ナイル川といえば、やっぱり“船旅”。
今日は朝から、公共ボート、エンジンボート、手漕ぎボート、そして最後は帆船フェルッカまで、あらゆるボートを乗り継いでアスワン観光。
カラフルな家並みが可愛い「ヌビア村」では、古代から続くヌビア人の文化にふれ、緑あふれる「ボタニカルガーデン」では、ナイルの中州に広がる植物園をのんびり散策。
そして夕暮れどき、帆を風になびかせるフェルッカに揺られながら、黄金色にそまるナイル川をただ静かに見つめていた。
……までは、よかったのだけど。(‘A`)
夕食を食べに向かおうとしたその時、道端で“ナイル川クルーズ”と声をかけてきた男に呼び止められる。
なんでも格安らしいが、連れて行かれたのは中心地のとあるアパートメントの一室──
今日は、アスワンの景色と人間模様を、さまざまな“舟”を通して巡った1日。
朝のスークをぶらり散歩|ローカル朝食とナイル川の風

朝はナイル川沿いの大通りから、駅の西側に広がる「Sharia as Souq Market」へ。
スパイスやヌビア雑貨が並ぶローカルな市場は、地元の人と観光客が入り混じり、歩くだけでも楽しい雰囲気。

朝食は屋台でファラフェルを購入。


さすがにこれだけでは足りなかったので、カットフルーツも追加購入。
ナイル川沿いのベンチで、朝の風を感じながらいただくことに。

シロップ漬けのカットフルーツは甘くて美味しかった。
公共ボートで対岸の村へ|カラフルで素朴なヌビアの暮らし

最初の目的地は、ナイル川対岸にあるヌビア人の村。
「Public Ferry to Nubian Village」という桟橋から公共ボートに乗り込む。
宿の人からは「10ポンド」と聞いていたが、乗り場の男に言うと「20ポンド(=58円)」と言い張る。
まぁ、差額は微々たるものなので20ポンドで妥協。

船内は地元のヌビア人でぎゅうぎゅう。
観光客の姿はほとんど見かけなかった。

村のすぐ近くには砂漠や遺跡もあり、らくだや徒歩で行けるらしいけれど、炎天下の中を観光する気力はなく、のんびりと村を歩くことにした。

ヌビアの家々はカラフルな壁に絵が描かれていて、どれも個性的で可愛い。
今回訪れたのは、あまり知られていないヌビア村で、有名な観光エリア「Gharb Sahil(ガルブ・サヒール)」とは別。
観光地化されていないぶん、素朴な雰囲気が漂っていて、ローカル感を味わいたい人にはぴったりだと思う。
……とはいえ、あまりの暑さにすぐギブアップ。
日陰を求めて、庭園風のカフェへ避難。


カルカデー(ハイビスカスティー)を頼むと、店主が薪でお湯を沸かし始めた。
あっという間にポットが炭で真っ黒になったけど、まぁ…野外カフェならではの風情ということで。

暑い木陰で、熱くて甘いカルカデーを飲む。
庭にはたくさんの植物が植えられていて、自然の中で飲む一杯はなんだか格別だった。

さらに店主が庭からレモングラスを摘んできて、カルカデーに入れると美味しいよとすすめてくれた。
ほんのり甘くて爽やかな香りが加わり、一層飲みやすくなった。

ヌビア人は、古代エジプトよりも前からこの地に暮らしていた民族。
かつては独自の王国を築き、今もヌビア語を話し、鮮やかな壁画や手仕事にその伝統を受け継いでいる。

炎天下に予定変更|貸切ボートで緑の楽園ボタニカルガーデンへ
本当はもう一つの有名なヌビア村「Gharb Sahil」へ行くつもりだったが、暑さに負けて予定変更。
木陰のある「ボタニカルガーデン(植物園)」へ向かうことにした。
ただしそこへは公共ボートが出ていないため、貸切ボートをチャーターするしかない。
最初はなんと800ポンドと言われたが、交渉の末200ポンド(=581円)で決着。

貸切エンジンボートは、何十人も乗れそうな大きさで、ひとりで使うには贅沢すぎるほど。


チケット売り場前で船を降り、チケットを70ポンド(=203円)で購入。

ボタニカルガーデンは、ナイル川の中洲に浮かぶ小さな島「キッチナー島」にある。
かつてイギリス人将校キッチナーが所有していたこの島は、現在では南国の木々や花々が生い茂る緑の楽園となっている。
ヤシの木が並ぶ小道や、日陰にあるベンチも多く、強い日差しの中でものんびりと散策が楽しめる。

園内には、日本では見かけないような不思議な形の木がたくさん。
アラブやアフリカを中心に、世界中の植物が集められていて、まるで“緑の図鑑”のようだった。

川沿いの道からは、対岸に大きな砂丘が見え、ここが“砂漠の町”であることをあらためて実感。

この日はずっと頭が痛かったので、園内のカフェで休憩。

注文したマンゴージュースはまさかの150ポンド(=436円)。
ペットボトルの水ですら50ポンド(=145円)で、観光地価格に目が飛び出そうになった。
手漕ぎボートとフェリーを乗り継いで|アスワン中心部へ帰還
ボタニカルガーデンの次は、フェルッカに乗ってナイル川で夕日を眺めようと思っていた。
でも、いくら待ってもボタニカルガーデンの桟橋にはフェルッカが来ない。

目の前を優雅に通り過ぎるばかりで、乗せてくれる気配はない。
その場にいたのは、貸切チャーターで園内を観光中のお客を待っているエンジンボートか、やたらと営業してくる手漕ぎボートのみ。
さて、どうやってこの島を脱出するか。
手漕ぎボートは高いだろうと最初は相手にしていなかったけれど、試しに話しかけてみると「エレファンティネ島まで50ポンド(=145円)でいいよ」と言われ、拍子抜け。
もっとふっかけられると思っていたのに。
……それとも、私がエジプト価格に慣れてしまっただけかもしれない。

手漕ぎボートに乗り込むと、陽気なお兄さんがカメラを向けるたびにノリノリでポーズを決めてくれる。
海外旅の“あるある”、「オレを撮れ」ムーブはここでも健在。
手漕ぎボートに乗って島を脱出。

エレファンティネ島にもヌビア人の集落があり、島のあちこちにカラフルな家が点在していた。
ボートを降りた場所から島の真ん中を突っ切って、反対側のアスワン方面の岸へ。

歩いて5分ほどで「Ferry pier Elephantina island」に到着。
そこから公共ボートに乗ってアスワンへ戻る。

この船はアスワン側で下船時に支払い、料金は10ポンド(=29円)だった。
“風まかせ”のフェルッカに揺られて|夕暮れのナイル川を漂う

本当は明日の夕方、ゆっくり3時間ほどフェルッカに乗るつもりだった。
でも今日の流れで、1時間だけ試してみたくなり、川沿いで出会ったヌビア人の船頭と値段交渉。
最初の言い値はなんと1000ポンド以上(!)。
でも、粘って交渉した結果、1時間250ポンド(=726円)で成立。
エジプト旅では、水を買うのも、船に乗るのも、何をするにも値段交渉。
そういうのが面倒に感じる人には、この国の旅は少しストレスかもしれない。
でも私は、これも“文化”として楽しむようにしている。

風を受けてゆっくりと帆が開き、フェルッカが静かにナイル川を滑り出す。

エンジンを持たず、風の力だけで進むフェルッカ。
その静けさと、ゆったりと流れる時間に、思わず深呼吸したくなる。
風向きが変われば思うように進めず、時にはその場でぷかぷかと漂ってしまうこともある。
まさに“風まかせ”の船旅だ。

遠くまでは行けなかったけれど、船上から見たエレファンティネ島に沈む夕日はとても美しかった。
そのクルーズ、信じていいの?|甘い言葉とアパートの一室
フェルッカを終え、夕食に向かおうとしたそのとき、ナイル川沿いの道端で「ナイル川クルーズ」と声をかけてきた男に呼び止められる。
実は、宿のムスタファ経由で、すでに2泊3日315ドル(+アスワン半日観光20ドルで合計48,791円)のクルーズを予約していた。
けれど、話を聞いているうちにどんどん価格が下がり、最終的には2泊3日190ドル(+半日観光15ドルで合計29,857円)とのこと。
その安さについ心が揺れてしまった。
キャッチの男は電話でボスを呼び、少しすると「Monty」と名乗る人物が登場。
道端で紙を取り出し、サインとデポジット10ドルを求められたが、いかにも即決は怪しい。
「ちゃんとしたオフィスに案内して」とお願いすると、MontyはあっさりOK。
連れて行かれたのは……中心地のとあるアパートの一室。
なんとも言えない雰囲気に一瞬ためらったけれど、途中で偶然出会った中国人旅行者が「彼のツアー、すごく安くてサイコーだったよ」と太鼓判を押してくれたので、信じて中へ。
どうやらここはオフィスではなく、彼が観光客向けにAirbnbのように貸しているアパートらしい。
再びサインとデポジットを求められたが、「宿のクルーズをキャンセルしてからまた来る」と伝え、WhatsAppを交換してこの日は保留に。
その後、マクドナルドへ。

注文したのはチーズバーガーのハッピーセット。
ミニサイズでこぢんまりしているのに、お値段は130ポンド(=377円)。
エジプト基準ではなかなか高め。
でもこのマック、ナイル川沿いにあって、明るい時間ならテラス席でリバービューが楽しめる。
……けれど、キャッチの男に捕まってしまったので、着いたときにはもう真っ暗だった。
宿に戻ってムスタファに相談すると、快くキャンセルを了承してくれた。
本当は、スケジュールも細かく教えてくれていたムスタファから申し込みたかった。
でも、私はこれから1年旅する身。
予算は限られているし、少しでも安くクルーズ船に乗れるなら、それに越したことはない。
ムスタファに申し訳ないと思いつつも、翌日またMontyのアパートに行き、デポジットを支払う約束をした。
日本からネットでアスワン発・ルクソール着の2泊3日クルーズをシングルで予約すると、同じ内容のクルーズなら最低でも6万円くらいはかかる。
次に安いのが、現地の宿やツアー会社を通して予約する方法。
そして今回のように、道端のキャッチか、船に直接交渉するのが最安パターン。
安全と信頼を重視するなら前者。
でも私は、長旅中のバックパッカー。
多少のリスクは覚悟して、あえて“出会い”に賭けてみた。
5月15日:使ったお金
公共ボートは安いけど、貸し切りのエンジンボートや帆船のフェルッカは高い。
水やジュースも観光地価格の売店やカフェだと高くなる。
場所や人によって価格が流動的なのが大変でもあり面白くもある。
・朝食代(ファラフェル):35ポンド(=101円)
・フルーツ:50ポンド(=145円)
・公共ボート(アスワン→ヌビア村):20ポンド(=58円)
・ティー:50ポンド(=145円)
・貸切ボート(ヌビア村→ボタニカルガーデン):200ポンド(=581円)
・ボタニカルガーデン入場料:70ポンド(=203円)
・ジュース:150ポンド(=436円)
・水:50ポンド(=145円)
・手漕ぎボート(ボタニカルガーデン→エレファンティネ島):50ポンド(=145円)
・公共ボート(エレファンティネ島→アスワン):10ポンド(=29円)
・フェルッカ(1時間):250ポンド(=726円)
・夕食代(マック):130ポンド(=377円)
・宿代(2泊分):1,160ポンド(=3,372円)
・アブシンベルツアー:1,100ポンド(=3,197円)
合計:9,660円