ツアーではあまり行かない、ちょっとマニアックなルクソール巡り。
今日は配車アプリ「inDrive」でタクシーを3時間チャーターして、ルクソール西岸のディール・エル=メディナとカーター・ハウスを巡った。
ディール・エル=メディナは、古代エジプトの職人たちが暮らしていた村で、色鮮やかな壁画が残る小さな墓をじっくり見学。
そのあとは、ツタンカーメン王墓を発掘したハワード・カーターが当時拠点としていた「カーター・ハウス」へ。
館内は発掘当時の雰囲気をそのまま残し、まるで100年前にタイムスリップしたような空間だった。
午後は涼しいレストランでブログを執筆しながらひと休み。
夕方からは宿のすぐそばにあるルクソール神殿へ。
ライトアップされた神殿の巨大な列柱やレリーフが、夜空の下に浮かび上がり、古代の神話を静かに語りかけてくる。
夕食をすませ、シャワーを浴びたら、いざ夜行バスでカイロへ。
――どうか、ダハブの時みたいな変な人に遭遇しませんようにと祈りながら。
今日は王道の観光ルートを少し外れた、ルクソールの“裏道”を楽しむ一日だった。
墓をつくった人々が暮らした村|ディール・エル=メディナへ

朝、宿の屋上で朝食をとりながら今日の計画を練る。

気温は今日も40度超え。
日中の観光はなるべく避けたいけれど、どうしても行きたい場所があった。
それが、ツタンカーメンの墓を発掘したカーターが暮らしていた「カーター・ハウス」と、その近くにある職人たちの村「ディール・エル=メディナ」。
どちらも西岸の外れにあり、一般的なツアーには組み込まれにくい。
自力で行くには、タクシーをチャーターするしかない。

そこで、配車アプリ「inDrive」で、3時間の貸し切りタクシーをリクエスト。
料金は300ポンドに設定し、コメント欄に「2ヶ所の観光、3時間チャーター希望」と記入するとドライバーとマッチング。
ところが、合流したドライバーは「20ドル(=約1,000ポンド)じゃないと無理」と言い出した。
そんな高額、払えるわけがない。
しばらく押し問答が続き、最終的に400ポンド(=1,143円)で折り合いがついた。
チャーターでも、価格交渉をしなくて済むのがアプリの利点だと思っていたのに、ちょっとがっかり。
……と思いきや、出発するとドライバーの態度は一変。
「素晴らしい旅になるよう最善を尽くす」と満面の笑み。
さっきまでの強気はどこへやら。
拍子抜けしつつも、気を取り直してまずはチケット売り場「Antiquities Inspectorate Ticket Office」へ向かい、2ヶ所分の入場券を購入してから、最初の目的地へ。

ルクソール西岸にひっそりと佇む、ディール・エル=メディナ(Deir el-Medina)。
ここはかつて、王家の谷の墓を造るために集められた職人たちが暮らしていた場所。
規則正しく並ぶ住居跡を歩いていると、3000年前にこの地で営まれていた日常がふとよみがえるような気がする。
村の背後には、職人たち自身のために築かれた小さな墓がいくつも並んでいる。

一見地味な入口だが、中に入ると驚くほど鮮やかな壁画が広がっていた。




神々や冥界の場面、祈る人々の姿が壁一面に描かれ、息をのむ美しさ。
王族の墓ではなく、一般の職人たちの墓でこれほどまでに精緻な装飾が施されていることに驚かされる。

敷地内には、小さなハトホル神殿も残されており、内部のレリーフからは当時の信仰の息遣いが感じられた。

観光客もまばらで、遺跡全体に“暮らし”の痕跡が色濃く残っている。
王や神ではなく、墓を造った人々の物語にふれたいなら、ここは見逃せない場所だ。
ツタンカーメン発掘の舞台|カーター・ハウスを訪ねて
次に向かったのは、砂漠のなかにひっそりと建つ一軒家。
ツタンカーメン王墓を発掘したハワード・カーターが、実際に滞在していた「カーター・ハウス」。

外観は、茶色い土壁と平たい屋根のシンプルな造り。
まわりの風景に溶け込んでいて、ここに歴史を動かした人物が暮らしていたとは思えないほど静かなたたずまいだ。

内部には、当時の寝室やダイニングが再現されており、100年前の生活や発掘の様子がリアルに伝わってくる。


とくに印象に残ったのが、カーターが自ら描いた一枚の絵画。
幻想的な雰囲気の女性像で、繊細なタッチと優しい色使いに見入ってしまった。
考古学者であると同時に、芸術家としての才能もあったことが伝わってくる。

また、ツタンカーメン王墓を発見した当時の写真も展示されていた。
副葬品が山積みにされた墓室、黄金の棺に顔を近づけるカーターの姿――。

教科書でしか知らなかった発掘の瞬間が、ここでは“現実の記録”として静かに語りかけてくる。
ただの資料館ではなく、発掘の裏側にある人間ドラマや探求の情熱を感じられる、考古学ロマンの聖地だった。

昼過ぎ、強烈な日差しのなか観光を終えて宿へ戻ると、すぐにシャワーを浴びてひと息。
その後、近くのレストラン「Chicken Broast」でラップサンドのランチ。
冷房の効いた店内で、ブログを書きながら夕方までのんびりと過ごした。
昼と夜で姿を変える|ライトアップされたルクソール神殿
日が傾き始めた19時頃、宿から歩いてすぐのルクソール神殿へ向かう。
この時間帯の神殿訪問は本当におすすめ。
夕暮れ時の空がまだほんのり明るいあいだは、壁画やレリーフをしっかり見学できるし、やがて日が落ちると、ライトアップされた幻想的な神殿の姿に一変する。
しかも暑さが和らいで、歩くのも快適。
昼間の灼熱を避けながら、昼と夜の“2つの表情”を楽しめる、まさに一石二鳥の時間帯。

神殿の入口に立つのは、堂々とそびえる片方だけのオベリスク。
もともとは一対だったが、もう片方は現在フランス・パリにあるという。

中庭を抜けてさらに奥へ進むと、巨大な列柱廊が姿を現す。
夕暮れの光に照らされた列柱は、オレンジ色に染まり、どこかあたたかみのある表情を見せていた。
しかし太陽が沈み、空が夜の帳に包まれると、その姿はがらりと変わる。

やがてライトが灯ると、列柱は闇の中に静かに浮かび上がった。
照明に照らされた石の柱は、昼とは違う重厚な雰囲気をまとっている。
同じ場所でも、光の当たり方ひとつで印象が大きく変わることに驚かされる。

ライトアップされたツタンカーメン王とその妻アンケセナーメンの坐像。
精緻な装飾や穏やかな表情に、少年王がこの神殿に関わっていた痕跡が今も静かに残されている。

神殿の出口には、無言で佇むスフィンクスたち。
古代から続くスフィンクス参道は、まるで過ぎ去った時代を見守り続けているかのようだった。
スーク散策と絶景レストラン|そして夜行バスでカイロへ

観光を終えたあとは、ルクソールのスークを少し散策。
そして向かったのは、人気レストラン「Al Sahaby Lane Restaurant」。

ナイル川や王家の谷の岩山、ルクソール神殿まで見渡せる最高のロケーション。

注文したのは、フルーツサラダとトマトスープ。
灼熱の一日で食欲はなかったけれど、冷たいフルーツと温かいスープは、ほてった体に優しくしみわたった。

夕食後、宿でシャワーを浴びてから夜行バスの乗り場へ。

事前にGo Busの公式サイトで、ルクソール発カイロ行きのバスを予約。

今回はビジネスクラスDDの1列シートを選択。

モニター付きで、イヤホンがあれば映画も観られる。
バスは22時32分に出発。
カイロまで約10時間の夜行移動。
――どうか、ダハブの時みたいな変な人に遭遇しませんようにと、心の中でそっと祈りながら乗り込んだ。
5月20日:使ったお金
この日はタクシーをチャーターして、西岸の2ヶ所を効率よく観光できたのが良かった。
夜行バスで移動したため、宿代も節約。
・ディール・エル=メディナ入場料:220ポンド(=628円)
・カーター・ハウス入場料:220ポンド(=664円)
・チップ(2回分):30ポンド(=85円)
・タクシー代(3時間チャーター・チップ込):420ポンド(=1,200円)
・昼食代(チキンラップ等):80ポンド(=228円)
・ルクソール神殿入場料:500ポンド(=1,509円)
・夕食代(トマトスープ等):215ポンド(=614円)
・歯磨き粉:20ポンド(=57円)
・バス代(ルクソール→カイロ):700ポンド(=2,101円)
・荷物チップ:10ポンド(=28円)
・トイレチップ:20ポンド(=57円)
合計:7,171円