【207】ペルー・イキトスでアヤワスカ体験、エゴ崩壊と内面の旅(2026.2.16〜2026.2.18)

ペルー
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アマゾンの奥地にある町、イキトス。

道路で外とつながっていないこの“陸の孤島”には、世界中からある特別な体験を求めて人が集まる。

それが、植物由来の神秘的な飲み物「アヤワスカ」を用いたセレモニーだ。

私もそのひとりとして、この地を訪れた。

到着初日は博物館を巡り、先住民の文化や歴史に触れる。

そして迎えた翌日、ジャングルの奥へと足を踏み入れ、本格的な儀式に参加することに。

嘔吐や恐怖、コントロールを失う感覚——想像をはるかに超える体験の連続だった。

それでも、その先には確かに“何か”があった。

この3日間で感じたことを、忘れないうちに書き留めておく。

2月16日 イキトス到着、博物館で知るアマゾンの歴史と先住民文化

イキトス港に到着

早朝5時45分、イキトス港(Puerto Ganzo Azul)に到着。

約17時間、蒸し暑くて窮屈な座席に座りっぱなし。

体はもうボロボロだった。

それでも、日の出の時間に着けたのはまだ救いだったと思う。

もしこれが真っ暗な深夜だったら、宿までの移動はきっと不安だったはずだ。

船の上から荷物が降ろされるのを待つ人々

船から次々と荷物が降ろされ、それを受け取った人から順に解散していく。

私の荷物は最後の方。

しばらくその場で待つ時間が続いた。

バイクタクシーで宿へ向かう

港から宿までは、配車アプリ「inDrive」でバイクタクシーを呼ぶ。

料金は8ソル(=365円)。

自分で交渉するより安くて、しかも安心感もある。

Hospedaje Neydita

まだ早朝。

ホテルの玄関を開けてもらえるか少し不安だったけど、チャイムを鳴らすとすぐにスタッフが出てきてくれた。

無事に中へ。

ただし予約は今夜から。

部屋の準備ができるまでは、ロビーで待たせてもらうことになった。

ロビーには簡易キッチンもあって、自炊もできそうな環境。

外に出る気力もなく、そのままパソコンを開いて作業していると──7時半頃、予定よりかなり早く部屋に案内してもらえた。

このタイミングは本当にありがたかった。

スーペリアダブルルーム

予約していたのはエコノミーダブルルーム。

でも、無料でスーペリアダブルルームにアップグレードしてくれた。

エコノミーよりも広くて、ぐっと快適な空間。

エアコンはないけれど、扇風機があるのでなんとかなる。

バスルーム付き

専用バスルーム付き。

ただし、ここでも水シャワー。

サンタ・ロサよりもイキトスの方が蒸し暑い分、まだ耐えられるレベル。

ブラジルからずっと水シャワー生活なので、正直もう体が慣れてきた感はある。

それでもやっぱり、お湯シャワーが恋しい。

このあたりでは、お湯が出るのは高めのホテルだけ。

予算を抑えると、どうしても水シャワーになる。

夜通しの過酷な船旅のあとで、体は完全に限界。

シャワーを浴びて、そのまま昼間からベッドへ。

気づけば爆睡していた。

Portales Café

15時頃に目が覚める。

昼食兼夕食をとりに、「Portales Café」へ。

スーパーの中にあるカフェで、エアコンが効いた快適な空間がありがたい。

ツナサラダの昼食

ツナサラダとハーブティーで29ソル(=1,325円)。

なかなかいい値段だけど、アヤワスカ前日。

食べられるのは、こういう軽いサラダくらい。

イキトスでは、こうしたサラダ系の料理は意外と高い。

というのも、この街は道路で外とつながっていない“陸の孤島”。

食材の多くは船か飛行機で運ばれてくるため、野菜や洋風の料理ほど値段が上がりやすいのだ。

食後は、そのまま博物館巡りへ。

アマゾン博物館

まず向かったのは、入場無料の「アマゾン博物館(Museo Amazónico)」。

館内には、昔のイキトスの街並みを写した写真や、アマゾン地域で出土した土器などが展示されている。

建物自体も見どころのひとつ。

ゴム景気の時代に建てられた歴史的建築で、その空気感がそのまま残っている。

1896年のイキトスの地図

19世紀後半、天然ゴムの輸出で大きく繁栄したイキトス。

館内には、1896年に作られた古い地図も展示されていた。

アマゾン川沿いに、碁盤の目のように広がる街並み。

当時すでに都市として整備されていたことが、はっきりとわかる。

1960年代の先住民の写真

こちらは、1960年代のベレン地区の写真。

中央には、羽飾りと草の衣装を身につけた先住民。

その周囲を、裸足の子どもたちが囲んでいる。

今では、こうした伝統衣装は観光客向けのショーやイベントで見ることが多い。

けれど、この写真に写っているのは演出ではない。

日常の風景として、そこにあった姿。

昔のアマゾンでは、こうした光景が街の中にも自然に溶け込んでいたのかもしれない。

その時代の空気が、写真の中にそのまま閉じ込められているようで──思わず足を止めて、しばらく見入ってしまった。

アマゾン先住民文化博物館

次に訪れたのは、すぐ近くにある「アマゾン先住民文化博物館(Indigenous Culture Museum Amazonicas)」。

こちらは入場料が10ソル(=457円)かかるものの、アマゾンに暮らす先住民の文化を知るには欠かせない施設だ。

ヒバロ族の「ツァンツァ(縮小首)」

特に興味を引かれたのが、ヒバロ族の「ツァンツァ(縮小首)」の展示。

ツァンツァとは、アマゾン上流に暮らす民族が、戦いで倒した敵の首を切り取り、特殊な方法で小さく縮めて作ったもの。

敵の魂を閉じ込めることで力や幸運を得られると信じられており、戦利品であると同時に、儀式的な意味も持っていたという。

展示されていた頭部はツァンツァを再現したもののようにも見えたが、本物なのかレプリカなのかについては特に説明がなかった。

真偽は分からない。

それでも、かなりリアルで、つい足を止めて見入ってしまう。

ちなみにヒバロ族(Jivaro)は、現在のペルー北部からエクアドル南部にかけて暮らす民族グループの総称で、その中でもシュアール族(Shuar)はツァンツァ文化で特に知られている。

このあと訪れるエクアドル・キトの博物館でも、ツァンツァをたくさん見ることになるので、そのときにもう少し詳しく触れたいと思う。

ワヤナ族やアパライ族の羽飾り

2階には、アマゾン各地の先住民族の文化を紹介する展示が並んでいた。

中でも目を引いたのが、大きな羽飾り。

色鮮やかな羽で作られた頭飾りで、儀式や祭礼のときに身につけるものだという。

パネルの説明によると、これはワヤナ族やアパライ族(Wayana-Aparai)に関する展示で、羽飾りのほかにも木製の儀式用具や装身具などが紹介されていた。

同じアマゾンの先住民でも、地域ごとに文化や装飾、神話までまったく違う。

展示を見ていると、アマゾンという世界の奥行きの深さを改めて感じる。

シピボ族の幾何学模様とアヤワスカ文化

シピポ族の衣装

そして印象的だったのが、シピボ族(Shipibo)の衣装や工芸品。

この民族はペルー東部、ウカヤリ川流域に暮らしており、独特の幾何学模様で知られている。

服や布に描かれた複雑な模様は、単なる装飾ではない。

精霊の世界や宇宙の構造を表しているとも言われている。

説明によると、神話の時代には、空・森・川・人間・動物のすべてが、このような模様のネットワークで覆われていたと考えられていたそうだ。

さらに、この模様はアヤワスカの儀式で見えるビジョンとも深く関係していると言われている。

シピボ族では、こうした模様を実際に布や工芸品として表現するのは主に女性たち。

アヤワスカで見た世界や精霊のイメージを、模様として描いているとも考えられている。

明日から自分もアヤワスカの儀式を体験する予定なので、その文化や背景を知るうえでも、とても興味深い展示だった。

明日、自分の目にも同じ世界が見えるのだろうか。

そんな事を考えながら、博物館を後にした。

2月17日 アヤワスカセレモニーへ、ジャングル奥地で迎えた衝撃の夜

マンゴーとクラッカーの朝食

イキトスで迎えた最初の朝。

マンゴーとクラッカーで、簡単に朝食を済ませる。

今日は、念願のアヤワスカセレモニーに参加する日。

アヤワスカとは何か

アヤワスカとは、南米に古くから伝わる植物由来の飲み物で、それを用いた儀式が「アヤワスカセレモニー」と呼ばれている。

シャーマンの導きのもとで行われ、内面と深く向き合う体験として、世界中から人が訪れる。

南米各地で体験できるけど、なかでも本場として知られているのがペルー。

なぜイキトスを選んだのか

イキトスやクスコ、プカルパなどがペルーでの代表的な拠点だ。

今回はその中でも、よりディープな環境を求めてイキトスを選択。

アマゾンの密林の中で、本格的なセレモニーに挑むことにした。

リトリート施設の選び方

イキトスには多くのリトリートセンターがあるけど、今回は初めてということもあり、かなり慎重に選んだ。

基準にしたのは、外国人への対応に慣れていること、そしてGoogleマップの口コミ数や評価。

いくつか比較した中で、最終的に「Awkipuma Healing Center」を選んだ。

アヤワスカは神秘的な体験として語られる一方で、過去には死亡事故の報告もあり、決してリスクがないわけではない。

だからこそ、価格の安さではなく、信頼できる施設かどうかを重視した。

セレモニー中は意識が朦朧とすることもある。

特に女性一人での参加となると、不安なく身を任せられる環境かどうかはかなり重要。

この施設とはWhatsAppで英語のやり取りができ、事前の質問にも丁寧に答えてくれた。

その対応の安心感も、決め手のひとつだった。

プランと料金について

アヤワスカは本来、1週間ほどかけて行うのが一般的らしい。

ただこの施設では、「1泊2日」「2泊3日」「3泊4日」の3つのプランから選べる。

当初は3泊4日を考えていたけど、「初めてなら2泊3日がおすすめ」とアドバイスを受け、そちらに変更。

人によって合う・合わないがあるため、まずは短めで様子を見るのが良いとのことだった。

また、アヤワスカはいつでも体験できるわけではなく、しっかりした施設では開催日が決まっている。

この施設では月に5回ほどで、事前予約が必須だった。

まずは2泊3日を体験し、もし合えばその後に追加で2泊3日や3泊4日を申し込むつもりでいた。

結果的に、最初から3泊4日にしなかったのは大正解だったのだけれど、それはまた後で詳しく書こうと思う。

料金は決して安くはない。

1泊2日は不明だけど、2泊3日で450ドル、3泊4日で600ドル。

なかなかの金額だ。

アヤワスカ体験は、意外と高額である。

今回は2泊3日プランのため、予約時にデポジットとして100ドルをPayPalで支払い。

手数料込みで108ドル(=17,290円)だった。

残りの350ドルは現地で現金払い。

支払いはソルかドルが選べたけど、レートを考えるとドルの方が有利だったため、今回はドルで用意することにした。

こうして350ドルを握りしめ、迎えの車を待つことになった。

バイクタクシーの送迎

10時〜10時半に迎えが来る予定。

しかし10時半を過ぎても来ない。

WhatsAppで連絡すると、ようやく11時前にバイクタクシーが到着した。

料金はセレモニー代に含まれている。

これに乗って港へ向かう。

港からタンスイヤク行きのボートに乗る

イキトス港(Puerto Ganzo Azul)から、タンスイヤク(Tamshiyacu)行きのボートに乗る。

料金は25ソル(=1,142円)。

これは別料金で各自支払い。

船内で、他のセレモニー参加者たちと合流。

さらに地元の人たちも乗り込み、満員になったところで出発する。

アマゾン川を1時間ほど南下すると、タンスイヤクに到着。

タンスイヤク港からバイタクに乗車

13時前、港に着くとマエストロが自ら出迎えてくれた。

短パンにタンクトップ、サンダル。

言われなければ、どこにでもいそうな普通のおっちゃん。(失礼)

マエストロとは、アヤワスカの儀式を取り仕切る熟練のシャーマン。

この場の“導き手”のような存在だ。

まずは何台かのバイクタクシーに分かれて乗り込む。

正直、どこに連れて行かれるのかは分からない。

村にあるとある民家

到着したのは、村の中にある一軒の民家。

ここで残金350ドルを支払う。

レストランへ案内された

荷物を家に置かせてもらい、マエストロの案内でレストランへ移動。

ここで全員そろって昼食をとる。

卵チャーハン、炒め野菜、フルーツジュースの昼食

メニューはアヤワスカ仕様。

卵チャーハン、炒め野菜、フルーツジュース。

ヘルシーな内容ながら、量はしっかりあって満腹になる。

焼きバナナも

デザートには焼きバナナ。

焼きたてで、甘くておいしい。

ボートでジャングルの密林地帯へ

食後はリトリートセンターのボートに乗り、再びアマゾン川へ。

途中から支流に入り、ジャングルの奥へと進んでいく。

周囲はどんどん深い緑に包まれていく。

とんでもない場所に来てしまったかもしれない。

そんな期待と不安が半分ずつ。

ボートで約1時間半の道のり。

ボートを降りてジャングルへ入る

16時頃、ようやくリトリートセンターに到着。

船を降り、そのままジャングルの中へ。

ここは完全にインターネット圏外。

デジタルデトックスには最適だけど、少しだけ心細さもある。

リトリートセンター到着

人里離れたジャングルの奥に、ぽつんと建つ簡素な小屋。

豪華さはない。

でもその分、いかにも本格的な雰囲気が漂っていて、むしろ好印象だった。

蚊帳付きシングルルームの個室

部屋はトタン板で仕切られた簡易的な個室。

ベッドには蚊帳があり、荷物を置く机もある。

窓の代わりに蚊帳が張り巡らされていて風通しは良い。

同時に、ある程度は蚊の侵入も防げる。

とはいえジャングルなので、完全ではない。

虫よけスプレーは必須。

電源はあったけど使えなかった

部屋に電源はあるものの、24時間使えるわけではなく、夜の限られた時間だけのようだった。

しかもなぜか私の部屋では使えず、トルコ人カップルの部屋で充電させてもらうことに。

部屋の照明

照明も同じく夜の数時間のみ使用可能。

こちらは問題なく使えたのでひと安心。

飲料水の補給所

宿舎の入口には飲料水の補給所があり、自由に水が飲める。

下に置かれているのはバケツ。

アヤワスカは激しく嘔吐することがあると聞いている。

今夜のセレモニーでこれを使うことになるのかと思うと、少し気が重くなる。(‘A`)

トイレやシャワールームは別棟

トイレとシャワーは別棟。

夜になると真っ暗な中を歩くことになるので、少し不便。

便座のないトイレ

トイレには便座がない。

多少の不便はあるけど、いつも清潔に保たれているのはありがたい。

水シャワー

シャワーはもちろん水。

空間は広めで、フックもいくつかあるので使い勝手は悪くない。

アヤワスカセレモニー会場

宿舎のすぐ横には、アヤワスカセレモニーの会場がある。

円形状の広い空間

儀式は、この円形の建物で行われる。

ヤシの葉で葺かれた大きな屋根の下、参加者が円になって座るシンプルな空間。

壁のない開放的な造りで、そのまま外にはアマゾンの森が広がっている。

とはいえ、周囲には蚊帳が張り巡らされているので、蚊の心配はない。

夜になると、ここでシャーマンの歌とともにセレモニーが始まるらしい。

儀式で使われる道具

テーブルの上には、儀式で使われる道具が並んでいる。

葉を束ねて作られた扇のようなものは、シャーマンが振って音を出すための道具。

歌(イカロ)と合わせて使い、空間を整えたり、参加者のエネルギーを浄化すると言われている。

隣には小さな太鼓も置かれていて、リズムを刻むために使われるようだ。

音と歌。

それらが、参加者をアヤワスカの体験へと導いていく。

テーブルには幾何学模様の布。

アヤワスカでは、こんな模様が見えるのだろうかと、少しだけ期待が膨らむ。

セレモニー前の説明と、多国籍メンバー

17時頃、参加者がここに集まり、マエストロの息子であるシャーマンによる事前説明が始まった。

今回の参加者は私を含めて7人。

トルコ出身でスイス在住のカップル、南アフリカ出身でペルー在住の男性、南アフリカ人女性、ペルー人男性、スペイン人男性、そして日本人の私。

まさに世界中から集まっている感じで、ちょっと不思議な空気感(笑)

ただ、言語はかなりバラバラ。

息子のシャーマンは簡単な英語のみで、基本はスペイン語。

ペルー人男性とスペイン人男性はスペイン語のみ。

トルコ出身スイス在住カップル、南アフリカ人女性、そして私は英語のみ。

南アフリカ出身でペルー在住の男性だけが、スペイン語と英語の両方を話せる。

結果的に、その彼が英語組の通訳をしてくれることになり、なんとか説明を理解することができた。

アヤワスカで起こるさまざまな反応

説明によると、アヤワスカでは恍惚感や解放感を覚えたり、美しいビジョンを見ることがあるという。

多くの人が期待しているのは、「ビジョン」と呼ばれる体験。

目を閉じていても、色や模様、風景がはっきりと浮かび上がり、まるで映像のように見えるらしい。

幾何学模様が延々と広がったり、ジャングルや動物、見たことのない世界が現れたり。

中には、自分の過去の記憶や感情と向き合うようなビジョンを見る人もいるという。

ただし、それは必ずしも美しいものばかりではない。

恐怖を伴う映像や、不安をかき立てる体験になることもある。

パラノイアのような状態に陥る人。

笑い出す人、泣き出す人。

正反対の体験が起こりうるのが、この儀式の特徴らしい。

パニックになる人もいるが、効果は数時間で必ず切れる。

だからどんな体験でも、パニックにならないように、ということだった。

ビジョンへの期待と不安、そして覚悟

内容は、事前に調べていた通り。

それでも、いざ密林の中でセレモニーを直前に控え、シャーマンから直接説明を受けると、決心が揺らぐほど不安になってくる。

周りを見ると、他の参加者たちもどこか少しだけ不安そうな表情。

それでも、多くの人がこのビジョンを求めてここに来る。

そして私も、そのひとり。

死ぬかもしれない。

それでも、見てみたい。

こんな辺境の密林まで来て、高額な費用を払い、身体的にも精神的にもリスクを背負う。

その覚悟は、きっと想像以上に重いものなのだと思う。

きっとみんな、それぞれに理由や背景を抱えてここに来ているのだろう。

そう感じた。

説明は1時間ほどで終了。

20時のセレモニー開始まで、各自自由時間となる。

19時以降は水を飲んではいけないと言われていたので、それまでにしっかり水分補給。

夕方から雨が降り始め、気温が一気に下がる。

汗まみれだったのでどうしてもシャワーを浴びたくて、水シャワーへ。

そのあとベッドで横になるも、寒くて眠れない。

そんなこんなで、あっという間にセレモニーの時間になった。

ジャングルの夜、儀式のはじまりへ

夜のセレモニー会場

会場に入ると、それぞれの席にマット、背もたれクッション、バケツ、トイレットペーパーが用意されている。

好きな場所に座るスタイルで、私はシャーマンのすぐ近くを選んだ。

寒さ対策に、部屋から毛布を持ってきて、さらにダウンジャケットも着込む。

完全防寒。

テーブルにはアヤワスカの入ったボトルとろうそくの灯り

シャーマンのテーブルにはろうそくの灯りがともり、アヤワスカの入ったボトルが置かれていた。

蔓と葉を長時間煮出して作られるその液体は、茶色というか黒というか、飲み物とは思えないような色をしている。

いよいよこれを飲むのか……と、喉がごくりと鳴った。

外では雨が強く降り続き、虫の鳴き声と雨音に包まれながら、全員が揃うのを待つ。

ブラジルのマナウスからずっとアマゾンを旅してきたけれど、私は一体なぜここにいるのだろう。

雨の匂い、ジャングルの匂い。

それらに包まれていると、自分がここにいることが、どこか現実じゃないような、不思議な感覚に包まれていく。

参加者が集まり、白装束のシャーマンとそのファミリーが入場してきた。

マエストロが儀式を取り仕切り、イカロを歌い始める。

息子や奥さんも楽器を演奏したり、一緒に歌ったりして、空間全体がゆっくりと整えられていく。

周りには男性や女性のスタッフも数人いて、アヤワスカをコップに注いだり、セレモニーの補助を行っている。

儀式中やその後には参加者のケアも必要になるため、こうして多くの人手が関わっているのだとわかる。

その中には、まだ幼い少女たちの姿もあった。

子どもがいる光景に、なぜか少しだけ安心する。

アヤワスカを飲む瞬間と体の変化の始まり

やがてイカロが響き始め、セレモニーが本格的にスタートした。

少し大きめのおちょこほどのグラスに、アヤワスカがたっぷりと注がれる。

「飲んで」と促されるが、一瞬、どうしても勇気が出ない。

思わずトイレに立ち、気持ちを落ち着ける。

アヤワスカは、非常に強い幻覚作用を持つと言われている。

マジックマッシュルームよりも、はるかに強烈だという人もいる。

ただ、その作用は決して“得体の知れないもの”ではなく、科学的にもある程度説明されている。

アヤワスカには「DMT(ジメチルトリプタミン)」という強い幻覚作用を持つ成分が含まれている。

本来この成分は体内で分解されてしまうが、アヤワスカにはその分解を抑える成分(MAOI)も一緒に含まれているため、DMTが脳まで届き、作用が現れる。

つまり、この体験はスピリチュアルな側面を持ちながらも、同時に科学的な反応として説明できるものでもある。

そう思えば、少しは怖くないはずだ。

そう自分に言い聞かせながら、えいっと意を決し、コップ一杯を飲み干した。

コーヒーのような苦味と、なんとも言えない独特の味が口いっぱいに広がる。

飲み込むと、口の中がピリピリと痺れるような感覚が残った。

正直まずい。

それでも、なんとか数回に分けて飲み干す。

寝ている間に終わってほしくない。

そう思い、背もたれには寄りかからず、じっと座ったまま“その時”を待った。

暗闇の中に、田舎タバコの火がポツポツと浮かび上がる。

シャーマンは煙を四方八方に吹きかけていく。

どうやら空間を浄化し、場を整えるための儀式の一部らしい。

しばらくすると、暗闇の向こうから咽せる声や嘔吐の音が聞こえてきた。

私より先に飲み終えた参加者たちに、ついに“その時”が訪れたようだ。

そして、次第に自分の体にも変化が現れる。

気持ちが悪くなり、ネバネバとした唾液が口の中に溜まっていく。

思わずバケツに唾液を吐き出す。

そしてついに、自分も嘔吐した。

不思議なことに、嘔吐物からはいわゆるゲロ特有の嫌な匂いはほとんど感じられない。

胃の中に食べ物は残っていなかったので、出てきたのはほとんどアヤワスカそのものだったのだと思う。

それよりも驚いたのは、自分の出している音だった。

本当にこれが自分の口から出ているのかと疑うくらい、低くて禍々しい音で、今までの嘔吐とはまったく違う。

ただ吐いているというより、何か別のものを外に出しているような、不思議な感覚。

もしかして、これは“邪気を吐いている”ということなのだろうか。

コントロールを失う恐怖と“エゴの崩壊”

だんだんと、視界がぐにゃりと歪んでいく。

目の前には、白い細い線のようなものが無数に現れ、うごめいている。

そして徐々に、“自分の体とこの世界の境目がなくなっていく”ような感覚に包まれていった。

自分の意思ではどうにもできない。

コントロール不能な状態に引きずり込まれていくことが、ただただ恐怖だった。

強制的に、アヤワスカの世界に引き込まれていく。

もう座っていられず、背もたれにもたれかかる。

自分と世界との境目が曖昧になると、手に力が入らない。

バケツを持つことすらできなくなっていた。

そしてついに、左側にゲロの入ったバケツを落としてしまう。

気づいたときには、左半身がゲロまみれになっていた。

ダウンジャケットも体も汚れ、顔や首元まで気持ち悪い。

それでも、動けない。

自分の身体の感覚が消え、私は精神だけの存在になった。

ここが死の世界なのか、宇宙空間なのか、それすらわからない。

まるで死の苦しみを味わっているかのような感覚が、脳を支配する。

今までの人生で経験したことのない苦しみだった。

このまま、もう元の世界に戻れないのではないか。

そんな恐怖に押し潰されそうになる。

私の初めてのアヤワスカは、死の擬似体験に近い深度での、“エゴの崩壊”だったのだと思う。

どうして好奇心で、こんなものに手を出してしまったのか。

この瞬間、「開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまった」と激しく後悔した。

それでも必死に、自分に言い聞かせる。

アヤワスカの効果は、科学的に説明できるものだ。

この状態は、永遠ではない。

数時間で必ず終わる。

ちゃんと元の世界に戻れる。

それでも、不安は消えない。

一度この感覚を知ってしまったら、今後もフラッシュバックするのではないか。

夜、眠っている間にまたこの状態に戻ってしまうのではないか。

もう、アヤワスカをする前の自分には戻れないのではないか。

精神に異常をきたしてしまったらどうしよう。

…これが「死」なのか。

ただただ、早く元の世界に戻りたくて必死だった。

そして、パチン、パチン!!と、静電気のような電流が体に走った。

音も、体に流れる電気も強すぎて、このまま自分の体が壊れてしまうのではないかと思うほどだった。

痙攣のような感覚もあり、とにかく怖い。

イカロに導かれて見えたビジョン

やがて、その死のような苦しみが少し和らいだとき、どこからかイカロが聞こえてきた。

暗闇の中で、唯一この世界とつながっているもの。

それがイカロだった。

その音を見失わないように、必死で意識を集中させる。

もしイカロがなかったら、私はこのままアヤワスカの世界で迷子になっていたかもしれない。

それくらい、イカロは確かな“導き”だった。

さらに苦しみが和らいでいくと、今度は無数の光の線が現れた。

はっきりとした幾何学模様ではないけれど、確かに“何か”が見えている。

そして次第に、さまざまなイメージ——ビジョンが流れ込んできた。

まるで「お前はこれが知りたかったんだろう」とでも言うように、アヤワスカが次々と“答え”を見せてくる。

生とは何か。

死とは何か。

人間とは、世界とは。

この世の根源のようなもの、森羅万象そのものを、直接見せられているような感覚だった。

ビジョンとともに、あの光の線の模様も浮かび上がる。

それはまるで、この世界の“文字”のようだった。

すべてが書き込まれている、巨大な地図のようなもの。

あの、シピボ族が描くアヤワスカの幾何学模様。

あれは、ただの模様ではなく、世界の構造を示す“地図”だったのかもしれない。

それからは、少しずつ穏やかな気持ちに戻っていった。

眠っているのか、意識を失っているのか。

ときどきイカロが聞こえなくなり、不安になる。

イカロを見失わないように、必死に意識を保つ。

やがて、少しずつこの世界に意識が戻ってきた。

自我が戻ってきたことに、心から安堵する。

それでも体は鉛のように重く、まったく動かない。

現実への帰還とその後

23時、シャーマンがセレモニー終了の合図をした。

他の参加者たちはすぐにそれぞれの部屋へ戻っていったが、私はその場から一歩も動けなかった。

しばらく放心状態のまま横になっていたけど、女性スタッフが二人、両肩を支えてくれ、なんとかトイレへ。

そのまま部屋まで連れて行ってもらった。

ゲロまみれの上着を脱がせてくれたり、靴を履かせてくれたり。

手厚く介抱してもらい、本当にありがたかった。

やはり、しっかりした施設で体験して正解だったと思う。

ただ、セレモニーが終わったあとも、体の苦しさはなかなか消えなかった。

夜中に何度も吐き、トイレで下痢もした。

トイレへ向かうときもフラフラで、靴を左右逆に履いてしまうほどだった。

夜中、外で吐いているとき、参加者の男性が背中をさすってくれた。

その優しさが、ただただ身にしみた。

初めてのアヤワスカで感じたこと

当初は3泊4日のプランを考えていて、他のセンターでの1週間プランも検討していた。

でも、最初は2泊3日がいいと勧められ、「えー?」と思いながらそれにした。

けれど今となっては、2泊3日どころか、1泊2日でもよかったと思う。

それほど一回目の体験は強烈だった。

私の初めてのアヤワスカは、「バッドだった」というより、“強すぎて、コントロールを失う恐怖が前面に出た体験”だった。

それでも、終盤に「アヤワスカがいろんなものを見せてくれた」と感じられたのは救いだと思う。

完全なバッドトリップではなかった。

むしろ、地獄を抜けて、その先のビジョンまで辿り着いた。

生とは何か。

死とは何か。

あまりにも大きすぎるテーマで、正気に戻った今となっては、あのビジョンが何だったのかはよくわからない。

でも、無理に意味を理解しなくてもいいのかもしれない。

あれは「理解するもの」というより、「通り抜けるもの」に近いのだと思う。

アヤワスカは、自分の心の拡大鏡だという。

自分の潜在意識の中を、虫眼鏡で覗き込んでいるような感覚。

生や死なんて、普段の自分はそこまで考えているつもりはないのに。

もしかしたら私は、人よりも“生”に執着しているのかもしれない。

“生きたい”という思いが、強い人間なのかもしれない。

そんなことを考えながら、1日目は終わった。

2月18日 回復と揺れる心、村訪問と2度目のセレモニーへの葛藤

食堂のある建物

アヤワスカリトリートセンターでの2日目の朝。

スタッフに朝食の準備ができたと起こされる。

けれど、一人で起き上がることも、歩くこともままならない状態。

男性スタッフに支えてもらいながら、なんとか朝食会場まで向かう。

昨夜激しく降っていた雨はすっかり止み、ジャングルにはやわらかい朝の光が差し込んでいた。

食堂のある建物は、どうやらシャーマンファミリーの住居も兼ねているようだ。

食堂

食堂に入ると、どうやら一番乗り。

ハーブティーのティーパックやお湯がすでに用意されていた。

バナナ、パパイヤ、オレンジ、パン、ハーブティーの朝食

朝食は、山盛りのバナナにパパイヤ、オレンジ。

パンもあったけれど、フルーツだけで十分お腹が満たされる。

まだ少し気持ち悪さが残っていて、こういうさっぱりした甘さがありがたい。

参加者たちの体験

食事をしながら、参加者同士で昨夜の体験をシェアする時間。

素晴らしい体験をした人もいれば、特に何も起こらなかったという人もいる。

本当に人それぞれ。

トルコ人の女性は、空を飛ぶ体験をしたらしい。

しかも極度のヘビ恐怖症にもかかわらず、美しいヘビのビジョンを見たという。

「ヘビを美しいと思ったのは初めて」と話していて、とても印象的だった。

一方で、トルコ人の男性はまったく逆。

ドンドンドンという音に包まれ、パラノイアのような状態に陥ったという。

同じカップルでも、ここまで正反対の体験になるのかと驚く。

南アフリカから来た女性は「ニュートラル。良くも悪くもない」とのこと。

1分ほど線の模様が見えただけで、「次はもっと深く体験したい」と話していた。

そして、少し様子の気になるスペイン人の男性。

昨夜はかなり高揚していて、夜中ずっと「ハロー」と言い続けていたため、他の参加者に注意されていた。

日中もどこか現実から少し浮いているような、不思議な雰囲気をまとっている。

話を聞くと、コカインの依存があり、この半年は体を癒やすためにペルー各地でアヤワスカを受けているという。

依存症の治療としてアヤワスカが使われることもあると聞いたことはある。

けれど同時に、別の形の依存につながる可能性もあるのではないかと、少し怖さも感じた。

自分の体験を話すと、「かなりヘビーだったね」とみんなに声をかけられる。

おそらくこの中では、自分が一番ディープな体験をしていたのだと思う。

この日は11時から、近くの村へ行く予定。

昨日の嘔吐で汚れた上着や服を洗い、体のベタつきも気になったのでシャワーを浴びる。

バタバタと準備を整え、ボートに乗り込んだ。

ボートで近くの村へ

ジャングルの中を、30分ほどボートで進む。

まさにリアルなジャングルクルーズ。

村に到着

近くの村(Caserio Santa Ana I Zona)に到着。

集落の中を歩く

集落の中を歩きながら、奥にある池を目指す。

カカオの実

途中、カカオの実を発見。

アマゾン流域はカカオの原産地でもあり、このあたりでも栽培されているのか、それとも自生しているのか、とにかく身近な存在のようだ。

村の奥にある池

村の奥にある池に到着。

子どもたちが水遊びをしていて、とてもにぎやか。

参加者たちも次々と水に入り、涼を楽しんでいる。

私はマナウスのジャングルですでにたくさん水遊びをしていたので、今回は眺めるだけにした。

洗濯をする女性たち

池では、洗濯をしている女性たちの姿も見られる。

この地域では、まだ洗濯機がそれほど普及していないのかもしれない。

シャーマンファミリーの歴史と生き方

池を眺めながら、シャーマンの息子にいくつか質問をしてみた。

この村の人々やシャーマンファミリーは、複数の民族が混ざり合っていて、200年ほど前から共存してきたという。

シャーマンの家系も代々続いており、その歴史は100年、200年と長く受け継がれているらしい。

「シャーマン家系の母親の母乳には、シャーマンになるための力が宿る」という考えもあるそうで、その乳を飲んだ時点で“素質”があるとされるという。

ただし、生まれながらの素質だけでは不十分で、子どもの頃からの修行があって初めて一人前になるのだそうだ。

この息子さんは現在46歳。

12歳から修行を始め、すでにシャーマン歴は34年。

父であるマエストロは79歳で、50年以上の経験を持つ大ベテラン。

村人の病を癒やしたり、祈祷や儀式を行い、そして今では世界中から訪れる人々のためにアヤワスカセレモニーを執り行っている。

生まれながらにして役割が定められている人生。

自由に生きてきた自分には、なかなか想像がつかない。

彼らはどんなことを考え、どんな価値観で生きているのだろう。

ジャングルの奥地で、家族とともに静かに暮らすシャーマンファミリー。

その中にある“幸せ”とは何なのか、ふと考えさせられた。

お土産売り場

最後は、村の入口にある土産売り場へ。

手作りのアクセサリーや雑貨が販売されている

敷物の上には、手作りのアクセサリーや雑貨が並ぶ。

ただ、価格はかなり観光地仕様。

なかなか手が出ない。

アヤワスカに来る外国人は比較的裕福な人が多いため、こうした価格設定になっているようだ。

アヤワスカ模様の幾何学柄のズボンが気に入り、値段交渉。

80〜200ソルと幅があったが、最終的に50ソル(=2,285円)まで値引きしてもらい購入。

あれだけ壮絶な体験をしたばかりなのに、すっかりこの模様を気に入ってしまっている自分がいる。

村の入口付近では、スマホがわずかに3Gの電波を拾う。

ほんの少しだけインターネットが使えた。

やはり丸一日ネットに繋がれないのは不便なので、こういう瞬間はありがたい。

ゆがいた野菜、豆、ゆで卵、ご飯、ジュースの昼食

14時頃、リトリートセンターへ戻る。

昼食は、ゆで野菜や豆、ゆで卵、ご飯、そしてジュース。

ほんのり塩味で、さっぱりとした味付け。

体にも優しく、食べやすい。

量もしっかりあり、今回も満腹に。

夕食はないため、食事は朝と昼の2回のみ。

ただこの日、朝からずっと、南アフリカの女性に手を握ってもらいたいと思っていた。

彼女はいつも優しい言葉をかけてくれて、一緒にいると不思議と安心できる。

勇気を出して「手を握ってもいい?」と聞くと、やさしく「いいよ」と答えてくれた。

その手はあたたかくて、人の温もりに触れた瞬間、なぜか涙がこぼれてきた。

昨夜の“死のような体験”から、心はずっと張り詰めたままだったのかもしれない。

南アフリカの女性やトルコ人の男性も、やはり今夜のセレモニーに対して少なからず恐怖を感じているようだった。

同じように不安を抱えている人がいることに、少しだけ救われる。

リトリートセンターの犬たち

リトリートセンターには、何匹もの犬が放し飼いにされている。

少し怖さはあるけれど、遠くから見るとどこかのんびりしていて、かわいらしい。

食後はシャワーを浴びたり、洗濯をしたり、昼寝をしたりして、夜のセレモニーに備える。

2回目のセレモニーへの葛藤

ただ実は、朝からずっと迷っていた。

今夜、2回目のセレモニーを受けるかどうか。

受けなくても返金はない。

でもそれ以上に、昨日の体験があまりにも強烈で、もしあの状態がまた続いたら、自分は耐えられるのかという不安が大きかった。

アヤワスカは回数を重ねればいいというものでもないし、2回目がまったく違う体験になる可能性もあれば、同じような体験になる可能性もある。

悩んだ末に出した結論は、「量を減らして飲む」ということだった。

昨夜の3分の2の量にする。

トルコ人男性は、今夜は1cmくらい?の少量のアヤワスカを飲むと言っていた。

ただ、量を減らしたからといって、作用が弱くなるとは限らない。

体質によっては、少ない量でも強く効いてしまうこともあると聞いていた。

それでも——。

昨夜、「もう二度と飲まない」と思ったはずなのに、結局は自分の好奇心には勝てなかった。

どうしても、アヤワスカによって引き起こされる、素敵な体験をしてみたかったのだ。

2回目のセレモニーと、抗い続けた夜

2回目のアヤワスカへ…

夜8時、2回目のアヤワスカセレモニーが始まった。

昨夜とは打って変わって、今夜は晴れ。

ジャングルに響く虫の声を聞きながら、アヤワスカを飲み干す。

しばらくすると、昨夜と同じようにネバついた唾液が出始め、やがて嘔吐。

視界がぐにゃりと歪み、再びあの感覚が押し寄せてくる。

どうやら私は、体質的にアヤワスカが効きすぎるタイプなのかもしれない。

またしても、死の疑似体験——エゴの崩壊へと引きずり込まれていく。

ただ今回は、量を減らしたせいか、完全にコントロールを失うところまではいかなかった。

なんとか踏ん張っている。

けれど、この“踏ん張る”という行為が、とてつもなくしんどい。

体を揺らしたり、目を見開いたり、意識を保つために全神経を張り巡らせる。

少しでも気を抜けば、すぐに飲み込まれてしまいそうだった。

今夜は、イカロも途切れることなくずっと聞こえていた。

3時間ものあいだ、シャーマンたちは歌い続け、私たちを導いてくれていたのだ。

そのイカロに意識を集中させ、なんとか自我を保つ。

本当は、すべてを手放してしまえばよかったのかもしれない。

そうすれば、昨日のようにビジョンの世界へと深く入っていけたのかもしれない。

でも、どうしてもそれができなかった。

再び、パチン、パチン!と静電気のような電流が体を走る。

あまりにも強くて、ただ恐怖しかなかった。

なんでまた飲んでしまったんだろう——そんな後悔がよぎる。

その後は、無数の光の線——幾何学模様が現れては、意識が飛びそうになるのを繰り返した。

23時、セレモニー終了の合図。

しかし昨夜と違い、私はまだ完全にこの世界に戻ってきていなかった。

スタッフが顔を覗き込み、声をかけてくれるが、体はまったく動かない。

意識も、こちらの世界とあちらの世界を行き来しているような状態だった。

おそらく、3時間ずっと抗い続けていたせいで、作用が抜けるのに時間がかかっていたのだと思う。

スタッフたちは私を部屋まで運ぶことを断念し、一人の男性がその場で付き添ってくれることになった。

長い夜の果てに、ようやくこの世界に戻った朝

結局、完全に意識が戻ったのは深夜1時頃。

それでも体は思うように動かず、横になったまま動けない。

隣では男性スタッフが板の上で眠っている。

自分も薄いマットの上で寝ているだけなので、体は痛い。

早くベッドに行きたいのに、それすらできない。

ときどき吐きながら、浅い眠りを繰り返す。

夜明け前の4時頃、ようやく体が動くようになった。

立ち上がるのにも時間がかかり、もたもたしていると、男性スタッフが目を覚まして気づいてくれた。

抱えられるようにしてトイレへ行き、そのまま部屋へ戻ることができた。

こんなにも長いあいだ、ずっとそばにいてくれたのかと思うと、ありがたさと申し訳なさでいっぱいになる。

昨夜よりも、なぜか今夜のほうが身体的なしんどさは大きかった。

アヤワスカに抗い続けた、その代償なのかもしれない。

夜が白み始めたころ、ようやくベッドにたどり着き、私は深い眠りに落ちた。

2回のアヤワスカ体験を終えて、見えたもの

こうして、私のアヤワスカ体験は終わった。

結局、空を飛んだり、幽体離脱のような臨死体験をしたり、美しいビジョンに包まれるような、いわゆる“理想的な体験”はできなかった。

幾何学模様やビジョンを少し見ることはできたけれど、それ以上に、苦しさや恐怖のほうが強く残る体験だった。

それでも、最終的には、アヤワスカを経験できてよかったと思っている。

私はきっと、根っからの「未知を見たい人間」なのだと思う。

自分の知らない世界を覗いてみたい。

それは、世界各地の秘境も、そこに暮らす人々の生活も、そして自分自身の内面も。

これまで外の世界を旅してきたけれど、今回のアヤワスカでは、自分の内側を覗き込むような体験をした。

そして、この体験はそれだけで終わるものではなく、その後に「インテグレーション(統合)」と呼ばれる、体験を日常に落とし込むプロセスが大切だと言われている。

あの体験は何だったのか。

アヤワスカが私に何を見せようとしたのか。

それを、これからの自分の人生にどう繋げていくのか。

すぐに答えが出るものではないけれど、時間をかけてゆっくり向き合っていきたいと思う。

ひとつ確かに感じたのは、私は思っていた以上に“生”に執着しているということだった。

そして、あの苦しみの中で、私を愛してくれる人、大切に思ってくれている人たちの存在のありがたさを強く感じた。

ありきたりなことかもしれない。

でも、普段はあまり意識することのない、そんな当たり前の大切さを、アヤワスカは私に気づかせてくれたのだと思う。

2月16日〜2月18日:使ったお金

2月16日

・バイクタクシー代(港→宿):8ソル(=365円)
・宿代(1泊分):42ソル(=1,919円)
・昼食代(ツナサラダ等):29ソル(=1,325円)
・博物館入場料:10ソル(=457円)
・水:5ソル(=228円)
・楽天1GBチャージ:500円

合計:4,794円

2月17日

・ボート代(イキトス→タンスイヤク):25ソル(=1,142円)
・アヤワスカ一時金:108ドル(=17,290円) ※うち8ドルは手数料
・アヤワスカ残金:350ドル(=55,125円)

合計:73,557円

2月18日

・ズボン代:50ソル(=2,285円)

合計:2,285円