明け方の静かな川をボートで進み、ロッジへ戻るところから始まったアマゾン滞在後半。
博識ガイドと歩くジャングルウォークでは、苔にたまる水の使い方や火起こしに使えるヤシの繊維、ジャガー対策の知恵など、森で生き抜くためのサバイバル術に触れ、自然の奥深さをあらためて知ることになった。
午後はピラニア釣りに挑戦し、夜は真っ暗な川でカイマン探し。
間近で見る野生の迫力に胸が高鳴る一方で、観光と自然保護のあり方についても考えさせられる時間だった。
最終日は先住民の村を訪れ、キャッサバ加工やカメの保全活動の話を聞きながら、雨季のアマゾンを体感。
そしてマナウスへ戻ると、次なる冒険、ハンモックフェリー生活の準備が始まる。
ジャングルのリアルと、その先へ続く旅の節目を記録した2日間。
2月5日 ピラニア釣りと夜のカイマン探し、森のロッジ生活

まだ夜も明けきらない5時すぎ。
先住民の家を出発し、ボートでロッジへ戻る。
空はゆっくりと青みを帯び、川沿いに並ぶ家々が、少しずつ輪郭を取り戻していく。
水面をすべるように進むボートの上、眠気と静けさに包まれながらぼんやり景色を眺めていると、気づけばロッジに到着していた。

朝7時、ロッジの食堂へ。
目玉焼き、パンケーキ、フルーツ、そしてコーヒー。
ジャングルでの数日を経たあとの、整った朝食。
それだけで、なんだか贅沢に感じる。
パンケーキの甘さも、コーヒーの香りも、普段よりくっきりと体に染み込んでくる。
コハルとアダンは、このあとマナウスへ戻るという。
ふたりに別れを告げ、今日からお世話になるガイドと合流。
これからのスケジュールを確認する。

8時半、ジャングルウォークへ出発。
参加者はかなり多く、大きなボートに10人以上は乗っていたと思う。
日程は人それぞれ。
ロッジ滞在のみの人もいれば、今夜からサバイバルに向かう人もいる。
ただ、サバイバルを2泊するような物好きは、さすがにいないらしい(笑)。
シャワー事情などを考えると、ロッジ1泊・サバイバル1泊・先住民宅1泊の計3泊がスタンダードとのこと。
私の2泊サバイバルは、やはり少数派だったようだ。

この日のガイドは、ツアー会社で人気No.1だというエディ(Edeer)。
Googleマップの口コミでも彼の名前が頻繁に挙がっている。
実際に一緒に歩いてみると、その理由がよくわかる。
若く見えるけれど、ジャングルの知識は驚くほど豊富。
英語もわかりやすく、説明は丁寧で、しかもテンポがいい。
植物のこと、動物のこと、サバイバルの知恵。
ただ歩くだけでは見過ごしてしまう森の情報が、彼の言葉によって立体的に浮かび上がっていく。

木の幹にびっしりと張りつく苔。
エディがナイフでそっと削り取り、手のひらに乗せてくれた。
今日は晴れ続きで、触ると少し乾いている。
でも雨上がりには、たっぷり水を含むという。
ぎゅっと握れば、水がじわりとにじみ出るらしい。
水筒がなくても、水は飲める。
ただし、それを“知っている人”だけが使える。

見上げた先、高いヤシの木に黒紫色の房。
「あれがアサイーだよ」とエディ。
え、あのアサイー?( ゚Д゚)
カフェでスムージーやボウルになって出てくる、あの洒落た存在?(笑)
こんなに高い木の上で、房になって実るなんて知らなかった。

ずっしりと重たい丸い実を手渡される。
これがブラジリアンナッツの実。
ナッツというより、小さなココナッツのような硬い殻。

ナタで割ると、中にはぎっしりと種が詰まっている。
まるで木の中の宝箱。

さらに殻を削ると、ようやく白い実が現れる。
恐る恐るかじると、マカダミアナッツに似た、ほのかな甘みとコク。
思っていた以上に美味しい。

エディが大きなヤシの葉を刈り取る。
「ジャガーに遭遇したら、これで威嚇する」
半信半疑で見ていると、突然“トラ役”の参加者に向かって葉を激しく振り回し始めた。
バサッ、バサッと大きな音。
思わず後ずさる“トラ”。
一同大笑い。
でも、本当にジャガーに出会ったら笑ってはいられない。
森では人間は強者ではない。
音と動きで存在を大きく見せる。
それが生き延びる知恵。
ちなみにこの葉は、コハルがうちわを作ってくれた草と同じ種類。
涼む道具にも、身を守る道具にもなる。

サバイバル体験で屋根に使ったヤシの葉。
実は着火剤にもなる。
茎を薄く削る。
鰹節のように細く、ふわっと。

そこへ火を近づけると、一瞬で燃え上がる。
湿った印象の強いジャングルでも、火は起こせる。
屋根にもなり、火も生む。
ひとつの植物に、いくつもの役割がある。

別のヤシの葉で、即席の皿を作るエディ。
折り曲げ、枝で留めるだけ。
数秒で完成。
森の中では、持ち物がなくても困らないのかもしれない。
大満足のジャングルウォークだった。

12時半、ロッジで昼食。
新鮮なサラダが嬉しい。
午後のツアーまで、食堂でブログ執筆。
森の中でパソコンに向かう不思議な時間。

16時、午後のツアー出発。
向かった先はピラニア釣り。
長い木の棒の先に糸と針。
そこに生肉をつけて水中へ。
コツは水面をバシャバシャ叩き、小魚のように見せかけること。
理屈はわかる。
でも、なかなか釣れない。
本当にいるの(‘A`)?
と疑いながら、腕だけがじわじわ疲れていく。

しばらくすると、隣に座っていた男性の竿がぐっとしなった。
小さな水しぶきとともに、ついにピラニアが姿を現す。
思っていたより、ずっと小さい。
でも、口を開くと、歯はしっかりギザギザ。
サイズは控えめでも、肉食魚の顔をしている。
男性は怖くて、針を外せずに固まってしまった。
仕方なく、私が代わりに外してあげる。
意外と冷静な自分に、ちょっとだけ驚いた。
その後、彼はもう一匹釣り上げ、さらに別の客が一人だけ成功。
けれど、私を含めたその他大勢は、みんなボウズ。
クイクイ、と魚がエサをついばむ感触はあるのに、引き上げると、針には肉だけがぶら下がっている。
ピラニア釣り、思っていたよりずっと難しい。
しかも、釣ったピラニアはリリース。
写真を撮ったら、また川へ戻す。
だから余計に、「釣り上げること」そのものが勝負だ。
結局、誰も怖がって針を外そうとしないので、私はいつの間にか“ピラニア外し担当”になっていた。
まるでガイドの助手みたいに。
そしてその最中、事件は起きた。
アタカマ砂漠で買ったサングラスが、ぽちゃん、と川の中へ。
一瞬、あちゃーと思ったけれど、安物だし、まあいいか。(‘A`)
ジャングルに何かを持っていかれるのも、きっと通過儀礼みたいなもの。
マナウスかどこかで、また新しいサングラスを探そう。
釣りのあとは、川沿いにある小さな売店にボートをつける。
そしてそのまま、みんなで川へダイブ。
さっきまでピラニアを釣っていた川だというのに、水しぶきをあげて、楽しそうに泳いでいる。
私はというと、昨日までに散々川で泳いでいる。
今日はもういいや、と売店でガラナソーダを買って、濃い甘さの炭酸を飲みながら、その様子を眺めていた。
ピラニアがいる川(‘A`)
さっきまでギザギザの歯を見ていたのに、人間って、案外すぐに忘れる。
……ひとのことは言えないけれど(笑)

19時すぎ、夕食。
チーズたっぷりのグラタン風オーブン焼き。
とろりとしたホワイトソースとこんがりチーズ。
歩き回った体にしみる味。
ロッジ滞在中で一番美味しかった。

夕食後は、ボートに乗って夜のジャングルへ。
目的は、カイマン探し。
真っ暗な川を進む時間は、なんだか冒険みたいで楽しい。
ガイドはジュマ(Gilmar)さん。
エンジンを止めると、あたりは完全な闇。
ヘッドライトの光だけが、水面を細く照らしている。
すると、水辺に光る目がふたつ。
「あそこだ」
ジュマさんは、音を立てずにそっとボートから降りた。
背後から、ゆっくり、ゆっくりとカイマンに近づいていく。
息を止めたくなるほどの静けさ。
そして次の瞬間——一気に手を伸ばし、素手で捕まえた。
本当に一瞬だった。
さっきまで暗闇の中に浮かんでいた“目”が、もう彼の手の中にある。
あまりの速さに、驚きと同時に「プロってすごい」と思わずにはいられなかった。

ジュマさんに首元をしっかり押さえられ、身動きが取れないカイマン。
まだ小さめの個体だけれど、それでも十分に怖い。
暗闇の中で見ると、鱗の質感も、しなる尾も、すべてが野生そのもの。
さっきまで川の中にいた生き物が、いま目の前にいる。
その迫力に圧倒される一方で、動けなくされている姿を見るのは、少しつらかった。

口を大きく開かせられたカイマン。
ライトに照らされて、鋭い歯がはっきりと見える。
「ほら、こんな歯だよ」と説明してくれるけれど、無理やり開かれた口元を見ていると、複雑な気持ちになる。
やっぱり野生動物は、ボートからそっと見るだけでいいのかもしれない。
でも、それだとほんの一瞬しか見えない。
遠くからやって来た観光客にとっては、物足りないのもわかる。
難しい問題だと思った。
カイマンの捕獲は、どんなに小さな個体でも命がけ。
見ている側は興奮しているけれど、実際に水に入るガイドにとっては危険と隣り合わせだ。
だからこそ、ガイドの安全のためにも、こうした捕獲型のツアーは少しずつ形を変えていってもいいのかもしれない、と思った。
これはツアー会社が悪いというよりも、観光客がより刺激的な体験を求めるからこそ、それに応えざるをえないというマナウス観光業界の事情なのかもしれない。
もし何かが変わるとしたら、きっと観光客の意識から。
「近くで触れる」ことよりも、「自然のままを尊重する」ことのほうに価値を感じる人が増えたら、こうしたツアーも少しずつ形を変えていくのかもしれない。
ガイドが安心して案内できる形で、それでも十分にジャングルの魅力が伝わる方法が、これからもっと広がっていったらいいなと思う。
2月6日 先住民の村訪問とマナウス帰還、ハンモックフェリー準備

アマゾンジャングルツアー、最終日の朝だ。
今日も朝からしっかりめの朝食。
名残を惜しむように、いつも通りたくさんいただく。
ただ、窓の外はあいにくの雨。
本来は朝からジャングルウォークの予定だったけれど、この天気では足元は確実にぐちょぐちょ。
ぬかるみの中を歩く未来が、簡単に想像できる。
ガイドのジュマが状況を見て判断。
今日は予定を変更し、先住民の村を訪ねることになった。

朝8時半、ロッジを出発して、ボートですぐ近くにある先住民の村へ。
小雨が降っているけど、道は芝生か土道なので、ジャングルよりかは歩きやすい。

村のフルーツ畑を進んでいくと、木に吊るされた大きな枯れ葉が目にとまった。
ジュマいわく、「バジュラ」という木の葉っぱらしい。
とにかく大きい。
広げると、上半身がすっぽり隠れてしまいそうなサイズだ。
乾いて茶色くなっているのに、葉脈はくっきりと残っていて、まるで一枚の革のよう。

見上げると、バジュラの木は驚くほど高い。
まっすぐ空へ向かって伸び、その上に大きな葉を広げている。
さっき見たあの巨大な葉が、このはるか上で揺れていたのかと思うと、不思議な気持ちになる。

フルーツ畑を抜けると、キャッサバを加工するための小さな作業場があった。
村ではキャッサバという野菜が栽培されている。
見た目は大きな芋のような根菜で、この地域では主食のひとつだという。
ただし、生のままでは毒を含むため、そのままでは食べられない。
まずはこの道具で根をすりおろし、ピューレ状にする。

そのあとこの道具で圧縮し、水分を抜く。

さらに大きな釜で乾燥。
熱を加えることで毒を飛ばしていく。
最後は網でふるいにかけ、粒を整える。
こうしてようやく、安全に食べられる状態になる。
ちなみに、キャッサバのでんぷんを取り出したものがタピオカ。
あのモチモチの粒は、ここから生まれているのだと思うと少し感慨深い。

気づけば雨脚が強くなってきた。
先住民の家の軒先を借りて雨宿り。
止むどころか、むしろ勢いを増していくスコール。

軒下には大きな水槽。
中にはたくさんの小ガメが泳いでいる。
これは政府の保護プログラムの一環だという。

卵からかえったばかりの子ガメは、自然界では天敵に襲われやすく、生存率がとても低い。
そこで一定期間、人の手で育て、少し大きくなってから川へ放流する。
先住民が養育を担い、その対価として政府から報酬が支払われる仕組みだ。
単なる飼育ではなく、保全活動。
小さな甲羅を眺めながら、この子たちが無事に大きくなることを願う。
雨宿りのあいだ、ジュマに質問攻め。
ジャングルの危険動物といえばジャガーやカイマンが有名だけれど、実はアナコンダも相当危険らしい。
カイマンの最大個体が約6m。
それに対してアナコンダは、なんと13mにも達するという。
ヘビ、育ちすぎでは……(‘A`)?
その話を聞いて、エンカウントは全力で遠慮したいと心から思った。

1時間ほど待っても、スコールは弱まる気配なし。
これ以上は止みそうにないということで、雨の中ロッジへ戻ることになった。
すると、ロッジから屋根付きのボートが迎えに来てくれた。
私は運よくそのボートに乗せてもらえることに。
ただ、大多数の人は屋根のないボート。
強い雨に打たれながら川を進む姿を見ていると、自分だけ濡れずに済んだことに少し申し訳なさも感じる。

ロッジでの最後の食事。
毎食おかずを変えてくれるので、飽きることなく楽しめた。
コーヒーや紅茶、水が用意されているのもありがたい。
食後はそのままボートに乗り、マナウスへ戻る。

帰りも、行きと同じくボート→車→ボート→車の乗り継ぎ。
なかなかの大移動だ。
大雨のなかでの乗り換えは大変。
足元は水たまりだらけ、荷物も気を抜けない。
それでも、これがサバイバル中でなくて本当に良かった。
今は雨季。
雨はしつこく、長時間降り続くことも多い。
天気に恵まれていた数日間だったと、あらためて思う。
15時頃、ツアー会社のオフィスに帰還。
オーナーから「どうだった?」と聞かれ、もちろん即答で「楽しかった」と返す。
オーナーはにこにこ頷き、雨が激しいこともあって帰りのタクシーを呼んでくれた。

おかげでほとんど濡れずに、初日に泊まったホテルへ戻ることができた。
ひとまず一安心。
体はクタクタ。
ここでゆっくり休みたい気持ちもある。
でも明日からは、国境の街タバチンカまで約1週間、ハンモックフェリーで移動する旅が始まる。
ハンモックはツアー中に購入済み。
とはいえ、それ以外の必要な物をそろえなければならない。
少し面倒だけれど、買い出しへ。

まずは、ハンモックに取り付ける蚊帳探し。
寝具屋を何軒か回る。
ハンモックを売る店は多いのに、蚊帳はなかなか見つからない。
意外とレア商品。
ようやく「J A COMERCIO」という寝具店で発見。
ハンモック用蚊帳を45レアル(=1,364円)、取付ロープを10レアル(=303円)で購入。

この店にはかわいい看板猫がいる。
売り物のハンモックの上で、堂々とゴロゴロ。
すっかり自分の場所のような顔をしていて、その姿があまりに愛らしく、夢中で写真を撮ってしまった。

続いて食器屋へ。
お皿、スプーン、フォーク、ナイフ、コップを購入。
ハンモックフェリーは1日3食付きだけど、食器は自分で用意する必要がある。
汁物が多いと聞いているので、底が深めのお皿が安心。
タッパーも便利そうだ。
さらに日用品店で敷物を購入。
荷物を床に直置きするのは少し気が引けるし、ずっとハンモックの上で過ごすのも疲れそう。
床に座れるスペースを確保するための一枚だ。
薬局では虫除けスプレーなども調達。
移動中は蚊が少ないと聞いているけど、停泊中はやはり油断できない。
ちなみに後日談。
夕方以降、蚊や吸血系のハエの猛攻に遭い、足を刺されまくることになる。
スプレー、完全に必需品だった。(笑)

フェリーに持ち込む食料も購入。
船の食事はかなりローカル色が強いらしく、正直あまり期待していない。
それに次の目的地、ペルー・イキトスではアヤワスカのセレモニーに参加予定だ。
アヤワスカは、アマゾン先住民が儀式や治療のために用いてきた植物性の飲み物。
強い幻覚作用をもち、シャーマンの導きのもとで体験される伝統的な精神儀礼のひとつ。
セレモニーの数日前からは、肉やアルコール、刺激物を控える食事制限が推奨されている。
とはいえ、これから数日間はフェリー生活。
船の食事も出るし、完全にコントロールするのは難しい。
それでも少しでも整えたい。
そう思い、果物とオートミールを用意することにした。
リンゴとバナナは路上の果物売りから。
オートミールはスーパーで調達。
フェリーの食事と組み合わせながら、できる範囲で“アヤワスカ仕様”に寄せていく作戦。
……結果、この判断は大正解。
フェリーの食事にサラダはほとんどなく、フルーツもほんの一切れ程度。
あのとき果物を買っていなければ、あの船旅はなかなかきつかったと思う。
次回は、そんな超ローカルなハンモックフェリー生活について。
アマゾン川をゆっくり進む数日間のリアルを書いていこうと思う。
2月5日〜2月6日:使ったお金
2月5日
・チップ代:50レアル(=1,516円)
・ジュース:7レアル(=212円)
合計:1,728円
2月6日
・宿代(1泊分):106レアル(=3,214円)
・ハンモック用蚊帳:45レアル(=1,364円)
・ハンモック用取付ロープ:10レアル(=303円)
・食器類:16レアル(=485円)
・歯磨き粉:5.5レアル(=166円)
・敷物:13レアル(=394円)
・りんご:20レアル(=606円)
・スーパー買い物代(オートミール等):12レアル(=363円)
・虫除けスプレー:22レアル(=667円)
・バナナ:10レアル(=303円)
合計:7,865円

