モロッコ滞在最終日は、シャウエンで知り合ったタンジェ在住の大学生・ウサマとキャメルと再会。
待ち合わせから、スペイン風情漂う街並みを歩き、高台のフェニキア人の墓や老舗カフェ「Café Hafa」へ。
ジブラルタル海峡越しにスペインを望む絶景に浸ったあとは、シェアタクシーで大西洋と地中海の境界を示す標識、そして神話と自然が交わるヘラクレス洞窟へ。
隣の「芸術の洞窟」ではグナワ音楽に耳を傾け、色鮮やかな装飾と不思議な空間を楽しんだ。
帰り道に立ち寄ったルミラ公園では、海を見渡す展望台やローカル価格でのヘナタトゥー体験も。
観光の合間に交わした教育や移民、国境の町セウタの話は、旅人の私にとって何よりも貴重な時間だった。
モロッコ人の優しさと温かさを心から感じられる、最高のしめくくりとなった一日だった。
高台のフェニキア人の墓と隣の絶景カフェ・ハファ
今日は、シャウエンで知り合ったタンジェ在住の大学生・ウサマとキャメルと遊ぶ約束。
10時に待ち合わせ場所のCinéma Rifで落ち合い、そのまま海の眺望が美しい人気カフェ「Café Hafa」を目指して歩き出した。

Grand Socco周辺の街並みは、どこかスペインの港町を思わせる。
モロッコ北端の港町タンジェは、かつて国際都市として複数の国が共同管理していた歴史を持つ。
20世紀半ばまでは外国人居留地が広がり、ヨーロッパや中東、アフリカの文化が入り混じった独特の空気が漂っていた。
その名残は今もカフェ文化や街並みに色濃く残り、白壁やバルコニーが連なる景色はまるでスペインのようだ。

街を20分ほど歩くと、高台にある「Phoenician tombs(フェニキア人の墓)」に到着。
ここは地中海を望む断崖に残る古代遺跡で、およそ2,000年前、海上交易で栄えたフェニキア人が岩をくり抜いて造ったとされる墓が今も静かに並んでいる。

この高台からはジブラルタル海峡の向こう、スペインのアンダルシア地方まで一望できる。
すぐ隣には目的地のCafé Hafaがあり、そのまま歩いて向かった。

1921年創業の老舗カフェ「カフェ・ハファ」は、海沿いの斜面に白いテラス席が段々畑のように広がる。
目の前にはジブラルタル海峡が開け、晴れた日には遠くスペインの海岸線もくっきり見える。

日陰席を探して屋根の下へ向かったが、混雑していてなかなか空きが見つからない。
この季節は日向なら暑く、日陰なら風が冷たくて肌寒いという極端な環境。
それでも日陰は潮風が心地よく、涼しい空気に包まれてほっとできる場所だ。
結局屋根のある席に落ち着き、時おり吹き抜ける風に肩をすくめながらも、気持ちよさを味わった。
クレープ、オレンジジュース、ミントティーを注文したものの、混雑のせいかクレープは最後まで届かず…。
そんな中、「この後どうする?」と話していたら、2人がヘラクレス洞窟を勧めてくれた。
古代フェニキア時代から使われていたとされ、アフリカ大陸の形をした出口で有名な観光スポットだという。
シェアタクシーを乗り継いで行けるとのことで、行き先が決まった。
大西洋と地中海が交わる場所、ジブラルタル海峡の標識へ

シェアタクシー乗り場から車に乗り込み、まずは中間ポイント「Signpost of Atlantic & Mediterranean」へ向かう。

ここはジブラルタル海峡に面し、大西洋と地中海の境界を示す標識が立つ場所。
青い海と広い空を背景に、二つの海が出会う地点を実感できる人気のフォトスポットだ。
神話と自然が出会うスポット、ヘラクレス洞窟探訪

再びシェアタクシーに乗り、ヘラクレス洞窟近くのロータリーへ。
ここはシェアタクシーの乗り場にもなっている。

洞窟の前は長蛇の列。
空腹だった私は、2人に並んでもらい、その間にクレープを買いに行った。


nutellaソース&バナナのクレープ(35ディルハム=571円)は、ソースがたっぷりかかり激甘仕様。
半分ほど食べたところで、ようやくチケットカウンターに到着。
外国人入場料は80ディルハム(=1,305円)と高めだが、30歳までのモロッコ人は無料らしく、ウサマたちはタダで入れていた。

ヘラクレス洞窟は、タンジェ郊外の海岸にある大きな海食洞で、ギリシャ神話の英雄ヘラクレスが休んだと伝えられる場所。

中に入ると岩をくり抜いた広い空間が広がり、海側にはアフリカ大陸の形に見える…と言われる出口がある。
ただし、見る角度によっては「そうかな?」と首をかしげる程度。
それでも波音と光が作る景色は美しく、神話と自然の両方を感じられるひんやりとした空間だった。
見学はあっという間に終わったが、隣にもう一つ気になる洞窟があった。
「مغارة الفنون(マガラ・アルフヌーン/芸術の洞窟)」という小さな展示と音楽空間を兼ねた施設だ。
入場料は5ディルハム、ウサマが払ってくれた。

入口には現国王を中心に歴代の王の顔が描かれた装飾品が飾られ、階段を下るとカラフルな装飾の中でグナワ音楽の演奏者が鉄製のカスタネットや弦楽器を奏でていた。

独特のリズムと歌声が洞窟内に響き、耳と肌で音を感じる。

さらに、アフリカ大陸の形をかたどった大きなフォトスポットもあり、本物の洞窟出口と見比べるのも面白い。

蒸し暑い内部ではあったが、観光の合間に立ち寄る寄り道スポットとしては十分に楽しめる、不思議で印象的な空間だった。
ルミラ公園で味わう絶景とローカル価格のヘナ
ヘラクレス洞窟を見たあとは、タンジェへ戻る道中にあるRmilat Park(ルミラ公園)へ、シェアタクシーで向かった。

タンジェ郊外の高台に広がる緑豊かな公園で、週末ともなるとモロッコ人の家族連れや友人グループが木陰でピクニックを楽しみ、あちこちから笑い声が響く。
ローカル色が濃く、とてもにぎやかだ。

園内の遊歩道を進むと、地中海を一望できる展望ポイントに出る。
海風が心地よく、遠くにスペインの海岸線まで見渡せた。

道端にはヘナタトゥーを施してくれる女性がいて、ウサマがアラビア語で料金交渉をしてくれたおかげで、ローカル価格の25ディルハム(=408円)に。
エッサウィラでは100ディルハム払ったことを話すと「高すぎ!」と笑われたが、外国人観光客の相場はそんなものだ。
外国人の姿が皆無の公園で、ローカル価格で描いてもらうのは、現地の人の協力があってこそ。
かわいいベルベル模様を右手に描いてもらい、気分も上がった。
学生との語らいとサンドイッチ、タンジェ最後の夜
散策を終え、再びシェアタクシーに乗ってタンジェ中心地へ戻る。
この日だけで4回シェアタクシーに乗ったが、すべてウサマとキャメルが支払ってくれていた。
1回あたりの料金はシェアすれば一人10ディルハム、乗り合い相手がいない区間は3人で50ディルハムほど。
ヘラクレス洞窟の隣の謎施設の入場料も出してくれ、本当に申し訳なくなり、夕食は私がごちそうすることにした。
2人は最後まで払おうとしてくれたが、大学生に甘えっぱなしではいられない。

夕食はタンジェ新市街のファーストフード店で、サンドイッチとポテトのセット。
思ったよりボリュームがあり、少し残してしまったが味は満足。
この一日、観光しながらモロッコの教育制度、ヨーロッパへの移民問題、スペイン領セウタの話など、現地の視点で聞く貴重な話をたくさんしてくれた。
観光も楽しかったが、何より彼らとの会話がこの日のハイライトだった。
モロッコ最終日に、偶然にもディープな一面に触れ、モロッコ人の優しさを肌で感じる締めくくりができた。
「また来たい」「もっと知りたい」という思いが自然と湧き上がる。
別れたあと、余っていた600ディルハムを両替所でユーロに換金。
60€(=9,823円)で、ほぼジャストレート。
明日はタンジェから約45km離れた新港へ向かうので、万一に備えて手持ちのディルハムも少し残しておくことにした。
明日はいよいよ3ヶ月以上滞在したアフリカ大陸を離れ、ジブラルタル海峡を船で渡ってスペイン・アルヘシラスへ。
少し寂しさはあるが、一気に文化圏が変わるその瞬間を楽しみにしている。
8月10日:使ったお金
11日に払ったバイクタクシー、バス代、朝食代は、モロッコでの合計に含めるため10日分に計上します。
・カフェ代(オレンジジュース&ミントティ):40ディルハム(=652円)
・クレープ:35ディルハム(=571円)
・ヘラクレス洞窟入場料:80ディルハム(=1,305円)
・水3本:15ディルハム(=244円)
・ヘナタトゥー:25ディルハム(=408円)
・夕食(サンドイッチセット×3人分):180ディルハム(=2,937円)
・バイクタクシー(宿→バス乗り場):20ディルハム(=327円)
・バス代(タンジェ→タンジェ新港):8ディルハム(=130円)
・朝食代(サンドイッチ等):30ディルハム(=491円)
合計:7,065円
これまでの旅費の合計

セネガルからモロッコまでの旅費の合計は、261,933円でした。
・航空券代(ダカール→カサブランカ):72,602円
・モロッコでの滞在費(21泊):クレカ払い53,081円+キャッシング149,277円−返金13,027円=189,331円
合計:261,933円
日本出国からモロッコまでの旅費の総合計は、1,721,362円でした。
※キャッシングで入手した750ディルハムは、73.5ユーロ(=12,149円)に両替した。
8月10日両替分600ディルハム=60ユーロ(=9,823円)
8月11日両替分150ディルハム=13.5ユーロ(=2,326円)