【32】深夜の国境越えと、ダハブで犬に引っかかれた日(2025.5.5)

エジプト

深夜4時、3時間遅れでヌエバ港に到着。

イミグレでパスポートを返してもらい、無事にアライバルビザも取得。

ここから陸路で目的地であるダハブへ…だが港にいたのは闇タクシーばかり。

危険レベル3のこの地で、アカバ港で出会い便乗を約束していたハンガリー人女性と、チャーター車に乗り込む。

眠気と緊張に耐えてたどり着いたダハブ。

車を降りると「Welcome to Dahab!!」と言う彼女の笑顔に、張りつめていた心がふっと緩んだ。

だがその夜、日本食レストランで犬に足を引っかかれ──脳裏をよぎる「狂犬病」の三文字。

天国から地獄へ、一瞬でワープ。

ヌエバ港に深夜到着|チャーター車で脱出しダハブへ

夜中の3時半ごろ、船のスタッフに「あと10分で到着するから船尾に集合して」と起こされる。

どうやら外国人はまとめて別ルートで案内されるらしい。

毛布にくるまって爆睡する人々

船内では毛布にくるまって床に寝転ぶエジプト人の姿があちこちに。

あまりのたくましさに、思わず笑ってしまった。

ヌエバの街

やがて船窓からヌエバの灯りが見えてきた。

本来なら深夜1時に着くはずが、3時間遅れ。

でもここはエジプト、予定通りにいかないのが“予定通り”。

インシャラー──神が望むのならば。

港のイミグレで無事パスポートを返却してもらい、アライバルビザも取得できた。

アライバルビザは25米ドルを現金払い。

ヌエバ港

ATMを探したが見つからず、あったとしてもカードが吸い込まれたら怖い。

手元にエジプトポンドはないが、米ドルでなんとかすることに決めた。

闇タクシー乗り場

港の外に出ると、客待ちをしていたのは闇タクシーばかり。

この地域は外務省の危険レベル3。

一刻も早く、レベル1の安全圏ダハブへ抜けたい。

ハンガリー人女性がチャーターした車

幸運にも、船で一緒だったダハブ在住のハンガリー人女性がチャーター車を手配していた。

彼女はWhatsAppで送られてきた運転手の顔写真と車のナンバーを丁寧に照合し、慎重に乗車していた。

私と中国人夫婦も便乗し、4人で1人10ドルずつを支払うことに。

闇タクシーより少し高めだが、安全には代えられない。

他の3人が車内で眠るなか、私は最後まで気を抜けず、なんとか寝落ちせずに耐えた。

ダハブに到着

ヌエバから約1時間、午前6時ごろ、ようやくダハブに到着。

「Welcome to Dahab!!」と笑顔で言うハンガリー人女性の声に、緊張がほどけていくのを感じた。

ここはシナイ半島でも唯一レベル1の地域。

ようやく安全圏に辿り着いたことに、ほっとする。

朝焼けのダハブを歩く|宿探しとSIM購入でひと息

Coral reef hotel Dahab

この日はCoral Reef Hotel Dahabを1泊だけ予約していたが、部屋に入れるのは午後から。

荷物をフロントに預け、朝のダハブを歩くことにした。

紅海に昇る朝日

ちょうど紅海から朝日が昇る時間帯。

寝不足の体にはまぶしすぎるけれど、水平線から昇る光がきれいだった。

ダハブの街

朝焼けに染まる静かな街を歩きながら、これからの旅のことを考える。

ウズベキスタン、オマーン、ヨルダンと旅を続けて約1ヶ月──

私は、そう、少し疲れていた。

そろそろ足を止めて、海のきれいな田舎のリゾート、ダハブでのんびり過ごしたい。

5泊くらい、何もしない日を挟んで、少し回復する時間があってもいいかもしれない。

今の宿は1泊分しか予約していなかったので、朝のうちに4〜5軒ほど宿を見て回ってみた。

部屋の様子や料金を確認しながら比較してみたけれど、どうやら総合的に見て、今泊まっている Coral Reef Hotel Dahab がいちばんよさそうだった。

Old Every Day Cafe

お腹が空いてきたので、海沿いの「Old Every Day Cafe」へ。

カフェラテとクロワッサン

クロワッサンとカフェラテを注文して、紅海を眺めながらひと休み。

外国人向けのカフェなので、175ポンド(=503円)と値段は少し高めだけど、旅先の朝としては悪くない。

Vodafone

そのまま歩いていると、ちょうど9時を過ぎたところでVodafoneの店が開いていた。

いくつか提示されたプランの中から、一番安い28GBのSIMを購入。

それでも650ポンド(約1,868円)。

もう少し少ない容量のプランもあったかもしれないけど、エジプトには長く滞在するつもりなので、これで十分。

朝食付き&テラス付き|旅人にやさしい快適宿

宿に戻り、中庭のテラス席で横になりながら、うとうとしていると「掃除が終わりましたよ」と声をかけられたのは11時半ごろ。

白壁がリゾートチック

スタッフが2部屋を見せてくれて、どちらがいいか選ばせてくれた。

白壁がリゾートっぽくておしゃれなこの宿、なかなか当たりかもしれない。

ベッドルーム

ベッドが2台、冷蔵庫、エアコン、バスルーム、テラス付きで、1泊14.9ドル(=2,254円)。

朝食込みなのも嬉しい。

冷蔵個付き
バスルーム
テラス

シャワーはホットで水圧も申し分なく、テラスには洗濯物を干せるスペースまである。

洗濯用のたらいも2つ貸してもらえたので、これからの滞在も快適に過ごせそう。

穏やかな海の町で突然の災難|日本食レストランで犬トラブル

ダハブの街

夕方までベッドで横になって休み、暗くなりはじめた頃、夕飯を食べに再び街へ出る。

夕焼けに染まるサウジの山々

ダハブの海は透明度が高く、遠くにサウジアラビアの山々が見える。

夕焼けが山の稜線を朱く染め、紅海の水面にも淡い赤が映っていた。

波の音も穏やかで、時間がゆっくりと流れている。

そんな景色を眺めながら歩いていると、ふと日本食が恋しくなり、日本食レストランへ入った。

親子丼

エジプト人の女性が経営する小さな店で、親子丼(220ポンド=632円)を注文。

彼女は日本のアニメが大好きで、しばらくアニメ談義に花が咲いた。

…が、そんな和やかな時間を破ったのは、彼女の飼い犬だった。

突然、足元にじゃれてきた犬が、膝丈ワンピースを着ていた私のすねに爪を立ててしまい、うっすらとした擦り傷ができてしまった。

うっすらと擦り傷

その瞬間、頭の中に浮かんだのは「狂犬病」の三文字。

彼女によれば、この犬は飼い始めてまだ1か月ほど。

半野良のようなものだ。

つまり、予防接種などは受けていない可能性が高い。

急いで宿へ戻り、アルコールで消毒し、シャワーで傷口をしっかり洗い流す。

シャワーで洗い流せば傷跡は消えた

確認してみると、傷跡はまったく残っていなかった。

ほんの薄皮一枚がかすかに擦れただけ。

足を少しなめられたことも考えると、暴露レベルはたぶん1、あっても2程度。

ブースター接種は不要かもしれないけれど、やはり素人判断は危険。

明日、ダハブの病院で医師に診てもらおうか……。

ついさっきまで感じていた平穏が、一瞬で吹き飛ぶ。

天国から地獄へ、そんな夜だった。

5月5日:使ったお金

ヌエバ港でのビザ代や、ダハブまでのチャーター車代は手持ちの米ドルで支払った。

陸路・海路での国境越えでは、やっぱり米ドルが頼りになる。

・ビザ代:25ドル(=3,635円)
・タクシー:10ドル(=1,454円)
・朝食代(クロワッサン等):175ポンド(=503円)
・SIMカード(28GB):650ポンド(=1,868円)
・夕食代(親子丼):220ポンド(=632円)
・タオル:100(=287円)
・宿代:14.9ドル(=2,254円)

合計:10,633円