朝9時、チャーター車に乗ってブハラを出発。
目的地はアイダール湖の近くにあるユルタキャンプ。
途中、ギジュドゥヴァンの陶芸工房やアレクサンドロス大王の要塞などに立ち寄りながら、夕方に無事キャンプ地に到着した。
キャンプでは、日本語が堪能なドイツ人の科学者・トムや、トルコから来たホテルオーナーのジェフと出会い、とても印象的な夜を過ごすことに。
夕焼けに染まるキャメルライド、夜のキャンプファイヤーと民族音楽の演奏…。
まるで時間が止まったような、忘れられない体験になった。
今回は、中央アジアの遊牧民が暮らした伝統住居「ユルタ」での、キジルクム砂漠宿泊体験をレポートします。
蹴りろくろに魅せられて|ギジュドゥヴァン陶芸工房見学
ドライバーのアモンは、予定より少し早く宿まで迎えに来てくれた。
英語は少ししか話せないけれど、わからないところは翻訳アプリを使って必死に伝えようとしてくれて、特に困ることはなかった。
車にはエアコンがなく、窓を開けて風を浴びながら走るスタイル。
ブハラを出て1時間ほどで、ギジュドゥヴァンの陶芸工房に到着。
この町はウズベキスタンでも有名な焼き物の産地で、陶器博物館と工房が併設されている。
ここでは美しい陶器だけでなく、上質なスザニなども作られていて、工芸品を求めて観光客がわざわざ訪れるほど。



工房では、蹴りろくろを使って作業する職人の様子も見学。
足元に散らばる土のかけらが、ここでどれだけ多くの作品が生み出されているのかを物語っていた。
長旅中のため、購入を断念せざるを得なかったのが残念。
また来る機会があれば、ぜひお土産にしたいと思える品ばかりだった。
シルクロードの記憶を辿る|貯水池に残るキャラバンの足跡
次に立ち寄ったのは、道中にある「ラバティ・マリク・キャラバンサライ」。
10世紀から19世紀ごろまで使われていた、貴重な隊商宿の遺構。
この場所は「ザラフシャン=カラクム回廊」として世界遺産にも登録されている。

キャラバンが利用した貯水池が今でも残っており、車を止め、少し見学させてもらうことに。


貯水池には、少量ながら現在も水を湛えていた。
雪解け水や雨水を貯めて使っていたそうで、旅の途中に水を補給したり、ラクダたちを休ませたりしていたのだと思うと、かつてのシルクロードの旅路がふと頭に浮かぶ。
静かなこの場所に立ち、長い歴史に思いを馳せた。
ヌラタのローカル食堂でランチ|サモサと自家製ヨーグルト
13時を過ぎて、お腹も空いてきたので、アモンに「サラダがあるレストランに行きたい」と伝えると、ヌラタにあるローカルな食堂に案内してくれた。

お店はチャイハナスタイルのレストラン。
ベッドのような座敷席でくつろぎながら、サラダと自家製ヨーグルト、サモサを注文。


ヨーグルトは甘くなく、自然な味わいがよかった。
サモサも、出来立てで熱々。
肉の臭みがなく、さっぱり美味しくいただけた。

トイレはウズベキスタンの典型的なローカルタイプ。
床に穴がある昔ながらのスタイルで、紙は床にそのまま置いてあった…。
急斜面をよじ登って絶景へ|古代の要塞から見下ろすヌラタの街
昼食後は、紀元前4世紀にアレクサンドロス大王が築いたとされる古代の要塞跡へ。

お土産屋さんが並ぶ通りを進んでいけば登り口があるのだが、私はそれを見逃してしまい、なぜか山の急斜面を直登するハメに…!

写真では伝わりにくいが、かなりの急斜面で、四つん這いでなんとか登頂。
グリップ力のある靴だったから良かったけれど、滑りやすい道なので、普通の靴では絶対におすすめしません(笑)

急坂を登ると、古代の要塞跡が見えてきた。
さらに一番上まで登ることに。



登りきった先では、ヌラタの街が一望できた。
2400年前のこの地に思いを馳せながら、しばし静かな時間を過ごした。

帰りはおとなしく正規ルートから下山。
途中で出会ったお土産屋のおじさんに「ヤポーニャ?」と聞かれ、「そうです」と答えると、にっこり笑って「オシーン!!」のひと言。
そう、日本の名作ドラマ『おしん』は今も中央アジアで知られている。
こういうやりとりに出会うと、日本文化の力を実感すると同時に、ちょっと誇らしい気持ちになる。
春の砂漠を彩るローラグル|赤いケシが咲くアイダール湖畔
ヌラタを出ると、いよいよ砂漠のドライブへ。
どこまでも続くキジルクム砂漠の地平線。
舗装されていないボコボコの道を走るので、さすがにちょっと体力を削られてくる。


そんななか、アモンが車を止め、「ここを見て」と案内してくれたのが、赤いケシの花「ローラグル(Lola gul)」の群生。

この花は4月にしか咲かないらしく、ウズベキスタンの春を象徴する存在だという。
ローラグルの鮮やかな赤が、乾いた砂漠の景色に映えて、とても美しかった。

その後、ついにアイダール湖に到着。

面積約3,000平方キロメートルを誇るこの湖は、琵琶湖の約4.5倍の広さ。
ウズベキスタンではアラル海に次ぐ大きな湖だ。

水質は淡水と海水の中間で「汽水」と呼ばれるそう。
泳ぐ人もいるらしいが、私は湖畔を少し散策するだけにしておいた。

湖のまわりには風紋がきれいにできていて、まるで絵画のような風景。
このあと、いよいよユルタへと向かう――。
遊牧民気分でユルタ泊|砂漠の夜と満月とキャメルライド

今回宿泊したのは、アイダール湖近郊にあるユルタキャンプ「AYDAR」。
私が到着した時にはまだ2組の先客のみで、静かでのんびりとした時間が流れていた。


私が泊まったユルタには、コの字型にベッドが3つ並んでいたけれど、今夜は一人で贅沢に使える。



出入り口には電球と電源も完備されていて、充電なども問題なし。
以前、モンゴルのゴビ砂漠を縦断した時は、電気も水道もないゲルやテントで寝泊まりしながらの10日間だった。
顔を洗うのはペットボトルの水、トイレは青空、シャワーは3日に一度、オアシスの村で…という過酷な環境。
それを思えば、ここはかなりツーリスティックで快適。


水洗トイレにホットシャワーもあり、旅の疲れをしっかり癒やせる環境が整っているのがありがたい。
敷地内には、牛やヤギなどの家畜が自由に歩き回っていて、なんだかのどか。



野生のリクガメもいて、のんびり草を食べる様子に癒やされる。

宿の人たちは、サイコロを振って謎のボードゲームで盛り上がっていたけれど、ルールはまったくわからず(笑)
でも、そういう日常っぽい風景に混ざれるのも旅の醍醐味。
そして、砂漠の空気はとても乾燥しているので、絶好の洗濯日和。
いつもは乾きづらいパジャマや上着も、タライを借りてまとめて洗濯。
軽い服なら1時間もあればカラッと乾いてしまうので、気持ちいい。

ユルタの宿泊客は、私の他に2組の先客がいた。
ドイツ人の科学者・トムとその息子アルベド、それから一人旅中のトルコ人ホテルオーナー・ジェフ。
彼らとはすぐに仲良くなって、夕方には一緒にキャメルライドへ。

まずはジェフと私がラクダに乗ることに。

…が、私、ほぼすべての服を洗ってしまっていたため、着るものがなくてブラトップと短パン姿に(笑)
イスラム圏ではこの格好はご法度だけれど、やむを得ずそのままラクダに乗ることに。


サンセットの砂漠をゆっくりと進むキャメルライドは、5〜10分ほどの短い時間ながら、印象的なひとときだった。
ラクダに揺られながら眺める夕焼けの美しさと、ジェフと記念写真を撮った思い出は、きっと忘れない。
夕食前にはぞくぞくと宿泊客が到着してきて、一気にユルタが賑わう。
夕食はトム、アルベド、ジェフと4人で囲むテーブル。


前菜はサラダとマスタバ(トマトのスープ)。
メインは牛肉とじゃがいものグリルだったのに、話に夢中でうっかりメインの写真を撮り忘れてしまった…(‘A`)
ヨーロッパ圏出身の彼らの話題は、ウクライナ情勢やトルコの政治について。
話の内容は難しすぎて半分くらいしか理解できなかったけど、それでも聞いているだけで勉強になる。

食後には、キャンプファイヤーと民族音楽の演奏。
焚き火を囲みながら、伝統的なウズベク音楽が静かに流れる夜。

満月に照らされたユルタは、とても幻想的な光景だった。

夜になると砂漠は一気に冷えるので、他のベッドから布団を借りて暖かくして就寝。
電気毛布なんてないけど、重ねた布団でぬくぬく。
満月の光に包まれながら、朝までぐっすり眠ることができた。
4月12日:使ったお金
この日の出費はトイレ、昼食代のみ!
明日ツアー代をまとめて支払う予定なので、今日はちょっと一休み。
・トイレ(2回):4,000スム(=44円)
・昼食(サラダ等):100,000(=1,102円)
合計:1,146円