【101】門前払いのディアマ国境。行けなかったモーリタニアの夢(2025.7.19)

セネガル

モーリタニアのe-Visaが「申請中」のまま返ってこない。

それでも諦めきれず、賭けるような気持ちでディアマ国境へと向かった。

けれど現実は甘くなく、やっぱり撃沈。

国境での拒否、バスのタイヤはパンク、ダカールでは宿に追い出され……朝から晩までトラブル尽くしの一日。

それでも、最後にたどり着いたのは日本人宿「大和」。

原田さんの優しさと、あの担々麺の味に、思わず涙が出そうになった。

ぽっかり空いたモーリタニア2週間分の予定を前に、私はひとり、ダカールの夜に立ちすくんでいた。

VISA申請中でも諦めきれず…ディアマ国境へ突撃!

やっぱりというか、予想通りというか……朝になってもモーリタニアのe-Visaは「申請中」のまま。

でも、どうしても諦めきれなかった。

無理なのはわかっていても、私はディアマ国境へ向かうことにした。

モーリタニアに行きたい気持ちが勝ってしまったのだ。

出発前からストレスで吐きそうだった。

セネガルから陸路でモーリタニアに入国するには、「ロッソ」と「ディアマ」という2つの主要な国境ルートがある。

旅人の多くが使うのはロッソ国境。

理由はシンプルで、ダカールやサン・ルイなどから乗合バンでアクセスしやすく、交通の便が良いからだ。

──が、実はこのロッソ国境、けっこう有名な“地雷ポイント”。

賄賂を要求する入国管理官、しつこくまとわりつく“自称ヘルパー”、そして観光客をカモにしようとする輩たち…。

うっかり油断すると、あっという間にトラブルに巻き込まれると悪評高い。

そんな話を何度も耳にしていた私は、比較的穏やかだと言われるディアマ国境を選ぶことにした。

ディアマ国境は治安の面では安心だけど、行きにくいのが難点。

乗合バンは走っておらず、基本的には乗合タクシーを利用するしかない。

つまり、ある程度のお金と交渉力が必要になる。

それでも、平和に越境できるならその方がいい。

私はそう判断した。

まずは宿を出て、フェデルブ橋のたもとへ。

乗り場があるわけではないけれど、橋の周辺には流しの乗合タクシーがよく通っている。

乗合タクシーでバスターミナルへ

道端でタクシーを捕まえ、「ガールチャー(=バスターミナル)」と行き先を伝えて乗り込んだ。

サン・ルイのバスターミナル「Gare routière de la ville de saint louis」

朝6時40分、「Gare routière de la ville de Saint-Louis(サン・ルイのバスターミナル)」に到着。

ここでも「ディアマ!ディアマ!」と叫びながら周囲の人に聞きまくると、優しいセネガル人たちが目的の乗合タクシーまで案内してくれた。

乗合タクシーでディアマ国境へ向かう

料金はひとり2,000フラン(=527円)。

すでに2人の男性が乗っていたが、出発には4人必要とのこと。

残りの1人が来るまで、結局40分くらい待った。

助手席ゲット、ディアマへ出発!

運良く私は助手席に座らせてもらえた。

後部座席には男性3人がぎゅうぎゅう詰め。

窮屈そうだったので、かなりラッキー。

7時半、ようやくサン・ルイを出発し、ディアマ国境へ向かった。

ディアマ国境に到着

1時間ほど走って、ついにディアマ国境に到着。

ゲートをくぐった左手に、セネガル側のイミグレーションの建物がある。

セネガル側イミグレ

ここで一度車を降りて、出国スタンプをもらう。

国境の橋を渡り、モーリタニアへ

再びタクシーに乗り込み、セネガル川にかかる国境の橋を車で渡る。

モーリタニア側に到着

道を数百メートル走ると、モーリタニア側のイミグレーションに到着した。

この距離を歩くと結構あるので、車で来てくれて本当に助かった。

茶色のセネガル川

セネガル川は茶色く濁っていた。

川を眺めていると、さっそく近づいてくるのは闇両替のお兄さん。

レートは聞かなかったが、周囲にATMは見当たらず、正規の両替手段もなさそう。

ここで両替するしかない、という雰囲気だった。

やっぱり無理だったモーリタニア。ディアマ国境で門前払い

モーリタニアのイミグレ前では、写真を撮って賄賂を要求されたら最悪なので、下手なことはせず、静かにビザの相談を試みる。

近くにいたモーリタニア警察の男性たちに、アライバルビザがほしいことを伝えると、皆フランス語しか話せなかったが、グーグル翻訳でフランス語にした文章を見せて、必死にコミュニケーションを取った。

何人かの警察官に囲まれたけれど、全員が首を横に振るだけ。

どうやら、2025年1月5日からビザ制度が変わり、アライバルビザは完全に廃止されたという話は本当だったようだ。

「何日も前からe-Visaを申請していて、いまだに返事がないから来たんです」と訴えても、彼らの答えは一貫して「待つしかない」。

賄賂を渡せばなんとかなるような雰囲気もまったくなかった。

とはいえ、イミグレの職員たちはとても親切で、ロッソ国境のような混沌とした感じは微塵もなく、それだけが唯一の救いだった。

モーリタニアに行きたかった理由は、アイアントレインに乗ること。

ズエラットという鉱山都市から、大西洋沿いのヌアディブまで走る全長2km超の鉱石列車で、鉄鉱石を満載した貨車の上に人が直接乗れる、“世界一過酷な列車旅”として知られている。

砂まみれになり、風にさらされ、炎天下を突っ走る…そんな列車にどうしても乗りたかった。

でも、VISAがない以上、この夢もここで一旦お預け。

ふと、これまで旅先で出会ってきた各国の旅人たちの顔が頭に浮かぶ。

トルコ人、中国人、トルクメニスタン人──彼らは私よりずっと経済的に余裕があるように見えたけれど、VISA取得には苦労していた。

「日本のパスポートは世界最強だよ、うらやましいな!」

そんなふうに何度も言われてきた。

日本は確かにビザなしで行ける国が多いけれど、アフリカは別物。

今回のように、e-Visaを申請しても返答がないまま放置されたり、まさかの2回リジェクトされたり…。

「日本人だから大丈夫だろう」と甘く見ていた自分が情けない。

行きたい国に理不尽な理由で行けないというのは、初めての経験だった。

でも今なら、あのときの彼らの悔しさが少しわかる。

いつかまた、必ずモーリタニアにリベンジする──そう心に誓い、私は国境を後にした。

セネガル側に戻り、再入国の手続きをお願いすると、さっき押された出国スタンプの上から「ANNULÉ(取り消し)」の赤いスタンプがドンと押された。

どうやら、今回の越境は“なかったこと”にされたらしい。

モーリタニア側に止まっていた乗合タクシーまで歩いて戻り、車内でしばらく待っていると、国境から来た乗客たちが次々と乗り込んできた。

その中に、スペイン人の男性が一人。

彼はモロッコ、西サハラ、モーリタニアと旅してきたと言う。

まさに、私がたどるはずだったルートだ。

彼もe-Visaの取得に苦労したらしく、申請からビザが下りるまで2週間かかったそうだ。

でも、1回の申請で通った彼の方が、よほどマシだ。

彼はアイアントレインには乗らなかったらしいが、バックに列車を入れて記念写真を撮ったそうで、それだけでも羨ましくて仕方がなかった。

帰り道も試練続き…バスはパンクでセネガルの田舎に立ち往生

12時すぎ、サン・ルイのバスターミナルに戻ると、ちょうどダカール行きのセットプラスが出るところだった。

ダカール行きのセットプラス

私は最後の1席に滑り込むことができた。

もし乗れなければ、もう1泊サン・ルイに泊まらなければならなかったので、これは幸運だった。

……と思ったのも束の間。

左後方のタイヤがパンクし、修理をする

途中で左後方のタイヤがパンクし、セネガルの田舎道で1時間ほど立ち往生。

周囲に店らしい店もなく、トイレも借りられそうにない。

でも、よくわからない民家のような場所でなんとか用を足し、空腹を紛らわせるために売店を探して集落をふらふら歩いた。

セネガルの田舎

そういえば今日は朝からストレスで吐き気がひどくて、何も食べていなかった。

暑さもあり食欲はなかったけれど、冷たいものなら食べられそうだったので、ジュースとヨーグルトで軽く昼食を済ませた。

宿トラブルでまさかの追い出し。ダカールの夜、行き場を失う

18時ごろ、セットプラスはダカール郊外・ピキンのバスターミナルに到着。

そこからAgodaで予約していた宿に向かうべく、YANGOでビラージュ地区へ移動した。

……が、到着したのは、宿の看板も何もない、ただの住宅街の一角。

念のためWhatsAppで宿に連絡すると、迎えの人がやってきたものの、案内されたのはまったく違う名前の宿だった。

チェックイン時に代金を確認すると、Agodaで表示されていた金額より1,000フラン高い。
しかも、最大の問題は部屋にエアコンがなかったこと。

Agodaのページには「エアコン完備」とはっきり書いてあったのに、実際には「エアコン付きの部屋に泊まりたいなら、さらに6,000フラン払ってください」と言われる始末。

──場所も違う、宿名も違う、料金も違う、設備も違う。

何もかもが違うので、「Agodaに確認させてください」と伝えると、突然スタッフが激昂。

私はそのまま、宿から追い出されてしまった……( ゚Д゚)

どうやら、実際にはBooking.com経由で処理された予約だったようで、宿側は「Agodaの情報なんて知らないし関係ない」というスタンスらしい。

Agodaは長年使っていて、ここまでトラブルになったのは初めて。

体調があまり良くなかったこともあり、エアコン付きの部屋で静かに休みたかったのに、本当にがっかりだった。

仕方なく、すぐ近くにある日本人宿「大和」へ。

お願いして一泊だけ泊めてもらうことにした。

原田さんは、突然の訪問にも関わらず快く迎えてくれて、私のドタバタな一日をじっくり聞いてくれた。

その温かさに、少しだけ救われた気がした。

大和の担々麺

夕食には、大和名物の担々麺。

前回食べて気に入っていたメニューで、今回もやっぱり美味しかった。

今日は本当にうまくいかないことばかりだったけど、最後に安心できる場所で眠れるのは、何よりの救いだった。

問題はこの先の予定だ。

本来なら、この後モーリタニアを2週間旅するつもりだったのに、その計画がすっぽり空いてしまった。

8月からは、モロッコのマラケシュ、シャウエン、タンジェをめぐり、ジブラルタル海峡を船で渡ってスペイン、ポルトガルへと向かう予定。

スペインやポルトガルでは、宿や交通機関が直前になると一気に値上がりするため、すでにすべて事前に予約済。

つまり、この先の行程はもう動かせない。

セネガルの田舎町でのんびり過ごすか?

隣国ガンビアをちょっと覗いてみるか?

いっそカーボベルデに飛んで、島でバカンスするか?

さまざまな選択肢が頭をめぐるけれど、気持ちはまだ整理しきれない。

今まで旅のスケジュールがここまで大きく崩れたことはなく、正直戸惑っている。

明日から、どうしよう……。

7月19日:使ったお金

ちなみに、モーリタニア用にESIMもネットで事前購入していたのに、結局使わずじまい。

地味に痛い出費だった……。

・タクシー代(宿→バスターミナル):1,000フラン(=263円)
・タクシー代(サン・ルイ→ディアマ国境):2,000フラン(=527円)
・タクシー代(ディアマ国境→サン・ルイ):2,000フラン(=527円)
・バス代(サン・ルイ→ダカール):6,000フラン(=1,582円)
・ジュース類:1,100フラン(=290円)
・タクシー代(バスターミナル→宿):3,100フラン(=817円)
・夕食代(担々麺等):10,000フラン(=2,636円)
・モーリタニアESIM(1GB):12ドル(=1,834円)

合計:8,476円

モーリタニアのe-Visa申請や、リジェクト・代行申請などの経緯については、以下の記事にも書いています。

よろしければ、あわせてご覧ください。