マナウスを出発し、ボートを乗り継いでアマゾン密林の奥地へ。
今回参加したのは、野営2泊と先住民の村1泊、そして最後にロッジ泊を含む5日間のジャングルツアーだ。
電気もガスもない森の中でハンモックに揺られて眠り、焚き火で魚を焼き、夜はモリを手に漁へ出る。
幼虫を口にし、川で体を洗い、地図に載らない水路を進む時間は、まさに“生きている森”の中に身を置く体験だった。
さらに、アマゾンの先住民の村に滞在し、川とともにある暮らしにも触れる。
安全が整えられた観光ではなく、自然の中にほんの少しお邪魔する数日間。
緊張と高揚を抱えながら、私は本物のアマゾンへと足を踏み入れた。
2月2日 マナウス出発、アマゾン密林へ。サバイバル野営1泊目
今日から、いよいよアマゾンジャングルツアー。
朝8時半にツアー会社のオフィス集合。
けれどこの日は、深夜から激しい雷雨。
朝になっても止む気配はなく、歩いて向かうにはなかなか厳しい天気だった。
しかも手元にブラジルレアルがほとんどない。
タクシーも呼べず、どうしようかと途方に暮れる。
思い切ってツアー会社のオーナーに相談すると、なんとタクシーを手配してくれた。
本当にありがたい。
濡れずにオフィスへ向かうことができた。

オフィスにはたくさんの参加者。
私たちはシャトルバンに乗り込み、マナウスの町を出発する。

9時20分、ローカル港「Porto da Ceasa」に到着。
車を降り、スタッフの案内で船乗り場へ。

港にはATMがあった。
ここでキャッシングし、ようやくブラジルレアルを確保。
ほっとひと安心。

小さな船に乗り、対岸の「Porto da Balsa」へ向かう。
所要約15〜20分。
川風が気持ちいい。

マナウスを出てしばらくすると、あの有名な合流地点が見えてきた。
黒っぽいネグロ川。
黄土色のアマゾン川。
同じ川なのに、水の色がまったく違う。
水温や流速、密度の違いで、すぐには混ざらないという。
くっきりと線を引いたように分かれたまま流れていく様子。
「世界最大の川に来たんだ」と実感が湧き、胸が高鳴った。
対岸に着くと、少し年季の入った車が待っていて再び移動。

途中でスーパーに立ち寄り、クッキーなどのお菓子を購入。

1時間ほど車で走ったところで、またボートへ。
今度は50分ほど川を進み、ロッジへ向かう。

車→ボート→車→ボートの大移動。
ようやく12時半、今回の拠点となるロッジ「Amazon Rhanna Lodge」に到着。

桟橋では可愛いワンちゃんが満面の笑みでお出迎え。

まず案内されたのは食堂。
なんとエアコン付き。
ジャングルの中とは思えない快適さに驚く。

ビュッフェランチをいただく。
鶏のから揚げ、ピラルクのクリームソース和え、サラダ、パスタ、フルーツ等。
栄養たっぷり。
食後に部屋の鍵を受け取る。
今回のツアーは、最初の2泊がサバイバル、1泊が先住民の家、最後の1泊がロッジ泊。
サバイバルと先住民宅滞在中は、不要な荷物を部屋に置いておいていいという。
パソコンを持って野営するのは正直不安だった。
これは本当に助かる。

廊下には蚊帳。
ロッジ全体がきちんと対策されていて、想像以上に快適。

私の部屋はエアコン付きツイン。
少しトイレ臭はするけれど、電気も電源もエアコンもある。
十分すぎる環境。

部屋にはバスルームもついている。
もちろんお湯は出ず、水シャワー。
それでも、シャワーを浴びられるだけで十分ありがたい環境だと思う。
サバイバルへの出発は16時。
それまではシャワーで汗を流し、荷物を整理しながら、これから始まる数日間に向けて静かに気持ちを整えて過ごした。

そして16時過ぎ。
いよいよ小舟に乗り込み、ジャングルへのサバイバルツアーへ出発。
ガイドの名はコンラド(Conrado)、通称コハル。
ガイド歴36年という大ベテランだ。
ガイアナ国境付近のジャングル出身のマクシ(Makushi)族。
11歳でマナウスへ移住し、12歳からガイドの仕事を始めたという。
ほぼ人生そのものがジャングルと共にある人。
今回の参加者は、私のほかにもう一人。
ドイツ人のアダン。
この3人で、サバイバル2泊、先住民の家1泊、合計3泊4日の旅に出る。
サバイバルを終えたあとはロッジに戻り1泊。
そのときは別のガイドとメンバーで、ロッジ周辺のジャングル観光が予定されている。
なかなか盛りだくさんのスケジュールだ。

今回の行程はこんな流れ。
①Amazon Rhanna Lodge→②サバイバルキャンプ1泊目→③サバイバルキャンプ2泊目→④先住民の家→ロッジへ戻る
移動はすべてボート。
車は一切使わない。
地図で見ると緑一色に見える場所も、実際には無数の小さな川と水路が張り巡らされている。
緑の土地に見える場所が、実は水だったりする。
Googleマップに載っている川は、ほんの一部。
本当のジャングルは、地図の外側に広がっているのだ。

出発早々、川のボート用ガソリンスタンドへ。
水上の給油所という不思議な光景。

併設の売店には日用品や食料が並び、地元の人たちの生活の場という雰囲気。

ここでアダンが、地元で人気のガラナソーダ「Baré」をご馳走してくれた。
りんご+ベリーのような甘さ。
コーラより軽く、ほんのりフルーティー。
暑いアマゾンで飲むと、体に染みわたる。

次に立ち寄ったのはコハルの友人宅。
庭のレモングラスを分けてもらう。

ジュマ川エリアへ入り、ぐんぐん奥へ。
やがてGoogleマップにも載っていないような細い水路へ。

両側から迫る木々。
水面に映る森。
川というより、森の中を滑っているような感覚。
枝の間を縫うように進み、ときどきエンジンをゆるめる。
聞こえるのは鳥の声と水を切る音だけ。
地図では見えない世界。
その奥行きに、ただただ圧倒される。

18時、今夜の野営地に到着。
人の気配のない密林。
バックパックを担ぎ、森へ入る。

今日の野営地には屋根がある。
明日は屋根なしらしい。
レベルアップ式サバイバル。
調理道具や荷物を屋根の下へまとめる。

まずは明るいうちにハンモック設営。
蚊帳付きで一安心。
マナウス周辺のジャングルは、マラリアなど蚊が媒介する病気のリスクが高い地域。
私はフォズ・ド・イグアス滞在中からマラリア薬を飲み始めていた。
エジプト・カイロで買ったビブラマイシン。
ずっとバックパックに入れて持ち歩いていた薬が、ついに出番。
コハルはこれまで10回以上マラリアに感染したことがあるという。
さらっと言うけれど、なかなかの数字だ。
話を聞くと少し怖くなる。
でも今の時期はそれほど危険ではないらしい。
一番リスクが高いのは、水位が下がる9月頃とのこと。

野営地のかまどには、ヤシの葉で作られた屋根。
簡素だけれど、雨風をしのげるだけでありがたい。

周囲から乾いた小枝を拾い集め、かまどに組んでいく。
火種はトイレットペーパーにオイルを染み込ませたもの。
ライターで着火すると、小さな炎がゆらりと立ち上がる。
やがて小枝に燃え移り、ぱちぱちと音を立て始める。
持参した水を鍋に注ぐ。
水は限られている。
無駄にはできない。

やがて米を入れ、静かに炊き上がるのを待つ。
電気もガスもない場所。
火と水だけでつくるごはん。

米が炊けたら、次はピラルク。
3人前とは思えない大きな切り身。
網いっぱいに広がり、はみ出しそうな存在感。
じわじわと脂が落ち、炭が音を立てる。
煙が立ちのぼり、こうばしい匂いが森に広がる。
森の夜に、魚を焼く匂い。
それだけで空腹が強まっていく。

焼き上がると、コハルがヤシの葉を一枚切り出して広げる。
それがそのまま“森の皿”。
焼きたてのピラルクを、どん、と葉の上へ。

今日の夕食は、ピラルク、ご飯、玉ねぎ・ピーマン・トマトのサラダ。
レモンをぎゅっと絞る。
シンプルなのに、驚くほど美味しい。
火で焼いただけの魚が、こんなにごちそうになるとは。

食後は焚き火で焼いたバナナ。
甘みが増して、とろりとしている。

食後はコハルからヘッドライトを借り、川へ。
食器をすすぎ、ついでに歯も磨く。
そのとき、ふと視線を感じた。
川から生えている木々のすき間、暗闇の奥に小さく光るもの。
カイマンの目だった。
じっと、こちらを見ている。
もし突然こちらに向かってきたらどうしよう。
そんな想像が頭をよぎり、少しビビる。
でも同時に、野生のカイマンをこの距離で見られたことがうれしい。
ここは本当にアマゾンなのだと実感する瞬間。

寝床は蚊帳付きのハンモック。
アマゾンジャングルの危険生物ベスト3は、ジャガー、アナコンダ、カイマンらしい。
そんな生き物がいる密林の中で、布一枚のハンモックに身を預けて眠るという状況。
なかなかの狂気である( ゚Д゚)
コハルは「大丈夫」と言い張るけれど、内心はそわそわ。
音がするたびに意識が向く。
21時、少し早めに就寝。
しかし、夜は静かではなかった。
猿の鳴き声が一晩中響きわたり、何度も目を覚ます。
コハルいわく、メスを取り合って喧嘩しているらしい。
虫の羽音、鳥の声、猿の叫び。
森の音が途切れることはない。
夜中の1時から5時頃は、寒さもあって正直ほとんど眠れなかった。
それでも、雨がまったく降らなかったのは幸運。
アマゾンで迎えた、緊張と興奮が入り混じった最初の夜だった。
2月3日 密林探検とモリ漁の夜。屋根なし野営2泊目

2日目の朝。
6時45分頃、コハルに起こされて朝食。
飲み物はレモングラスティー。
さわやかな香りが、寝起きの体にすっと染みわたった。

朝食はクラッカー。
バターやアーモンドのような甘いペーストを塗ってかじる。
シンプルだけれど、こういう環境では十分ありがたい。

7時半、荷物は野営地に置いたままジャングル探検へ出発。
ボートで10分ほど移動し、密林の中へ足を踏み入れる。

ふと地面を見ると、くっきりと残るジャガーの爪痕。
こんなに鮮明ということは、そう遠くないタイミングでここを通ったのかもしれない。
すぐ近くにいる可能性もあると思うと、さすがに少し怖い。

コハルは硬い茶色の種子を拾い上げ、ナタでぱかんと割る。

ヤシの実の中には白い繊維質。
その奥に、太い幼虫が潜んでいた。

ヤシの種子に産みつけられたゾウムシと思われる幼虫。
見た目のインパクトは強烈。
でもアマゾンでは昔から食べられてきた森のタンパク源だという。
コハルが「食え」と差し出す。
一瞬ためらう。
でも、ここまで来たら逃げたくない。
勇気を出して、口に放り込む。
意外にも味は穏やか。
外側はやわらかく、中はとろり。
とにかくクリーミー。
ナッツのような甘みと、ココナッツオイルのような脂のコクがじゅわっと広がる。
虫というより、「森の生クリーム」という表現の方がしっくりくる。

そのまま、さらに森の奥へ。
倒れた丸太の上を、平行棒のようにバランスを取りながら進む。
滑らないように慎重に、でも置いていかれないよう必死で後を追う。

道なき道を、迷いなく進んでいくコハル。
ナタで草木を刈りながら、奥へ奥へ。
さすが、ジャングルを知り尽くしている男。
自分ひとりでは絶対に歩けない場所。
コハルのおかげで、不安に飲み込まれることもなく、密林でのジャングルウォークを約2時間たっぷり堪能することができた。

ジャングルウォークの後は、水遊びの時間。
アマゾンの川にはピラニアやカイマンがいるけれど、コハルは「大丈夫だ」と言い張る。
ほんまかいな、と思いながらも勇気を出して飛び込む。
シャワーのない生活。
汗まみれの体は正直かなり気持ち悪い。
でも川に浸かると、一気に生き返る感覚がある。
水着は持っていないし、更衣スペースもない。
ブラトップとパンツ姿でそのまま泳ぐ。
コハルとアダンしかいないし、まぁいいかと割り切る(笑)
泳いだあとは自然乾燥。
少し気持ち悪いけれど、これもサバイバル。

野営地に戻って荷物を回収し、再びボートで移動。

途中、川に浮かぶ売店に立ち寄る。
水上の小さな商店。

ここで「Tuchaua」を飲んでみた。
Baréと同じくガラナを使った炭酸飲料。
甘いジュースが体に染みわたり、ちょっと生き返る。

12時半、昼食ポイントに到着。

まずはかまど作り。
乾いた枝を集め、太い木を土台に、細い枝を空気が通るように組んでいく。

今回は川の水でパスタを茹でる。
茶色い水がぐらぐらと沸く中、その辺に落ちていた枝でパスタをかき混ぜる。
ワイルドすぎる調理に思わず笑う。(‘A`)
細菌のことを考えると少し怖いけれど、A型肝炎の予防接種は受けている。
きっと大丈夫、と自分に言い聞かせる。
とはいえ、このあと少し下痢になったのだけど(笑)

湯切りはビニール袋。
小さな穴を開けて水を抜く。

卵、玉ねぎ、ピーマン、トマトを炒め、塩で味付け。

パスタと和えて完成。
ジャングルの中で食べるパスタは、驚くほど美味しかった。

ランチ後も、また川へ。
サバイバル経験値が少しずつ上がっていく感じ。
自分がどんどん野生化していくのが面白い。

その後は猿探し。
エンジンは使わず、木のオールで手漕ぎ。
静かに、できるだけ音を立てないように進む。
腕はなかなかしんどい。
でも水をかく音を抑え、猿を驚かせないように慎重に。
枝の揺れや葉のわずかな動きを目で追う。

結局、猿は現れなかった。
自然相手なので仕方ない。
代わりに弓矢体験。
森で昔から使われてきた狩りの道具。
実際に構えてみると、想像以上に難しい。

鏡のような水面には空と木々が映り込み、どこまでが本物でどこからが反射なのかわからなくなる。
ボートがすべるたび、世界がゆらりと揺れる。
アマゾンの静寂の中で、自然の一部になったような時間。

そのとき、向こうから小さな木の舟。
地元の男性が網猟をしていた。
ここでは観光ではなく、それが日常。
森は食卓につながっている。

17時、サバイバル2泊目の野営地に到着。
目の前にあるのは、ただの森。
屋根も、かまども、何もない。
今夜の拠点は、すべて一から自分たちで作る。
コハルが木を切り始める。
迷いのない手つきで、屋根作りが進んでいく。

木と木の間に別の木を差し込み、紐は使わない。
自然の重みと摩擦だけで骨組みを固定する。
その上にヤシの葉を一枚ずつ並べていく。
森の中にあるもので完結する、即席の建築。

力仕事なので、私は正直あまり役に立てなかったけれど、3人でなんとか屋根が完成。
この下にバックパックを置く予定。
とはいえ、雨が降ったらひとたまりもないほど心もとない。
どうか降りませんように。
空を見上げながら、そっと祈った。

明るいうちにハンモックも設営。
木の幹に紐をくくるのだが、結び方が難しい。
私もアダンもオロオロしていると、コハルが手早く結んでくれた。

そのあと、コハルはヤシの葉で何かを編み始める。
驚くほどの速さで、丁寧に織り込んでいく。

完成したのは、うちわ。

さらに、小さな笛も。
森の素材だけで、生活道具や遊び道具を作り出す。
人間の知恵のすごさを、目の前で見せられる。

18時、ヘッドライトを装着し、夜の漁へ出発。

夕暮れのジャングルは昼とは別世界。
ぶら下がる蔓が揺れ、空は青から灰色へと変わる。
日中の強い日差しは消え、森の奥からさまざまな音が湧き上がる。
鳥の声、遠くのざわめき、正体のわからない気配。
ジャングルは静かになるのではなく、むしろ目を覚ます。

真っ暗になり、いよいよ夜のジャングルでの漁が始まる。
エンジンを止め、ヘッドライトの明かりだけで水面を照らす。
闇は想像以上に濃い。
光が当たっている場所だけが世界になる。
水中にきらりと反射する魚の体。
その一瞬を逃さず、モリを突き入れる。

仕留めた魚を素早く引き寄せ、間髪入れずにナタで叩き落とす。
舟底に鈍い音が響き、魚が跳ねる。

舟底には今夜の成果。
泥水に濡れたアルミの舟で、魚がぴちぴちと跳ね回る。
私とアダンも真似してやってみるけれど、一匹も仕留められない。
モリ漁は想像以上に難しく、かなりのテクニックが必要らしい。

漁の最中、ライトに照らされて現れたのはカイマン。
体長はせいぜい1メートルほどの小さな個体。
それでも、赤く光る目には思わず息をのむ迫力がある。
アマゾンのカイマンは通常3メートルほどに成長し、中には6メートル近くになるものもいるという。
今目の前にいるのは“子ども”のサイズ。
それでも、静かに地面を這う姿には頂点捕食者の気配が十分に漂っている。

近くには赤ちゃんカイマンもいて、アダンが捕まえてきた。
手のひらに収まるほどの小さな体。
さっきの個体とは比べものにならないほど華奢で、目はまだあどけない。
それでも口を開けば、しっかりとワニ。
今はこんなに小さいけれど、この子もいずれ数メートルに成長するのだろう。
夜の漁は、最終的にコハルが5匹の魚を仕留め、なんとか今夜の夕食を確保。
野営地に戻るころには22時を過ぎていた。
眠気が限界。
魚は明日の朝食に回し、今日はそのまま寝ることにした。
初日に売店でクッキーを買っておいて正解だった。
クッキーで空腹をさっと満たして、ハンモックへ。
虫の鳴き声。
遠くから聞こえる、得体の知れない物音。
深くは眠れない。
浅い眠りを繰り返しながら、夜がゆっくりと過ぎていった。
2月4日 先住民の村へ。川の暮らしと文化にふれる一日

屋根のない場所で、ハンモックに揺られて迎えた朝。
目を開けると、頭上いっぱいに木々が広がっている。
空も葉も枝も、すべてが近い。
夜のあいだに雨が降っていたら、逃げ場はなかった。
けれど幸運なことに、一滴も落ちてこなかった。

朝7時。
私たちが眠っているあいだに、コハルはすでに起きて朝食の準備をしてくれていた。
いつのまにか簡易のかまどが組まれ、レモングラスティーが湯気を立てている。
森の中で立ちのぼる白い湯気は、なんだかほっとする光景だった。

昨夜仕留めた魚は、内臓を取り除き、塩で下味をつけて焼く。
あたり一面に香ばしい匂いが広がり、食欲が一気にわいてくる。

3種類ほどの川魚を、レモンを絞って食べ比べ。
どれも驚くほど美味しい。
昨夜コハルが苦労して獲ってくれた魚。
森の中でいただく、最高のごちそうだった。

8時半、野営地を出発。
今日は先住民の家へ向かう。
水草が密集している場所ではエンジンが使えない。
オールを握り、みんなで力を合わせて前進する。
水をかく音だけが、静かな朝の川に響く。

途中、根元が扇のように広がった巨大な熱帯樹へ立ち寄った。
板のように広がる根が、大地をつかむように幹を支えている。
コハルがナタの背で幹を軽く叩くと、低く響く音が森に広がった。
かつて先住民たちは、この響きを伝達手段として使っていたという。
森そのものが、通信装置だったのだ。

9時半、先住民の村に到着。
この村には、約60年前にペルー国境近くから移住してきた人々が暮らしているという。
スペイン語では「インディヘナ」と呼ばれ、歴史的には「インディオ」とも言われてきた人たちだ。
Googleマップを見ると、このエリアはグレーの線で囲われている。
理由をコハルに聞くと、「先住民族を守るための公的機関が関わる保護区域なんだ」と教えてくれた。

今日1泊お世話になる家へ。

家の主であるおじいさんは、60年前に最初にこの地へやってきた人だという。
かつて暮らしていた集落の人々を呼び寄せ、今では周辺に約500人が住んでいるらしい。
昔はこの村のチーフ。
今は息子さんがその役割を引き継いでいるそうだ。
コハルとは36年来の付き合い。
その信頼関係があるからこそ、私たちのような外国人も泊まらせてもらえる。

まずは水浴び場へ。
水瓶からバケツに水を汲んで行水するスタイル。
でも川の水ではなく水道水なのがありがたい。
トイレは水洗ではなく、バケツで流すタイプ。
それでも青空トイレ続きだった身には、文明社会に戻ってきたような安心感があった。

家は思っていたよりずっと広い。
冷蔵庫、ガスオーブン、洗濯機、テレビ。
家電が一通りそろっている。
さすが元チーフの家だ。

流しからはアマゾン川を一望。
こんな景色を眺めながら料理をする暮らし。
素敵だなと思う。

昼食はコハル特製の鶏肉とにんじんの煮込み。
やわらかく煮込まれ、味がしっかり染みていて美味しい。

食後は家の中にハンモックを吊るし、1時間ほど昼寝。
2泊の野宿で体はかなり疲れていた。
このひと休みで、だいぶ回復。

午後は再び川へ。
手漕ぎで進みながら、ナマケモノや猿を探す。

とはいえ、なかなか見つからない。
視力が尋常じゃなく良いコハルが、ようやく小さなナマケモノを見つけてくれた。
この写真のどこにいるか、わかるかな…?

写真を拡大してやっと分かるレベル。
丸まって寝ているナマケモノ。
背中なのかおしりなのか、正直よくわからない。
でも確かに、そこにいる。

小さな猿も発見。
すばしっこく動き回るので、写真におさめるのは至難の業。
遠目だったけれど、木から木へ飛び移る姿が見られてうれしかった。
その後、ピンクイルカのいる川でも泳ぐ。
餌付けはしていないので、遠目に一瞬水面に顔を出す姿を見るだけ。
写真には残せなかったけれど、アマゾン名物を目にできて満足。

泳いだあと、川の売店へ。

ここでハンモックを購入。
100レアル(=2,952円)。
このあとハンモックフェリーに乗る予定なので、ここで買っておいたほうが安心だと思った。
安いものは小さくて寝心地が悪いらしい。
特に男性は、少し高くても大きめを選んだほうがいいと思う。

夕方、村を散歩。
まずは小学校へ。
スクールバスならぬ、スクールボートがあるらしい。
しかも学校は朝・昼・夜の3部制。
夜に通う子もいると聞き、少し驚く。

学校の門の奥には川の景色。
とても美しい光景だった。

村には教会もある。
16世紀以降、この地域はスペインやポルトガルの支配を受け、宣教師によってキリスト教が広められた。
今も自然信仰とカトリックが共存しているという。

道に落ちていたトゥクマの実を拾う。
皮をむくと濃いオレンジ色の果肉。
中央には大きく硬い種。
食感はかなり繊維質で、かぼちゃやにんじんのような素朴な甘み。
正直すごく美味しいわけではない。
でも、その土地のものはとりあえず食べてみたい派。
ボリボリ食べる。

夕食はコハルの揚げパン。
生地を油に入れると、あっという間にふくらむ。

おかずは、いわしと玉ねぎ、トマトの炒め物。
アマゾンでいわし?と思うけれど、缶詰は保存がきくので売店でよく見かける。

塩気のあるいわしと、ほんのり甘い揚げパン。
意外と合う。
さらにクプアスジュース。
白くとろみがあり、ひと口目はかなり酸っぱい。
パッションフルーツのような爽やかさに、重たいコク。
少し発酵感もあって、不思議な味。
正直、私はあまり得意ではなかった。
でも、その土地でしか出会えない味に出会えたことはうれしい。
明日は早朝出発でロッジへ戻る。
ハードなサバイバルと先住民の家での滞在は、ひとまず今日で終わり。
コハルとアダンと過ごした時間は、驚きの連続だった。
ディズニーのジャングルクルーズのような、つくりものの冒険ではない。
ここにはレールも演出もない。
安全が約束された観光ではなく、自然の中にほんの少しお邪魔させてもらう時間。
3泊ともハンモックでの就寝だし、体力的にはかなり大変だった。
でもそれ以上に、生きている森を感じた3日間だった。
次回は、ピラニア釣りやサバイバル術の体験をお届けします。

2月2日〜2月4日:使ったお金
2月2日
・お菓子代:8レアル(=236円)
合計:236円
2月3日
・ジュース代(3個):20レアル(=590円)
合計:590円
2月4日
・ハンモック:100レアル(=2,952円)
合計:2,952円

