ついに始まった、ナミブ砂漠2泊3日のキャンプ旅。
レンタカーは使わず、頼れるのはこの身ひとつ。
装備は、18kgの鉄骨テントに寝袋、スリーピングマット、バックパック、それに3日分の食料と水。
重くてかさばるものばかりだけれど、これ以外に選択肢はなかった。
まずはシャトルバスで、拠点となるセスリエムへ向かう。
バスを降りたあとは、目的のキャンプ場まで約1km弱を徒歩で移動。
……のはずが、この“たった1km”が果てしなく遠く感じられた。
何しろテントがあまりに重く、10歩進んでは休憩、また10歩進んでは荷物を下ろすという繰り返し。
強烈な日差しの中、指は食い込む重さに悲鳴を上げ、道のりは体感で何倍にも伸びていく。
しかもこのテント、宿で一度試したときに「一人で設営は無理じゃないか?」と感じていた代物。
組み立てられるかどうかの不安も抱えたまま、それでも──進むしかなかった。
ナミブ砂漠の挑戦は、こうして幕を開けた。
朝7時出発!快適すぎるVIPバスと、場違い感にそわそわ

ウィントフックからセスリエムまでは、朝7時発のシャトルバスを利用。
6時過ぎには配車アプリでタクシーを呼び、出発地点であるWindhoek Truckportへと向かった。

30分前に到着したにもかかわらず、GO2のシャトルバスはすでに準備万端。
出発を待つ間も、安心感があった。

ナミブ砂漠に点在するロッジは、いずれも高級志向。
そのせいか、このシャトルバスも観光客向けに座席が広く、ゆったりとしたつくりでとても快適。
その分お値段は張るけれど、以前乗ったオプウォ行きのローカルバンとは天と地の差だ。
ちなみに、バンに鉄骨テントを積み込んでいたのは私くらい。
他の乗客は皆、上品な装いのリゾート客といった雰囲気で、やや場違いな気分にもなった。

セスリエムまでの道のりはおよそ5時間。
その間、トイレ休憩が2回設けられていた。

2回目の休憩地では、売店に並ぶパンがどれも美味しそうで、つい手が伸びてしまう。

買ってみたのは、甘くてサクサクのハートパイ。
見た目だけでなく、味もしっかり美味しかった。
セスリエム到着!18kgのテントを持って、果てしない1kmを進む

11時半すぎ、予定より少し早くシャトルバスはセスリエムの「Sossus Oasis」に到着。

売店には飲み物や食料、キャンプ用品などがずらりと並び、思った以上に品揃えが豊富だった。
値段もそこまで高くなく、軽食程度ならここで調達してもよさそう。
無理に弁当を持参しなくてもよかったかもしれないと思ったほど。
ここから目的の「セスリエム・キャンプサイト – NWR」までは、徒歩で約1km弱。
距離だけ見れば大したことないが、現実はまるで違った。
手に持っているのは、あの18kgの鉄骨テント。
リュックと合わせて両手もふさがり、腕にはずっしりとした重さがのしかかる。
10歩進んでは腕が悲鳴を上げ、荷物を下ろして小休憩。
その繰り返しで、たった1kmが果てしなく遠く感じられた。
指は持ち手の重みで食い込み、皮が擦り切れそうなほど痛い。
頭の中は「本当にこれ、今日中に着けるのか?」という不安でいっぱいだった。
そんな極限状態の中、本日一人目の“神”が降臨。
すれ違ったソーサスフライ・ロッジの男性スタッフが、私の持つテントを見てひとこと。
「これは、女性には重すぎるよ」
そう言って、なんと代わりに持ってくれるという。
しかも、目指していた「Sesriem Gate」まで運んでくれたのだった。
あの時の優しさには、本当に感謝してもしきれない。
彼がいなかったら、私は道の途中で心が折れていたかもしれない。

Sesriem Gate(セスリエム・ゲート)は、ナミブ=ナウクルフト国立公園の南側にある入口。
この先はすでに国立公園内にあたるため、入場には料金が必要となる。
ゲートにはチェックポイントがあり、名前を帳簿に記入。
入場料はさらに数百メートル先の事務所で支払うよう案内される。
帰りには、このSesriem Gateで支払い済みの証明書を提示してゲートを通る仕組みになっている。
ようやくここまで来たら、あとはもう一息。
「重すぎて一気には無理です」と正直に伝え、荷物をゲート脇に少し置かせてもらいながら、3往復して少しずつキャンプサイトまで運び込んだ。
セスリエム・キャンプサイト到着!疲労の中で迎えたランチタイム

ようやく辿りついた「セスリエム・キャンプサイト – NWR」。
ここは、セスリエム・ゲートの内側にある唯一のキャンプサイトで、ナミブ=ナウクルフト国立公園の中に宿泊できる、貴重な選択肢のひとつだ。
この立地の最大のメリットは、早朝にゲートを出発し、夜明け前の「デッドフレイ」を目指せること。
太陽の光で赤く染まっていく砂丘を見るには、ここに泊まるのが一番近道となる。
……とはいえ、今回の私の場合、その恩恵はあまり受けられなかった。
というのも、ゲート外にある「Sossusvlei Adventure Centre」主催のツアーに参加する予定だったから。
このツアーはゲート外の開門時間(夜明け以降)にあわせて出発するため、結局どこに泊まってもスタート時間は同じなのだ。
「それならゲート外の、もっと安いキャンプ地でもよかったのでは?」という話にもなるのだけど、やっぱり「せっかくならナミブ=ナウクルフト国立公園内に宿泊してみたい!」という気持ちが勝った。
少し高めだったけれど、それも含めてこの旅の大切な一部だと思って、ここに決めた。

まずはレセプションでチェックイン。
キャンプサイトの位置を教えてもらう。
レセプションに隣接して売店もあり、品揃えはSossus Oasisより控えめだが、飲み物などは一通り揃っていた。

観光地価格を覚悟していたけど、意外と良心的な価格だったのも嬉しい誤算。
これなら、重たい1.5Lの水を3本も持ってこなくてもよかったかも…とちょっと後悔。

私のキャンプエリアは、レセプションから少し離れた場所にあったが、近くにトイレ&シャワー棟もあって便利なロケーション。


私のキャンプエリアの中央には1本の木が立ち、その根元には電気と電源も設置されていた。

……のだが、この電源が曲者。
南部アフリカで使われている「タイプM」という丸い3ピン式で、私のマルチ変換プラグでは接続できず使えなかった。

仕方なく、レストランの建物内にあるコンセントを探し、スマホの充電などはそちらでしのぐことにした。
これから行く人は、タイプM対応のプラグを持参するのが断然おすすめ!
とりあえず荷物をキャンプサイトに置いて、レセプション隣のレストランへ。
注文しなくても持ち込みOKとのことで、堂々と席を使わせてもらった。
持ってきたのは、3日分のお弁当。

それを見たレセプションのスタッフが「日中は暑いから腐っちゃうわよ。冷蔵庫、使っていいわよ」と声をかけてくれたので、お言葉に甘えてバーの冷蔵庫に預けさせてもらう。
ありがたすぎる……!

昼食のパスタには瓶入りのマッシュルームソースをその場でかけ、ブロッコリー、ミニトマト、ゆで卵、パン、みかんも添えて、栄養バランスも意識した内容にした。
Sossusvlei Adventure Centreへ、ツアー申込の最終手続き
昼食後は再びゲートの外へ。
徒歩で約1km先にある「Sossusvlei Adventure Centre」へ向かい、明日のツアー代金を支払う。

何もない砂漠の道を進み、ソーサスフライ・ロッジの敷地に入り、右手すぐのオフィスへ。


事前にメールで予約していたことを伝えると、スムーズに支払いと案内をしてくれた。
明日の集合時間や持ち物もここで確認。
行きにテントを運んでくれたスタッフを探したが見つからず、代わりにフロントの方にお礼の伝言を託してこの場を後にした。
テント設営に再び神降臨!18kgのテント、奇跡の完成
サイトに戻り、いよいよ恐れていたテント設営タイム。
一人では無理かもしれない…と心配していたところ、なんと、一昨日ウィントフックのChameleon Backpackersで会った日本人旅人・ワッキーさんと、ここでまさかの再会!

ワッキーさんはキャンプ慣れしていて、手際よく設営を手伝ってくれた。
本日2人目の神、降臨──!
もし誰も助けてくれなかったら、ぺしゃんこのテントにくるまって寝る覚悟だったので、本当に感謝しかない。

設営したテントは2人用サイズで、スリーピングマットと寝袋を敷くと余裕があって快適。

テントから見えるのは、どこまでも広がる砂漠の景色──静かで、美しく、心がじんわり満たされる。

キャンプエリアにはBBQ用のコンロも備え付けられていたが、炭も食材も無かったため私は使わず。
ただ、ワッキーさんご夫妻はレンタカー旅で一式のキャンプ道具を持参しており、立派なBBQセットやテーブル、椅子も完備。
完全にベテランキャンパーだった。
夜はそのご夫妻に誘ってもらい、夕食をご一緒することに。

炭を使ってお肉を焼いたり、キャンプファイヤーを囲んで旅の話をしたりと、心温まる時間を過ごした。
私のお弁当のブロッコリーやミニトマトもちょこんと並べたけれど、彼らが用意してくれた料理の豪華さに、ただただ恐縮するばかり。
今日という日は、本当にたくさんの人に助けられて、感謝の連続だった。
旅ってこういう「人の優しさ」でできているんだなと、しみじみ実感しながら眠りについた。
6月7日:使ったお金
今日はシャトル移動に加え、キャンプ代とツアー代も払ったので出費多め。
・タクシー代(宿→シャトル乗り場):70Nドル(=566円)
・シャトル代(ウィントフック→セスリエム):790Nドル(=6,565円)
・パン代:35Nドル(=283円)
・キャンプ地代(2泊分):1,340Nドル(=11,136円)
・砂漠ツアー代:1,325Nドル(=10,717円)
・酒代(2本):76Nドル(=614円)
合計:29,881円