今日は、待ちに待ったナミブ砂漠をめぐる一日。
早朝、サファリカーでまずは「DUNE 1」へ。
そして次に挑んだのは、高さ300m超を誇る巨大砂丘“ビッグダディ”。
見上げるだけで圧倒される巨大な砂丘だけど、なんとか登頂!
頂上からの眺めはまさに絶景。
帰りは一気に駆け降りて、まるで砂のジェットコースター!
続いて訪れた“デッドフレイ”は、白い塩の大地に黒い枯れ木が並ぶ幻想的な場所。
静寂の中、突然の雨に降られるというレアな体験も。
その後は、ソーサスフレイでの優雅な朝食ピクニック。
砂漠の真ん中で味わう朝ごはんは、心に残る贅沢なひとときだった。
夕方には、ゲート内宿泊者だけが見られる“夕暮れのエリム砂丘”へ。
夕日に染まる砂丘は、昼間とは別世界のような美しさで、この日を締めくくる最高の景色だった。
今日は、時間とともに姿を変えるナミブ砂漠の魅力をたっぷり堪能した1日。
極寒の夜明けからスタート!ナミブ砂漠ツアー出発
実はキャンプ初日の夜、あまりの寒さにほとんど眠れなかった。
昼間は長袖1枚で過ごせるくらい暖かかったのに、日が沈むと気温が急降下。
ダウンを着ていても寒く、深夜はおそらく1〜2度ほど。
寝袋にくるまっても足先が冷えきって眠れず、何度も目が覚めた。
前日もこのキャンプ場に泊まっていたワッキー夫妻いわく、「昨日の夜はそこまで寒くなかったよ」とのこと。
どうやら私はピンポイントで寒波を引き当てたらしい。
6月のナミビアは冬。
昼と夜の気温差だけでなく、日による寒暖差も激しくて、服装選びに本当に悩む。

それでも、寒さに震えながらなんとか起き出し、ツアーの集合場所であるセスリエム・キャンプサイトのレセプション前へ。
セスリエム・ゲートの開門は7時半。
ちょうどそのタイミングでツアー会社のサファリカーが迎えに来てくれた。
乗り込んでいたのは、南アフリカから来た仲良し夫婦のエレサンとエヴァン、そしてガイド兼ドライバーのサキ。
今日はこの4人でナミブ砂漠をめぐる。

途中、砂漠の地平線から朝日が昇るタイミングで車を止め、さっそく撮影タイム。

遠くの空には気球も浮かんでいて、まるで絵本のような世界が広がっていた。
(ちなみにこの気球、めちゃくちゃ高額らしく、欧米から来た富豪の遊びとのこと。神々のアクティビティだ…)

ツアーに使われたのは、いわゆる「サファリカー」と呼ばれる四駆のオフロード車。
高い車体に大きなタイヤ、砂地でも力強く進む頼もしい相棒だ。
窓ガラスがないので風が吹き抜け、写真も撮りやすい。

でもそのぶん朝はとにかく寒い。
ダウンをしっかり着込み、さらに車に用意されたひざ掛けに助けられた。

最初に立ち寄ったのは「DUNE 1(デューン・ワン)」。
ソススフレイ周辺には「DUNE 1」「DUNE 2」…と番号がついた砂丘が点在していて、地図でもわかりやすい。
この「DUNE 1」は比較的人が少なく、ちょっとしたウォーミングアップにもぴったり。
ここでサキからナミブ砂漠の成り立ちについてレクチャーが入る。
ナミブの赤い砂は、もともと内陸の土壌がオレンジ川などの川を流れ、海へ運ばれたあと、長い年月をかけて波に乗って陸へ戻り、堆積してできたものだという。
何千万年もかけてこの広大な砂漠が作られたなんて、想像もつかないスケール。

しかもこの砂、鉄分が多く含まれていて──手のひらに砂をのせ、裏から磁石を近づけると、黒い粒子が“うようよ”と動き出す!
見た目はただの砂なのに、まさかの反応にびっくり。

ビッグダディへ向かう途中の道は、もはや“道”とは呼べないレベルの凸凹砂ルート。
あちこちにタイヤの跡が深く刻まれ、スタックして動けなくなった車もいるとか…。
でも私たちのサファリカーは、サキのテクニックで難なく走破!
しかも運転中、サキいわく「ここからはマッサージタイムだよ」とのこと。
確かに、凸凹を乗り越えるたびにお尻がブルブル振動して、砂漠名物の“天然マッサージ”を体感できた(笑)
巨大砂丘ビッグダディを登る!ふかふか砂との格闘

次に向かったのは、ナミブ砂漠の目玉ともいえる「ビッグ・ダディ(Big Daddy)」。
高さ300m超、ソススフレイでも随一の巨大砂丘で、遠くからでもその存在感は圧倒的。

サキが写真の上にルートを指でなぞりながら、「この尾根を伝って、最後にあの稜線を超えると頂上だよ」と登山ルートを説明してくれた。
サキは先にデッドフレイに向かって車で先回りするとのことで、私たちは軽装で出発することに。
ダウンは暑くなりそうだったので車に置いていく。

ここからはエレサン&エヴァン夫妻と3人で登頂チャレンジ!
記念撮影をして、いざ砂丘へ。

ビッグダディの麓にはひび割れた乾いた大地が広がっていて、拾い上げた土はまるで陶器のかけらのようにカチカチだった。


砂丘に着くと、靴を脱いで裸足スタイルに切り替え。

朝の砂はひんやりしていて気持ちよかったけど、足が砂に沈み込んでなかなか進まない。
一歩進んでは半歩戻る…そんな無限ループ。

気温は上がり続け、いつの間にか上着を脱いでワンピース一枚に。
汗だくになりながら、ただひたすら尾根を登り続ける。
それでも、空の青さと砂の朱のコントラストがあまりに美しく、立ち止まるたびに見惚れてしまう。
疲れと絶景がせめぎ合う登山だった。

そして、ついに登頂!
目の前に現れたのは、砂漠の真ん中に広がる真っ白な“デッドフレイ”。
あまりの美しさに、登ってきた疲れが吹き飛ぶ。まさに絶景という名のごほうび。

頂上では、腰を下ろしてエレサンとエヴァンと一緒にしばし休憩。
「ついに登りきった…!」という達成感に包まれながら、風に吹かれて、しばらく無言で景色を眺めていた。

頂上から砂漠の奥を見渡すと、視界いっぱいに広がる赤い大地。
どこまでも続くその景色に、思わず息を飲む。
あまりに壮大で、ただ立ち尽くすしかなかった。

ひと休みしたあとは、いよいよ下山。
登ってきた尾根とは別ルートで、今度は急斜面の砂丘を一気に駆け下りる!
最初の一歩を踏み出すのはちょっと怖い。
でも踏み出した瞬間、身体はもう止まらない。
ふかふかの砂を蹴って走り降りると、ザッザッと響く音とともに、まるで巨大な滑り台をすべり降りているような感覚になる。
重力に引っぱられるスリルと、砂まみれになる開放感に、自然と笑いがこみ上げる。

見上げると、さっき自分たちが駆け下りてきた斜面が、空に向かってそびえ立っていた。
よくあんなところから走り降りたな……と、あらためて砂漠のスケールと、自分のテンションの高さにびっくり。
デッドフレイで空が一変、まさかの砂漠の雨体験

駆け下りた先に広がっていたのは、真っ白な塩の大地「デッドフレイ(Dead Vlei)」。
ここは、かつて川が流れ、植物が茂っていた場所。
やがて川が干上がり、周囲を砂丘に囲まれて水の流れが完全に遮断され、“死の谷”となった。

今では、600〜800年前に枯れたままの木々が黒い影のように立ち尽くし、白い地面と赤い砂丘のコントラストが、まるで異世界のような風景をつくり出している。

そんな幻想的な光景を眺めていたそのとき──空が急に曇りはじめ、強い風が吹き、砂煙が舞い上がった。
そして、ポツ、ポツ……と雨が降り出す。
こんな乾いた砂漠でまさかの雨。
デッドフレイで雨に出会える旅行者なんて、そう多くはないだろう。
静寂の中に降る雨の音。
赤・白・黒の無機質な世界に水の気配が差し込み、風景に一瞬だけ命が宿ったように思えた。
これはこれで、忘れられない“レア体験”だったのかもしれない。

しばし無言でその風景を味わったあと、名残を残しつつデッドフレイを後にして駐車エリアへ。
次はいよいよ、お待ちかねの朝食ピクニックへ向かう。
砂漠の真ん中で朝食を!ソーサスフレイの絶景ピクニック

デッドフレイを後にし、次に向かったのはソーサスフレイの静かな一角。
誰もいない砂漠のど真ん中に、ぽつんと設けられたピクニックエリアに到着した。

ガイドのサキが手際よくテーブルクロスを敷き、バスケットから朝食をひとつずつ取り出していく。

パンは3種類、チーズにハム、トマトや野菜、りんごにヨーグルト、フレーク類も揃っていて、ジュース、紅茶、コーヒーまで完備。
まるでホテルの朝食ビュッフェをそのまま砂漠に持ち込んだかのような優雅なセッティングに、思わずテンションが上がる。

エレサンとエヴァン、サキと共に、目の前に広がる砂漠を眺めながらゆっくりと朝食を味わう。
風景、空気、そしてこの静けさ──すべてが特別なごちそうだった。
ただ、この日は思いのほか冷え込んだ。
風も強く、ダウンを着ていても寒いほど。
昨日のこの時間は10度以上暖かかった記憶があるのに、たった一日でこんなにも気温が変わるとは……ナミビアの気温差、おそるべし。
朝食を終えてキャンプ地へ戻る途中も、見どころは尽きない。
広大な砂漠の中を進むサファリカーの周囲には、次々と野生動物が現れた。

まず姿を見せたのは、すらりとした体つきのジャッカル。
どこか犬にも似ているが、キツネのようなシャープな顔つきが印象的。

続いて現れたのが、ナミビアでよく見かけるスプリングボック。
細身の体にツートンカラーの美しい模様が特徴で、跳ねるように走る姿がとても可愛らしい。

さらに、ナミブ砂漠の象徴ともいえるオリックスも登場。
長くまっすぐに伸びた角と、白黒の模様が映える堂々とした姿はまさに“絵になる”存在。
写真には残せなかったけれど、遠くをうろつくハイエナの姿もチラリと確認。
まさか砂漠でここまで“サファリ気分”を味わえるとは思わず、移動中も飽きることがなかった。

最後に立ち寄ったのは、ナミブ砂漠でもっとも有名な砂丘のひとつ「DUNE 45(デューン・フォーティファイブ)」。
国道から近くアクセスしやすいことから、日の出スポットとして人気が高く、高さは約170m。
登りやすく、なめらかな曲線が美しく、写真映えするのも人気の理由だという。
本来は13時半にキャンプ地へ戻る予定だったけれど、ビッグダディでのんびりしすぎたため、帰着は1時間遅れの14時半に。
エレサンとエヴァン、そしてガイドのサキと「楽しかったね」と笑顔でお別れした。
サキにはちょっと申し訳なかったけれど、じっくり満喫できて、いい思い出になった。
セスリエム・ゲートで入場料を支払う

ツアーが終わったあと、国立公園の入場料を支払いに向かう。
実はセスリエム・ゲートにはチェックポイントとオフィスの2ヶ所があって、最初に通るのが“ゲート”そのもの、入場手続きや名前の記入をする場所。
でも、実際のお金の支払いはそこから数百メートル先にある別のゲートの事務所で行う仕組み。

私は車なし・2泊の滞在だったので、入場料は300Nドル(=2,417円)。

支払い後にもらった証明書は、ゲートを出るときに提示が必要なので要保管。
ゲート内宿泊者だけの特権!夕暮れのエリム砂丘で感動の締めくくり
セスリエム・キャンプサイト(NWR)には、日の出ツアーこそないものの、サンセットツアーは用意されている。
出発は17時、料金は1人300Nドル。
ジュース付きというのがちょっと嬉しい。
ただし1人参加の場合は倍額の600Nドル(=4,834円)になるという仕組み。
少し割高だけど、せっかくゲート内に泊まっている特権を生かし、夕暮れのエリム砂丘を見に行くことにした。
ゲートは18時15分に閉まるため、日の入りを見てから下山していたのでは間に合わない。
だからこの美しい夕景は、ゲート内宿泊者だけが見られる“ごほうびの景色”なのだ。
約束の時間にレセプションへ行くと、参加者は私ひとり。
好きなジュースを選び、貸切状態のサファリカーで出発した。

車で5分ほど走ると、エリム砂丘に到着。
ドライバーはここで待っていてくれるとのことだったので、一人で頂上を目指す。
あたりに人影はなく、やや不安もあったけれど「安全だよ」と言われていたので、登る決意を固めた。

砂丘の尾根を登るのは、まるでビッグダディの再来。
ふかふかの砂に足を取られながら、一歩ずつ登っていく。

振り返ると広がる絶景、そして遠くに連なる山々のシルエットに背中を押される。

ようやく頂上にたどり着くと、そこにはすでに4〜5人の先客たち。
みんな静かに、ただ西の空を見つめていた。

私も輪に加わり、持ってきたジュースを片手に、沈んでいく太陽を眺める。

やがて砂漠一面が朱に染まり、砂の表面には風が描いた砂紋の影がくっきりと浮かび上がる。
ナミブ砂漠は、朝・昼・夜と時間帯によってまるで違う表情を見せてくれるけれど、私にとってはこの夕暮れ時の赤く染まった砂漠が、いちばん美しく感じられた。

夕日を見てキャンプ場に戻ると、夕食タイム。
でも、夜は本当に寒くて、冷蔵庫で冷えたパスタをそのまま食べる気にはなれなかった。
そんな私の様子を見て、レストランのスタッフが気を利かせて「温めてあげようか?」と声をかけてくれた。
しかも、ミニトマトは冷たいまま残して、きれいに皿に盛りつけ直して出してくれた。
レストランで一度も注文したことがない私に、ここまでしてくれるなんて……心までほっこりあたたかくなった。
今日は朝から晩まで、ナミブ砂漠をとことん満喫した一日だった。
明日はついにウィントフックへ戻る日。
極寒の夜にちゃんと眠れるか、そして18kgのテントを持ってシャトル乗り場まで歩けるのか──そんな不安を抱えながら、寝袋にくるまって目を閉じた。
6月8日:使ったお金
サンセットツアーの一人割増料金はちょっとお高めだったけれど、あの夕日が見られたなら悔いなし。
・ガイドチップ代:50Nドル(=402円)
・サンセットツアー(一人料金):600Nドル(=4,834円)
・国立公園入場料:300Nドル(=2,417円)
合計:7,653円