朝はゆっくり朝食をとってから、宿の目の前にあるエジプト考古学博物館へ向かった。
ツタンカーメンの黄金マスク、第二棺、第三棺をはじめ、ミイラや石像、装飾品など、古代エジプトの至宝がこれでもかと並ぶ圧巻の展示。
気づけば4時間があっという間に過ぎていて、それでもまだ見足りないほどだった。
名残惜しく博物館を後にし、夜のフライトでアスワンへ移動。
空港からはスペイン人の旅人と車をシェアし、無事市内の宿にチェックイン。
今日はカイロの歴史にどっぷり浸かりつつ、エジプトの旅路を南へと進めた一日。
ツタンカーメンの財宝に圧倒された、エジプト考古学博物館探訪

朝、宿で出された朝食の豪華さにびっくり。
種類も量も想像以上で、ゆっくり味わっていたら思わず時間がかかってしまった。
おかげでお腹はしっかり満たされ、この日は昼食を抜くことに。

1902年に建てられたカイロのエジプト考古学博物館へ。
ツタンカーメンの黄金マスク、ミイラ、石像、パピルス…その一歩で、数千年の時を超えた世界に入り込んだ気分になる。
展示数はなんと10万点以上。
カイロ滞在中に絶対に外せない場所のひとつだ。

エジプトの遺跡や博物館は現金NGの場所が多く、支払いはクレジットカード(VISA)限定。
550ポンド(=1,681円)でチケットを購入。
なお、施設内の売店では水が観光地価格なので、事前に準備しておくのが正解。

エントランスを入ってまず目に入るのは、左右に並ぶ2体の巨大な石像。
左が遺跡マスター・ラムセス2世、右が芸術と繁栄の王・アメンホテプ3世。
まるで古代の王たちが、これから始まる展示の旅を静かに見守っているかのよう。
展示の見どころが多すぎるこの博物館では、体力と集中力の配分がカギ。
あらかじめ見たい展示を決め、優先順位をつけて回るのがベスト。
後になって「本命」を回すと、もうクタクタでじっくり見られない…なんてことにもなりがち。
というのも、時間が経つにつれて確実に体力も集中力も削られていく。
しかもこの博物館、パンフレットのような気の利いた案内は一切ない。
「どこに何があるのか」は事前リサーチが必須。
私の場合は、まず2階の奥にあるツタンカーメンの展示室へ直行。
黄金のマスク、第二棺、第三棺をじっくり堪能し、その隣の部屋に展示されているプスエンネス1世の銀の棺へ。
その後は時計回りに、パピルスや動物ミイラの部屋を見て、最後に1階の展示をまわった。
合計4時間かけたけれど、それでもまだ足りないと感じた。
でもこれ以上はもう、体も脳も限界。
集中して見られるのは、たぶんこのくらいが限度かもしれない。
まず目にしたのは、第二棺と第三棺。
繊細な装飾が施されていたが、特に第三棺の迫力がすごかった。
110キロもの純金で作られているというから、その重みと輝きにただただ圧倒された。
そして、その先に展示されていたのが、あの黄金のマスク。
純金の表面には、ラピスラズリやターコイズなどの宝石がちりばめられ、神々しい輝きを放っていた。
想像していたよりも小ぶりだったけれど、信じられないほど美しい。
このマスクは、ツタンカーメンのミイラに直接かぶせられていたもの。
盗掘を免れて、今ここにあるという奇跡に、胸が熱くなる。
※マスクや棺は撮影禁止ゾーンなので、写真は残せず。
撮影禁止の部屋の前の通路には、副葬品がずらり。

黒い肌に金をまとった霊的な衛兵。
王の顔立ちを模しており、彼の魂を静かに、永遠に守る存在。

内臓を納めた壺を収める箱。
中は4つに区切られ、それぞれツタンカーメンの顔が彫られている。

黒いジャッカルの姿で、ツタンカーメンの墓を守護していたアヌビス神の像。
まさに、死者の道を見張る神の威厳を体現した存在であり、ツタンカーメンの墓に結界を張るように置かれていたのだと思う。

ツタンカーメンの展示の中でも、ひときわ目を引いたのが黄金の玉座。
全体が金で覆われ、カーネリアンやラピスラズリで色付けされた背もたれには、夫婦が寄り添うような姿が描かれていた。
赤い肌の若き王はツタンカーメン本人。
王にオイルを塗っているのは王妃アンケセナーメン(異母姉)で、まるでふたりの日常を切り取ったような、穏やかな愛情シーンだった。
ライオンの脚をもつ玉座は、生前に実際に使われていたもの。
「王の愛」と「王の権威」が同時に宿っていた、そんな椅子だった。

ツタンカーメン王のエリアから時計まわりに部屋をまわっていくと、ホルスの4人の息子が蓋に刻まれた壺を発見。
人間の顔はイムセティで、肝臓を守る役目を担っていた。
サルの頭はハピ、彼は肺の守護神。
ジャッカルの頭はドゥアムトエフで、胃を見守っていた。
そしてタカの頭のケベフセヌエフは、腸を保護する神とされている。
内臓を守る神々がついているという発想がすごい。

死者の代わりに働くミニチュア人形たち。
冥界の労働要員。

木製の棚に無造作に収められた人間のミイラたち。
神聖だったはずの遺体がここまで簡素に扱われているのが衝撃的だった。

神々とヒエログリフがびっしり描かれたパピルスの原本。
意味は分からなくても、見ているだけでゾクゾクする。

猫のミイラをはじめ、小さな動物のミイラが布にくるまれて整然と並ぶ様子に驚いた。
信仰の深さがここにも。

1階のホールに降りると、巨大な石像や精巧なレリーフがずらりと並び、圧倒されるような空間が広がっていた。

ピラミッドの頂点にあった石。
三角のフォルムに宿る信仰の象徴、その美しさに感動。

硬い石で彫られた黒光りする像。
静かに玉座に座る姿に、永遠性と神性がにじむ。
他にも語りたい展示は山ほどあるけれど、さすがに書ききれないのでこの辺で。
正直、歴史の知識はそれほどなかったけれど、ChatGPTにその場で質問しながら回れたことで、展示のひとつひとつをより深く楽しむことができた。
お気に入りの服が復活、そしてアスワンへ空の旅

宿に戻ると、昨夜クリーニングをお願いしておいた白いブラウスが、きれいに仕上がって戻ってきていた。
紫のスプレーで汚れてしまい、もうダメかもしれない…と思っていたお気に入りの服だっただけに、まさか本当に落ちるとは思っていなかった。
クリーニング代(染み抜き)はそれなりにかかったけれど、宿のスタッフが頑固な汚れを時間をかけて手作業で落としてくれたと聞いて、感謝の気持ちを込めてチップも多めに支払った。
お気に入りの服が蘇って、本当にうれしかった。
夕方にカイロ空港へ向かう際は、渋滞がひどければ1時間半以上かかることもあると聞いていたので、早めにUberを呼んで出発。
幸いこの日は道路が空いていて、30分ほどでスムーズに空港に到着した。
事前にウェブチェックインを済ませていたため、すぐに保安検査を通過して搭乗ゲートへ。
そこで3時間ほど待機し、夜の便でアスワンへと飛び立った。

搭乗したのはエジプト航空の国内線、カイロ発アスワン行き。

フライト時間は約1時間半ほどで、軽食と水のサービスが提供された。
これで航空券は6,320円という格安価格。ラッキーだった。
深夜のアスワンで出会った、小さなやさしさ

アスワンに到着したのは深夜。
空港のタクシー乗り場で配車アプリinDriveを使ってみたところ、ドライバーから「空港の外、徒歩5〜10分の場所まで来てほしい」と言われた。
どうやら空港内に入ると追加料金がかかるため、入場を避けたかったようだ。
でも、真夜中の見知らぬ土地で、暗い道を歩くのはさすがに不安だったのでキャンセル。
困っていると、近くにいたスペイン人男性3人組が声をかけてくれて、彼らの車に同乗させてもらうことになった。感謝。
市内の中心地までは30分ほどで、料金は一人100ポンド(=290円)。
エジプトにしては、アスワンのタクシーはちょっと高め。

車を降りてスペイン人にお礼を言い、本日の宿「City Center hostel」にチェックイン。

共用バスルームだけど、ツインの個室で590ポンド(=1,718円)はかなりの格安。
この日は朝食と機内食のスナックしか口にしておらず、お腹がペコペコ。
「スイカが食べたいなぁ」とオーナーのムスタファに話してみたら、てっきり買えるお店を教えてくれるのかと思いきや…
カットされたスイカをお皿にのせて、「これ、食べて」と持ってきてくれた。

正直、夜中に外に出るのはちょっと怖かったし、体も疲れていたので、外食は面倒だなと思っていたところだった。
エジプトは詐欺やぼったくりが多い国として有名だけど、アスワンのような地方では、人の素朴な優しさにふれることができる。
予想外のやさしさがうれしくて、穏やかな気持ちで眠れた。
5月14日:使ったお金
お気に入りの白ブラウスのしみ抜きは高かったけど、納得の仕上がりで満足。
航空券は格安だったし、タクシーもスペイン人とシェアして節約できた。
・クリーニング代:190ポンド(=553円)
・クリーニングチップ:50ポンド(=145円)
・ジュース:120ポンド(=349円)
・宿代:590ポンド(=1,718円)
・カイロ大博物館入場料:550ポンド(=1,681円)
・タクシー代(カイロ):209.99ポンド(=641円)
・航空券(カイロ→アスワン):6,320円
・タクシーシェア代(アスワン):100ポンド(=290円)
合計:11,697円