チュニス滞在二日目は、郊外にある人気観光地シディ・ブ・サイドへ。
白い壁と青い扉が織りなす街並みが美しく、“チュニジアの青と白の村”として知られている場所だ。
本来は電車で行けるはずなのに、Googleマップには駅が「閉業」と表示されていて少し不安に。
結局バスで向かうことになったが、カルタゴ遺跡のエリアをかすめながら走る道中も楽しかった。
丘を登ってたどり着いた先には、ラバトやシャウエンを合わせたような景観が広がり、ブーゲンビリアの花々が彩りを添えていた。
人気カフェで朝食をとり、観光パンフレットでおなじみのカフェをのぞき、さらにビーチや伝統邸宅Dar El Annabiも訪問。
アンダルシアの影響を色濃く残す建築やタイル装飾に、モロッコやポルトガルで見た風景との共通性を感じて嬉しくなった。
帰りはローカル食堂でひき肉パスタのディナー。
暑さにへとへとになりながらも、チュニジアらしい一日を堪能した。
チュニスからシディ・ブ・サイドへのアクセス方法
今日はチュニス郊外にあるシディ・ブ・サイドへ向かう。
事前に調べたところ、最寄りのTunis Marine駅から電車で行けるはずなのに、Googleマップには「閉業」と書かれている。
タクシーで行くと高いので、一か八か駅まで行ってみることにした。

宿からは、ハビブ・ブルギバ通りを歩いて駅へ向かう。
この通りはフランス植民地時代に整備された並木道で、今も“チュニスのシャンゼリゼ”と呼ばれるほど洗練された雰囲気がある。
両脇にはカフェやホテル、銀行やブティックが並び、にぎやか。
大きな時計塔を過ぎ、そのまま進むと港に近いTunis Marine駅にたどり着いた。

駅からはぞろぞろと人が出てきていて、「あ、閉業してないじゃん」と安堵しながらチケットカウンターへ向かう。

ところが、シディ・ブ・サイド行きの切符を買おうとすると「電車はない」と告げられる。
代わりに、駅前から出ているバスに乗るようにと言われ、ここで切符を購入。
料金は1ディナール(=50円)と格安だった。

バスに乗り込むとすぐに出発し、古代ローマのカルタゴ遺跡が点在するエリアを通り抜けながら、シディ・ブ・サイド方面へ向かう。
シディ・ブ・サイドが終点ではないので、降りそびれないよう注意が必要だ。
マップを頼りにバスを降り、坂道を少し登ると白と青の町並みが広がるシディ・ブ・サイドに到着。
白と青の街並みと絶景カフェ巡り

シディ・ブ・サイドは、白い壁と青い扉・窓枠が特徴的な丘の上の町で、“チュニジアの青と白の村”として知られる人気観光地だ。
地中海を見渡す絶景に加え、アラブ風とアンダルシア風が混ざり合った街並みが魅力で、写真映えするスポットもあちこちに点在している。
その雰囲気は、モロッコの白の街並みが印象的なラバトと、青一色で知られるシャウエンをちょうど足して二で割ったような姿にも思える。
実際、このあたりの街並みはルーツを同じくしていて、背景にはレコンキスタの影響によってアンダルシアから逃れてきた人々の存在がある。
彼らがモロッコやチュニジアへ移り住み、持ち込んだ建築様式や色彩の感覚が、地中海沿岸の町々に共通する“白と青”の景観を形づくったのだ。

街歩きの途中で目にしたのは、売り物の皿に入った水を飲む猫の姿。
思わず「売り物なのに大丈夫なのかな」と考えたけれど、ここは日本ではない。
モロッコ同様、チュニジアも猫に優しい国だ。
イスラム文化では猫は預言者ムハンマドにも愛された動物とされ、大切に扱われてきた歴史がある。

到着してすぐ、お腹が空いていたので、シディ・ブ・サイドの人気カフェ「カフェ・デ・ナット」に入ることにした。

店内はチュニジアらしいゴージャスな装飾で、調度品もどこかクラシカル。

テラス席からは白い街並みの向こうに青い海が広がり、ストロベリージュースとクロワッサンの朝食(15ディナール=760円)を味わいながら、景色を堪能できた。

腹ごしらえの後は再び街歩きへ。
真っ白な壁と青い扉のあちこちに、ブーゲンビリアの鮮やかな花が咲き誇り、シディ・ブ・サイドらしい景色をさらに彩っていた。

観光パンフレットや広告でもおなじみの有名カフェ「Café des Délices」にも立ち寄ってみた。

白と青の街並みと、地中海を見下ろすテラス席の組み合わせはたしかに見事で、「これぞチュニジアの絶景カフェ」と思わせる眺めだった。
ただし、Googleマップの評価はなんと2.8。
口コミには「値段が高すぎる」「サービスが微妙」といった声も目立ち、実際に価格設定も強気らしい。
少し不安になったので、入口から中をのぞき、テラスの写真だけ撮って退散。
景色だけでも十分に楽しめた。
観光地感は強いけれど、写真を撮るだけでも満足できるスポットだったと思う。

そこからさらに奥へ進み、海沿いの下り坂を歩いていく。
ビーチへと続く道ではあるものの、思った以上に距離があり、しかも日陰がほとんどない。
じりじりと照りつける日差しの中、汗だくになりながらの道のりはなかなかハードだった。

たどり着いたビーチには、木とヤシの葉で編まれた茅葺き風のパラソルがずらりと並び、リゾート気分を演出している。
ただ、海自体は思ったほど澄んでいるわけではなく、あくまでのんびり休憩する場所といった印象だった。
しばらく海風にあたりながら休憩したあと、帰りは別ルートで街の中心へ戻ることに。
急な階段を登る近道だったけれど、人通りも少なく、女性ひとりで歩くにはやや心細さもあった。
なにより暑さがかなりきつく、正直、夏の時期に無理してビーチまで行かなくてもいいかもしれないと思った。
伝統邸宅Dar El Annabiで出会うチュニジアの暮らしと美

最後に訪れたのは、伝統邸宅「Dar El Annabi」。
18世紀末に建てられたチュニジアの典型的な富裕層の家で、入場料は6ディナール(=304円)。
イスラム・アラブ建築とアンダルシア様式が融合した空間は、暮らしと文化を体感できる小さな博物館のようだった。

入口を入るとすぐに開放的な中庭が広がり、白い壁とアーチの装飾、そして豊かな緑が出迎えてくれる。

壁にはファティマの手をモチーフにしたタイル画が飾られていて、中央には鹿(あるいはガゼル)の穏やかな顔が描かれていた。
その姿は美しさと守護の象徴をあわせ持つようで、不思議な魅力を放っていた。

室内には、ヘナの儀式に臨む花嫁のマネキンも展示されており、伝統的な結婚の習わしを垣間見ることができる。

さらに奥へ進むと、透明な屋根と小さな暖炉のある可愛らしいサンルームがあり、そこからアンダルシア風の庭園へとつながっていた。

庭の一角ではスタッフがミントティーをふるまってくれ、ささやかだけれど心温まるおもてなしだった。

隣の部屋には色とりどりのタジン鍋やティーカップが並び、暮らしの中に息づく工芸の美を感じさせる。

魚やイルカなど海のモチーフを描いたモザイク画も印象的だった。

ダイニングキッチンには、伝統的な空間の中に現代的なオーブンや調理器具も備えられていて、生活感もそのまま残されている。

重厚な木製のベッドやドレッサーが並ぶクラシカルなベッドルームには、なぜかソニーのテレビが置かれていた。
まるで時代をさかのぼった空間の中に現代がひょっこり顔を出しているようで、つい最近まで実際に人が暮らしていたことを感じさせる。

屋上に上がると、白と水色で統一された空間からチュニス湾や街並みを一望できた。

そこにはアズレージョを思わせる繊細なタイル画もあり、地中海世界に共通する美意識が静かに息づいていた。
モロッコ、ポルトガル、スペイン、そしてチュニジアと旅をしてきたからこそ、こうした“共通のルーツ”に気づけるようになり、見つけるたびに嬉しくなる。
見応えのある展示が多く、他にもたくさんの部屋が公開されていた。
シディ・ブ・サイドに行くなら、必見のスポットだと思う。

喉が渇いたので売店でストロベリージュースを購入。
4ディナール(=202円)とカフェで飲むよりだいぶ安かった。
ジュースを片手に、かつてフランス人伯爵バロン・ドルランジュが暮らしていた「Ennejma Ezzahra Palace(エンネジュマ・エッザフラ宮殿)」へも足を運んだが、残念ながら臨時休館で入れず。
アンダルシア風の建築と繊細な装飾が美しいらしく、見られなかったのは残念だった。
そのままバス停に戻り、再びバスに乗ってチュニスへ。
幸い帰りのバスはすぐに来て、待ち時間なくスムーズに戻れた。
途中でカルタゴ遺跡に立ち寄ろうかとも思ったが、あまりの暑さに断念した。
Gare de Tunisでスース行き切符を手に入れる

宿へ戻る前にGare de Tunisへ立ち寄り、翌日スースに向かう鉄道の時間をチェック。

時刻表を見ると想像以上に本数が少なく、朝便は7時35分発しかないことが判明。
ちょっと早すぎるけれど仕方ない。

チケットカウンターでは翌日の切符も購入でき、2等席を8.1ディナール(=410円)でGET。
まさに激安。
夕方、宿へ戻ると部屋の鍵が修理されていてひと安心。
フランス門そばのローカル食堂で味わう夜ごはん

しばらくブログを書いたあと、夜21時になってようやくお腹が空き、フランス門近くのローカル食堂で夕食をとった。

頼んだのはPâte Boeuf Hachée(ひき肉入りパスタ)。
ごろごろと大きなミートボールが入っていて、ボリューム満点。
パンまで手が回らず、パスタも少し残してしまったけれど味は抜群だった。
こうしてチュニス滞在の一日が終わり、明日はスースへ移動。
ローカル電車の旅、果たして時間どおりに着けるのか?
そして何より、明日は少しでも暑さが和らぎますようにと願いながら眠りについた。
8月29日:使ったお金
28日に払った航空券代(マドリード→チュニス)とSIM代は、チュニジアでの合計に含めるため29日分に計上しています。
・航空券代(マドリード→チュニス):22,110円
・SIM代(25GB30+カード代2):32ディナール(=1,622円)
・タクシー代(空港→宿):12.7ディナール(=643円)
・宿代(2泊分):6,651円
・バス代(チュニス→シディ・ブ・サイド):1ディナール(=50円)
・カフェ代(ストロベリージュース等):15ディナール(=760円)
・博物館入場料:6ディナール(=304円)
・ストロベリージュース:4ディナール(=202円)
・バス代(シディ・ブ・サイド→チュニス):1ディナール(=50円)
・電車代(チュニス→スース二等席):8.1ディナール(=410円)
・スーパー買い物代(お菓子等):5.8ディナール(=294円)
・夕食代(ビーフパスタ等):14ディナール(=709円)
合計:33,805円