【146】エル・ジェム遺跡と絶品ディナーで締めくくるスース最後の2日間(2025.9.4〜5)

チュニジア

スース滞在もいよいよ終盤。

最後の2日間は、ずっと気になっていたローマ遺跡の町「エル・ジェム」へルアージュで日帰り小旅行。

世界で3番目に大きく、しかも保存状態が抜群に良いとされる円形闘技場では、地下通路やアリーナの中央にも立てて、まるで時代を超えて古代ローマに迷い込んだかのような感覚に。

共通券で入れる博物館では美しいモザイク画に感動し、暑さにふらふらになりながらも、来てよかったと思える充実の時間だった。

翌日は猛暑で観光を断念しつつ、夜は老舗レストラン「l’Escargot」へ。

チュニジアとフレンチが融合した絶品コース料理に舌鼓を打ち、旅の疲れも癒された。

こうしてスースでの1週間を、心とお腹いっぱいに締めくくることができた。

9月4日 スースからエル・ジェムへ、ルアージュで日帰り小旅行

Al Lawajat Station

ここ数日は海を眺めながらホテルでのんびり過ごしていたけれど、今日は思い切ってチュニジア中部の町「エル・ジェム」へ日帰り小旅行。

真夏の炎天下に観光へ出るのはそれなりの覚悟がいる。

inDriveの配車アプリでタクシーを呼び、スースのルアージュ乗り場「Al Lawajat Station」へ向かった。

料金表

ルアージュ(louage)はチュニジア各地を結ぶ乗合ミニバン。

一定人数が集まったら出発するシステムで、料金はバスより少し高いけれど、その分早くて便利だ。

窓口には行き先ごとの料金表が貼られていて、目的地に応じた金額を支払ってチケットを購入する。

スースからエル・ジェムまでは6.8ディナール(=341円)。

チケットを買って準備完了。

上に行き先の書かれた看板がある

乗り場の上部には、行き先が大きく書かれた看板が吊り下げられている。

エル・ジェムの表示を探し、ドライバーに声をかけると、チケットの半券をもぎられミニバンへ案内された。

エル・ジェム行きのルアージュ

席はすぐに埋まり、あっという間に満員に。

特に午前中は利用者が多いので、ほとんど待たずに出発できた。

ルアージュ車内

これまでアフリカ各地で乗合バンに乗ると、ぎゅうぎゅう詰めで大変な思いをすることが多かったけど、チュニジアのルアージュは座席も広めで余裕がある。

エアコンはないけれど、前方の窓が少し開いていて、そこから入る風でどうにか暑さをしのげた。

車内で売店で買ったパンを食べる

乗り場の売店で買ったパンをかじりながら約1時間、車に揺られてエル・ジェムに到着。

El Jem Louage Station

到着したルアージュ乗り場はこじんまりとしていて、人も少なめ。

帰りのルアージュは午後早めに乗ったほうがよさそうな雰囲気だった。

9月4日 世界で3番目に大きい!エル・ジェムの円形闘技場を歩く

エル・ジェムの円形闘技場

チュニジア中部の小さな町、エル・ジェム(El Jem)。

人口は多くないけれど、ここには世界で3番目に大きい古代ローマの円形闘技場がそびえている。

この町はかつて「ティスドルス(Thysdrus)」と呼ばれ、オリーブオイル貿易で栄えた。

豊かさの象徴として建てられたのが、この巨大な闘技場。

当時、ここはローマ帝国属州アフリカの重要な拠点でもあった。

ローマのコロッセオよりも崩れた部分が少なく、全体像がはっきり残っていることから「世界で最も保存状態が良い円形闘技場」とも言われている。

入場料は12ディナール(=602円)。

しかもこの料金で近くの考古学博物館にも入れる共通券になっているのもうれしい。

円形アリーナを見下ろす迫力の風景

闘技場を囲む石壁の上から見下ろすアリーナは、圧倒的な存在感。

静けさの中に2000年前の空気が凝縮されているようで、思わず息をのんだ。

地下へと続く階段

闘技場の一角には地下へ降りる石段があり、柵もガイドもなく、そのまま自分のペースで歩けるのがエル・ジェムらしい。

地下に張り巡らされた通路跡

ひんやりとした空気が流れる地下通路には、猛獣の檻や搬入用の跡がそのまま残され、華やかな舞台の裏側にあった現実を物語っていた。

ここが命をかけた舞台のスタンバイ場所

猛獣が収容されていた部屋や、剣闘士が出番を待っていたとされる空間も残っている。

荒々しい壁や床からは、まさに“現場”だった生々しさが伝わってきた。

命のやり取りが行われた舞台

アリーナ中央に立ってぐるりと見上げると、観客席に囲まれた独特の緊張感が迫ってくる。

剣闘士たちはどんな気持ちでここに立っていたのだろう。

客席からの景色

観客席の下の方に腰かけ、アリーナを間近に眺めてみる。

自分も古代の観客になったような気分になり、歓声やどよめきが耳に蘇るようだった。

けれど、直射日光が強烈で長居はできず、結局日陰へ退散。

昔旅行したローマのコロッセオでは外観しか見られなかったけれど、今回は内部も地下も歩けて大満足。

しかも観光客が少なく静かに見学できる。

暑さは厳しかったけれど、間違いなく来てよかったと思える場所だった。

シトロンジュース

見学を終えて街角のカフェに入り、冷たいシトロンジュースで一息。

酸味と冷たさが体に染み渡った。

生デーツ

果物屋さんでは生デーツを試食させてもらった。

これまで干したものしか食べたことがなかったので、生は初体験。

かじるとシャキッとした歯ごたえとほんのりした甘み、そして後味には少し渋みが残る。

干しデーツの濃厚さを想像していたから、素朴で青い味わいに驚いた。

生デーツは夏の終わりから秋にかけて出回る、まさに旬の味。

買わなかったけれど、代わりにぶどうを購入。

4.5ディナール(=226円)で、大粒の房を手に入れた。

食べるのが楽しみだ。

9月4日 美しすぎるモザイクの宝庫、エル・ジェム考古学博物館

El Jem Archaeological Museum

日陰のない灼熱の道を抜けて、最後に訪れたのは闘技場との共通券で入れるエル・ジェム考古学博物館。

ローマ時代の邸宅跡やモザイク画を中心に展示する、小規模ながらとても見応えのある博物館で、闘技場見学の後に立ち寄るのがおすすめだ。

館内には保存状態の良いモザイク画がずらり。

神話の女神、幾何学模様、日常生活や狩猟風景などが描かれていて、古代ローマ人の美意識や暮らしを間近に感じられる。

モザイク好きやローマ建築好きにはたまらない場所!

9人のミューズを描いた大モザイク

展示の中でも目を引いたのは、ギリシャ神話の芸術の女神たち「9人のミューズ」を描いた巨大なモザイク画。

欠けることなく美しい姿が残っているのには驚かされた。

闘技場を描いたモザイク画

さらに、エル・ジェムの円形闘技場で行われていた「猛獣による処刑」を描いたモザイクも。

「猛獣による処刑」が描かれている

人がライオンに襲われる生々しい場面に息をのむ。

直前に実際の闘技場を見学したばかりだったこともあり、あの広いアリーナでこんな光景が繰り広げられていたのかと想像すると、よりリアルに感じられた。

アフリカの家

奥のエリアには「アフリカの家」と呼ばれる邸宅が再建されていて、当時の住居構造や浴場、モザイク装飾をそのまま再現している。

列柱がぐるりと囲む造りは風通しが良く、優雅な暮らしぶりがしのばれる。

モザイクで彩られた浴場の一室

浴場の一室はモザイクで彩られ、半円形の壁やレンガ造りの天井が当時の入浴文化を物語る。

貝殻の中に横たわる女性像のモザイク

床には海の泡から生まれた女神のようなモザイクが描かれ、浴場らしい優雅な雰囲気を演出していた。

博物館の奥に広がる邸宅跡

博物館の外にはローマ邸宅跡が広がり、屋外にも保存状態の良いモザイク床が残されていた。

保存状態の良いモザイク床

屋根も囲いもなく直に日差しや風雨にさらされているのに、くっきり模様が残っているのにはびっくり。

古代の技術力とチュニジアの乾燥した気候の強さを同時に感じた。

展示の大半は屋内とはいえ冷房はなく、見学の途中で体がバテてきて「もう限界かも(‘A`)」と感じながらルアージュ乗り場へ向かった。

9月4日 スースに帰還、クリームパスタで疲れを癒す夜

El Jem Louage Stationのチケットカウンター

El Jemのルアージュ乗り場でチケットを購入。

値段は行きと同じ6.8ディナール(=341円)。

スース行きのルアージュ

看板はなく、周りの人に聞きながらスース行きの車を探す。

15分ほど待って出発し、帰りは約50分でスースに到着。

着いたらすぐにinDriveでタクシーを呼び宿へ戻る。

シャワーを浴びてやっと疲れが取れた。

真夏のチュニジア観光は熱中症と隣合わせで、日本のようにエアコンが効いた場所が少ないため、逃げ場がないのが辛いところだ。

クリームパスタの夕食

落ち着いたところで昨日も行ったパスタレストランへ。

チキンとマッシュルーム入りのクリームパスタはボリューム満点。

炭水化物に偏りがちな旅の食事で、しっかりタンパク質を補給できたのが嬉しかった。

9月5日 スース最終夜は老舗レストランで贅沢コース料理

ぶどうと飲むヨーグルト

この日はイスラム教の聖地「カイルアン」に行くつもりだったけど、暑さで観光は断念。

部屋でぶどうをつまみ、ブログを書いたり漫画を読んだりしてのんびり過ごした。

Restaurant l’Escargot

夜はスース最後の夜にふさわしく、ビーチリゾートエリアにある老舗レストラン「Restaurant l’Escargot」へ。

フレンチとチュニジア料理を融合させた名店で、観光客にも地元の人にも人気がある。

私にしては少し贅沢だけど、1日1食生活で観光も控えめだったので思い切ってコース料理を楽しむことにした。

パンとオリーブ、3種の前菜

まずはサービスでパンとオリーブ、3種の前菜。

ガーリック入りバターが絶妙に美味しい。

岩礁魚のビスクスープ

前菜は“岩礁魚のビスクスープ”。

地中海の魚の旨味がぎゅっと詰まった濃厚なスープで、前菜とは思えない満足感。

メインはスズキのグリル

メインはスズキのグリル。

丸ごと香ばしく焼かれ、中はふっくらジューシー。

レモンを絞るとさらに旨味が際立つ。

付け合わせはクリーミーなマッシュポテトと甘みのある野菜ソテーで、シンプルながら完成度の高い一皿だった。

デザートは「ダム・ブランシュ」(バニラアイスにチョコソース)。

ただ、まだメインを食べている途中で出てきてしまい、慌てて食べるはめに。

チョコは固まり、アイスは溶け…最後だけはちょっと残念だった。

それでも、水も含めて全部で65.5ディナール(=3,309円)。

この内容をこの値段で味わえるのは本当にお得だった。

oorendoの店舗

帰り道、SIMの残りギガが少なくなったのでoorendo店舗でチャージ。

宿の部屋はWi-Fiがなく、空港で買った25GBをほとんど使い切ってしまっていた。

ギガチャージ料金表

10GB(25ディナール)か25GB(30ディナール)で迷ったが、明日からチュニスの安宿でWi-Fi事情が不安なため、多めに25GBを購入。

これでひと安心。

明日は、8日間滞在したスースを明日離れ、いよいよチュニスに戻ることになる。

9月4日〜5日:使ったお金

9月4日

・宿代(2泊分・Agodaコイン使用):3,746円
・宿泊税:8ディナール(=401円)
・タクシー代(宿→ルアージュ乗り場):5.4ディナール(=271円)
・ルアージュ代(スース→エル・ジェム):6.8ディナール(=341円)
・闘技場入場料(博物館との共通券):12ディナール(=602円)
・カフェ代(シトロン):2ディナール(=100円)
・ぶどう:4.5ディナール(=226円)
・缶ジュース:3ディナール(=150円)
・ルアージュ代(エル・ジェム→スース):6.8ディナール(=341円)
・タクシー代(ルアージュ乗り場→宿):4.9ディナール(=246円)
・夕食代(クリームパスタ):25ディナール(=1,256円)

合計:7,680円

9月5日

・夕食代(海老スープ等):65.5ディナール(=3,309円)
・25GBチャージ:30ディナール(=1,516円)

合計:4,825円