【30】ワディラム脱出戦記 徒歩8km、砂漠をなめたバックパッカーの末路(2025.5.3)

ヨルダン

午後、のんびり過ごしたキャンプ地をあとに、ワディラム・ビレッジへ向かった私。

村人たちと笑い合い、次の目的地・アカバへ向かうべく、8km先のビジターセンターを目指す。

「ヒッチハイクとか、ちょっと無理」──そんな慎ましき乙女心が、地獄の徒歩移動を招いた。

ワディラム・ビレッジから8km先のビジターセンターまで、日陰ゼロ、照り返しマシマシの砂漠をひとり黙々と歩く羽目に。

横を爆走するジープに怯える…え、これって修行?サバイバル?いや、もう無理!(‘A`)

そんな限界寸前の私の前に現れた、ひとすじの光──今日は、砂漠をなめてかかった旅人がとことん試され、そして救われた、そんな1日。

旅人は私ひとり|砂漠の朝に取り残されて

連日の疲れが溜まっていたのか、キャンプ泊とは思えないほどぐっすり眠れた。

ヨルダンは、ペトラ遺跡にワディラム砂漠と、アドベンチャー要素の強い観光地が多く、体力の消耗が激しい。

正直、年をとってからこのルートを回るのはきついだろうなと思う。

食堂

朝、食堂へ。

ビュッフェ形式の朝食

朝食はビュッフェ形式で、卵はその場で焼いてくれる。

朝食

朝食はパン、チーズ、フムス、野菜、卵など。

食堂内


食堂は岩壁を活かした造りで、まるで自然の中で食事をしているような気分になれる。

ワディラム砂漠から次の目的地アカバへ行くには、、ビジターセンターから出発する19時発のJETTバスか、相乗りタクシーの2択。

タクシーは相乗りができなければ高額になるため、私は事前にJETTのバスをネットで予約していた。

ただこの日は宿泊者も多く、アカバへ向かう人も複数いたので、実際はタクシーでも問題なかったかもしれない。

ビジターセンターには特に何もないため、早く着いても暇を持て余すだけ。

そこで私は、朝はキャンプでゆっくり過ごし、昼からビレッジを散策してから自力でビジターセンターへ向かうプランにした。

朝、仲良くなったマルコやマックスたちが去っていき、キャンプ地には私ひとりが取り残された。

昼まで、テントの写真を撮ったり、食堂で眠ったりしながらくつろいで過ごす。

Wadi Rum Fire Camp

Wadi Rum Fire Campにはたくさんのテントがあり、昨夜はほぼ満室だったと思う。

逆に今夜の宿泊者は10人ほどとのことで、日によって人数に大きな差があるらしい。

朝、名物のザルブの仕込み風景が見られるかと期待していたが、宿泊者が少ない日は作らないようで、今回は無し。

私は前夜、かなりラッキーだったようだ。

テント

テントは鉄骨組のしっかりした造り。

電源はないため、スマホの充電は食堂のコンセントで行った。

ちなみにキャンプ地はインターネット圏外。

キャンプファイヤー場

昨日、キャンプファイヤーをした場所は、日中は暑すぎて近寄れない。

バスルーム

バスルームは男女別で、トイレ・シャワーがそれぞれ2つずつ。

シャワールーム

シャワーは太陽熱温水器でお湯が出るようになっているが、朝使った人によると水しか出なかったらしい。

シャワーを浴びるなら夜が良さそうだ。

太陽熱温水器
ソーラーパネル

電気はもちろんソーラーパネルでまかなっている。

食堂

テントの中は暑いため、私は食堂で横になって惰眠をむさぼっていた。

山羊の放牧

突然、山羊の鳴き声が聞こえてくる。

キャンプで飼っている山羊たちが放牧されたようで、一斉に檻から出てきた。

草を求めて歩き出す山羊

観光客の食べ残しを漁り始めたので、スタッフが追い払うと、草を求めて遠くへ歩いていった。

12時頃、「そろそろビレッジに行きたい」と伝えると、スタッフが車を出してくれた。

年季の入ったジープ

やって来たのは、今にも壊れそうな年季の入ったジープ。

送迎は基本的にビジターセンターまでだが、私は「ビレッジでいい」と言ってしまった。

スタッフは何度も、「本当にビレッジでいいのか?そこから先はヒッチハイクしかないぞ?」と念を押してきた。

今思えば、ここで素直にビジターセンターを選んでおけばよかったのだが…当時の私は完全に砂漠をナメていた。

ジープで砂漠を走る
ビレッジ

ジープで走ること数分、ビレッジが見えてきた──。

優しさに包まれた砂漠の村|ベドウィンとの交流

ビレッジに着き、昨日ジープを降りたMEETING POINTの近くまで戻ってくると、まずは腹ごしらえをしようとレストランへ向かった。

レストラン

ビリヤニとチキンのランチの値段を聞いたら、まさかの7ディナール(=1,434円)。

た、高すぎる…(‘A`)

「高い」と言うと、5ディナールまで下がったけど、それでもまだ高い。

外国人だからって、こんなにふっかけられるのかとショックを受け、近くのベンチに腰を下ろす。

ベンチで休憩しているベドウィン

そこには何人かのベドウィンが休んでいて、うなだれている私を見て「気の毒に」と同情してくれた。

なんと「代わりにテイクアウトしてきてあげるよ」と申し出てくれる。

彼らが買えば、同じお弁当が2.5ディナール(=512円)らしい。

ありがたくその申し出に甘えてお金を渡すと、ひとりのベドウィンが買いに行ってくれた。

売店

隣の売店でコーラを買ったら0.5ディナール(=102円)。

それを伝えると、

「俺たちが買ったら0.25ディナールなのに〜(笑)」

…とは言われたけど、これ以上お世話になるのも申し訳なくて、遠慮した。

ビリヤニとチキン

ベドウィンのお兄さんが買ってきてくれたお弁当は、3〜4人前はありそうなボリューム。

ヨーグルトまでついていて、さすがに全部は食べきれず、四分の一ほどでギブアップ。

おしゃべりしながらベドウィンと一緒に食事をしていたら、なんとデザートにアイスまでごちそうしてくれた。

ベドウィンからもらったアイス

灼熱の砂漠で食後に食べた冷たいアイス、もう最高に美味しかった。

お礼を言ってバックパックを背負い、再び村歩きスタート。

ビレッジ

チキンでベタベタになった手を洗いたくて、通りがかった民家で水道を借りると、「家に上がってお茶でも飲んでいきなよ」と招かれた。

ベドウィンティー

家では少年が甘いお茶を出してくれて、家主としばらく談笑。

この村には小学校はあるけれど、高校はなくて、進学するにはアカバまで通っているのだとか。

村の暮らしの一端を聞くことができて、ほっこりした気持ちになった。

スーパーマーケット

近くのスーパーを覗くと、店番をしているのはなんと子どもたち。

挨拶して外に出ると、少女がジュースを手に追いかけてきた。

少女からもらったジュース

「これ、あげる」

…と笑顔で渡されたジュース。

「シュクラン!(ありがとう)」とお礼を言って、ありがたくいただく。

アイスに紅茶、そしてジュース。

村人の優しさに包まれたひとときだった。

村のはずれは砂漠

村の外れまで歩くと、そこから先はもう砂漠。

観光客を乗せたジープが、各キャンプや観光地へと砂煙をあげて走っていく。

村にいたらくだ

ラクダもいたけど、野良なのか飼われているのかは不明。

とにかく、のどかで不思議な光景だった。

炎天下の砂漠をひとり歩く|徒歩8kmの地獄旅

再び村の入口、MEETING POINTに戻ってきた。

さて、これからどうしよう?

ビジターセンターまではタクシーがいないので、移動手段はヒッチハイクのみ。

でも女ひとりでヒッチハイクはさすがに怖い。

「10ディナールで送ってやるよ」と言うベドウィンもいたけど、最終的に5ディナールに値下げされても、気が進まなかった。

そして私は…徒歩を選んでしまった。

ビジターセンターまでの道

村からビジターセンターまでの距離は約8km。

炎天下、日陰ゼロ、直線一本道。

横を猛スピードでジープやトラックが駆け抜けていくたびにビクビクしながら、黙々と歩き続けた。

照り返しがきつくて、体力もどんどん奪われていく。

途中休憩しながら歩く

重いバックパックが肩に食い込み、痛い。

休憩しつつ歩くも、GPSの現在地は一向に進まない。

…これ、修行?サバイバル?いやもう無理!!!(‘A`)

そんなとき、一台の車が通り過ぎたかと思ったら、少し先で急停車し、ものすごい勢いでバックしてきた。

車内にはヨルダン人男性と、欧米女性3人。

ワディラムを旅行中らしく、「この道は危ないから、乗っていきなよ」と声をかけてくれた。

神様ァ~~~(ノД`)

男性ひとりなら警戒するところだったけど、女性が3人も同乗していて、同じ旅行者っぽい。

これは安心と判断して、ありがたく乗せてもらうことに。

車は風のような速さで、あっという間にビジターセンターへ。

車窓から見える道を見て、「私、これを歩こうとしてたのか…」と己の愚かさに愕然。

もう無茶なことはやめようと心に誓った。

ビジターセンター

お礼を言って車を降り、まず向かったのはビジターセンター内のレストラン。

レストラン

館内は涼しいエアコンとWi-Fi完備。

ここでバスの出発時間までブログを書きながら待つことに。

テラス席

夕方になるとレストランは閉まったけど、テラス席は使えるし、Wi-Fiも届く。

場所を移動して、引き続き作業タイム。

JETTのバス

19時、ビジターセンター前にJETTのバスが到着。

アカバまでは約1時間の道のり。

車内では、ワディラムから脱出できた安堵感から爆睡。

安堵と疲労に包まれて|アカバへの帰還バス旅

Jordan Express Tourist Transportation (JETT) Ticket Office

バスはアカバの「JETTチケットオフィス」前に到着。

そこから歩いて宿へ。

荷物を置いて、遅めの夕食をとるべく近くのローカルレストランへ。

Al Mohandes Cafeteria

人気のローカル店「Al Mohandes Cafeteria」へ。

シュワルマやファラフェルが有名なお店。

シュワルマ

今日1日を振り返りながらシュワルマをかじる。

なんとかアカバまでたどり着けて、本当に良かった…。

明日はついに、エジプトへ向かうフェリーチケットを買いに行く。

無事にチケットが手に入るのか、不安と期待を抱えながらこの日は眠りについた。

5月3日:使ったお金

ワディラム砂漠のキャンプ代はジープツアー込みで55ディナール。

あの内容なら、かなりお得だと思う。

・キャンプ宿泊&ツアー代:55ディナール(=11,283円)
・昼食代(お弁当):2.5ディナール(=512円)
・コーラ:0.5ディナール(=102円)
・紅茶:2ディナール(=409円)
・バス代(ワディラム→アカバ):15ディナール(=3,119円)
・夕食代(シャワルマ):1.8ディナール(=369円)

合計:15,794円