メキシコの中央高原にあるサン・ミゲル・デ・アジェンデは、カラフルな街並みと落ち着いた雰囲気が魅力の小さなコロニアル都市。
メキシコシティやオアハカで常に治安を気にしながら旅してきた私たちにとって、この街の静けさと安心感は、ほっと肩の力が抜けるような心地よさがあった。
石畳の道を歩くとフォトジェニックな景色が次々と現れ、展望台から見下ろす街並みは絵本のように美しい。
ローカル市場では新鮮なフルーツや賑やかな屋台の活気に触れ、夜はマリアッチの生演奏が広場を彩る。
豪快なモルカヘテやシーフード、揚げたてチュロスなど、食の楽しみもたっぷり。
そんなサンミゲルでの3日間は、移動の疲れを癒しつつ、メキシコの“かわいい”と“ローカル”がぎゅっと詰まった時間だった。
11月5日 メキシコシティからサンミゲルへ移動。名物モルカヘテで迎える初日の夜
今日はいよいよメキシコシティを出発し、コロニアルな街並みが美しいグアナフアト州・サン・ミゲル・デ・アジェンデへ向かう日。
朝、宿の前に出ている露天でサンドイッチを買い、配車アプリ「Uber」で北バスターミナル(Terminal Central de Autobuses del Norte)へ向かった。

メキシコシティ→サン・ミゲル・デ・アジェンデのバスチケット(二人分・1,540ペソ=12,815円)は、すでに10月30日に購入済み。
出発まで少し時間があったので、ベンチに座ってサンドイッチで朝ごはんにした。
父が好きなコーヒーもカフェでテイクアウトし、一緒に飲みながらゆっくり目を覚ます。

今回乗るのは、ちょっといいバス会社のPrimera Plus社。
9時15分にメキシコシティを出発し、13時5分にサン・ミゲル・デ・アジェンデ到着予定。
グアナフアト州は場所によっては治安に不安もあるので、道中でバスジャックや強盗に遭わないか少し心配だった。
だからこそ、料金は少し高くても良いバス会社を選んだ。

値段が高いだけあって、座席は広めでフットレスト付き。
各席には充電ソケットやモニターも備わっていて、映画を観ながらのんびり過ごせる。
トイレは後方にあり、途中休憩はなし。

予定より少し早く、サン・ミゲル・デ・アジェンデのバスターミナル(Central de Autobuses San Miguel de Allende)に到着。
バスを降りたあと、まずPrimera Plus社のチケットカウンターへ向かった。
サン・ミゲル滞在後、11月8日に移動するグアナフアト行きのバスチケット(二人分・490ペソ/4,137円)をこのタイミングで購入しておくことにした。
チケットを無事に確保したら、いよいよ中心地へ移動。
バスターミナルから街の中心までは少し距離があるため、路線バスを利用する。
乗り場は出口を出て正面の階段を上ったところ。
フロントガラスに「centro」と書かれたバスに乗れば、中心地へ向かえる。

ちょうど「centro」行きが停まっていたので、待ち時間なく乗車。
料金は乗車時に支払う。

下車時にバスの写真をパシャリ。
小型でかわいらしい車体だった。

セントロで下車すると、目の前にはサンフェリペ・ネリ(San Felipe Neri)教会。
美しい教会を眺めながら、宿へ向かって歩く。

サンミゲルで3泊する宿は「Hotel y Hostal Santuario」。
青い壁がかわいらしい、中心地のこじんまりとしたホテルだ。
まだチェックイン前だったので、荷物だけ預けて近くのイグナシオ・ラミレス市場へ昼食を買いに行くことに。

ここはサンミゲルの中心にあるローカル市場。
野菜や果物、日用品から食堂まで一通りそろう“街の台所”のような場所で、カラフルな売り場が並び、歩くだけでも楽しい。
地元の暮らしを感じながら、気軽に食べ歩きや買い物ができる。

暑かったのでさっぱりしたものが欲しく、甘いミルクがかかったいちごを購入。
父はケサディーヤ(メキシコ風チーズ入りホットサンド)を買って宿に戻った。

宿の屋上で買ってきたいちごを食べながら休憩。
日差しは温かいけれど、風は心地よく、のんびり過ごすのにぴったりの場所だった。

清掃が早く終わったとのことで、チェックイン時間前に部屋に通してもらえた。
広々としたツインルームで、雰囲気もおしゃれ。

バスルームのお湯は少しぬるかったけれど、私には十分。

少し休んだ後は、父のテキーラを買いに酒屋へ向かう。
カラフルな家並みと石畳の道はどこを切り取っても絵になるほど美しく、洗練されている。
治安も良く、安心して歩けるのは、年金暮らしのアメリカ人をはじめ、外国人が多く住む街だからかもしれない。
本来ならサンミゲルは1泊でも観光できる小さな街だけど、治安の良い美しい場所で少しゆっくりしたかった。
メキシコシティ、オアハカと治安を気にし続けてきた父にとっても、ここで一息つけるのはありがたい。
その代わり物価は少し高めだったが、朝食付きの安い宿を見つけられたのは幸運だった。

中心地にある酒屋「La Europea」は、テキーラ、メスカル、ワインなど種類豊富。
どれにしようか迷ってしまうほど。
父が飲みたいと言っていた「1800 Añejo(アネホ)」を少し奮発して購入。

「1800 Añejo」は100%ブルーアガベ使用で、オーク樽で1年以上熟成させたプレミアムテキーラ。
まろやかで甘みのある味わいが特徴。
市場で買ったチーズや落花生をおつまみに、夕方に部屋で乾杯。
私はテキーラはあまり得意ではないので、一杯だけ味見してあとは父へ。
メキシコシティでは、私の知らないところで父が一晩で500mlのテキーラを飲み干していてブチギレたのだが、今回は「5日間で700mlを少しずつ飲む」と約束。
アル中酒豪の父の管理はなかなか大変だ。(‘A`)

夕暮れが近づくと街に灯りがともり、ロマンチックな雰囲気に変わっていく。
夕食のために再び中心地へ。

サンミゲル最初の夜は、生演奏を聞きながら食事ができるメキシコ料理店「Los Milagros」へ。
この日はヴァイオリンの演奏があり、とても上手。
私たちが日本人だと気づいたのか、ジブリ映画の曲も弾いてくれて感激した。

この日の夕食は、アツアツの石鍋で肉やサボテンを豪快に提供する「モルカヘテ」。
今回は「Mexicano(メヒカーノ)」を注文。
アラチェラ(ハラミ)、セシナ(塩漬け牛肉)、ソーセージ、チーズ、サボテン(ノパル)、野菜が山盛り。
迫力満点の一皿だ。
さらにナチョス、ワカモレ、トルティーヤも付いてくるので、組み合わせの楽しさもある。
ジュウジュウ音を立てながら運ばれてくる石鍋は見た目からしてワクワクするごちそう。
メキシコの食文化を存分に味わえる、大満足の夕食だった。

初めて食べるサボテン「ノパル」は、少し酸味があり、アロエのようにほんのりねばっとしていて意外とさっぱり。
父は「漬物みたいだ」と言いながら食べていた。
お肉もやわらかくてジューシー。
父と二人で頑張って食べたものの、量が多すぎて完食できずギブアップ。
残りはテイクアウトして、明日の昼食にまわすことにした。
11月6日 展望台El Miradorとコロニアル建築めぐり。夜はシーフードディナー

サンミゲル2日目の朝は、宿の1階テラスでのんびり朝食からスタート。

用意されているのはパンとフルーツ、コーヒーというシンプルな内容だけど、宿泊代に含まれているのがありがたい。
牛乳も置いてあり、父はうれしそうに飲んでいた。

今日はまず、日が高くなる前の涼しい時間帯に、丘の上にある展望台「El Mirador」を目指すことにした。
メキシコは昼と夜の寒暖差が大きく、昼間はTシャツ1枚で歩けるのに、夜はダウンが必要なほど冷える。
服装選びが本当に難しい。
坂を登るにつれて少し汗ばむけれど、途中の道から見える景色がすでに絶景。
毎日が絵はがきの中みたい。

宿から20分ほど坂道を登っていくと、サンミゲルの街を一望できる展望スポット「El Mirador(エル・ミラドール)」に到着。

小高い丘の上にあるこの場所からは、カラフルな家々がぎゅっと集まる街並みが広がり、その中にひときわ目を引くピンク色の尖塔──街のシンボル「サンミゲル教区教会(Iglesia Parroquial)」もしっかり見える。
夕暮れ時は夕日の光に包まれてさらに美しいらしい。
展望台を楽しんだあとは坂道を下り、街の中心にあるサンミゲル教区教会へ向かった。

ゴシック風のファサードが印象的な「サンミゲル教区教会(Parroquia de San Miguel Arcángel)」。
内部にも入れるけれど撮影は禁止。
荘厳な雰囲気の中、静かに祈りを捧げる人の姿があり、シャッターを切らずにそっと景色を心に残した。

教会を後にして街を歩いていたら、偶然「Casa de Cultura Banamex – Casa del Mayorazgo de la Canal」という歴史ある建物を見つけた。
入口で名前と国籍を書けば、なんと無料で入場できる。
中に入ると、思わずため息が出るほど美しいコロニアル建築。
アーチが続く回廊や光の降り注ぐ中庭が広がり、まるで時代を遡ったかのような雰囲気だった。
建物内にはアート作品や、サンミゲルに関する展示もあり、落ち着いて見て回れるのが良い。

中でも印象に残ったのは、北米・中米・南米の地図に刻まれた、スペインやフランス、イギリス、オランダ、ポルトガルなどの支配の足跡。
サンミゲルの街並みは本当に美しいけれど、その背景にある歴史を思うと、どうしても複雑な気持ちになる。
アフリカ大陸を旅していたときに抱いた感情が、また胸に戻ってきた。
ただ「かわいい街並み!」で終わらず、いろいろ考えさせられる時間だった。

ほかにもメキシコの馬具文化を紹介する展示があった。
メキシコは馬具の伝統がとても有名で、アメリカのカウボーイ文化にも大きな影響を与えたと言われている。
細やかな細工が施されたサドルや装飾は、どれも職人技が光っていた。

次に向かったのは、すぐ近くの「エル・ニグロマンテ文化会館」。
ここも名前と国籍を記入すれば無料で入場できる。

見どころは、メキシコ三大壁画家のひとり、ダビッド・アルファロ・シケイロスによる未完の壁画。

制作途中のまま残されているため、下描きや構想がそのまま見られるのがとても興味深い。
静かな回廊や中庭も美しく、ふらっと立ち寄れる穴場スポットだった。

朝の観光を終えたら、13時ごろ宿のテラスでお昼ごはん。
共用キッチンには冷蔵庫や電子レンジがあって、自由に使えるのがすごく便利。
昨日の夕食の残りを電子レンジで温めて食べたけれど、時間が経ってもお肉は柔らかくて美味しかった。
午後はゆっくり部屋で休憩。
3泊するので慌てる必要もなく、私は行程の計画や予約作業を、父はテキーラを飲みながら夕方までのんびり過ごした。

夜ごはんは、シーフードが美味しいと評判の「Baja Fish Taquito」へ。
夕暮れ時の街並みを眺められるテラス席で食事ができる。

私たちが選んだのは、エビタコスと、エビ・タコ・カキ入りのシーフードカクテル。
内陸の街でシーフードって大丈夫かな…と少し不安もあったけれど、しっかり美味しくて大満足!
シーフードカクテルは、トマトベースにライムや香草が効いたさっぱり味で、マリネされた具材がたっぷり。
カキはちょっとドキドキしたけれど、問題なく、おいしくいただけた。

夕食のあとは夜の街を散歩。
通り沿いには、壁一面にマリーゴールドとガイコツが飾られた華やかな建物が現れ、思わず足を止めてしまう。
屋根の上には巨大な骸骨が座り、紫やオレンジのライトが当たってとても幻想的だった。

そのあとサンミゲル教区教会へ。
夜のライトアップも美しく、教会前の広場にはたくさんの人々がベンチに座って談笑していた。

特に夜は、メキシコを代表する音楽グループ「マリアッチ」が演奏していて、広場はにぎやか。
チャロスーツに身を包んだ楽団が、バイオリンやギター、トランペットで華やかな曲を奏でる。
チップを払えばリクエストにも応えてくれる。
通りすがりの人が足を止めて聴き入ったり、一緒に歌ったりしていて、サンミゲルらしい温かさを感じた。
昼も夜も魅力にあふれるこの街は、長期でのんびり過ごすのにぴったりだと心から思った。
11月7日 市場さんぽとローカルごはん、チュロスの夜。マリアッチに癒されたサンミゲル最終夜

サンミゲル3日目。
この日は朝から市場めぐりへ。
まず訪れたイグナシオ・ラミレス市場では、食用サボテン「ノパル(Nopal)」が山のように並んでいた。
一昨日の夜のモルカヘテに入っていた、あのサボテンだ。
メキシコではとてもポピュラーな食材で、刻んでサラダにしたり、炒め物に混ぜたり、タコスの具としても使われるらしい。

イグナシオ・ラミレス市場の奥へずっと進んでいくと、民芸品がぎっしり並ぶ「アルテサニアス市場」に出る。
アクセサリー、刺繍の入った衣類、革製品、雑貨など、お土産になりそうなものがたくさん。
見て歩くだけでも心が弾む。

市場の脇にある細い路地へ入ると、カラフルな家々とひらひら揺れる紙飾り(パペル・ピカド)が風に舞っていて、本当に絵になる景色。
どこを切り取っても“サンミゲルのかわいさ”が詰まっている。

アルテサニアス市場の壁には、フリーダ・カーロ風の絵やハートのモチーフなど、色鮮やかなアートが描かれていて、ついつい写真を撮りたくなるかわいさだった。

市場をひと回りしたあとは、再びイグナシオ・ラミレス市場に戻り、市場内の食堂で昼食をとることに。
カウンター席に座って地元の人たちに混じって食べると、ローカル感があってすごく楽しい。
「ここの店はおいしいよ!」と隣のおじさんが声をかけてくれたり、ちょっとした交流も旅のいい思い出になる。

注文したのは、エビカクテル、エビトスターダ、フィッシュサンドイッチ。
トスターダは、カリッと揚げたトルティーヤの上に具をのせたメキシコの定番スナックで、まるでおせんべいのようなサクッとした食感。
エビとアボカドの組み合わせがよく合う一皿だった。

昼食後は、父だけ先に宿へ戻り、私はひとりで街を散歩。
住宅街を歩いていると、静かな路地裏に出会った。
カラフルな壁にアイアンの窓格子、頭上にはツタや花が生い茂り、木漏れ日がやさしく差し込む。
観光地のにぎわいから少し離れただけなのに、まるで別世界のような落ち着いた雰囲気で、こういう道をふらっと歩けるのもサンミゲルの魅力だと思う。

夕食は、サンミゲルで人気のカフェレストラン「Chocolates y Churros San Agustín」へ。
観光客にも地元の人にも大人気で、店内はほぼ満席だった。

この店の名物は、揚げたてチュロスと濃厚なホットチョコレート。
サクサクのチュロスを、とろっとしたチョコにたっぷりディップすると、甘さがじんわり広がって至福の味。
夕食にチュロスはどうなの…?と思っていたけれど、気づけば完食していた。

食後は、また教会前の広場へ。
ここには何組ものマリアッチ楽団が集まっていて、大にぎわい。
それぞれが、チップを払ってくれたお客さんの前でリクエスト曲を演奏していて、まるで“あなただけのコンサート”のよう。
特等席はもちろんチップを払った人だけど、周りでは私たちのように立ち聞き・座り聞きしている人たちもちらほら。
情熱的な歌声と、生演奏の迫力。
気づけば2夜連続で通ってしまうほど楽しくて、旅先の夜に音楽があるのって本当にいいなと思う時間だった。
そして明日はいよいよ、グアナフアトへ移動の日。
ここもまたコロニアル建築が美しい街。
少し治安の不安はあるけれど、新しい街へのわくわくが勝りながら眠りについた。
11月5日〜11月7日:使ったお金
11月5日
・朝食代(パン):70ペソ(=590円)
・タクシー代(宿→バスターミナル):140ペソ(=1,215円)
・コーヒー:74ペソ(=624円)
・バス代(サン・ミゲル・デ・アジェンデ→グアナフアト):490ペソ(=4,137円)
・バス代:16ペソ(=134円)
・宿代(3泊分):2,421ペソ(=20,424円)
・いちご:80ペソ(=674円)
・ケサディーヤ:40ペソ(=337円)
・ビール(3本):68ペソ(=573円)
・テキーラ:600ペソ(=5,061円)
・チーズ:79ペソ(=666円)
・夕食代(モルカヘテ等):710ペソ(=5,989円)
・ヴァイオリンチップ:20ペソ(=168円)
合計:40,592円
11月6日
・夕食代(エビタコス等):410ペソ(=3,458円)
・スーパー買い物代(カップ麺等):91ペソ(=767円)
合計:4,225円
11月7日
・昼食代(エビカクテル等):225ペソ(=1,898円)
・夕食代(チュロス等):250ペソ(=2,109円)
合計:4,007円


