エジプト・シナイ半島にある海辺の町、ダハブ。
美しいサンゴ礁と素朴なローカル食堂、そして自由気ままに歩き回る猫と犬たち。
気づけばここで“沈没生活”に突入していた。
午前は宿でブログを書き、午後はぷかぷかと海に浮かび、夜はシーフードを食べながら猫と攻防戦。
特別なイベントがあるわけでもないのに、毎日がゆるやかに満ちていく。
今回はそんなダハブ後半5日間の「沈没モード」を、レストラン情報や猫とのエピソードを交えながらゆるっと振り返ってみた。
ダハブで過ごす、ひとつのゆるいかたちとして楽しんでもらえたら。
5月8日 ライトハウスリーフでぷかぷか初泳ぎとごろ寝タイム

この日は午後から、定番スポットのライトハウスリーフ(Lighthouse Reef)でシュノーケル。
町の中心から歩いてすぐアクセスできるうえ、岸からわずか5m泳げばサンゴ礁が広がっているので、初心者にも安心。
浅瀬にはカラフルな小魚が群れ、少し沖へ出ればダイナミックなリーフが現れる。
地元の子どもたちが海に飛び込んで遊ぶ姿も、どこかのんびりしていて、こちらの気分まで緩んでくる。

ランチは、ライトハウスから少し歩いた場所にある「Yalla Bar Dahab」へ。
海沿いのテラス席でくつろぎたくて、少し離れてはいたけれどここを選んだ。
監視カメラがあり、店員も常に目を配ってくれているので、荷物を置いて海に入るのも比較的安心。
ただし、貴重品だけは手元管理がベター。

フルーツサラダは、名前の通り果物がたっぷりで甘くて美味しかった。
ただしお値段は390ポンド(=1,146円)とちょっと強気設定。
海沿いの外国人向けレストランなので、これも“チル代”として割り切るしかない。

食後はクッションを枕に、ソファでごろ寝。
波の音を聞きながらぼんやり海を眺める、そんな時間が何よりの贅沢。
同じく一人旅中のエジプト人女性と相席になり、少しおしゃべりしながら、まどろみの午後を共に過ごした。

夜はローカルの人気店「King Chicken」へ。

グリルチキンのセットを頼むと、チキンに加えてご飯、パン、小鉢のおかずが4品もついてきてボリューム満点。
これで150ポンド(=440円)という安さ。
やっぱりローカル飯は最高。
5月9日 注射にびびってぐったり寝込む金曜日
この日は狂犬病ブースター接種の2回目。
注射は苦手だし、また病院か…と気が重かったけれど、午後、覚悟を決めて向かう。

病院近くのモスクでは、ちょうどお祈りの時間だったようで、たくさんの人が集まっていた。
金曜日はムスリムにとっての休日。
病院が開いているのか不安になりつつ、そっと入口をくぐる。

中はひっそりとしていて、誰もいない。
「やっぱり今日は休診かな…」と思ったが、受付のスタッフに接種スケジュールの紙を見せると、あっさり受付完了。
ナースが冷蔵庫からワクチンを取り出し、注射器に黄緑色の液体を吸い込むと、無言でブスッ。
あっという間に接種は終了した。
休日にも対応してくれるとは、ありがたい限り。

宿の隣のジュース屋でスイカスムージーとカットフルーツを買って、軽めの昼食。
病院に行く、注射を打つ──それだけで思っていた以上に疲れたようで、午後はベッドでぐっすり。

夕方、ふと目を覚ますと、空は夕焼け色に染まりはじめていた。
宿を出て、すぐ近くのバス会社のチケットカウンターへ。
広い駐車場の向こうには、ゴツゴツとした岩山が連なっていて、その稜線に太陽がゆっくり沈んでいく。
砂漠の一角にある、静かな夕暮れの風景だった。

もともとは10日にダハブを離れるつもりだったけれど、あまりにも居心地がよくて、もう少しだけ延泊することにした。
ただ、このままだと気づけば際限なく居座ってしまいそうだったので、自分に区切りをつけるためにも、先にカイロ行きのチケットを買っておくことに。
Go Busのチケットオフィスで、13日朝10時発・カイロ行きのチケットを購入(575ポンド=1,689円)。
それから宿に戻り、「あと3泊したい」と伝えると、1泊600ポンド(=1,754円)に値下げしてくれた。

ダハブの夕暮れ時。
空は青からオレンジへ、オレンジから濃い群青へと、ゆっくりと色を変えていく。
穏やかな海にはカヤックが浮かび、その上には真っ白な月がぽっかりと浮かんでいた。
空と海の境目がなくなっていくような、不思議な景色。

夕食は、Nemo Dahabへ。
店先にいた呼び込みのお兄さんは、カメラを向けるとすかさず決めポーズ。
海外あるあるの「俺を撮れ」ムーブ、ここでも健在(笑)。

頼んだシーフードパスタには、大きなエビがゴロゴロ入っていて満足度高し。
のんびりした一日の終わりにぴったりの一皿だった。
5月10日 イールガーデンで再会ランチとにょろにょろの庭

この日は、ダハブで「一番安く食べられる」と評判のローカル食堂「Yum Yum」へ。

ファラフェルサンドはたったの15ポンド(=43円)。
一緒に買ったコーラは30ポンド(=87円)で、なんとコーラがファラフェルの倍の値段という逆転現象。
安くて美味い、まさにバックパッカー御用達の店だった。

今日はシュノーケリングを無料で楽しむべく、防水ケースにスマホと少額のお金、水、日焼け止め、帽子、サングラスだけを持って出発。
目指すのは、Lighthouse向かいにある日陰つきの砂浜。
ちょうど歩行橋が屋根のようになっていて、休憩にちょうどいい。
高いお金を払ってレストランに居座る気にはなれない!というバジェット派にぴったりな場所。
とはいえ、レストランと違って誰も見張ってくれないので、荷物の管理は自己責任。
貴重品を浜に置いて海に入るのは避けた方がよさそう。

昨日も来たので、サンゴ礁の場所はばっちり把握済み。
今日も狙いのスポットに直行して、気持ちよく泳いだ。
そのあと、さらに北へ5分ほど歩いたところにある「イールガーデン(Eel Garden)」へも足を伸ばすことに。

観光客が集中するライトハウスリーフとは違い、イールガーデンへと向かう道は静かで人影も少ない。

イールガーデンは、その名の通り「ウナギの庭」。
白砂の海底から、ガーデンイールたちがびっしりと顔を出す幻想的な光景が広がる。
水の透明度も高く、サンゴ礁も美しい。
流れがある日もあるので、泳ぎに不安がある人はライフジャケットの着用を。

View Restaurant前の海からまっすぐ20〜30メートルほど泳ぎ、サンゴ礁に沿って左へ少しカーブした先──そこがガーデンイールたちの棲むエリア。
遠目にはただの砂地にしか見えないが、目を凝らすと、にょろにょろと無数の影が揺れている。
まるで砂の庭に命が宿ったような、静かで不思議な光景。

View Restaurantの前を歩いていると、アカバからダハブまで一緒に国境を越えたハンガリー人女性と偶然再会。
彼女もまたイールガーデンにシュノーケルをしに来たようで、再会を喜び合い、自然と一緒に食事をとることになった。

頼んだのはフルーツサラダとミントティー。
お会計は205ポンド(=602円)で、ライトハウス周辺のレストランより良心的。
観光客も少なく、値段も高すぎず、イールガーデンは穴場かもしれない。
ただ、サンゴ礁までは少し泳がないといけないので、泳げない人には不向きかも。

帰り道、Lighthouse前の歩行橋にあるハンモックでのんびり。
夕方にはちょうど影ができて、寝転ぶのにぴったりの時間帯。
無料なのが嬉しい。
シャワーを浴びて、夕食に出かける頃には、あたりはすっかり暗くなっていた。

夜のダハブは、風も波もなく、月だけが静かに海を照らしていた。
その光は透き通った海の中にまで届き、浅瀬の白い砂を青白く浮かび上がらせる。
岸から見ていても、水の透明度がはっきりわかるほど。

この日の夕食は「Green Vally Restaurant」へ。

海と夜景を眺めながらいただいたのは、海老入りモロヘイヤスープ。

エジプト定番のモロヘイヤスープに、ぷりっとした海老が加わって、磯の香りと緑のとろみが絶妙に混ざり合う。
にんにくの風味がほんのり香り、地味な見た目に反して、身体に染み入るような優しい味わいだった。
5月11日 猫とバズーカと魚のグリルの攻防戦

この日はイールガーデンのシュノーケリングを無料で楽しむべく、View Restaurantのすぐ横にある砂浜へ。

日陰を見つけて腰を下ろし、Yum Yumでテイクアウトしたファラフェルをつまみながら、簡単な昼ごはん。

レジャーシートがあればもっと快適だけど、なくても十分楽しめる。
防水ケースにスマホと少額の現金だけを入れて、水や日焼け止めは砂浜に置いたまま海へ。
この日もイールガーデンとライトハウスリーフ、ふたつのスポットを泳いでまわった。
荷物は自己責任なので、貴重品は置かない方がいい。

ダハブの街には、犬と猫がとにかく多い。
時折、首輪をつけた犬も見かけるが、日本では考えられないほどのんびりと放し飼いされている。


私が泊まっている宿にも、何匹もの猫が住み着いている。
部屋のドアを開けた瞬間に、スルリと中へ入り込もうとしてくるので、毎回必死で追い出す。
かわいいけど、食べ物への執念がすごすぎて、初日からテラス席で食べるのをあきらめた。
今ではすっかり、部屋にこもってこそこそ食べるスタイルが定着している。

この数日、いろんなシーフードレストランに行ってみたけど、やっぱり初日に食べた「Shark Restaurant」が一番おいしかった。
少し値段は張るけど、その分だけの価値はある。
この日の夕食は、Shark Restaurantで魚のグリルを注文することに。

呼び込みのおじさんが「小さめの魚でいいなら500ポンド(=1,461円)にまけてあげるよ!」と笑顔でディスカウントしてくれた。
たしかに小ぶりではあったけれど、私にとっては十分なボリューム。
しかも、焼き立てのパンが食べ放題で、フムスなどの付け合わせもついてくる。
パンがとにかく美味しくて、癖になりそうな味。
でもその香りに誘われてか、次々と猫がやってきては、じりじりとテーブルに近づいてくる。
困っている私に、店員さんが「バズーカ!」と言って水の入ったスプレーを手渡してきた。
猫が近づいてきたら、これで撃退するのだという。
一発放つと、猫は驚いて逃げていく。
効果は絶大。
何度かスプレーを使っていると、「この席の人間は魚をくれないらしい」と猫たちも悟ったのか、やがて誰も近づいてこなくなった。

宿への帰り道、あちこちに犬たちが寝転がっていた。
ときどき吠える犬もいるけど、ダハブの犬たちは基本的に穏やかで、のんびりとした空気が流れている。

宿の横にあるジューススタンドで、メロンスムージーを注文。
60ポンド(=176円)。
食後のデザートがわりに、ひんやりと甘くて、ちょうどよかった。
5月12日 カルカデーでとろけて海にさよならする日

ダハブ最終日。海で泳げるのも今日が最後。
まずはView Restaurantでフルーツサラダの朝食をとってから、今日も思いきりシュノーケリングを楽しんだ。

シュノーケルのあとは、席をビーチベッドへ移してひと休み。
注文したのは、エジプト名物の「カルカデー(ハイビスカスティー)」。
しっかり甘くて冷たいこの飲みものは、もはやお茶というよりジュース。
火照った体にすーっと染みわたっていく感覚が心地いい。

そのまま風に吹かれながら横になると、波の音に包まれて、いつの間にかうとうとしていた。
この日も、ライトハウスリーフとイールガーデンをはしご。
これでしばらく海とはお別れなので、美しいサンゴ礁の光景をしっかり目に焼きつけた。

夜は、ダハブで一番のお気に入り「Shark Restaurant」へ。
顔を覚えてくれていた店員さんが、にこやかに迎えてくれた。

締めくくりの一皿は、シーフードスープ。
具だくさんで、魚介の旨味がぎゅっと詰まった一杯だった。
最後の最後まで、海の味を堪能。
5月8日〜12日:使ったお金
5月8日
・昼食代(フルーツサラダ等):390ポンド(=1,146円)
・夕食代(チキン等):150ポンド(=440円)
・洗濯洗剤:15ポンド(=44円)
合計:1,630円
5月9日
・昼食代(カットフルーツ等):110ポンド(=323円)
・バス代(ダハブ→カイロ):575ポンド(=1,689円)
・夕食代(パスタ等):350ポンド(=1,028円)
合計:3,040円
5月10日
・昼食代(ファラフェル等):45ポンド(=132円)
・宿代(3泊分):1,800ポンド(=5,290円)
・軽食代(フルーツサラダ等):205ポンド(=602円)
・夕食代(スープ等):340ポンド(=999円)
合計:7,023円
5月11日
・昼食代(ファラフェル):30ポンド(=88円)
・夕食代(魚グリル等):525ポンド(=1,543円)
・日焼け止め(50g×2個セット):350ポンド(=1,028円)
・メロンジュース:60ポンド(=176円)
合計:2,835円
5月12日
・昼食代(フルーツサラダ等):215ポンド(=631円)
・夕食代(スープ等):375ポンド(=1,102円)
合計:1,733円