今日はアンマン近郊、丘の斜面に広がる蜂蜜色の古都・サルトへ。
乗合バスの利用は少し手こずったけれど、地元の人に助けられながら、なんとか無事に到着。
オスマン帝国時代に商業都市として栄えたこの街には、今も石造りの家々がぎっしりと並び、どこか懐かしい風景が広がっている。
一見すると静かな地方都市。
でも実は、「宗教共存の象徴」として世界遺産に登録された、特別な場所でもある。
イスラム教徒とキリスト教徒が共に暮らしてきたこの街では、モスクと教会が自然に共存し、宗教や文化の違いに境界線を引くことなく、日々の暮らしの中に当たり前のように溶け込んでいる。
そんなサルトのやさしい空気に包まれながら、今日は心穏やかな時間を過ごした。
ローカルバスで出発!サルトへの小さな冒険
サルト行きのバスは、アンマンのRaghadan Bus Stationから出ている。
まずはUberでそこへ向かった。

バスターミナルは広く、標識はアラビア語オンリー。

英語がほとんど通じず、「サルト、サルト!」と連呼しながら、なんとか目的のバスを見つけ出す。

乗合バスは乗車時に運賃を箱に入れるスタイル。
サルトまで行くと伝えると、運賃は0.6ディナール(=約121円)とのこと。

バスはすぐに満席になり、通路にも人がぎゅうぎゅうに立つほどの混雑ぶり。
乗車から10分ほどで出発し、道のりは約1時間。

坂道の途中、As-Salt Central Bus Station付近でバスが停車。
ここから街の中心までは歩いてすぐだった。
石造りの街並みと路地裏の魅力に触れるサルト散歩
まず訪れたのは、19世紀末に建てられたアブ・ジャーベル家の邸宅を改装した歴史博物館「アブ・ジャーベル博物館」。


重厚な外観とは対照的に、窓が多くて光がたっぷり差し込む館内は、明るく開放的な雰囲気。
サルトの黄金時代を物語る展示や美しいステンドグラスなど、見どころも豊富。

建物自体がひとつの歴史資料のようだった。
博物館のすぐ目の前には、ローカル市場「ハンマーム・ストリート・マーケット」がある。


新鮮な野菜や果物、香辛料、日用品までなんでも揃う、地元の人たちの台所のような場所。

観光客向けではなく、完全に地元目線のマーケットで、歩いているだけでも活気にあふれていて面白い。
売り子の声や買い物客のやりとりが飛び交うこの空間は、まさにサルトの“日常”そのものだった。

路地裏に入れば、古い石造りの建物や階段道があちこちに。
何気なくぶらぶら歩いていたら、おしゃれな外観のお店を発見。

ふらりと入ってみると、そこは「Crafts House」というギャラリースペースだった。

入場料の1ディナール(=約202円)を払うと、あたたかい紅茶とお菓子を出してくれた。

中には布製品や陶器、木工などの伝統工芸品がセンスよく並び、まるで小さなカフェのような、ほっとする空間が広がっていた。

何気なく入った小さな扉の先で、思いがけず心安らぐ時間を過ごすことができた。

サルトの街を歩いていると、ふとした路地の壁にカラフルなアートが描かれているのを見かける。

歴史ある石造りの街並みに、色鮮やかな絵がそっと溶け込んでいて、歩いているだけで目を楽しませてくれる。
宗教を超えて祈りが交差する「聖ゲオルギオス教会」へ
旧市街の坂を登っていくと、静かに佇む「Al Khader Church(聖ゲオルギオス教会)」が姿を現す。

ここはキリスト教の礼拝堂であり、サルトにおける宗教共存の象徴とも言われる場所。
「Al Khader(アル・カデル)」とは、イスラム世界では“旅人や病人を守る聖なる存在”として敬われており、この教会で祀られている聖ゲオルギオスと同一視されているのだという。
異なる宗教に共通する“守護者”の存在が、一つの教会で語られている──そんな背景もまた、この街らしさを象徴しているように感じた。

教会の方のご厚意で、アル・カデル(ゲオルギオス)が描かれたカードも手渡された。
旅の途中の身には、まるでお守りのように思えて、そっとカバンにしまった。

入口で1ディナール(=202円)を寄付すると、ろうそくを一本受け取り、火を灯して立てることができる。

礼拝堂の内部はビザンティン建築の趣が残り、静けさの中に石壁の重厚さと、差し込む光のやわらかさが混じり合う──そんな神秘的な空間だった。

サルトの街を一望しながら、ランチとシーシャでひと休み
坂の上にある評判のレストラン「Beit Aziz」に行ってみたが、残念ながら今日は閉店していた。
蜂蜜色のサルトの街並みを見下ろしながらランチを楽しむ予定だったので、ちょっとがっかり。

代わりに訪れたのは、街の中心地にある「City Balcony Restaurant」。

屋上のテラス席からは、サルトの街がぐるりと360度見渡せる絶好のビュースポット。

チキンサンドとサラダを注文し、蜂蜜色の街を眺めながらゆったりランチ。
そして食後は、シーシャ(水タバコ)でチルタイム。

シーシャは中東やアラブ諸国で親しまれている喫煙文化で、フルーツの香りがついたタバコの葉(モアッセル)を炭で間接的に熱し、その煙を水を通して吸う仕組み。
ふわりと香る甘い煙に包まれながら、サルトの穏やかな風景を堪能した。
予感は的中?乗り継ぎ地獄と、やさしさに救われた帰り道
帰りはAs-Salt Central Bus Stationに戻り、行きと同じように「アンマン」とひたすら連呼してバスを探す。

英語があまり通じず、探すのにもひと苦労。
ようやく見つけたバスに乗車し、運賃を聞いたら0.4ディナール(=81円)と行きより安い。
ちょっと不安になりつつも信じて乗ったが、予感は的中。

バスはアンマンの中心までは行かず、郊外の「Amman BRT Sweileh Main Station」でストップ。
すると、隣に座っていたお姉さんが「アンマンに行くならここで降りなきゃダメよ」と声をかけてくれて、そこであわてて途中下車。

そこからはJordan Museum行きのBRTバスに乗ることに。
まわりの乗客は入口でカードをかざして乗っているが、カードを持っていない私に、運転手が「いいからそのまま乗って」とひとこと。
降車時にも「お金はいいよ」と言われ、どうやら観光客の私を気の毒に思って無賃乗車させてくれたらしい。
ありがたいけど、少し申し訳ない気持ちになった。

帰り道、市場に立ち寄っていちごを1パック購入。
1ディナール(=202円)。

さらに、屋台でいちごスムージーも注文。
こちらは1.3ディナール(=263円)。
スムージーよりも、いちごパックの方が量も多くて断然お得。
昼食でしっかり食べたので、夕食はこの甘酸っぱい赤い果実で軽く済ませることにした。
4月29日:使ったお金
この日はローカルバスが激安だった一方、ランチとシーシャを楽しんだカフェでは約3,000円近く使ってしまった。
やっぱりヨルダンでは、おしゃれカフェはそれなりのお値段。
・タクシー代:2.02ディナール(=422円)
・乗合バス代(往復):1ディナール(=202円)
・Crafts House入場料:1ディナール(=202円)
・教会寄付(入場料):1ディナール(=202円)
・昼食&シーシャ代:14ディナール(=2,841円)
・いちご:1ディナール(=202円)
・いちごスムージー:1.3ディナール(=263円)
合計:4,334円