ロス・トーレス湖のトレッキングを終え、体調と天候の回復を待ちながら過ごしたエル・チャルテン滞在の後半。
雨と強風に見舞われ、思うように動けない日もあったけれど、洗濯に出かけたり、部屋で静かに休んだりと、旅の中の「何もしない時間」もまた大切なひとコマだった。
滞在最終盤、わずかに天気が持ち直した隙を狙って向かったのは、もうひとつの人気ルート、セロ・トーレ湖へのトレッキング。
雲に覆われて山の全貌は見えなかったものの、茶色がかった湖面に浮かぶ氷河の氷の塊が淡い水色に輝き、荒々しいパタゴニアの自然を間近に感じることができた。
無理をせず、期待しすぎず、それでも一歩ずつ進んだエル・チャルテンでの数日間。
静養とトレッキングが交錯したこの滞在の記録を、ここに残しておきたい。
12月3日 雨と強風、ランドリーだけ行って静養する一日

昨日のロス・トーレス湖へのトレッキングで、体力をほぼ使い果たしてしまった。
今日は無理をせず、1日宿でゆっくり過ごすことにする。
天気も予報通りで、朝から雨と強風。
昼過ぎには少し回復したものの、こんな日は無理に外へ出かけないほうがいいと思う。
とはいえ、滞在日数が短い人なら、きっとカッパを着てでもトレッキングに出かけるのだろう。
朝食は、ハム、チーズ、炒めた玉ねぎ、フルーツ。
父が作ってくれた。

そろそろ洗濯物が溜まってきたので、ランドリーに出しに行くことにした。
この宿は洗濯禁止のルールがあり、自分で洗いたくても洗えない。
仕方なく、宿から徒歩2分ほどの場所にあるランドリーショップ「LAUNDRY “LAVAZACA”」へ向かった。

料金はカゴ1個分で15,000アルゼンチンペソ(=1,750円)。
てっきり1kgいくら、という計算だと思っていたので、定額制だと知って少し驚いた。
それなら、もっとたくさん持ってくればよかった。
洗濯は当日中に仕上げてくれて、とても助かった。
今日はとにかく風邪を一日でも早く治したくて、ランドリーに行った以外は、ひたすらベッドでだらだらと過ごした。
ウシュアイアを出発してから、まったくブログを書けておらず、記事がどんどん溜まっていくのが地味にストレスになっている。
それでも、パソコンを開く元気すらなく、結局この日もただひたすら眠った。

夕食は、ステーキと茹でたじゃがいも、そしてメロン。
夕食も父が作ってくれた。
料理に関しては、完全に父に甘えっぱなしの毎日だ。
12月4日 回復優先、部屋で過ごす静かな一日

翌日になっても、体調はあまり良くならなかった。
父も咳が止まらず、かなりしんどそうだ。
朝食は、チーズとサラミのサンドイッチにフルーツ。
私を起こしたり、食事を用意したりする役割は、すっかり父の担当になってしまっている。
この日も、雨が降ったり、曇ったり、時々晴れたりと、忙しい空模様。
明日のほうが天気が良さそうだったので、この日は引き続き部屋でゆっくり休養し、トレッキングは明日に回すことにした。

夕食は、父作のじゃがいも入りパスタ。
手に入る食材や調味料が限られているので、レパートリーは、ステーキかパスタが中心。
父は、さすがに少し飽きてきた様子だった。
それでも、外食する元気はお互いになく、簡単に作れるメニューでこの日も乗り切ることにした。
12月5日 セロ・トーレ湖へ 滞在最後のトレッキング

エル・チャルテン滞在5日目。
明日はエル・カラファテへ戻る予定なので、今日が実質的な観光最終日になる。
今日は少しだけ天気が回復しそうな予報だったため、セロ・トーレ湖へのトレッキングに出かけることにした。
朝食は、チーズとサラミを挟んだサンドイッチとバナナ。
朝8時、父と一緒に宿を出発する。

宿から歩いて数メートルのところに、セロ・トーレ湖へ向かうトレイルの入口がある。
ここにはチケット売り場は設けられていないが、本来は入場料が必要なエリアだ。
先日ロス・トーレス湖へ行った際、国立公園の公式サイトからオンライン購入を試みたものの、購入画面がうまく表示されず、結局支払うことができなかった。
今回も同様の状況だったため、そのまま進ませてもらうことにした。
父は膝の痛みのせいか相変わらず歩くペースが遅く、私に先へ行くよう声をかけてくれた。
最初は少し心配で様子を見ながら進んでいたが、道は比較的わかりやすく、人もそれなりに歩いている。
大丈夫だろうと判断し、しばらくして別行動にすることにした。

9時頃、最初の見どころであるセロ・トーレ展望台(Mirador del Cerro Torre)に到着。
しかし、山の上部は厚い雲に覆われ、岩峰の姿はほとんど見えない。
雲の切れ間から稜線の一部がかすかに見える程度で、あの鋭く尖った峰々を拝むことはできなかった。
パタゴニアではよくあることとはいえ、やはり少し残念で、「こればかりは運次第だな」と改めて実感させられる。

展望台に設置された解説板によると、晴れていれば正面にはセロ・トーレを中心に、トーレ・エッガー、プンタ・エロンという三つの鋭く尖った岩峰が横一列に連なって見えるという。
細く切り立った岩峰が空に向かって突き刺さるように並ぶ姿は、まるで槍の穂先が連続して立ち上がっているかのよう。
フィッツロイとはまた異なる、より荒々しく緊張感のあるパタゴニアの山景色を象徴する山群だ。

そこからさらに50分ほど歩くと、トーレ湖へ向かう道と、ロス・トーレス湖へ向かう道が枝分かれする分岐点に出る。
案内板にはそれぞれの行き先が示されており、私はトーレ湖の方向へ進んだ。
トレッカーの中には、この先を縦走して両方の湖を巡る人もいるのだろう。

トレッキング後半は、フィッツロイ川が流れる谷間の平坦な道が続く。
本来なら正面に名峰セロ・トーレの鋭い岩峰が現れる区間だが、この日は雲に覆われ、山の全貌を見ることはできなかった。
それでも、氷河の水が流れる谷の景色は十分に美しく、静かな時間が流れていた。

11時頃、ようやくセロ・トーレ湖に到着。
湖畔は強烈な風が吹きつけ、とにかく寒い。
正面には三つの鋭い岩峰が連なるセロ・トーレの山並みが見えるはずだが、やはり厚い雲に覆われている。
湖のそばには、小石を積み上げた風よけのような簡易的なバリケードがいくつもあり、そこにしゃがみ込んで、バナナやお菓子で簡単な昼食をとった。
それでも容赦なく風が当たり、体の芯まで冷えてくる。

湖の奥には氷河が広がり、その氷河が湖へと流れ込んでいる。
湖面には大小さまざまな氷のかけらが浮かび、どれも淡い水色をしていて、間近で見ると息をのむほど美しい。
これまで写真でしか見たことのなかった、氷河から崩れ落ちた氷の塊を、こんな距離で見るのは初めてだった。
「氷河から崩れた氷って、こんなにもきれいなんだ」
寒さを忘れるほど、静かに心を打たれる景色だった。
ここで40分ほど過ごし、そろそろ帰ろうかという頃、遅れて父が到着。
途中で引き返すと思っていたので、ここまで来たことには正直驚いた。
ロス・トーレス湖へのトレイルと比べると、急な登りがなく、終始平坦な道が続くため、膝の痛い父でも無理なく歩けたようだ。
ただし歩くペースはゆっくりなので、帰りも別々に戻ることにした。

帰り道、風に押されて雲が少し動き、ほんのわずかだがセロ・トーレの山並みを見ることができた。
もう少し湖畔で粘っていれば、もっと見えたかもしれないと思いつつ、あの強風と寒さでは限界だった。

帰路ではフィッツロイもきれいに姿を見せてくれた。
15時頃、宿に到着。
往復約7時間のトレッキングだったが、道が平坦だったこともあり、想像していたほど疲れてはいなかった。
トレッキング中に行けなかったトイレを済ませ、もう一つのハイキングルートであるロス・コンドレス展望台方面へ向かう。

ロス・コンドレス展望台のトレイル入口は、エル・チャルテンの街はずれ、南側にある。
ここにもチケット売り場があり、てっきりクレジットカードは使えないと思っていたら、利用可能とのこと。
現金、クレカ決済、スマホからのオンライン購入が選べるようだった。
ロス・コンドレス展望台は、断崖の上を舞うコンドルを観察できることで知られる展望スポットで、運が良ければその姿を見ることができるらしい。
ただ、1〜2時間で歩ける短いトレイルとはいえ、コンドルが見られるかどうかは完全に運次第。
そのためだけに高額な入場料を払うのも気が引け、今回は行くのをやめることにした。

トレイル入口からの帰り道、エル・チャルテンの町からもフィッツロイがきれいに見えた。
スーパーで食材を買って宿に戻ると、父はすでに帰宅していた。
無事に戻ってきてくれていて、ひとまずホッとする。

エル・チャルテン最後の夕食は、ステーキ、チーズ、トマト、メロン。
明日はバスでエル・カラファテへ戻る予定だ。
パタゴニア旅行もいよいよクライマックスを迎える。
エル・カラファテでは、念願のペリト・モレノ氷河クルーズが待っている。
12月のパタゴニアは夏にあたり、気温の上昇によって氷河の崩落(カービング)が起こりやすい時期。
轟音とともに氷が崩れ落ちる迫力ある瞬間に出会えることも多いという。
実際にその瞬間に立ち会えるかどうかはわからないけれど、ここまで来たのだから、見てみたい気持ちは強い。
長かったパタゴニア滞在も、少しずつ終わりが見えてきた。
12月3日〜12月5日:使ったお金
現金払いは赤字にしています。
12月3日
・スーパー買い物代(ステーキ肉等):31,480アルゼンチンペソ(=3,557円)
・ランドリー(1カゴ分):15,000アルゼンチンペソ(=1,750円)
合計:5,307円
12月4日
出費なし
12月5日
・スーパー買い物代(チーズ等):6,000アルゼンチンペソ(=678円)
合計:678円


