【60】18kgのテントを抱えて砂漠を歩く、ナミブキャンプ初日(2025.6.7)

ナミビア

ついに始まった、ナミブ砂漠2泊3日のキャンプ旅。

レンタカーは使わず、頼れるのはこの身ひとつ。

装備は、18kgの鉄骨テントに寝袋、スリーピングマット、バックパック、それに3日分の食料と水。

重くてかさばるものばかりだけれど、これ以外に選択肢はなかった。

まずはシャトルバスで、拠点となるセスリエムへ向かう。

バスを降りたあとは、目的のキャンプ場まで約1km弱を徒歩で移動。

……のはずが、この“たった1km”が果てしなく遠く感じられた。

何しろテントがあまりに重く、10歩進んでは休憩、また10歩進んでは荷物を下ろすという繰り返し。

強烈な日差しの中、指は食い込む重さに悲鳴を上げ、道のりは体感で何倍にも伸びていく。

しかもこのテント、宿で一度試したときに「一人で設営は無理じゃないか?」と感じていた代物。

組み立てられるかどうかの不安も抱えたまま、それでも──進むしかなかった。

ナミブ砂漠の挑戦は、こうして幕を開けた。

朝7時出発!快適すぎるVIPバスと、場違い感にそわそわ

Windhoek Truckport

ウィントフックからセスリエムまでは、朝7時発のシャトルバスを利用。

6時過ぎには配車アプリでタクシーを呼び、出発地点であるWindhoek Truckportへと向かった。

GO2のシャトルバス

30分前に到着したにもかかわらず、GO2のシャトルバスはすでに準備万端。

出発を待つ間も、安心感があった。

車内はVIP仕様で快適そのもの

ナミブ砂漠に点在するロッジは、いずれも高級志向。

そのせいか、このシャトルバスも観光客向けに座席が広く、ゆったりとしたつくりでとても快適。

その分お値段は張るけれど、以前乗ったオプウォ行きのローカルバンとは天と地の差だ。

ちなみに、バンに鉄骨テントを積み込んでいたのは私くらい。

他の乗客は皆、上品な装いのリゾート客といった雰囲気で、やや場違いな気分にもなった。

2回目の休憩地

セスリエムまでの道のりはおよそ5時間。

その間、トイレ休憩が2回設けられていた。

美味しそうなパンが並ぶ売店

2回目の休憩地では、売店に並ぶパンがどれも美味しそうで、つい手が伸びてしまう。

ハートパイ

買ってみたのは、甘くてサクサクのハートパイ。

見た目だけでなく、味もしっかり美味しかった。

セスリエム到着!18kgのテントを持って、果てしない1kmを進む

Sossus Oasis

11時半すぎ、予定より少し早くシャトルバスはセスリエムの「Sossus Oasis」に到着。

Sossus Oasisの売店

売店には飲み物や食料、キャンプ用品などがずらりと並び、思った以上に品揃えが豊富だった。

値段もそこまで高くなく、軽食程度ならここで調達してもよさそう。

無理に弁当を持参しなくてもよかったかもしれないと思ったほど。

ここから目的の「セスリエム・キャンプサイト – NWR」までは、徒歩で約1km弱。

距離だけ見れば大したことないが、現実はまるで違った。

手に持っているのは、あの18kgの鉄骨テント。

リュックと合わせて両手もふさがり、腕にはずっしりとした重さがのしかかる。

10歩進んでは腕が悲鳴を上げ、荷物を下ろして小休憩。

その繰り返しで、たった1kmが果てしなく遠く感じられた。

指は持ち手の重みで食い込み、皮が擦り切れそうなほど痛い。

頭の中は「本当にこれ、今日中に着けるのか?」という不安でいっぱいだった。

そんな極限状態の中、本日一人目の“神”が降臨。

すれ違ったソーサスフライ・ロッジの男性スタッフが、私の持つテントを見てひとこと。

「これは、女性には重すぎるよ」

そう言って、なんと代わりに持ってくれるという。

しかも、目指していた「Sesriem Gate」まで運んでくれたのだった。

あの時の優しさには、本当に感謝してもしきれない。

彼がいなかったら、私は道の途中で心が折れていたかもしれない。

Sesriem Gate

Sesriem Gate(セスリエム・ゲート)は、ナミブ=ナウクルフト国立公園の南側にある入口。

この先はすでに国立公園内にあたるため、入場には料金が必要となる。

ゲートにはチェックポイントがあり、名前を帳簿に記入。

入場料はさらに数百メートル先の事務所で支払うよう案内される。

帰りには、このSesriem Gateで支払い済みの証明書を提示してゲートを通る仕組みになっている。

ようやくここまで来たら、あとはもう一息。

「重すぎて一気には無理です」と正直に伝え、荷物をゲート脇に少し置かせてもらいながら、3往復して少しずつキャンプサイトまで運び込んだ。

セスリエム・キャンプサイト到着!疲労の中で迎えたランチタイム

セスリエム・キャンプサイト – NWR

ようやく辿りついた「セスリエム・キャンプサイト – NWR」。

ここは、セスリエム・ゲートの内側にある唯一のキャンプサイトで、ナミブ=ナウクルフト国立公園の中に宿泊できる、貴重な選択肢のひとつだ。

この立地の最大のメリットは、早朝にゲートを出発し、夜明け前の「デッドフレイ」を目指せること。

太陽の光で赤く染まっていく砂丘を見るには、ここに泊まるのが一番近道となる。

……とはいえ、今回の私の場合、その恩恵はあまり受けられなかった。

というのも、ゲート外にある「Sossusvlei Adventure Centre」主催のツアーに参加する予定だったから。

このツアーはゲート外の開門時間(夜明け以降)にあわせて出発するため、結局どこに泊まってもスタート時間は同じなのだ。

「それならゲート外の、もっと安いキャンプ地でもよかったのでは?」という話にもなるのだけど、やっぱり「せっかくならナミブ=ナウクルフト国立公園内に宿泊してみたい!」という気持ちが勝った。

少し高めだったけれど、それも含めてこの旅の大切な一部だと思って、ここに決めた。

レセプション

まずはレセプションでチェックイン。

キャンプサイトの位置を教えてもらう。

レセプションに隣接して売店もあり、品揃えはSossus Oasisより控えめだが、飲み物などは一通り揃っていた。

レセプション横にある売店

観光地価格を覚悟していたけど、意外と良心的な価格だったのも嬉しい誤算。

これなら、重たい1.5Lの水を3本も持ってこなくてもよかったかも…とちょっと後悔。

私のキャンプエリア

私のキャンプエリアは、レセプションから少し離れた場所にあったが、近くにトイレ&シャワー棟もあって便利なロケーション。

トイレ&シャワー棟
シャワー

私のキャンプエリアの中央には1本の木が立ち、その根元には電気と電源も設置されていた。

キャンプエリアにある電気と電源

……のだが、この電源が曲者。

南部アフリカで使われている「タイプM」という丸い3ピン式で、私のマルチ変換プラグでは接続できず使えなかった。

レストラン

仕方なく、レストランの建物内にあるコンセントを探し、スマホの充電などはそちらでしのぐことにした。

これから行く人は、タイプM対応のプラグを持参するのが断然おすすめ!

とりあえず荷物をキャンプサイトに置いて、レセプション隣のレストランへ。

注文しなくても持ち込みOKとのことで、堂々と席を使わせてもらった。

持ってきたのは、3日分のお弁当。

・バーカウンター

それを見たレセプションのスタッフが「日中は暑いから腐っちゃうわよ。冷蔵庫、使っていいわよ」と声をかけてくれたので、お言葉に甘えてバーの冷蔵庫に預けさせてもらう。

ありがたすぎる……!

お弁当の昼食

昼食のパスタには瓶入りのマッシュルームソースをその場でかけ、ブロッコリー、ミニトマト、ゆで卵、パン、みかんも添えて、栄養バランスも意識した内容にした。

Sossusvlei Adventure Centreへ、ツアー申込の最終手続き

昼食後は再びゲートの外へ。

徒歩で約1km先にある「Sossusvlei Adventure Centre」へ向かい、明日のツアー代金を支払う。

Sossusvlei Adventure Centreへの道

何もない砂漠の道を進み、ソーサスフライ・ロッジの敷地に入り、右手すぐのオフィスへ。

ソーサスフライ ロッジ
Sossusvlei Adventure Centre

事前にメールで予約していたことを伝えると、スムーズに支払いと案内をしてくれた。

明日の集合時間や持ち物もここで確認。

行きにテントを運んでくれたスタッフを探したが見つからず、代わりにフロントの方にお礼の伝言を託してこの場を後にした。

テント設営に再び神降臨!18kgのテント、奇跡の完成

サイトに戻り、いよいよ恐れていたテント設営タイム。

一人では無理かもしれない…と心配していたところ、なんと、一昨日ウィントフックのChameleon Backpackersで会った日本人旅人・ワッキーさんと、ここでまさかの再会!

助けてもらってようやく立った私の城

ワッキーさんはキャンプ慣れしていて、手際よく設営を手伝ってくれた。

本日2人目の神、降臨──!

もし誰も助けてくれなかったら、ぺしゃんこのテントにくるまって寝る覚悟だったので、本当に感謝しかない。

スリーピングマットと寝袋

設営したテントは2人用サイズで、スリーピングマットと寝袋を敷くと余裕があって快適。

テントからの景色

テントから見えるのは、どこまでも広がる砂漠の景色──静かで、美しく、心がじんわり満たされる。

BBQ用のコンロ

キャンプエリアにはBBQ用のコンロも備え付けられていたが、炭も食材も無かったため私は使わず。

ただ、ワッキーさんご夫妻はレンタカー旅で一式のキャンプ道具を持参しており、立派なBBQセットやテーブル、椅子も完備。

完全にベテランキャンパーだった。

夜はそのご夫妻に誘ってもらい、夕食をご一緒することに。

キャンプファイヤー

炭を使ってお肉を焼いたり、キャンプファイヤーを囲んで旅の話をしたりと、心温まる時間を過ごした。

私のお弁当のブロッコリーやミニトマトもちょこんと並べたけれど、彼らが用意してくれた料理の豪華さに、ただただ恐縮するばかり。

今日という日は、本当にたくさんの人に助けられて、感謝の連続だった。

旅ってこういう「人の優しさ」でできているんだなと、しみじみ実感しながら眠りについた。

6月7日:使ったお金

今日はシャトル移動に加え、キャンプ代とツアー代も払ったので出費多め。

・タクシー代(宿→シャトル乗り場):70Nドル(=566円)
・シャトル代(ウィントフック→セスリエム):790Nドル(=6,565円)
・パン代:35Nドル(=283円)
・キャンプ地代(2泊分):1,340Nドル(=11,136円)
・砂漠ツアー代:1,325Nドル(=10,717円)
・酒代(2本):76Nドル(=614円)

合計:29,881円