朝から吐き気とだるさがひどく、原因はおそらくマラリア予防薬ドキシサイクリンの副作用。
ナミビアから2ヶ月近く飲み続けてきたが、今になって頭痛や腹痛も出てきた。
ケニアを抜けた今も、あと10日は服用が必要だけど正直しんどい。
空腹を避けて「Pâtisserie Driss」で軽食を買い、食べ歩きしながら薬を飲んだ。
昼は気になっていた「Fishburger Essaouira」でシーフードバーガーを堪能し、午後は宿で休憩。
夜はオーナーの好意でレストランの料理教室に参加させてもらい、大好きな野菜タジンをアラビア語で教わった。
締めくくりはカフェ「Salma & Kaltoum」でグナワ音楽の生演奏を鑑賞。
体調は万全じゃなかったけれど、モロッコ文化をたっぷり体験できた一日だった。
朝から体調不良。ドキシサイクリンの副作用?
朝からなんだか気持ちが悪い。
ここ最近、こうした吐き気に悩まされる日が増えてきた。
原因はたぶん、マラリア予防薬のドキシサイクリン。
今までは副作用なんて出ていなかったから油断していたけれど、調べてみると、飲み始めて数週間後に症状が出る人もいるらしい。
私はナミビアから服用を始めて、もうすぐ2ヶ月。
ケニアのマサイマラ国立公園までは高リスクエリアだったけれど、セネガルのダカールやサン・ルイは、ほぼマラリアの心配はなさそう。
とはいえ、高リスク地域を離れてから28日間は薬を飲み続けないといけないルールがある。
つまり、本来なら8月上旬まで継続が必要。
でも、ここ最近の吐き気や頭痛、腹痛のなかで毎朝の服薬はつらい。
空腹で飲むと特に気持ち悪くなるので、今日は軽く何か食べようと朝食を買いに出かけた。

向かったのはフランス菓子店「Pâtisserie Driss」。
ショーケースには美味しそうなお菓子がずらりと並ぶ。

私は“源氏パイ”の元祖ともいえる「パルミエ」をテイクアウト。
エッサウィラは、午前中営業しているレストランが少ないので、食べ歩きしながら薬を飲んだ。
エッサウィラで話題のフィッシュバーガーを試す

12時半、ずっと気になっていた「Fishburger Essaouira」がようやくオープン。

フィッシュバーガーを注文し、付け合わせにはアボカドディップ、飲み物はジンジャー&レモネードのジュースを選んだ。
セットで80ディルハム(=1,312円)。
出てきたバーガーは、あのマクドナルドのフィレオフィッシュとは比べ物にならないくらい美味しい!
さすがシーフードの街エッサウィラ。
本調子ではなかったけれど、ぺろりと完食できた。
宿のシェフにアラビア語で習う野菜タジンづくり
午後は無理せず宿で昼寝して、19時になったら宿のレストランへ。
実は最近、モロッコ料理の料理教室に参加したいと思っていたのだけど、どこも5,000円以上と高額。
迷っていたところ、宿のオーナーに相談したら「うちのレストランで教えてあげるよ」と提案してくれた!
費用は料理の注文代だけでOK。
なんてありがたい…!
シェフのアミノさんは英語が話せないので、指導は完全アラビア語。
でもマンツーマンで教えてもらえるなんて、こんな機会そうそうない。
メニューは、私の大好きな野菜タジン。
まずは野菜の皮をむいて、玉ねぎ、トマト、ナヴェ(カブ)、人参、ズッキーニ、じゃがいもを切っていく。

続いて、タジン鍋に玉ねぎとトマトを敷き、上から香辛料をふりかける。
アラビア語まじりの説明だったので完璧にはわからなかったけれど、サフラン、シェンジェビ(たぶん乾燥ショウガ)、胡椒、テンメラ(パプリカパウダー)、塩、オリーブオイルが入っていた。

そのあと、切った野菜を鍋の中に円錐状に高く盛りつけていく。
モロッコでは、野菜を山のように積み上げる“山盛りスタイル”のタジンが主流。
ピラミッドのような美しいフォルムに仕上がっていく様子は、まるで芸術作品みたいだった。
仕上げに、みじん切りにしたコリアンダーをぱらぱらとふりかける。

オリーブを飾り、てっぺんにはライムをちょこんとのせて、盛りつけ完了!

次は調理へ。蓋を閉じて火にかける。
タジン鍋は、底が広くて浅い器と、上に向かってすっと伸びた円錐形のフタが特徴のモロッコの伝統鍋。
蒸気がフタの中で循環し、上部で冷えて水滴となって食材に戻る構造で、水を加えなくても素材の旨みと水分だけでじっくり煮込める。
少ない水と燃料で調理できる、この独特な形こそが、砂漠の暮らしの知恵の結晶なのだ。

火にかけて5分ほど経ったところで、小さなおちょこに水をすこしすくい、鍋の中に静かに注ぎ入れる。
さらに20分ほど煮込むと、野菜に火が通り始める。

フォークで刺してやわらかさをチェック。

最後に、オリーブオイルをおちょこ半分ほど回しかけて──野菜タジン、完成!

こうして完成した野菜タジンは、シンプルで優しい味。
ウズベキスタン、ヨルダン、エジプトでは、こってり系の料理が多くて胃もたれしがちだった私が、モロッコではどんどん食に挑戦できている。
野菜タジンや野菜クスクスなど、肉を使わないメニューが豊富で、スパイスも香りづけ程度。
だから体調がすぐれない日でも安心して食べられる。
ミントティーも添えて、お会計は65ディルハム(=1,066円)。
アミノさんには、感謝の気持ちを込めてチップを渡したら、「シュクラン!」と満面の笑みを返してくれた。
観光客向けの英語料理教室もいいけれど、こうして地元の人に教えてもらえる体験は、心に残るものがある。
今回はタジン鍋を買って帰るのは難しいけれど、日本で買って、またこの味を再現してみたいと思った。
食後はグナワ音楽のリズムにひたる夜

夕食後、モロッコの伝統音楽「グナワ(Gnawa)」の演奏ショーがあるカフェ「Salma & Kaltoum」へ。
ミントティー(40ディルハム=656円)を注文すれば、店内で演奏が楽しめる。
グナワ音楽は、アフリカのサブサハラ地域にルーツをもつ黒人奴隷の子孫によって受け継がれてきたもの。
かつては宗教儀式や癒し、トランス状態を目的とした儀式音楽として演奏されていた。
使われる主な楽器は、3本弦のベースのような「ゲンブリ」と、金属製のカスタネット「クラクェブ」。
この2つの音が繰り返し重なり合い、特徴的なリズムを作り出している。
現在では、こうした演奏はフェスや観光客向けのカフェなどでもよく見られるが、もともとはスーフィズム(イスラム神秘主義)とアフリカの信仰が交わる宗教的な音楽だった。
エッサウィラでグナワ音楽が広く根づいているのは、この街の歴史と関係がある。
かつてこの港町は、サハラ砂漠を越えてきた交易キャラバンの終着点だった。
西アフリカからは、塩や金、象牙などとともに、人も運ばれてきた。
黒人奴隷はこの港からアメリカ大陸に送られることもあり、そうした歴史の中でグナワのルーツが形成されていった。
彼らのリズムや歌が、モロッコのスーフィズムと結びつき、「グナワ音楽」として受け継がれてきた。
今でもその演奏には、宗教的な要素や儀式的な構成が残っている。

ショーの合間に、演奏に使われていた「クラクェブ(qraqeb)」をちょっとだけ持たせてもらった。
見た目はシンプルだけど、実際に手に取ると意外とずっしり重い。
カチャカチャとリズミカルに鳴らすには、コツが必要で、慣れないと全然うまく鳴らせなかった。
あんなに長時間、歌いながら演奏してくれていたミュージシャンたちは、かなりの重労働だったと思う。
最後に、チップボックスへ心ばかりのお礼を入れてカフェをあとにした。
今日は、タジン鍋の料理教室に始まり、夜はグナワ音楽の鑑賞まで、モロッコ文化をたっぷり体験した一日だった。
エッサウィラという街の奥深さを、また少し知ることができた気がする。
7月28日:使ったお金
今日は宿を延泊したため、出費はやや多め。
でも、宿のオーナーが値引きしてくれて、ラッキーだった。
・パルミエ:7ディルハム(=114円)
・昼食(フィッシュバーガー):80ディルハム(=1,312円)
・宿代(2泊分):360ディルハム(=5,908円)
・夕食代(タジン等):65ディルハム(=1,066円)
・料理教室チップ:40ディルハム(=656円)
・音楽カフェ:40ディルハム(=656円)
・チップ:40ディルハム(=656円)
合計:10,368円