ずっと楽しみにしていたマサイ・マラ2泊3日のサファリツアー。
朝7時半に迎えの車が来て、ナイロビ中心部に停車していたサファリカーで他の参加者と合流。
すぐに出発するかと思いきや──まさかの待ちぼうけ。
このツアーは複数の旅行会社が合同で組んだ混載ツアー形式で、日程も宿泊先もバラバラ。
最後の1人がなかなか現れず、1時間も車内でぼーっと待たされる羽目に。
ようやく出発したと思ったら、今度は宿泊地トラブル。
行程表に記載されていた「Enchoro Wildlife Camp」ではなく、明らかにグレードの落ちる別のロッジに連れて行かれそうになる。
出発前にツアー会社に確認までしていたのに、抗議しなければそのまま連れて行かれていたところだった。
そして極めつけは、午後のサファリ。
ドライバーは約束の時間に現れず、45分も遅刻。
さらに関係のない車を救出するために30分以上も足止めされ、無茶な牽引で乗客が負傷。
私も首を骨折した経験があり、「痛いからやめて」と訴えたのに完全に無視された。
そしてレオパードが目の前にいるというのに「ここで降りて、別の車に乗り換えろ」と言い出す始末──ふざけるのも大概にしてほしい(# ゚Д゚)
これは一体、誰のためのサファリなんだ。
夢にまで見たマサイ・マラが、こんなストレスまみれの地獄になるなんて思わなかった。
サファリツアー出発早々、すでに不穏な空気…

朝7時半のお迎え前に、朝ごはん。
フルーツグラノーラにパイナップル、そしてヤギのヨーグルトジュース。
…このヨーグルトジュース、ちょっとクセが強め。
どうやら私は羊系の乳製品が苦手かもしれない。

8時頃、お迎えの車でナイロビ中心部に到着。
サファリカーで他の参加者を待つ。
今回申し込んだのは「AANIKA KARIBU SAFARIS」というツアー会社。
WhatsApp経由で予約し、ツアー代は600ドル。
ケニアなのに米ドル現金払いで、ここで日本から持ってきた虎の子のドルを投入。
他のツアー客は米ドルを持っておらず、米ドルが引き出せるATMまでキャッシングに出かけていた。
この600ドルには、マサイ・マラ国立公園の入場料、宿泊費、食事、水、サファリなどの費用がすべて含まれている。
7月からはハイシーズンに突入し、入場料は1日200ドルに跳ね上がる。
2日間の入場料だけで400ドルもかかるため、残りの200ドルで宿泊・食事・ガイド料までカバーしなければならない。
正直「この金額で大丈夫?」と不安になるレベルだったが、嫌な予感は的中する。

サファリカーは助手席も含めて8人乗り。
7人は比較的早く集まったものの、最後の1人がなかなか来ない。
というのも、このツアーは複数の旅行会社の客を寄せ集めた混載ツアー。
参加者ごとに日程も違えば、宿泊地もバラバラ。
私以外のメンバーは、今日はマサイ・マラには行かず、キャンプ地でのんびり過ごすだけという。
私は夕方のサファリがあるから、早く出発したいのに…結局1時間も遅れて出発。
その直前、念のためツアー会社スタッフに「今夜泊まるのは、行程表に書いてあるEnchoro Wildlife Campで合ってるよね?」と確認しておいた。
まさかこのあと、別のキャンプ地に連れて行かれそうになるとは知らずに──。

途中、トイレ休憩を兼ねて立ち寄ったのは、グレートリフトバレーの絶景展望台。
眼下には、どこまでも続く広大な大地。
遠くに霞む山並みを眺めながら、ここが「地球の割れ目」とも呼ばれるアフリカ大地溝帯であることを実感。
思わず深呼吸したくなるような、スケールの大きさに圧倒される場所だった。
宿が違う!?必死の抗議でなんとかEnchoroに宿泊

14時過ぎ、マサイ・マラ国立公園のゲート付近に到着。
このあたりにはたくさんのキャンプ地が点在していて、私たちのサファリカーも、乗客をひとりずつ順番に降ろしていくスタイル。
ドライバーに「Enchoro Wildlife Campに泊まります」と伝えたところ、「あなたはGiraffe Hills Mara Campのはずだ」と言い出す。
──いやいやいや、ちょっと待って。
このツアーを選んだのは、行程表に「Enchoro Wildlife Camp」と明記されていたからだし、今朝ナイロビでスタッフにも念押しで確認してある。
しかも、Giraffe Hillsは事前にGoogleマップで調べた感じ、写真や口コミの雰囲気からしてEnchoroより明らかにグレードが落ちる。
そんなところに、しれっと連れて行かれてたまるか。
必死に抗議し、やっとのことでEnchoroに泊まれることになったものの、無駄なやり取りでまたもや時間をロス。
ようやくチェックインできたのは14時半だった。
荷物を運び入れようとしたそのさり際に、ドライバーが一言。
「午後のサファリは15時に出発するから、それまでにレストランで昼食を済ませておいてね」
……えっ、あと30分しかないんだけど!?(‘A`)
荷解きもそこそこに、急いでレストランへ向かうことに。

キャンプ地のレストランはビュッフェ形式で、紅茶はセルフで自由に飲めるのがうれしいポイント。

料理の味はまぁまぁ。
でも、きちんとした椅子とテーブルで落ち着いて食事ができるというだけで、ほっとする。

昼食後は、荷物を置きに宿泊用のテントへ。
“テント”とは言っても、しっかりとした木造の屋根があり、外観も内装も想像以上にしっかりした造り。

中に入ると、蚊帳付きのベッドに加え、ソファやテーブルといった家具も揃っていて快適そのもの。
奥にはコンクリートの壁で仕切られたトイレ、シャワー、洗面台があり、寝室スペースとはシャワーカーテンで区切られているつくり。
タンザニアのサファリでは「これぞテント泊!」という感じだったので、この設備の整いっぷりには正直驚いた。
嬉しさがこみ上げる。

シャワーはお湯がちゃんと出る。
最初に案内された部屋では故障していて水しか出なかったけれど、スタッフに伝えるとすぐ別の部屋に替えてくれた。
対応が早かったのはありがたかった。

洗面台も独立していて、歯磨きや洗顔のときにとても便利。
水回りがしっかりしているだけで、こんなにも安心感が違うんだと実感する。
サファリ中に牽引!?怒りと恐怖の初日トラブル
午後3時。
サファリ出発の約束時間になっても、ドライバーは一向に現れない。
アフリカでは時間通りに物事が進まないのは“あるある”だし、これまで何度も経験してきた。
でも今回は違う。
今日はマサイ・マラ初日のサファリで、1日200ドルの入場料を払っている大事な日。
時間が削られるのは本当に困る。
結局、ドライバーがやってきたのは45分後。
それも謝罪のひと言もなく、当然のような顔をしていた。
ただでさえ短い午後のサファリ時間が、さらに削られてしまった。
こんなに遅れるなら、せめてランチをもっとゆっくり食べたかった…と、じわじわ不満が湧いてくる。
この日の午後のサファリには、私のほかに2人の乗客が同乗。
初対面だったので、彼らは別の車でここまで来たのだろう。

午後4時、ようやくマサイ・マラ国立公園のOloolaimutiaゲートを通過し、待ちに待ったサファリがスタート。

最初に出会ったのは、なんとレオパード!
木の上で後ろ足をぶら下げ、しっぽをブンブン振りながら遠くを見つめるその姿は、まるでぬいぐるみのように愛らしい。
ぽよっとしたお腹もまた可愛くて、ずっと見ていたくなるほどだった。
……が、そんな癒やしの時間は、あっという間にトラブルにかき消される。
一度その場を離れた私たちの車は、無線の合図で再びレオパードのいる場所へ引き返す。
どうしたのかと思ったら、なんとその至近距離で1台のサファリカーがぬかるみにハマって動けなくなっていた。

私たちの車とは無関係の車だったけど、ドライバーは「助ける」と言って牽引を始めた。
周囲には他にもサファリカーが何台もいたのに、誰も手を貸そうとしない。
結果、私たちの車だけが、何度も牽引を試みる羽目に。
最初は「少しだけ手伝って終わるのかな」と思っていたけれど、作業はどんどん長引き、10分、20分と過ぎていく。
ものすごい強さで何度も牽引するので、車内に乗っていた2人の乗客はそれぞれ膝と手の甲を座席に打ち付けて赤くなっていた。
私はと言うと…以前、首の骨を折っていて首が痛んできた。
20分ほど牽引されて、もう我慢の限界だったので、「首が痛いから牽引をやめて」と訴えたのにドライバーは完全無視で牽引を続ける。
そしてレオパードが目の前にいるというのに「お客が乗っていたら遠慮して全力で牽引できないから、ここで降りて、別の車に乗り換えろ」と言い出す始末──ふざけるのも大概にしてほしい(# ゚Д゚)
本来、肉食動物が直ぐ側にいるのに少しの距離でも車を降りるなんて、安全上あってはならないことだ。
牽引も、乗客が怪我をしてまで、しかもやめてと言っているのに続けるのは、完全に乗客の安全を脅かしている。
私は怖いから車から降りたくないと言ったのに、無理やり降ろされ、別の車に乗せられた。
これは一体、誰のためのサファリなんだ。

私たちが別の車に移されてから少しして、ようやく牽引が成功し、サファリが再開。
でも、トータルで30分のロス。
ただでさえ出発が遅れているのに、夕暮れ時のゴールデンタイムを削られたのは本当に痛い。
朝からずっと予定通りに進まず、今度は命の安全まで脅かされて…私の顔から、完全に笑顔が消えていた。

文句を言いたい気持ちは山ほどあるけど、サファリは止まらない。
夕日に照らされた草原を、アフリカゾウが優雅に歩いていく。
その姿には、さっきまでの苛立ちも少しだけ和らぐような、不思議な力がある。

続いてバッファローの群れ。

そして、ライオンの群れにも遭遇。
この短い時間で、なんとビッグ・ファイブのうち、サイ以外の4種類に出会えた。
動物運だけは、なぜかやたらと良い。

ライオンは、お腹を丸出しにしてすやすやお昼寝中。
野生とは思えない無防備さに、つい笑ってしまう。
レオパードもライオンも、大きな猫みたいで、やっぱりかわいい。

18時半ごろ、空が暗くなりはじめた頃、また象の群れに出会った。
群れで静かに歩くそのシルエットが、夕闇の中に浮かび上がるようで──思わずシャッターを切る。

帰り際、あちこちにぬかるみにハマって放置されたサファリカーが残されていて、それを牽引カーが次々と救出していた。
──あんなに無理して乗客を乗せたまま引っ張らなくても、こうして後からちゃんと助けられたじゃないか。
そう思うと、あの無理な牽引で時間も気力も削られたことが、ますます悔しく感じる。
19時、ようやくキャンプに帰着。
最悪の初日だった。
体も心も、ぐったり。
夕食とキャンプファイアー、そして募る孤独感

19時半、レストランでビュッフェ形式の夕食。
温かい食事を口にして、少しずつ気持ちも落ち着いてきた。
そのあとは、キャンプファイアーにちらっと参加。

焚き火を囲んでただ温まるだけのシンプルな時間だけど、サファリの夜は意外と冷えるので、火のぬくもりが沁みる。
夕方、ドライバーには改めて「私は首に骨折歴があるから、明日は絶対に無理な牽引はやめてほしい」と何度も伝えた。
「わかった」とは言っていたが……正直、まったく信用できない。
一緒に乗っていたカップルは、ビッグ4が見られたからか、怪我のことなど忘れたように上機嫌。
怒りが収まらないのは私だけ。
そのことが、逆にとても孤独に感じられた。
7月6日:使ったお金
今日はサファリツアーの代金600ドルを現金で支払い。
米ドルは日本出国時からずっと持ち歩いていた分。
・サファリツアー代:600ドル(=89,183円)
合計:89,183円