2024.7.13〜7.22 「死ぬために生きる人々」‐トラジャ族の死生観を訪ねて

2024.7.13〜7.22 「死ぬために生きる人々」‐トラジャ族の死生観を訪ねて

独特な死生観を持つことで知られるトラジャ族。

その文化に強く惹かれ、インドネシア・スラウェシ島の秘境、タナ・トラジャを訪れました。

トラジャでは、亡くなった人を「病人」として扱い、家族と共に暮らし続ける文化や、崖や洞窟に掘られた墓、そして水牛をはじめとする多くの動物を生贄に捧げる「ランブ・ソロ(Lambu Solo)」と呼ばれる盛大な葬儀が行われます。

ここでしか見ることのできないユニークな文化を、自分の目で確かめ、現地の人々と直接話してみたいと思いました。

今回の旅は、ラオスで出会った中国人の友人Joeとの二人旅。

幸運なことに、トラジャ族の結婚式にも参列する機会に恵まれ、忘れられない思い出がたくさんできました。

この旅の記録をここに残したいと思います。

半年以上前の出来事なので、記憶が曖昧な部分もあるかもしれませんが、ご了承ください。

【死ぬために生きる】トラジャ族の死生観とは?

なぜ私がトラジャに興味を持ったのかを先に説明しないと、この旅の話が伝わりにくいと思うので、簡単に紹介します。

タナ・トラジャ(Tana Toraja)は、インドネシア・スラウェシ島に位置し、独特な文化と美しい自然が広がる地域です。

スラウェシ島のトラジャはマカッサルから車で約8〜9時間

そこに暮らすトラジャ族は、「死ぬために生きる人々」とも呼ばれるほど、死と死後の世界に対して特別な信仰を持っています。

彼らにとって、死は人生の終わりではなく「旅の始まり」です。

トラジャ族の信仰では、人が亡くなると魂は「プヤ(Puya)」という死後の世界へ向かうと考えられています。

ただし、亡くなった直後にすぐ旅立つのではなく、適切な葬儀を経て初めてプヤへと進めると信じられています。

そのため、トラジャ族にとって葬儀は人生で最も重要な儀式なのです。

「ランブ・ソロ」と呼ばれる葬儀は、数日から数週間にわたる大規模な儀式で、多くの牛や豚が生贄として捧げられます

特に水牛は、死者の魂を天国へ導く存在とされ、裕福な家族では何十頭もの水牛を捧げることもあります。

そのため、トラジャ族の人々にとって、生きている間に葬儀の準備を進めることが人生の大きな目標の一つとなっています。

また、トラジャでは、亡くなった人をすぐに埋葬するのではなく、防腐処理を施して家族と共に暮らし続けるという文化があります。

遺体は「亡くなった人」ではなく「病気で寝ている人」と呼ばれ、食事を提供したり、会話をしたりしながら過ごします。

これは、遺族が死者の魂と最後の時間を共有するためでもあり、同時に葬儀のための資金を貯める期間でもあります。

このような独特な死生観に強く惹かれ、私はタナ・トラジャへ旅立ちました。

【旅の相棒Joeと合流】マレーシア・クアラルンプール

当初、私は一人でトラジャに行こうとしていた。

でも、5月にラオス・バンビエンで出会ったJoeにトラジャの話を熱弁している時、Joeはとても興味津々に私の話を聞いてくれた。

もしかすると彼を誘ったら一緒に来るだろうか?

軽い気持ちでJoeにSNSでメッセージを送ると、返事は「Yes!」だった。

こうして私たちは、マレーシア・クアラルンプールで合流することになった。

中国人の友人Joeとの出会いは以下のブログからどうぞ!

2024.4.27〜5.7 秘境探検‐バンビエンで川下り!チェンマイで山歩き!

クアラルンプールには何度かトランジットで来たことがあるが、空港から出るのは今回が初めて。

KL Sentral駅でJoeと待ち合わせし、バックパックを背負ったままペトロナスツインタワーへ向かう。

Joeは私より一足早くクアラルンプールに到着し、昼間は一人で散策していたらしい。

ペトロナスツインタワー

写真左側が日本のハザマ建設が建てたタワー1、右側が韓国の現代建設が建てたタワー2。

今回始めてペトロナスツインタワーを見れて嬉しい。

噴水ショー

噴水ショーの時間になると、多くの人が集まってくる。

サロマ橋とペトロナスツインタワー

夜のサロマ橋のライトアップは幻想的。

Upper View Regalia Hotelの屋上プール

宿泊したホテルの屋上プールは夜景が綺麗で有名だが、私たちが行った時にはすでに営業時間外で閉まっていた。

私はクアラルンプールからマカッサルまでの直行便を予約できたが、Joeは直前の手配だったため、バリ島経由に。

一旦クアラルンプールで解散し、マカッサルで再合流することになった。

【寝台バス】マカッサル→トラジャ

日本人女性の一人旅は珍しいのか、イミグレーションで質問攻めにあう。

「葬式を見に来た!」

「トラジャに行きたいんだ!」

と言ったらすんなり通してくれた。

マカッサル空港 到着ロビー

到着したマカッサル空港は工事中で、出発と到着のターミナルが別々。

到着ターミナルは古く、売店は出口付近に3軒しかない。

現地通貨を手に入れたいのに、両替所もATMもSIMカードショップも見当たらない。

「本当に国際空港?」と疑うほどの小ささ。

探しているうちに日が暮れ、ロビーの天井にはコウモリが飛び交う。

喉が渇いているのに、現金がないから水も買えない(T_T)

売店はクレジットカードが使えず、親切な空港係員にATMの場所を教えてもらった。

ホテル入り口横にひっそりとあるATM

到着ターミナル内のホテル近くにATMを発見。

こんなの案内されなきゃ見つけられねぇ……(゜д゜)

スラウェシ島、外国人観光客が少なすぎて難易度が高い。

そうこうしているうちにJoeが到着。

二人でタクシーに乗り、バスターミナルへ向かう。

Terminal Regional Daya Makassar

夜行バスでトラジャへ向かうため、事前にtravelokaでLita社のバスをネット予約しておいた。

ターミナル到着後、Lita社の窓口で出発時刻を確認。

現地人用のSIMカード売り場

バスターミナル周辺にはSIMカード売り場が多数あるが、どれもインドネシア人向け。

外国人用のSIMを血眼になって探すも、ここでは手に入らず。

難易度高いぜ!スラウェシ島!!(゜д゜)

トラジャ行き夜行バス

近くのBurger Kingで夕食を済ませ、バスターミナルに戻ると夜行バスが到着。

バスの座席
足が伸ばせる

足を伸ばせるリクライニングシート。

完全にフラットにはならないが、横になって寝られるので快適。

Joeは身長が高いため、少し窮屈そうだった。

21時45分にマカッサルを出発し、翌朝6時にトラジャ到着。

トラジャの町はずれでバスを降ろされる

中心地まで行くかと思いきや、町はずれで降ろされる。

そこから30分ほど歩き、いくつかのゲストハウスを巡って、部屋を見て気に入った「Pia’s Poppies Toraya」に宿泊を決定。

荷物を置いて、眠い目をこすりながら観光案内所へ。

ガイドを探すも、なかなか見つからない。

すると、案内所のスタッフIsaが「自分がガイドをする」と申し出てくれた。

今日は大きな葬式があるとのことで、連れて行ってもらうことに。

まずはバイクをレンタルする。

観光所近くのレンタルバイク店

パスポートを見せるだけでバイクを借りられる。

スーパーで葬式の香典用にタバコを購入し、Isaと再合流。

ボコボコした山道が多いため、私はIsaのバイクの後ろに乗り、Joeはレンタルバイクでついてくる。

いよいよ、トラジャの伝統的な葬式へ向かう。

【ランブ・ソロその1】多くの水牛が生贄にされるトラジャ族の葬式に参列

葬式をする集落

葬式会場に到着後、Isaが用意してくれたインドネシアの伝統的な民族衣装「サロン」(ロングスカート状の腰布)を纏い、会場へ向かう。

伝統家屋トンコナンと生贄の水牛

トンコナンは、トラジャ族の伝統的な家屋で、高床式の構造に船の形をした屋根が特徴的だ。

会場には、これから生贄にされる多くの水牛がロープで繋がれている。

亡くなったあばあさんを模した死者人形タウタウ

タウタウ(tautau)は、故人の生前の姿を模した木彫りの人形で、死者の魂を宿していると信じられている。

職人が一体ずつ丁寧に彫り上げる。

葬式の服装は黒系が良いとのことで、サロンに黒いブラウスを合わせた。

葬儀をする親族に挨拶

まずは葬儀を執り行う親族へ挨拶。

今回の葬儀の主役である亡くなったおばあさんの孫にあたる青年に、香典代わりのタバコを手渡す。

すると、観光客用ではなく親族用のやぐらへ案内してくれた。

親族用のやぐら

案内されたやぐらは、水牛の生贄儀式を間近に見下ろせる特等席。

お孫さんに感謝…!

一番奥に見えるやぐらが観光客用

このやぐらはすべて葬式のために建てられたもの。

莫大な費用がかかっている。

真下に生贄儀式の広場を見下ろせる

写真左側のやぐらの2階部分にはおばあさんの棺が、1階にはタウタウ人形が置かれている。

特等席に座らせてもらい夜行バスの疲れも吹っ飛ぶ
トラジャの伝統菓子

しばらくすると、お孫さんがトラジャの伝統菓子とお茶を持ってきてくれた。

甘くて美味しい。

トラジャは、世界一よそ者を歓迎する葬式をする町かもしれない。

見ず知らずの外国人にここまで歓待してくれるとは。

トラジャ族の人々の温かさに感動する。

お茶を飲んでいると、葬式DJ?マイクで場を盛り上げるおじさんの煽りで水牛が登場。

生贄の水牛が出てきた

いよいよ儀式が始まる。

トラジャでは、白と黒のまだら模様の水牛が最も価値が高く、次に白い牛(アルビノ)が続く。

まだら牛や白牛は1頭700〜800万円。

長い角を持つ水牛は60万円、普通の牛は25万円ほど。

立派な水牛が何十頭も一気に屠殺される。

馬や豚も捧げられる。

生贄だけでどれほどの価値になるのか、想像もつかない。

男たちが腰に差したバラン(山刀)で、水牛の喉元を一閃。

血しぶきが上がり、水牛が暴れまわった後、力尽きて地面に倒れる。

観客席に突進する水牛もおり、危険な場面も。

残酷な光景に目を覆いたくなるが、しっかりと目に焼き付ける。

葬式中に食事をいただく

儀式の合間に昼食が運ばれてきた。

緑の器には水が入っており、これで手を洗う。

紙の上にごはんやおかずを載せる

紙の上に水牛の肉や野菜の炒め物を盛りつけ、手で食べるスタイル。

量が多すぎて食べきれなかったが、美味しかった。

みんなで水牛を解体

儀式が終わると、村人たちは水牛の解体を始める。

肉片がシートの上に置かれている

皮や肉は、村人が持ち帰る。

トラジャに来た目的の葬式を、初日で達成(・∀・)

Isaに「これからどこに行きたい?」と聞かれ、即答した。

「病人(ミイラ)の家に行きたい」

Isaは知人に電話をかけ、2軒の家を訪ねることになった。

お孫さんに礼を言い、葬式会場を後にする。

葬式会場の集落にいた水牛
青々と茂る田んぼ

青々と茂る田んぼに囲まれた葬式会場の集落を後に、私たちはバイクで病人の家に向かう。

途中、手土産用のタバコ、砂糖、コーヒー豆を購入した。

【病人の家】ミイラにされた遺体と共に暮らす家を訪問

伝統家屋トンコナン

Isaの家のご近所さんの家を訪れた。

このトンコナンの2階部分が寝室になっており、そこにはミイラ化された故人と家族が共に暮らしている。

家族の方に手土産のタバコを渡し、挨拶をして家の中へ。

亡くなったあばあさんを称える看板
2階の部屋の布団に寝かされている病人

故人の遺体は病院で防腐処理が施され、ミイラ化された後、家族と数か月から数年にわたって生活を共にする。

家族は故人に毎日食事を用意し、衣服を着替えさせ、座らせたり寝かせたりしながら、頻繁に話しかける。

まるで生きているかのように接していた。

この家の故人は死後2〜3か月が経過しており、ホルマリンで保存処理がされているため、部屋にはホルマリンの強い匂いが充満していた。

鼻で息をするのを一瞬ためらい、口呼吸に切り替えたが、喉がひりつくように痛くなる。

おそらくホルマリンの成分のせいだろう。

ご遺体が寝かされている部屋を見て、家族がどれほど大切にしているかが伝わってくる。

葬式までの時間を惜しむように、家族は別れの準備を進めていた。

トラジャ族の強い先祖崇拝の精神を感じる。

ご遺体の部屋の隣には家族の寝室がある

隣の部屋は家族の寝室だった。

なんと、葬式まで故人と一緒に暮らしているのだ。

トンコナンの外にキッチン

外では家族の人たちが夕食を作っていた。

おばあさんの棺

庭には、おばあさんの葬式で使われる棺も準備されていた。

家族の方にお礼を伝え、次の家へ向かう。

向かう途中、雲行きが怪しくなり、突然のスコールに見舞われた。

カッパを着るJoe

売店でカッパを購入し、雨の中次の目的地へ。

次第に暗くなり、バイクはジャングルの道なき道を進んでいく。

ふと、ネットで見たニュースが頭をよぎる。

スラウェシ島では、6〜10mの巨大なニシキヘビによる人間の丸呑み事件が複数回発生している。

この旅行直前にも、最新の事件のニュースを見たばかりだった。

スラウェシ島、ヘビ育ちすぎじゃね?(゜д゜)

こんな暗闇のジャングルで、突然茂みから巨大ニシキヘビが現れたらどうしよう……。

そんな恐怖に怯えながら、Isaにしがみつきながら奥地へ進んでいく。

目的地の集落へ到着

ようやく目的地に到着。

Isaの友達の家

トンコナンの隣に建てられた家に、Isaの友達が住んでいる。

しかし、友達はまだ農作業から戻っておらず、家は留守だった。

飼い犬?の子犬

かわいい子犬が出迎えてくれた。

しばらく待っていると、友達が農作業から戻ってきた。

みんなで記念写真

手土産の砂糖とコーヒー豆を渡し、挨拶を交わす。

「待たせてごめんね。お腹すいたでしょう。」

そう言われながら、カップ麺をごちそうになる。

食後、病人がいるトンコナンへ案内してもらった。

棺に入れられたミイラ

この家の故人は亡くなって5年が経過しており、棺の中に納められていた。

棺の中にあるため、ホルマリンの匂いは全くしない。

枕元にはキリストの絵が飾られていた。

トラジャ族の宗教構成は、プロテスタントが65.15%、カトリックが16.97%を占め、合わせて約82%がキリスト教徒である。

トラジャ族の信仰は、伝統的なアニミズム「アルク」とキリスト教が融合した独特なものとなっている。

その宗教観は奥深く、短い滞在では到底理解しきれなかった。

トラジャ族の人々は、インドネシア語ではなくトラジャ語で会話をしている。

トラジャ語はGoogle翻訳にも対応していないため、Isaが英語で懸命にトラジャの文化を説明してくれた。

本当にありがたかった。

最後に真っ暗なジャングルをバイクで戻り、トラジャ初日の観光が終了。

Isaにお礼を言い、ガイド料を渡した。

私たちはSIMカードを買いたかったが、店が見つからず困っていた。

するとIsaが私たちと別れた後店を探し、SNSで情報を送ってくれた。

しかし、この日はすでに店が閉まっていたため、翌日に行くことにした。

【ランテパオ市内散策】水牛市場を見学後トラジャコーヒーでまったり

翌朝、Isaに教えてもらった、外国人でも購入できるSIMを扱うお店へ向かう。

GraPARI Rantepao

GraPARI RantepaoでSIMカードを購入。

店員さんがアクティベートまでしてくれたが、完了までに1時間ほどかかった。

しかし、これでようやくインターネットが快適に使える!

今までは日本のSIMを節約しながら使っていたので、一気に安心感が増した。

今日からJoeと二人でバイクを使ってトラジャ観光をするため、ネット環境は必須だった。

昨日の山道走行でガソリンが少なくなっていたので、まずは補給へ。

ガソリン補給

Pasar Pagi Rantepaoの入口付近にガソリン補給所を発見。

Pasar Pagi Rantepaoの伝統市場

今日はトラジャの中心地・ランテパオを巡ることに。

まずはPasar Pagi Rantepaoの伝統市場へ。

市場には野菜や果物、魚、肉などが所狭しと並んでいる。

野菜市
鶏のカゴ
魚市
大量のバナナ
市場近くの教会

キリスト教徒が多い影響か、市場の近くには立派な教会が建っている。

次にバイクで移動し、ボル市場へ向かう。

ボル市場は、鮮魚や野菜、乾物などを扱うローカル市場。

しかし、ここで特に有名なのは水牛マーケット。

ボル市場の水牛マーケット

毎週土曜日には水牛市が開かれ、多くの人でにぎわう。

滞在中にタイミングが合えば、ぜひ訪れてみてほしい。

立派な水牛
白と黒のまだらの高級水牛

このまだら牛の表情が面白く、しばらく見惚れてしまった。

たくさんの水牛
水牛に怯えながら記念写真
土産も売っている

ボル市場ではお土産も販売されている。

山刀も売られている
トランプ遊びしているおじさん達

市場を一通り巡った後、ランチへ。

Warung Pong Buri’

Warung Pong Buri’では、トラジャの伝統料理「パピヨン」が味わえる。

お昼ごはん

写真左上がパピヨン。

米、肉、ココナッツ、野菜などを竹筒に入れて薪火で蒸し焼きにした料理で、バナナの葉にくるまれています。

真ん中のおかずはトラジャのうなぎ。

右上は豚肉です。

意外にも、うなぎがとても美味しかった!

JAK Koffie

食後は、近くのJAK Koffieでトラジャコーヒーを堪能。

ここでは、マスターこだわりのコーヒーが味わえる。

店内はとてもおしゃれ
時間をかけてドリップされた、香り豊かなコーヒー

実はトラジャは、世界的にも有名な希少価値の高いコーヒー豆の産地。

標高800〜1600mの山岳地帯に位置し、コーヒー栽培に適した環境が整っている。

トラジャコーヒーはインドネシアのジャカルタや海外で購入すると高級品だが、トラジャではお手頃価格で手に入る。

コーヒー好きのJoeは、大量に買い込んでいた(・∀・)

【ランブ・ソロその2】棺が墓へ埋葬される儀式に飛び入り参加

コーヒーを飲んで一休みした後、明日から泊まる宿を探していると、突然、爆音のクラクションを鳴らしながらバイクの大集団が走り抜けていった。

突如現れたバイク集団

トラジャにも暴走族がいるの!?(゜д゜)

最初は驚いたものの、よく見ると違うようだ。

たくさんの車列の後にきたのは…
昨日のタウタウ人形だ!!

どうやら、昨日の葬儀の人々が棺を墓へ納めるために向かっているようだった。

一族郎党がバイクや車で続々と墓へ向かっていく。

「Joe!私たちも墓へ行こう!バイクで追いかけよう!(゜д゜)」

「えぇ……(´・ω・`)」と微妙な表情をするJoeを半ば強引にバイクに乗せ、私たちも車列を追いかけた。

泥まみれの少年

しばらく走ると墓に到着。

そこには、昨日お世話になったお孫さんもいた。

彼は仲間たちとお祭り騒ぎの真っ最中。

手には、人んちの田んぼから勝手に引っこ抜いてきた稲爆弾。

次々と周りの人に投げつけている。

観光客も例外ではなく、私も被弾。

服に泥がべったり(T_T)

みんな、葬式のフィナーレを迎えてテンションMAX!(笑)

人んちの田んぼから稲をむしり取る少年達
棺が入ったトンコナン形の山車(?)
棺桶を一族たちが持ち上げ墓に入れる
タウタウ人形も上げられる
山車も墓の入口に安置される
家族だけが着れる特別Tシャツ
墓の階段で記念写真
ノリの良い少女達と記念写真
墓の前には田んぼが広がる

思いがけず昨日の葬儀の続きに立ち会うことができた。

そして、稲爆弾の洗礼を受けつつも、楽しいひとときを過ごせたのだった。

【タウタウ(死者)人形購入】洞窟や崖に掘られた墓を巡る

翌朝、二連泊したゲストハウスをチェックアウトし、フロントにバックパックを預けた。

この日は旅のもう一つの目的である、洞窟や崖に掘られた墓をバイクで巡る。

ロンダ

まずは最初の目的地、ロンダへ。

岩壁には棺桶がロープで吊るされている
たくさんの棺桶
死者人形タウタウ

岩壁の下に洞窟への入口があり、携帯ライトの明かりを頼りに中へ入る。

洞窟内は暗い
棺桶や人骨が散乱している

洞窟内は暗く、棺桶や人骨が散乱していた。

案内人がいなかったため、あまり奥までは進まず引き返した。

コーヒー豆を収穫している村人

墓の周辺では、村人がコーヒー豆を収穫していた。

次の目的地、レモへ向かう。

タウタウ作りの名人

レモの村に入るとすぐに土産売り場があり、そこにタウタウ作りの名人がいた。

名人の作ったタウタウ人形
お土産用の小さなタウタウ人形

名人が作ったタウタウ人形が並んでおり、小さなお土産用のタウタウ人形が特に可愛らしい。

そこで、おじさんに自分の写真データをSNSで送り、自分の顔にそっくりなオーダーメイドのタウタウ人形を作ってもらうことにした。

本来ならもっと時間がかかるが、無理を言って3日で仕上げてもらうことに。

3日後、タウタウ人形を受取り記念写真

3日間、名人は寝ずに作業をしてくれた。

ありがとう、名人!

完成したタウタウ人形と記念写真を撮る。

Joeと私のタウタウ人形

私の顔、こんな感じです。

似てるわ(笑)

Joeの人形もそっくり!さすが名人!!

レモの岩窟墓

この岩壁墓は王族やお金持ちのためのもの。

岩壁に並ぶたくさんのタウタウ人形
ご先祖様が村を見守っているようだ
周辺は一面の田んぼが広がっている
近くには庶民の墓もある

レモを後にし、バイクで景色の良い田舎道を走る。

青空と田んぼが美しい

天気が良いので、バイクを降りてトレッキングしながら墓巡りをすることに。

一面に広がる田んぼ
トンコナンの家々
サラプン村

サラプン村には乳児が木の幹に埋葬されたリアン・ピアがある。

リアン・ピア
乳歯の生えていない赤ん坊が木の幹に埋葬されている

木の幹には墓穴が開けられ、複数の乳児の遺体が納められている。

この木は白い樹液が豊富で、樹液を母乳に見立て、天国でも赤ん坊がすくすく育つようにとの願いが込められている。

田んぼ道を更に進む

サラプン村からGPSを頼りに歩き、次の目的地タンパン・アロへ。

タンパン・アロ

川辺の洞窟には大量の人骨と棺が安置されており、タウタウ人形も見られる。

タウタウ人形もある

見学を終え、バイクを止めた場所まで歩いて戻る。

のどかな田舎道が続く

トレッキングを終え、お腹が空いたのでバイクで少し走ったところにある食堂へ。

ローカル食堂
バクソという麺料理

ローカルな雰囲気の店で、バクソという肉団子入りの麺料理を注文。

「もしかして、この店で初めての外国人客なのでは?」と思うほど、地元の人たちしかいない場所だった。

【秘境の温泉】マクラ温泉は硫黄の香り漂う本格温泉

たくさん歩いて疲れたので、癒やしを求めて温泉へ。

マクラ温泉は、村の外れにひっそりと佇むローカルな日帰り温泉施設だ。

マクラ温泉

施設内には更衣室がなく、トイレで水着に着替えて入浴するスタイル。

貴重品を保管するロッカーもないため、荷物の管理は自己責任となる。

泉質は硫黄泉で、独特の香りが漂う。

湯温はかなりぬるめだが、 打たせ湯の部分はやや温かいため、心地よくお湯を楽しめる。

気温が高い日だったこともあり、ぬるめの湯は長く浸かるのにちょうどよい。

のんびりと湯に浸かっていると、歩き疲れた体がじんわりと癒されていく。

地元の人たちで賑わっている

地元の人たちが多く訪れ、活気のある雰囲気。

湯上がりにはコーヒーを楽しむこともできる。

しばし休憩した後、ランテパオへと戻った。

【雲海が広がる絶景】標高1360mのBatutumongaに滞在

夕方、辺りがかなり暗くなる中、私たちはバックパックを持って、バイクでBatutumongaの山小屋へ向かった。

2人分のバックパックの総重量は約15kg。

そんな大荷物を抱えた私たちを乗せたバイクは、急勾配の山道を登っていく。

しかし途中でガソリンが尽きかけ、危うくBatutumongaまでたどり着けないところだった。

幸い、途中にあった民家の軒先のような小さな売店で、瓶に入ったガソリンを売っているのを発見。

九死に一生を得た(笑)

細い山道では、対向車やバイクが猛スピードで突っ込んでくるので、そのたびに命の危機を感じる。

いや〜、生きててよかった(・∀・)

Joeの運転技術に本当に助けられた。

やっとの思いでたどり着いたBatutumonga

なんとかBatutumongaに到着し、Mentirotiku Guest Houseにチェックイン。

飛び込みで訪れたが、運よく空室があり助かった。

しかし、案内された部屋にはシャワーがなく、桶に水をためて行水するタイプの風呂。(゜д゜)

標高1360mの夜は極寒。

とても冷水を浴びる気にはなれない!

フロントにお願いすると、バケツいっぱいのお湯を用意してくれた。

熱湯と水を混ぜながら、なんとか体を洗う。

夜になると、屋根裏で猫とネズミが大運動会を繰り広げ、ドタバタとうるさい。

でも、この夜がトラジャで一番印象に残っている。

山小屋からの眺め

この山小屋に泊まった理由は、早朝に見られる雲海。

しかし、その日は天気が悪く、思うような景色が見れなかったため、もう一泊することに。

日が昇ると、徐々に晴れてきた。

メニュー表をグーグル翻訳

メニュー表はインドネシア語のため、グーグル翻訳こんにゃくで解読。

初日に泊まったスタンダードルームは25万ルピア(≒約2,277円)。

翌日はデラックスルーム(40万ルピア≒約3,644円)が空いたため、そちらへ移動。

デラックスルームはホットシャワー完備。

極寒の夜には本当にありがたい!

宿のレストランから景色を眺めながら朝食

レストランからは、トラジャの街や美しい棚田を一望できる。

景色が素晴らしいだけでなく、料理の味もGood!

観光客向けの味付けで、食べやすい。

Mentirotiku Guest House
宿から棚田を見下ろす
延泊してやっと見れた雲海

延泊した甲斐もあり、翌朝は念願の雲海を見ることができた。

雲海の向こうから昇る朝日は、まるで神々しい光景。

宿泊客の双子の男の子
トラジャの街を一望

Mentirotiku Guest Houseは、トラジャ滞在に時間がある方にぜひおすすめしたい宿。

棚田を見下ろす絶景と、美しい雲海を堪能できる最高のロケーション。

トラジャを訪れる際は、ぜひ泊まってみてください!

【トンコナン】舟のような形の屋根を持つ美しい伝統家屋の村を巡る

Mentirotiku Guest Houseに滞在中、山の麓にある観光地をいくつか巡りました。

最初に訪れたのは、葬祭広場の石柱で有名なBori。

Boriの石柱

ここはトラジャの伝統的な葬儀が行われる広場で、中央には生贄を捧げるための台座があります。

近くには岩をくり抜いた墓もある

次に訪れたのは、伝統家屋トンコナンが美しく並ぶパラワ。

個人的に、トラジャで最も美しいトンコナンの集落だと感じました。

パラワのトンコナン
生贄となった水牛の角

多くのトンコナンの家には、水牛の角が飾られています。

角の数が多いほど、その家のステータスが高いことを示しているそうです。

珍しい逆さ角も
トンコナンの屋根は時間とともに苔むし、それがまた風情を感じさせます
美しい装飾

ちょっと場所は変わりますが、最後はケテ・ケス。

トラジャで最も有名なトンコナンの集落です。

ケテ・ケスのトンコナン
水牛の顎骨がいっぱい
有名な観光地だけに遊歩道はきちんと整備されている

一番有名なだけあって観光客も多い。

トラジャには外国人観光客は少ないですが、ケテ・ケスやレモ、ロンダ、葬式会場などではちらほら見かけます。

それ以外の場所では観光客を見かけることが少なく、静かにローカルな雰囲気を味わえるのがトラジャの魅力です。

ケテ・ケスから少しバイクを走らせると、有名なコーヒーショップ「Kaa Coffee Shop」があります。

Kaa Coffee Shop

ここでは、良質なトラジャコーヒーや、超高級なジャコウネコのコーヒー(コピ・ルアク)を格安で購入できます。

お店の裏にはコーヒー豆の加工工場があり、店主自ら案内してくれました。

コーヒー豆を天日干し

豆は何度もかき混ぜながら天日干しにされ、手間ひまかけて作られています。

コピ・ルアクの豆

コピ・ルアクは、ジャコウネコが食べたコーヒー豆が体内で約12時間発酵した後、糞として排出されたものを加工した超高級コーヒーです。

この発酵過程によって苦味が抑えられ、独特の香りが生まれるそうです。

お店で試飲したところ、とても美味しかったので、お土産に購入しました。

コーヒー大好きなJoeは、ここでもコーヒー豆を爆買い(笑)

【トラジャの結婚式】VIP席に案内され、村人約300人参加の結婚式に参列

トラジャ旅行の最終日、Isaの親戚が結婚式を挙げるということで、式に招待してもらった。

私たちは急いで結婚式の準備を始めた。

トラジャでは葬式や病人の家を訪れる際、タバコや砂糖、コーヒー豆などを手土産に持っていくが、結婚式では白い封筒にお金を包むのが習わしだ。

スーパーで白い封筒を探し回る(・∀・)

結婚式は新婦側の親族のトンコナンで執り行われるため、新婦の両親と新郎新婦それぞれに祝儀を用意する。

朝、Isaが用意してくれたトラジャの伝統衣装に着替え、バイクで式場へと向かった。

受付の新婦の友人たち

まず受付で名前を記入し、引き出物を受け取る。

中身はかわいらしいカトラリーだった。

結婚を祝う看板

トラジャの人々は葬式でも結婚式でも看板を掲げるのが好きなようだ。

ここにもたくさんの看板が飾られていた。

式場入口

式場の入口は美しくデコレーションされていて、華やかな雰囲気が漂っていた。

新婦のお母さんと記念写真

葬式ではサロンを着たが、結婚式では上下のセットアップを着用。

この黄色のセットアップは親族が着る伝統衣装で、Isaがショルダーポーチやネックレスまで貸してくれた。

本当に感謝しかない。

結婚式場
結婚式にも盛り上げDJがいる

葬式の時にもいた盛り上げDJが結婚式にもいる。

マイクで歌ったり叫んだり場を盛り上げてくれます。

VIP向けのゲスト用やぐら

このやぐらは結婚式のためだけに建てられたもの。

VIP向けのゲスト用やぐらです。

左側のトンコナンが一番のVIP席

縁もゆかりも無いただの外国人観光客のわたし達を、一番のVIP席に案内してくれました。

村の有力者やお金持ちが座るVIP席

他の席とは雰囲気が違い、ケータリングの食事も豪華。

こんなところに座ってもいいのだろうか……(゜д゜)

まだ時間があるので、もう少し式場内を散策することに。

炭火で魚を焼いています
伝統料理パピヨン
竹筒に食材が詰め込まれ蒸し焼きにされた伝統料理

伝統料理パピヨンを少し味見させてもらった。

以前食堂で食べたパピヨンより、格段に美味しかった!

バンブーオーケストラの子どもたち
槍を持った子どもたち

かわいい子どもたちと記念写真をしている間に、式の時間となったため、自分の席に戻ります。

もう一つのVIP席のやぐら
子ども達によるバンブーオーケストラ

バンブーオーケストラの行進とともに、親族たちが式場へと入場していく。

親族の長い列
最後に新郎新婦の入場

まるで王様と王妃のような、新郎新婦。

とても華やかで美しい。

子どもたちもバンブーオケストラで盛り上げる
高砂のようなところに新郎新婦が納まる
新郎新婦に見入る参列者達
一般参列者達の席

盛り上げDJがトラジャ語で何かを話した後、食事歓談タイムへ。

VIP席の料理

みんな一斉に料理に群がり、争奪戦が繰り広げられる(゜д゜)

自席で料理をいただきます

なんとか私も料理をGET!

デザート

よくわからないけど、甘い液体のデザートをいただく。

一般席の料理メニューはVIP席とは異なり、焼き魚やパピヨンなど様々なおかずが振る舞われていた。

新郎新婦にお祝儀を渡す

食後、参列者たちは列を作り、新郎新婦にお祝儀を渡していく。

ざっと数えて300人ほどいただろうか。

参列者の多さに圧倒される。

お祝儀を渡す時に記念写真
新郎新婦、Isa、Joeと記念写真

Isaのおかげで、新郎新婦とも記念写真を撮ることができた。

まさか葬式だけでなく、結婚式にまで参列させてもらえるなんて。

なんて寛大なんだ、トラジャの人々よ!!

伝統衣装をまとった花嫁、とても美しかった。

末永くお幸せに(*´∀`*)

【緊急入院】トラジャから日本になんとか帰るも空港で救急搬送→入院

結婚式の後、また夜行バスでマカッサルまで戻る。

帰りのバスはJoeがビンタン・プリマ社に電話で予約してくれた。

Perwakilan Bus Bintang Timurの窓口で予約の旨を伝え、チケット代を支払う。

バスは定刻通りに乗車ポイントである窓口前へ到着した。

夜行バスでのJoe

バスに乗る頃から喉に違和感を覚え、痛みも出てきた。

結婚式では人が多かったので、もしかしたら風邪をもらったかもしれないと嫌な予感がする。

マカッサル到着時にはその予感が確信へと変わり、体も熱っぽくなっていた。

本当は帰りの飛行機まで市内観光をするつもりだったが、体調を考えホテルに直行し休むことにした。

しかし、せっかくマカッサルに来たのにどこにも行かないのは悲しい。

そこで、お昼ごはんだけは食べに出ることにした。

ランチのエビ

マカッサルはシーフードが美味しいことで有名だ。

ランチにはエビやカニを堪能した。

その後、少しだけ街を散策し、再びホテルへ戻る。

マカッサルのシンボル Masjid Kubah 99 Asmaul Husna
アートな町並み

その後、マカッサル空港へ向かう。

出発ターミナルは到着ターミナルとは違い、新しく広々としていた。

マカッサル空港

空港のスタバでのんびりしていたら、ファイナルコールで名前を呼ばれ、危うく乗り遅れるところだった。

クアラルンプール行きの便ではJoeと一緒に搭乗。

体調は悪化していたが、クアラルンプール空港でJoeと食事をし、そこで別れた。

最後の力を振り絞り、日本行きの飛行機に乗る。

機内でさらに体調が悪化し、日本に到着する頃にはフラフラだった。

なんとかイミグレーションの検疫所まで歩いたものの、そこで力尽きてしまった。

検疫所でインフルエンザ、COVID-19、デング熱、マラリアの検査を受けたが、結果はすべて陰性。

空港スタッフの手配で、空港内のクリニックへ搬送される。

その後の血液検査でCRP値が高く、感染症の疑いがあるため、救急車で総合病院へ搬送。

3日間の入院と点滴治療を受けることになった。

入院中の私(T_T)

体がよわよわすぎて自分が嫌になる。

退院後はバックパックを背負って新幹線に乗らなければならない。

そのため、夜の病院内でバックパックを背負って歩く練習をしていたところ、看護師さんに「入院代金踏み倒して逃げようとしているのでは?」と疑われ、恐る恐る制止される。(゜д゜)

病室の窓から見た夕日

翌朝には体調もだいぶ回復し、ベッドの上でSunoAIを使ってトラジャの曲を作った。

これは、旅行中にお世話になったJoeとIsaにプレゼントするために作詞作曲したものだ。

とはいえ、9割はAIが作った曲。

看護師さんに聴かせると「入院患者で曲を作る人なんて初めて見た ( ゚д゚)」と半ば呆れられ、翌日、即刻退院となった(笑)

お世話になった総合病院

保険金請求については以下の記事にまとめているので、良かったらみてください。

海外旅行保険の保険金請求方法と実体験レポート

【まとめ】トラジャ旅行の旅費は153,968円

今回の旅費は、トータルで153,968円

旅費の内訳
  • 渡航前費用 82,219円
    航空券、新幹線、高速バス、前泊ホテル、前泊食事代等
  • クレカ決済 26,992円
    VISA代、ホテル代、夜行バス等
  • 両替(キャッシング) 44,757円
    150リンギット(マレーシア)、400万ルピー(インドネシア)

日本⇔クアラルンプール間の航空券はエアアジアのセールで安く購入できたため、渡航前費用を抑えることができた。

また、前泊を含めると11日間の旅となったが、Joeと二人旅だったため、宿や食事、レンタルバイクの費用などを折半でき、コストを抑えて充実した旅を楽しめた。