【55】少数民族の村へ向かって──オプウォ移動と現地交渉記(2025.6.2)

ナミビア

この日は、ナミビア北部の町・オプウォへ向けて、ウィントフックから片道8時間の大移動。

オプウォ周辺にはヒンバ族やヘレロ族などの少数民族の村が点在していて、今回の旅でも特に楽しみにしていた場所。

宿も乗り場へのタクシーも前日に手配済みで、あとは乗るだけ…のはずが、まさかの「タクシーが来ない」という朝5時の大トラブルから幕を開けることに。

ようやく代替のドライバーを確保し、連れて行かれた乗り場は、真っ暗で無人。

現れたのは正体不明の“オプウォ行き”自家用車と、その中で私ひとりを乗せて出発を待つ不安な時間。

ローカル交通の洗礼を受けながら、ぎゅうぎゅう詰めの車内で揺られ、やっとたどり着いたオプウォの地では、次なる課題「少数民族の村を訪れるための現地ガイド探し」が待っていた。

タクシーすっぽかし、謎のドライバー、予算オーバーのガイド料金、限られた水とホットシャワー──。

一筋縄ではいかないローカル移動&現地交渉を乗り越えて、「旅が一気に深まった」1日の記録。

まさかのタクシー来ず!早朝から波乱の移動スタート

今日は、ウィントフックから、少数民族の村が点在する町・オプウォへ向かう移動日。

宿の手配も、乗合バンの乗り場までのタクシーの予約も、前日に済ませて準備は万端──のはずだった。

ところが、朝5時になってもタクシーが現れない。

慌てて夜勤のスタッフに声をかけると、「自分で配車アプリで呼べば?」とのつれない返答。

いやいや、それじゃ困る!と食い下がると、ようやく彼が友人のタクシードライバーに連絡してくれ、なんとか出発することに。

しかしたどり着いた乗り場は、まだ真っ暗で誰もいない。

↑オプウォ行き乗合バンの乗り場

オプウォ行き乗合バンの乗り場

停まっていたのは、「Opuwo」と書かれた白いバンが2台。

人影はなく、辺りは静まりかえっている。

“オプウォ行き”と名乗る謎の車

するとそこへ、黒い自家用車に乗った男性が現れ、「オプウォ行きのドライバーだ」と名乗ってきた。

タクシードライバーに確認すると、「この人で間違いないよ」と太鼓判を押されるも、乗客は私ひとり。

真っ暗な早朝、見ず知らずの車にひとりで乗るのはさすがに不安しかない。

「せめて他の人が来るまで一緒にいて」と頼んでみたけれど、ドライバーは「次の仕事があるから」と言い残し、去ってしまった。

──まじかい。

仕方なく“謎のドライバー”の車に乗り込み、じっと待つこと約30分。

ようやく一人の女性客が現れ、少しだけ安心感が戻ってくる。

その後も少しずつ人が集まり始め、7時台にようやく車が発車。

最初はがらんとしていた車内も、道中で数人をピックアップし、最終的には大人6人+幼児1人の合計7人に。

ぎゅうぎゅう詰めの車内

もちろん、車内はぎゅうぎゅう。

3人並べば肩はぶつかり、体勢を変えるのも一苦労。

しかも使われているのは、どう見ても普通の自家用車。

もはや「これもローカル交通あるある」と割り切るしかない。

この日はすでに朝4時に1本目のオプウォ行きが出ていたそうで、私の便は2本目。

昨日の始発はなんと朝3時だったらしく、出発時間は日によってバラバラ。

外国人旅行者には、なかなか手強い交通手段だと痛感する。

結局、ウィントフックの郊外を実際に出発したのは8時ごろ。

5時半には乗り場に着いていたので、2時間半も待ったことになるが、とにもかくにも無事に出発できたのは何よりだった。

ただ、そこからは長時間のぎゅうぎゅう移動。

座っているだけなのに、じわじわと疲労が蓄積していく。

朝日が差し込むサバンナの大地

朝日が差し込むサバンナの大地を、車はぐんぐん北へと走る。

トイレ休憩

途中の休憩ポイントでは、トイレを済ませたあと、併設のスーパーで昼食を調達。

スーパーマーケット
量り売りのサラダ

ショーケースに並んだ量り売りのサラダや惣菜の中から、野菜多めのさっぱりランチを選んで軽く腹ごしらえ。

ローカル色の濃いスーパーの雰囲気もまた楽しい。

ぎゅうぎゅう移動の末、オプウォの宿にようやく到着

Queen Guest House

午後3時半すぎ、ついにオプウォに到着!

なんと車は街の中心ではなく、私が予約していた宿──「Queen Guest House」の目の前まで乗り入れてくれた。

てっきり町中で降ろされて、そこから自力で歩くものだと思っていたので、まさかの親切対応に感動。

ドライバー、やるじゃん……!

この日から3泊するのが、「Queen Guest House」。

心配していた宿の予約もきちんと通っていて、ホッとひと安心。

予約すっぽかしのタクシー、誰もいない乗り場、謎のドライバー、そして長時間のぎゅうぎゅう移動……。

いろんな不安を乗り越えて、ようやくたどり着いたと思うと、「無事に着いた」というだけでもう十分なくらい嬉しかった。

部屋の建物

建物は平屋造りで、敷地内にはいくつかの客室が並んでいる。

部屋数はそれなりにあるものの、ホットシャワーが使えるのは2部屋だけとのことで、事前予約は必須。

ツインルーム

私が泊まったのは、バスルーム付きのツインルーム。

ちゃんとホットシャワーも使えて、1泊290ナミビアドル(=2,344円)という良心的な価格にびっくり。

首都ウィントフックとは、まるで物価が違う。

シャワールーム

とはいえ、ここは田舎町。

この村には水道が通っていないため、宿では3つの大きなタンクから水を供給している仕組み。

さらにひとクセあるのがシャワー。

お湯を出すには毎回フロントスタッフに「お湯の栓を開けてもらう」必要がある。

これを忘れると、蛇口をひねっても水すら出ないという罠。

滞在中には2回ほど、タンクの水が空になって水が出なかったことも。

そのときは、ミネラルウォーターのボトルで顔を洗ったり、歯を磨いたりしてなんとかしのいだ。

不便ではあるけれど、それも含めて“村で暮らす”ということ。

都市の快適さに慣れていたら少し驚くけれど、このくらいの不便さはむしろ旅っぽくて、私はけっこう好きだ。

少数民族の村を目指して、ガイド探し大奮闘!

宿でひと息つきたい気持ちは山々だったけれど、のんびりしている時間はない。

次なるミッションは──「少数民族の村を訪れるための、現地ガイドと車を手配すること」!

オプウォ周辺には、ヒンバ族、ヘレロ族、デンバ族といった少数民族の村が点在していて、個人でアクセスするのはかなり難しい。

そのため、信頼できる現地ガイドとドライバーの確保が不可欠。

でも、どこでどうやって探せばいいのか、情報はほとんどなく、完全なる現地勝負だ。

まずはネットで見つけた情報を頼りに、町の中心にあるスーパー「OK Foods」前で露店を出しているというエリザベスという女性ガイドを探しに行くことに。

スーパーマーケット「OK Foods」

ところが、現地で出会ったのは、「エリザベスの娘」と名乗る若い女性。

話を聞いてみると、なんとエリザベスさんは病気で昨年亡くなったとのことだった。

思わぬ事実にショックを受けつつも、娘さんにガイドをお願いできるか相談してみたところ、提示された金額は──

3つの村のガイド代+ドライバー代+各村へのお土産代で、合計3,000ナミビアドル(=24,249円)。

うーん……残念ながら予算オーバー。

泣く泣くその場は見送ることに。

実は事前に、オプウォ在住のヒンバ族ガイドTjingi(チンギ)(https://himbatribe.com/)にもWhatsAppで連絡をとっていて、同じ条件で聞いた金額は2,700ナミビアドル(=21,824円)。

コロナ前の相場よりもかなり高騰していて、正直びっくりしてしまった。

どうしたものかと宿に戻り、スタッフに相談してみたところ、

「Kaoko Info Centreっていう観光案内所があるよ。そこに所属してる女性ガイドに頼んでみたら?」

と、宿のスタッフが提案してくれた。

Kaoko Info Centreは、オプウォで少数民族向けの観光サポートをしている案内所で、信頼できる現地ガイドと観光客をつなぐ役割を担っているとのこと。

そしてありがたいことに、その場でスタッフが連絡を取ってくれたところ、なんとガイドの女性が「すぐにこちらへ向かう」と返事をくれた。

ほどなくして現れたのは、笑顔が素敵で陽気な雰囲気の女性──Donella(ドネラ)さん。

※連絡先は文末に記載しています。

早速ドネラに話を聞いてみると、提示された金額はこうだった:

  • 村へのお土産(食料品):1ヶ所350×3村=1,050ナミビアドル
  • ドライバー代:600ナミビアドル
  • ガイド料:1村あたり300×3=900ナミビアドル

合計:2,550ナミビアドル(=20,500円)

それでもまだ予算ギリギリだったので、ダメ元でガイド料の値引きをお願いしてみたところ、なんとこころよく応じてくれて、3村で600ナミビアドルに!

最終的に、合計2,250ナミビアドル(=18,186円)で交渉成立。

これは今までで一番安い上に、対応も誠実で安心感がある。

ちなみに、Kaoko Info Centreを通して正式に手配する場合、ガイド料は値引きできないそう。
でも今回はドネラに直接交渉したからこそ実現した金額。

かなりラッキーだったと思う。

もちろん、お土産代を削る選択肢は私にはなかった。

村では現金収入が少なく、観光客が持っていく砂糖や油などの食料品はとても大切な支援になるからだ。

ドライバー代も、ドネラが粘って交渉してようやく600まで下げてもらった金額。

それ以上はさすがに無理ということで、納得して支払うことに。

それにドネラ自身、5人の子どもを育てるシングルマザー。

こんなふうに現地で出会った頑張る女性と、一緒に村へ行けるのが嬉しい。

そんなわけで、ヒンバ族・ヘレロ族・デンバ族の村を訪れるツアーが、まさかの到着初日に決定!

まさかこんなにスムーズに話がまとまるとは思っていなかったので、嬉しさもひとしお。

量り売りサラダの夕食

この日はスーパーで買った量り売りのサラダを夕食にして、明日に備えて早めにベッドに入ることにした。

いよいよ、あこがれだった“村の暮らし”に一歩踏み出す日がやってくる──!

6月2日:使ったお金

乗合バンはローカル価格で、オプウォは田舎町だけあって宿代もウィントフックに比べてかなり安め。

この日はほぼ移動だけだったので、出費も必要最低限に抑えられた。

・タクシー代(宿→乗合バン乗り場):100Nドル(=805円)
・乗合バン代(ウィントフック→オプウォ):350Nドル(=2,819円)
・トイレチップ(2回分):6Nドル(=48円)
・昼食代(サラダ等):78Nドル(=628円)
・宿代(3泊分):870Nドル(=7,007円)
・夕食代(サラダ等):90Nドル(=724円)

合計:12,031円

ちなみに、今回私がガイドをお願いしたドネラさんは、以下から直接連絡できます。

📧 jakuramadonella@gmail.com
📱 WhatsApp: +264814165785

※ツアー内容や料金は時期や人数によって変動する可能性があるので、事前にしっかり確認してください。