に癒やされる贅沢な延泊生活になった。
9月1日 海賊船でスリル満点の地中海クルーズ

今朝の朝ごはんは、パンが2個だった代わりに、なんとゆで卵が2個ついていた。
タンパク質をしっかり摂って、朝から栄養チャージ。
今日は朝9時に宿に海賊船クルーズのお迎えが来る予定。

待ち時間の間にビーチでちょっと水遊び。
いつにも増して海の水が澄んでいて、とってもきれい。
毎日海を見ていると、日によって透明度や波の表情が違うのがわかって、観察するのが楽しい。
この日は最高気温が38度の予報。
いつもは30〜32度くらいだから、ぐんと暑くなっていて少し心配だったけど、クルーズは午前中だし、途中で泳げると聞いていたので、まあなんとかなるか、と自分に言い聞かせる。

待ち合わせ時間の5分前にはちゃんと送迎車が到着。
ペットボトルの水1本を手渡され、車に乗り込む。
スース港まではたった5分ほどで到着。
帰りの送迎はついていないらしく、歩いて帰るように言われたけれど、距離的には問題なさそうだったので了承。

港に着くと、海に浮かぶ大きな海賊船が目に飛び込んできた。
今日はこの船に乗って、地中海をぐるりと3時間クルーズする。
ランチとショー付きで、料金は70ディナール(=3,565円)。
どんなパフォーマンスが見られるのかは謎だけど、それにしてもかなりお得。
しかも、こうした“海賊船クルーズ”は、実はこの地の歴史とまったく無縁というわけではない。
かつてチュニスやスースを含む北アフリカの沿岸は、「バルバリア海賊(Barbary Pirates)」と呼ばれる海賊たちの活動拠点のひとつだった。
16世紀から19世紀にかけて、彼らは地中海を行き交うヨーロッパの商船を襲い、略奪や人身売買を繰り返していたという。
スースも、そんな時代の港町だった。
もちろん今は平和なリゾート地だけど、そんな歴史に少しだけ思いを馳せながら、青い海を行く海賊船に揺られるのも悪くない。

巨大な海賊船を背に、タラップの前で記念の一枚。
いよいよ乗船!

色とりどりのリストバンドをつけた乗客たちが続々と乗船していく。
街ではほとんど見かけなかった欧米人観光客や、リゾートホテルに滞在していそうなチュニジア人の富裕層の姿も。
スースの高級ホテルはオールインクルーシブが多いため、宿泊者たちは街中にはあまり出てこないのかもしれない。
船は爆音の音楽を鳴らしながら、陽気なムードでいざ出航!

海風に吹かれながら写真を撮る人、のんびりくつろぐ人、それぞれ思い思いにクルーズを楽しんでいる。

沖から見えるスースの海岸線には、白い高級ホテルがずらりと並んでいて、まさにリゾート地という風景。

やがて船がスース沖に停泊すると、乗客たちが一斉に海へダイブ!

この日の最高気温は38度。
猛暑のなか、冷たい海水がとても気持ちよさそう。
私もライフジャケットを着て海に入ってみた。
ツアーの仲介業者からは「イルカと泳げるよ!」なんて言われていたけど、もちろんイルカの姿なんてどこにもなかった(笑)
それでも、海に入ってクールダウンできただけで十分楽しかった。

ひと泳ぎして船に戻ると、昼食が配られた。
焼き魚とサラダ、パンというシンプルな内容だったけど、野菜不足気味だったのでサラダが嬉しい。
焼き魚も港町らしく新鮮で、美味しくいただいた。
まわりを見渡すと、あまり食べている人がいない。
どうやらオールインクルーシブの宿泊者たちは、戻ってからホテルのごちそうを楽しむのかもしれない。
喜んでかぶりついていたのは、どうやら私くらいだったみたい(笑)

海を見ていると、別の海賊船も次々と近くを通っていく。
海の上に複数の海賊船が並ぶ光景は、まるで昔の時代にタイムスリップしたようだった。

昼食後しばらくして、いよいよパフォーマンスタイムが始まった。
私はてっきり、海賊のコスプレをしたスタッフが軽く寸劇でもするのかと思っていたら……とんでもない。
登場したのは、見ただけで痛そうな針山。
その上にパフォーマーが仰向けやうつ伏せで寝転がるだけでなく、その上に人を乗せ始めた。
そして、まさかの展開──私が指名された。
もう一人の女性と一緒に、パフォーマーの体の上にそっと乗る。
彼の胸には、くっきりと針の痕が残っていて痛々しい。
それだけでは終わらず、今度は12人の女性でスクラムを組まされ、彼の上に一斉に乗るという衝撃の展開に。
私もその12人の中に含まれていて、恐る恐る上に座ったけど、彼の身体が無事か本当に心配だった。

さらにパフォーマーは別の針山を取り出し、今度はそれをおでこに突き刺した。
そして、その状態のまま女性二人を上に乗せるという信じられないパフォーマンスが始まった。
もう驚きすぎて、口が開いたまま塞がらない。
日本ではまずあり得ない、海外ならではの命がけのショーにただただ圧倒されるばかり。

そして次は、目の前でビール瓶を叩き割り、布の上にガラスの破片を広げはじめた。
嫌な予感しかしない。

案の定、そのガラスの破片の上を裸足で歩きはじめたパフォーマー。
しかも両肩には女性二人を担いだまま、360度ぐるりと回転して歩き続ける。
「この人の身体はいったいどうなっているの……(‘A`)?」と、思わず心の中で叫んでしまった。

さらに衝撃的だったのが、腹に剣を突き刺すシーン。
男性二人が力いっぱい剣を押し込み、パフォーマーのお腹には深い跡がくっきり残っていた。
痛々しすぎて、直視するのもつらいほどだった。

最後は別のパフォーマーが登場し、火を使ったパフォーマンスがスタート。
口から火を吹き出したかと思えば、今度はその炎を口の中に入れて消してみせる。
針山、ガラスの破片、そして火──。
どのあたりが「海賊パフォーマンス」なのかは謎だったけど、迫力に圧倒されて目が離せなかった。

ショーの締めくくりは、みんなにスイカが配られた。
甘いスイカを食べていると、チップ箱を持ったパフォーマーが席を回ってきたので、少しだけチップを渡した。
最後は爆音の音楽に合わせてみんなで踊り、船は港へと戻っていった。
衝撃の連続で、3時間のクルーズは本当にあっという間だった。

港からは徒歩で宿まで戻り、あまりの暑さに宿の前のビーチで再びひと泳ぎ。
といっても、ほとんどプカプカ浮いていただけだったけど、海で遊んでいるとチュニジア人の少女に突然握手を求められる場面も。
外国人が珍しかったのかもしれない。
そんな交流も楽しく、ビーチでのんびり過ごしたあと、夕食前にぐっすり昼寝をしてしまった。
9月1日 夜のメディナで豪快フィッシュクスクス

夜はスースのメディナの奥にあるレストランへ。
路地を歩くと、昼間の喧騒とはまた違う落ち着いた雰囲気に包まれていた。

訪れたのは「Restaurant Café Seles」。
チュニジアの伝統料理を味わえる店で、ルーフトップの席からはスースの夜景を一望できる。
心地よい風に吹かれながらの食事は、それだけで特別な時間。

注文したのはフィッシュクスクス。
運ばれてきたのは、大きな魚がどーんとのった豪快な一皿だった。
ホロホロとした白身魚と野菜、そしてクスクスを一緒に食べると、優しい味わいが口いっぱいに広がる。
港町ならではの新鮮な魚を使ったクスクスは格別で、満足度の高い夕食になった。
9月2日 延泊決定!旧市街レストランで海老スープ
本当は9月3日にスースを出発して、南部の砂漠の街タタウィンへ向かう予定だった。
有名なクサール(古代の要塞型倉庫)をぜひ見てみたくて、ずっと楽しみにしていた場所。
だけど──想像以上の暑さに心が折れた。
連日の猛暑の中での長距離移動はさすがにきつそうで、予定を見直すことにした。
それに、泊まっているオーシャンビューの宿がとても気に入ってしまって。
朝は海から昇る光で目覚め、昼は涼しい部屋でごろごろ、夜は波音を聞きながらブログを書く。
そんな贅沢な日々を、もう少し味わいたいと思ったら、自然と「行程変更」という決断になっていた。
気づけば延泊に延泊を重ね、スースでの滞在はどんどん長くなっていく。
Googleマップ経由でAgodaに入ると宿代が少し安くなっていて、朝食なしプランで最安値を見つけたので、その方法で予約を続けることに。
宿泊料金は日によって変動していて、ユーロ決済だったりドル決済だったりと仕組みは謎。
でも宿のフロントで直接交渉するより安いのだから迷わず決定。
安いにこしたことはない。
この日はどこにも出かけず、部屋でのんびり。
お腹も空かず、日中はスーパーで買った飲むヨーグルトとスナック菓子だけで済ませ、夕食だけ外へ出ることにした。

スース旧市街にある「Restaurant Dar el Habib」は、雰囲気の良いレストラン。
中庭にはチュニジアらしい幾何学模様のタイルが鮮やかに並び、どこを切り取っても絵になる空間が広がっている。

夕食には、パリッと香ばしく揚がったブリック(卵やツナを包んだチュニジア風の春巻き)と、濃厚な海老スープを注文。
伝統料理を味わいながら、タイルに囲まれた中庭でゆったりと過ごすひとときは、ちょっとだけ贅沢で、旅の夜にぴったりだった。
9月3日 のんびり沈没生活と本格シチリア風パスタ
この日も観光には出ず、部屋でのんびり。
これぞまさに“沈没生活”。
「どこか行かなきゃ」という観念から解放されて、ただ海を眺めて過ごす。
怠惰なのに贅沢で、心が癒やされる時間だった。

チュニジア料理が続いていたので、今夜は気分を変えてイタリアンへ。
やって来たのは「Dell’Arte (Spaghetti House)」。
地元でも評判のパスタ屋さんだ。

注文したのはシチリア風パスタ。
ナスやトマト、チーズが使われるシチリアの伝統的な一皿で、チュニジアにいながら本格的な味わいに驚いた。
アルデンテに茹でられたパスタに、香ばしいナスとトマトソースがよく絡み、まるで南イタリアを旅しているかのよう。
予想以上に美味しくて、これはもうリピート確定!
スースにはレストランが豊富だから、毎日飽きずに食を楽しめるのも魅力だ。
9月1日〜3日:使ったお金
9月1日
・チップ代:5ディナール(=251円)
・昼食代(フィッシュクスクス等):35ディナール(=1,760円)
・フルーツジュース:4ディナール(=201円)
合計:2,212円
9月2日
・夕食代(海老スープ等):35ディナール(=1,760円)
・宿代(1泊分):20.34ユーロ(=3,108円)
・宿泊税:4ディナール(=201円)
合計:5,069円
9月3日
・昼食代(シチリア風パスタ等):23ディナール(=1,156円)
・スーパー買い物代(ヨーグルト等):12.3ディナール(=618円)
・宿代(1泊分):17.83ドル(=2,724円)
・宿泊税:4ディナール(=201円)
合計:4,699円