アフリカ大陸の“てっぺん”、チュニジアにあるアンジェラ岬(Ras Angela)。
ここは、ヨーロッパや日本ではあまり知られていないけれど、じつは大陸最北端という、地味にすごい場所なのだ。
チュニスからは約100km離れていて、アクセスはなかなかハードル高め。
直通バスはなく、乗合バン「ルアージュ」と流しのタクシーを乗り継ぎ、地元の人の力も借りながらようやくたどり着いた。
未舗装の林道の先に広がるのは、コバルトブルーの海と、アフリカの地図をかたどった記念モニュメント。
これまでに訪れた喜望峰(南西端)、アルマディ岬(最西端)と並んで、“アフリカ三辺”を制覇!
旅の記憶がモザイクのようにつながっていく瞬間だった。
帰りは駐車場スタッフに助けられつつ無事チュニスへ。
しめくくりのエビ入りオジアも絶品!
延泊して女子ドミへ移動、今日はアフリカ最北端を目指す日!

朝8時。
宿の朝食は、パン、りんご、デーツに紅茶というシンプルなメニュー。
それでも、こうして用意されているだけでありがたい。

本当は今日でチェックアウトの予定だったけれど、直接交渉したところ、3泊で130ディナール(=6,603円)にしてくれたので延泊することに。
しかも、女子ドミの4人部屋に移動させてくれたおかげで、昨日の大部屋よりずっと快適になった。
同室の相手はドイツ人の女性。
昨日は10人部屋で隣のベッドだったけれど、彼女も同じタイミングでこちらへ移動してきたようだ。
彼女は朝から晩まで外に出かけていて、ほぼ一人で部屋を独占できている状態。
おかげで落ち着いて過ごせている。
心配していた南京虫の気配は今のところないけれど、見たことのない虫はいそうな雰囲気なので、引き続きトラベルシーツは手放せない。
今日は少し足を延ばして、アフリカ大陸最北端「アンジェラ岬」へ行く。
チュニスからおよそ100km離れていて、タクシーをチャーターするとかなりの金額になってしまうため、ここはローカル交通の「ルアージュ(乗合バン)」を使うのが現実的な選択。
ただし、チュニスからアンジェラ岬まで直通のルアージュは出ていないので、まずは手前の港町・ビゼルトを目指すことにした。
チュニスからルアージュで港町ビゼルトへ向かう

北方面行きのルアージュが集まるのは、「Gare Routière Nord」というバスターミナル。
宿からは徒歩で約40分と少し距離があるが、なんとか歩ける範囲。
ここにはチケットカウンターなどはなく、自力でビゼルト行きのルアージュを見つけて、ドライバーに直接料金を支払うスタイル。

広いステーション内で途方に暮れていたところ、警察の詰所のような場所でたまたま声をかけた男性(たぶん警察ではない)が親切に案内してくれた。
ちょうど詰所前に止まっていたルアージュがビゼルト行きだった。
6.5ディナール(=330円)を支払って乗車すると、私が最後の客だったらしく、すぐに出発。
約1時間でビゼルトに到着した。
ローカル交通フル活用!アンジェラ岬へのアクセス後半戦
到着したのはビゼルト郊外にあるルアージュ乗り場。
だが、ここからアンジェラ岬へどう行けばいいのかわからず、少しおどおどしていると、同じルアージュに乗っていた乗客たちが「一緒にタクシーで行こう」と声をかけてくれた。

行き先もよくわからないまま流しのタクシーに乗り込むと、3分ほどで彼らはビゼルト中心部で下車。
「このまま乗ってていいよ」と言い残して降りていった。
そのまましばらく走ったあと、タクシーはルアージュが何台も路肩に並ぶロータリーのような場所で停車。
「ここからアンジェラ岬行きが出ているから乗り換えて」と言われ、次のルアージュを探すことに。

アンジェラ岬へ行くルアージュは、料金が13ディナール(=660円)だった。
ちょっと高すぎない?と思ったけど、タクシーだともっと高くなるので、大人しくお金を払って乗り込んだ。
10分ほど待ったら人が集まり、ルアージュはアンジェラ岬に向かって出発した。
道中、一人、また一人と降りていき、やがて車内には私と小さな少女だけが残った。
多くの人が降りていったポイントは、小さな集落のようで、おそらく彼らはその村の住人たち。
そして、その場所こそが、このルアージュのルート上ではアンジェラ岬に最も近い地点だったのだと思う。
たぶん、そこから徒歩で岬を目指す人が多いのだろう。
けれど、ドライバーから「降りて」と言われたわけではなかったので、そのまま車内にとどまっていると、ルアージュはさらに奥へ進み、終点の村で少女を下ろした。
さすがに不安になって「アンジェラ岬は…(‘A`)?」とドライバーに尋ねると、「これから向かうから心配しないで」といったニュアンスのフランス語で返事が返ってきた。
その後、車はUターンしてさっきの分岐点まで戻り、そこから林の中の未舗装道路へ。
いよいよ岬へのラストスパートが始まった。

この林道、人通りがまったくなく、もし歩くことになっていたら一人ではかなり心細かったと思う。
車で連れてきてもらえて本当に良かった。
木々の合間を抜けると、突然ぱっと視界が開け、美しい海の風景が広がっていた。

岬の手前にある駐車場でルアージュを下車しようとしたところ、ドライバーが「写真を撮って戻ってこい。待っててやるから、30ディナールくれ」と言ってきた。
どうやら、普段はルアージュがここまで来ることはないらしい。
でも、写真だけ撮ってすぐ帰るのはもったいない。
せっかくここまで来たのだから、ゆっくり過ごしたい。
それにしても、30ディナールはちょっと高すぎる。
滞在時間を交渉できればよかったけれど、ドライバーは英語がまったく通じず…あきらめて、この話は丁寧にお断りした。
ついに到達!アフリカ最北端アンジェラ岬の絶景と記念モニュメント

記念モニュメントの前に立つと、まず目に入ったのは「ケープ・アグラスまで8,038km」という文字。
アフリカ大陸の“最南端”がケープ・アグラス(Cape Agulhas)であることはもちろん知っていたけれど、実際に私が訪れたのは、そこから少し西にある「最南西端」の喜望峰(Cape of Good Hope)。
あの、荒々しい断崖と海がぶつかる劇的な風景は、今でも心に強く残っている。
そして数ヶ月前には、セネガルの「最西端」アルマディ岬にも行った。
今回この“北のてっぺん”に立ったことで、私はアフリカの「西・南西・北」の三辺を、自分の足でたどったことになる。
あとは“最東端”だけ。
でも、そこはソマリア。
……さすがの私でも、「それはムリぃッ(‘A`)!!」と叫びたくなるやつ(笑)

黒い十字の記念碑を越えて、さらに奥へと歩いていくと──

崖の下には、透きとおった美しい海が広がっていた。
スースの海もとってもきれいだったけど、ここの海も負けていない。

反対側に目を向けると、白い砂浜に茅葺き屋根のビーチパラソルがずらりと並び、その向こうに灯台がポツンと建っている。
コバルトブルーの海にはローカルの人々が集まり、楽しそうに海水浴をしていた。

岬の突端には、アフリカ大陸の形をかたどった大きなモニュメントが立っている。
よく見ると、それぞれの国境線が彫られていて、国ごとにくっきりと分かれているのがわかる。
その地図を風に吹かれながら見つめていたら、まるで走馬灯のように、これまでの旅の記憶が次々と頭に浮かんできた。
エジプトのピラミッド、南アフリカの喜望峰、赤い大地ナミビア、びしょ濡れになったビクトリアの滝、ゾウと出会ったボツワナ、ザンジバルのインド洋、野生動物の王国ケニア、セネガルの夕焼け、モロッコの迷路メディナ──そして、今まさに立っているチュニジア。
石のモニュメントを見つめながら、私の心はアフリカ中を駆け巡っていた。
チュニスからルアージュ、タクシー、またルアージュと、何度も乗り継いできたけど、それだけの価値があった場所だった。
ビーチでひと休み、帰りもルアージュでチュニスへ帰還

モニュメントを堪能したあとは、ふもとのビーチにも立ち寄ってみる。
人も少なくて、ゆったりと時間が流れる素敵な穴場ビーチ。

透きとおる海を見ていたら、我慢できず足だけ浸けてみた。
ひんやり冷たくて、足先だけでもしっかりクールダウンできた。

岬を満喫したあと、「さて、帰りはどうしよう?」と考えながら、駐車場の小屋で休んでいるスタッフに相談してみることに。
すると、数人のルアージュドライバーに電話をかけてくれて、料金交渉までしてくれた!
最初は「駐車場まで来るのに35ディナール」と言われたけど、「それは高いよ」と伝えたら、「1時間待てば、13ディナールで乗せてくれるドライバーがいるけど、どうする?」との提案。
もちろん、迷わず「待ちます!」と即答。
待っているあいだは、海で水遊びしたり、スタッフとおしゃべりしたりしていたら、あっという間に時間が過ぎて、ちゃんとルアージュがやってきた。

あの人気のない林道を一人で歩かずにすんで、本当によかった……。
ルアージュに乗り込んでビゼルトへ戻ると、行きとほぼ同じ場所で下車。
そこからは流しのタクシーを拾って、ルアージュ乗り場へ向かう。
チュニスやスースといった大都市なら配車アプリ「inDrive」が使えるけど、地方都市では使えないことが多いので、こうして自力でつかまえるしかない。
でも「チュニス」「ルアージュ」と伝えれば、ちゃんと目的地に連れていってくれるし、メーターもきちんと使ってくれるので安心だった。

たどり着いたルアージュ乗り場(محطة سيارات الأجرة بنزرت-تونس)から、チュニス行きのルアージュに乗車。
行きと同じ料金をドライバーに直接支払う。
喉が渇いていたので、売店でファンタを買って2ディナール(=101円)。
朝10時に宿を出て、帰ってきたのは16時半。
たっぷり遊んで、しっかり遠出になった1日だった。
汗だくだったので、まずはシャワー。
それから、少し早めの夕食をとりに外へ出かけた。
ローカル食堂でエビ入りオジア!チュニジア風卵料理を堪能

日曜日だったせいか、メディナのレストランはどこも定休日。
Googleマップで探してみつけたのが、「Restaurant l’Horizon」。

ローカル感あふれる食堂で、この日の夕食はチュニジアの定番料理「オジア(Ojja)」を注文。
トマトソースとスパイスで煮込んだ卵料理に、なんとエビがたっぷり入った贅沢バージョン!
トロトロの卵とスパイシーなトマトソースの中に、ぷりぷりのエビがごろごろ。
パンを浸して食べれば、もう最高。
スパイスはピリ辛だけどしつこくなくて、するすると食べられる。
水と合わせて13.5ディナール(=685円)。
チュニジアらしさ満点で、ボリュームもたっぷり。
コスパ抜群の大満足ディナーだった。
……が、まさか翌日、お腹に異変が起きるとは、このときはまだ知る由もなかったのである。
9月7日:使ったお金
チュニスからアンジェラ岬まで、往復わずか2,000円ちょっと。
交渉しながらも、安くスムーズにたどり着けた冒険旅だった。
・ルアージュ代(チュニス→ビゼルト):6.5ディナール(=330円)
・タクシー代(ビゼルト):2.5ディナール(=126円)
・ルアージュ代(ビゼルト→アンジェラ岬):13ディナール(=660円)
・ルアージュ代(アンジェラ岬→ビゼルト):13ディナール(=660円)
・タクシー代(ビゼルト):2.2ディナール(=111円)
・ジュース代:2ディナール(=101円)
・ルアージュ代(ビゼルト→チュニス):6.5ディナール(=330円)
・夕食代(エビ入りオジア等):13.5ディナール(=685円)
・宿代(3泊分):130ディナール(=6,603円)
合計:9,606円