ガラパゴス滞在もいよいよ終盤。
イザベラ島での最後の一日は、アシカやウミガメと泳ぎながら、ゆったりとした島の時間を味わった。
陸ではのんびりと歩くゾウガメの姿に出会い、その穏やかな時間の流れに心がほどけていく。
毎日通った場所や見慣れた景色も、どこか名残惜しく、離れがたく感じられるようになっていた。
そんな余韻を胸に、翌日はフェリーでサンタ・クルス島へ。
ダーウィン研究所では、ゾウガメの展示から絶滅した種の存在や人間の影響を知る。
そしてそのままサン・クリストバル島へ向かう。
ガラパゴス滞在の終盤、どうしても出会いたかったアオアシカツオドリを探す朝。
これまで何度も見逃してきたその姿に、ついに出会えた瞬間——この3日間の流れを、ひとつの旅として振り返る。
3月14日 イザベラ島観光最終日、アシカと泳ぎゾウガメに癒される

イザベラ島6日目の朝。
朝食は、菓子パンに目玉焼き、それに梨とすもも。
いつものスタンダードなパンに少し飽きてきて、今日は菓子パンを選んでみた。
メロンパンのような味で、思っていたよりも美味しい。
イザベラ島を観光できるのも、いよいよ今日が最後。
朝からパール・シェルへ向かう。

桟橋に着くと、いつも通りアシカとイグアナが日向ぼっこをしている。
この場所で、彼らと一緒に泳ぐのも今日で最後。
そう思うと、胸の奥にじんわりとした寂しさが広がってくる。

水面をのぞき込むと、ウミガメの姿。
この日は8時半から泳ぎ始め、ウミガメ2匹とアシカ1匹と一緒に海の中へ。
何度も見てきた光景なのに、やっぱり特別な時間に感じる。

そのあと、パール・シェルの近くにあるプラヤ・イサベラ(Playa Isabela)にも足をのばす。
静かなビーチに設置されたハンモックに体を預けると、波の音がゆるやかに響いてくる。
そのまま、うとうととしたまどろみの時間。
そんな中、またもやアシカが人間にちょっかいをかけにやってきた。
鼻先でつんつんと突いてくるその仕草は無邪気でかわいいのだけれど、同時にちょっとした怖さもある。
アシカは基本的にはおとなしいけれど、大人の個体はときに気が荒くなることもある。
距離を取りつつ、しっかり様子をうかがうことが大切だ。

……とはいえ。
自分もすっかり気を緩めて、いつの間にか爆睡していたらしい。
ふと目を覚ますと、足元にアシカがごろんと横になっていた。
こんな近くにいたんだ(‘A`)!?
完全に不意打ちで、思わずびくっとする。
さっきまで警戒していたはずなのに、まさか自分のほうが無防備だったとは。
……いや、無防備なのはアシカの方も同じか。

宿に戻って昼食。
菓子パン、梨、すもも。
朝とまったく同じメニューだけれど、好きなものばかりなので、自然と食が進む。

夕方、この日もカミーノ・デ・トルトゥーガス・ヒガンテスへ。
夕日に照らされながら、こちらに向かってゆっくり歩いてくるゾウガメ。
まるでカメラ目線をくれているようで、その穏やかな姿に思わず頬がゆるむ。

道の脇に広がるマングローブ林をのぞくと、水に浸かったゾウガメを発見。
静かな水面と緑に囲まれて、なんとも絵になる光景だった。
ここにいるゾウガメたちとの時間も、今日で最後だと思うと少しさみしい。
朝はパール・シェル、夕方はこのハイキングコース。
そんな毎日のルーティーンの中で、たくさんの動物たちと出会ってきた。
のんびりとした時間が流れるイザベラ島。
ただそこにいるだけで満たされる、そんな日々だった。
毎日たくさん泳いで歩いて、強い日差しを浴び続けて、気づけば体はすっかり真っ黒。
それでも、どこか田舎で過ごす夏休みのような感覚で、心はゆるやかにほどけていく。
結局、この日もアオアシカツオドリには出会えず、少ししょんぼり。
それでも、次のサン・クリストバル島ではきっと見つけたい。
そんな気持ちを胸に、次の島へ向かう準備を進める。

夕食は、トマトソースにグリーンピース、とうもろこし、玉ねぎ、ツナを加えたツナパスタ。
それにトマトサラダ。
島間を移動するフェリーには、検疫の関係で野菜や果物を持ち込めない。
そのため、手元にある野菜類はきれいに食べきることにした。
いよいよ明日は、1週間滞在したイザベラ島を離れ、サン・クリストバル島へ向かう。
3月15日 大雨の中フェリー移動、サンタ・クルス島でダーウィン研究所へ

早朝4時過ぎ。
まだ外は真っ暗な中、屋上のダイニングで朝食をとる。
この日の朝食は、パンともも。
5時15分までにイザベラ島のフェリーターミナルで乗船受付を済ませる必要があり、今日はかなりの早起き。
宿からターミナルまでは徒歩で15分ほど。
まだ眠気の残る体を引きずりながら歩くことになる。
しかも運の悪いことに、この日は朝から大雨。
ゴアテックスのトレッキングシューズなのに、この1年で酷使しすぎたのか、まったく水を弾かない。
歩き始めてすぐに、靴の中は雨水でぐっしょりになった。
服もカバンもびしょ濡れ。
朝からテンションは一気に下がる(T_T)

なんとか濡れ鼠になりながら、フェリーターミナルに到着。
まずは入口で荷物検査を受ける。
イザベラ島は小さな島なので、X線の機械などはなく、スタッフが目視で確認するだけの簡易的なもの。
バックパックに至っては口頭での申告のみで、中を開けることなくそのまま通過した。
思っていた以上にゆるい運用で、少し拍子抜けしてしまう。

5時15分、フェリーターミナルの桟橋に到着。
カウンターにはいくつもの船会社のスタッフが並び、受付をしている。
けれど看板のような案内は一切なく、どこに行けばいいのか全くわからない。
乗客たちも団子状になっていて、並んでいるのか、ただ群がっているだけなのか判別がつかない。
なんともカオスな状態。
しかも外は大雨で、みんなずぶ濡れ。
朝からなかなかハードな空気だ(‘A`)
とりあえず受付のスタッフにアイコンタクトを送りながら、自分が乗る船会社を必死に探す。
なんとかそれらしきスタッフを見つけ出し、ようやく受付を済ませることができた。

イザベラ島からサン・クリストバル島へは直行便がないため、まずはサンタ・クルス島へ向かう。
NENA社の船で、サンタ・クルス島へ。
船の名前が書かれたタグを首から下げ、係員の指示に従って1ドルの渡し船に乗り込み、高速船へと向かった。

座席は自由席。
真ん中より少し後ろの席のほうが揺れが少ない気がして、そこに座ることにした。
船は大雨にもかかわらず、定刻の6時に出発。
およそ2時間半でサンタ・クルス島へ到着した。

到着した頃には、雨もすっかり止んでいてひと安心。
高速船から桟橋へは、再び1ドルの渡し船に乗り換える。
その際、大きな荷物はクルーがボートの端に載せてくれるのだけれど、この積み方がなんとも雑で、今にも海に落ちそうな不安定さ(‘A`)
周りの乗客たちも思わず苦笑い。
これはきっと、過去に何人かの荷物が海に落ちているに違いない……と妙に確信してしまう(笑)
幸い今回は誰の荷物も無事で、ほっとする。

サンタ・クルス島のフェリー桟橋の目の前には、小さな広場が広がっている。
その広場に面した場所に、ロッカー・シャワー・トイレがまとまった便利な施設がある。
荷物を預けて身軽に観光したいときや、フェリー移動の前後にさっとシャワーを浴びたいときにちょうどいい。
次のサン・クリストバル島への定期船は15時出発。
それまでの時間、ロッカーに荷物を預けることにした。
小さめのロッカーは3ドル(=478円)、トイレは0.5ドル(=79円)で利用できる。

小腹が空いたので、近くのスーパーでパルミエを買ってきた。
ロッカーの店にあるベンチに腰かけ、ひと休みしながら食べる。
甘さがじんわりと体にしみていく。
トレッキングシューズがびしょ濡れで気持ちが悪かったので、ここで靴と靴下を干すことにした。
……とはいえ、乾くのを待つのももったいない。
少し迷ったけれど、そのまま置いて、サンタ・クルス島の観光へと繰り出すことにした。

やってきたのは、チャールズ・ダーウィン研究所。
研究所の前には、『種の起源』を手にしたチャールズ・ダーウィンの像が立っている。
ダーウィンは19世紀のイギリスの博物学者で、進化論を提唱した人物。
若き日にガラパゴス諸島を訪れ、島ごとに異なる動物たちの姿を観察したことが、その後の研究へとつながっていく。
1859年に出版された『種の起源』では、「生き物は環境に適応しながら少しずつ変化していく」という自然選択の考え方が示された。
当時の常識を覆すその理論は、今では進化の基本的な考え方として広く知られている。
ガラパゴスは、その着想が生まれた特別な場所だ。

ガラパゴスにあるチャールズ・ダーウィン研究所には、無料で見学できる展示コーナーがある。
展示のメインは、島ごとに異なるゾウガメの甲羅。
同じ「ゾウガメ」でも、島の環境によってその形はまったく異なる。
丸くて重厚なドーム型の甲羅もあれば、首を高く伸ばせるように前が持ち上がったサドルバック型もある。
それぞれの形は、食べ物の位置や環境に適応した結果。
進化を目で見て理解できるようで、とても興味深い。
ただ、この展示が伝えているのは進化の面白さだけではない。
ここに並ぶ甲羅の中には、すでに絶滅してしまった種のものも含まれている。

ガラパゴス諸島の北に位置するピンタ島。
かつてここには、ピンタゾウガメという固有種が暮らしていた。
しかし、人間によって持ち込まれたヤギが島の植生を破壊し、彼らの生息環境は大きく崩れてしまう。
その結果、個体数は減り続け、やがて絶滅へと向かっていった。
1971年、ついに発見された最後の一頭。
それが、あの有名な「ロンサム・ジョージ」と呼ばれるオスのゾウガメだった。
繁殖の試みは続けられたものの、子孫を残すことはできず、2012年、ジョージの死によってこの種は正式に絶滅した。
ここに展示されている甲羅は、ジョージとは別の個体のもの。
1976年に発見され、その保存状態から、発見のわずか1年前まで生きていた可能性があるという。
つまりこの個体こそが、野生で生きていた“最後の一頭”だったのかもしれない。
空になった甲羅を前にすると、一つの種が静かに消えていった時間の重みが、ゆっくりと伝わってくる。
ロンサム・ジョージの死は、ガラパゴスの人々にとって大きな出来事だった。
その喪失は深く受け止められ、二度と同じことを繰り返さないために、自然や動物を守る取り組みがより一層強化されている。
研究所内にはガイド同行でのみ入ることができるエリアがあり、そこにはロンサム・ジョージの剥製が展示されているという。
少し複雑な気持ちにもなるけれど、それはきっと、この出来事を忘れないために残されているものなのだと思う。

研究所を出て、さっき見た展示の余韻を少し引きずりながら、1835 Restaurant & Coffeeへ。
サンタ・クルス島でも人気のカフェで、ランチにマグロのセビーチェを注文した。

マグロのセビーチェは、しょうゆベースの味付けで、日本人の口にとても合う味。
ただ、少しだけしょうゆが強く感じる部分もあり、後半はほんのり塩気が気になった。
それでも、添えられたプランテンやアボカドとのバランスはよく、全体として満足度の高い一皿。

食後にはクレームブリュレを。
コーヒーが美味しいと評判なので、カフェオレも追加で注文し、全部で22.25ドル(=3,546円)。
ローカル食堂に比べると少し高めではあるけれど、外国人向けレストランの中では比較的リーズナブル。
味もよく、観光の合間に立ち寄るのにちょうどいいお店だった。

14時、ロッカーからバックパックと靴を回収し、再びフェリーターミナル前の広場へ。
すでに多くの乗客が集まっていて、受付には人が群がっている。
ここでもやはり看板はなく、スタッフらしき人に声をかけながら、自分の船を探すしかない。
受付で首から下げるタグを受け取り、そのまま桟橋へ移動。

桟橋前の荷物検査は長蛇の列。
この混雑は予想していたので、少し早めに受付を済ませておいた自分、ナイス判断。

桟橋から1ドルの渡し船に乗り、サン・クリストバル島行きのOSPPEY号へ乗船。
15時、船は定刻通りに出発した。

約2時間の航行で、サン・クリストバル島に到着。
桟橋で荷物検査を受け、ガラパゴス諸島で最後に滞在する島へ足を踏み入れる。
イザベラ島では入島時に10ドルの税金を支払ったけど、ここでは特に支払いもなく、すんなりと入島できた。

町に到着するやいなや、海辺にはたくさんのアシカたちがごろごろと転がっている。
岩の上でも、遊歩道にも、あちこちで思い思いにくつろいでいて、とにかく存在感がすごい。
この島は別名「アシカ島」とも呼ばれるほど、ガラパゴスの中でも特にアシカの数が多い場所。
「オウッ、オウッ」と響く独特の鳴き声が街中に広がり、その迫力に一気に圧倒される。

港からゆるやかな坂道をのぼり、宿へ向かう。
サン・クリストバル島で3泊するのは、CASA DE ALEXITA。
一軒家タイプの宿で、いくつかの客室があり、ダイニングやキッチン、シャワールームは共用のシェアスタイル。
オーナーは常駐しておらず、やりとりは基本的にWhatsAppで行う。
落ち着いた住宅街にあり、旅人同士でゆるく過ごせる、居心地のいい宿。

今回予約したのはツインルームで、3泊で41.4ドル(=6,598円)とかなりリーズナブル。

共用ダイニングやキッチンはおしゃれで、いつも清潔に保たれている。

ダイニングに置かれているシュノーケルセットやフィン、マウンテンバイク用のヘルメットは無料で使用可能。
自分はシュノーケルセットを持っていたので使わなかったけれど、持っていない人にはありがたいサービス。

夕食はトマトソースパスタとトマトサラダ。
宿の近くにあるスーパーではカット野菜が売られていて、ツナとトマトソースを合わせるだけで簡単にパスタソースが作れた。
この日の夜、宿代の回収に来たオーナーに、アオアシカツオドリをまだ見られていないことを話す。
これまで滞在した島では一度も出会えず、かなり落ち込んでいた。
するとオーナーは親身に話を聞いてくれて、ローカルと一部の観光客しか知らないという、秘密のアオアシカツオドリスポットを教えてくれた。
「100%見られるから大丈夫」と励ましてくれたけれど、これまでの自分の“アオアシカツオドリ運のなさ”を思うと、どうしても半信半疑。
ガラパゴスでの滞在も残り3日。
本当に出会えるのか、不安な気持ちを抱えたまま、この日は眠りについた。
3月16日 ついにアオアシカツオドリと対面、アシカと泳ぐサン・クリストバル島

朝5時。
まだ薄暗い時間に起きて、パンとりんごの簡単な朝ごはんを口にする。
今朝は、宿のオーナーに教えてもらった“秘密のアオアシスポット”へ向かう予定。
アオアシカツオドリは、日の出の6時頃から8時頃までの早朝がもっとも目撃率が高いらしい。
サンタ・クルス島で出会った日本人旅人のMさんに連絡してみると、彼はすでにサン・クリストバル島に数日滞在しているのに、まだ一度も見られていないという。
しかも今日がガラパゴス最終日らしく、この朝がまさにラストチャンスだった。
見られる保証はない。
それでも、宿のオーナーがあれだけ自信満々にすすめてくれた場所。
やみくもに探すよりは、きっと確率は高い。
そう思って、思い切って彼を誘ってみることにした。

秘密のスポットへ向かう途中、海沿いの道に出たところで思わず足が止まる。
そこには、おびただしい数のアシカたち。
ビーチ一面に、敷き詰められたように寝そべっている。
波の音に混ざる、低く響く鳴き声。
のんびりとした空気の中で、彼らだけが主役のように見える。
まさに“アシカの島”と呼ぶにふさわしい光景。
人間よりアシカの方が多いんじゃないか——そんなことを考えながら歩き続け、ついに秘密のアオアシスポットに到着した。
今までずっと会えなかったのに、そんな簡単に会えるわけがない。
そう思っていた、そのときだった——。

なんと……!
なんと!!!
アオアシカツオドリの群れ!!!
しかも、5羽も。゚(゚´Д`゚)゚。

アオアシカツオドリは、その名の通り、鮮やかな水色の足をもつガラパゴスの海鳥。
自然界で“青い体色”をもつ動物はとても珍しい。
多くの動物は赤や黄色、茶色の色素は持っていても、「青」を作る色素はほとんど持っていないからだ。
そんな中で、この足の青は少し特別で、魚などに含まれるカロテノイドを体内に取り込み、それが皮膚の色として現れたものだという。
つまりこの色は固定されたものではなく、食事や体調によって濃さが変わる。
実際、しばらく食べていないと色が薄くなることもあるらしい。

黒い岩場の中で、その水色だけがぽっと浮かび上がる。
きょとんとした表情でこちらを見つめたり、少し首をかしげるような仕草をしたり、とにかくかわいい。
その恐ろしいほどの吸引力に、気がつけば近距離でじっと見つめていた。
とはいえ、野生動物とは2m以上の距離を保つというルールがあるので、その距離はきちんと守る。
それでも、彼らはまったく逃げる気配がない。
普通、野生動物は人間が近づけばすぐに離れていくものだ。
でもガラパゴスでは、長いあいだ外敵がいなかったからか、人を恐れない動物が多いのだ。

足で体を掻くアオアシカツオドリは、たまらなくかわいい。
アオアシカツオドリは、発情期になると求愛ダンスを踊ることで知られている。
「ボクって良いオスでしょ?」と言わんばかりに、ご自慢の青い足を高く持ち上げて、地団駄のようなステップを踏みながらメスにアピールするのだ。
そしてこの足の青さは、健康状態の良さを示すバロメーターでもあり、色が鮮やかなほどモテるらしい。
残念ながら求愛ダンスを見ることはできなかったけれど、それでもこんなにも近くで彼らを観察できた時間は、まさに至福だった。
これまで、アオアシに会えずにしょんぼりしていたのが嘘のように、気分は一気に最高潮へ。
旅人仲間のMさんも、最終日にようやく念願のアオアシに出会えて、本当にうれしそうだった。
その喜びを、同じ場所で、同じ瞬間に分かち合えたこと。
それが何より、心に残る時間だった。

岩場には、他の水鳥の姿も見られた。
頭の模様が印象的なキイロアシゴイ。
白いラインがすっと入っていて、後頭部にはふわりと伸びた羽。
まるで、おしゃれなヘアバンドをつけているみたいだ。
アオアシカツオドリとはまた違った、すっきりとした美しさがある。
ちなみにこの秘密のスポットは、町の中心地からすぐ近くにある。
それにもかかわらず、観光客の姿はほとんどなく、地元の人しか知らないような穴場だった。
中心地に近いからこそ、もし場所を公表すれば、観光客が一気に押し寄せてしまうかもしれない。
そうなれば、アオアシカツオドリたちが安心してこの場所を使えなくなってしまうのではないか——そんな葛藤もあって、悩んだ末に、この場所はブログでは非公表とすることにした。
もしどうしても気になる人は、どこかでそっと教えてもらって、静かに訪ねてほしい。
たっぷり1時間半ほどアオアシカツオドリを眺めて満足し、Mさんとはここで解散することに。
そして私は、そのままサン・クリストバル島の観光へと向かった。

町の中心地には、サン・クリストバル島のモニュメントがある。
大きく「SAN CRISTOBAL」と書かれたカラフルな看板。
その前には、ガラパゴス諸島の島々を模したマップのようなオブジェが置かれている。
写真撮影の定番スポットだ。

まずは町の中心から歩いて30分ほどの場所にあるビーチ、プラヤ・プンタ・カローラ(Playa Punta Carola)へ。
ビーチの端にある灯台の立つ岩場は、アオアシカツオドリの出没スポットとして知られている。
ただ、到着したのはすでに8時半過ぎ。
日差しも強く、かなり暑くなってきた時間帯だったからか、この日は姿を見ることはできなかった。
せっかく来たし、この暑さにも耐えきれず、そのままシュノーケルで海に入ることに。
海に入ると、すぐにウミガメとエイに遭遇。
思いがけず、とてもラッキーな展開だった。

浅瀬で泳いでいると、赤ちゃんアシカたちが興味津々で近づいてくる。
鼻先をぐいっと寄せてきて、くんくんと匂いを嗅ぐような仕草。
その無防備さに、むしろ人間のほうが気を使ってしまうくらいだ。
気がつけば、4匹の赤ちゃんアシカに囲まれ、まわりをぐるぐると泳ぎ回られていた。
かわいい……と見惚れて遊んでいると、突然、母アシカがこちらに向かって突っ込んできた。
きっと子どもたちが心配で様子を見に来たのだろう。
さすがに怖くなって、一目散に泳いでその場を離れる。
そんなことを何度か繰り返しながら、なんとも愛おしい時間が流れていった。

大人のアシカはとにかく大きい。
近くで見ると、その存在感に圧倒される。
こんなのがすぐそばを泳いでいると、さすがに少し怖い。
噛まれたら、ひとたまりもない。

ビーチで泳いだあと、バリサ・デ・ティヘレタス(Baliza de Tijeretas)展望台へ。
海を見下ろす小さな展望台に、古びた大砲が置かれている。
案内板によると、この大砲はエクアドル海軍の船によって運ばれ、1970年にここに設置されたもの。
手動で操作されるもので、当時の軍事訓練に使われていたらしい。

遊歩道を歩いていると、茂みの中で小さな黄色い鳥を見つけた。
イエローワーブラーだ。
枝の間をすばしっこく動き回り、ようやく一枚だけ写真に収めることができた。
本当はフィンチを撮りたかったのだけど、あちらはさらに動きが速く、結局うまく撮れずじまい。
フィンチの写真はないけれど、イエローワーブラーによく似た小さな鳥だ。
気づいたときにはもういなくなっている、そんな存在。
ガラパゴスといえばゾウガメやイグアナの印象が強いけれど、ダーウィンの進化論のきっかけになったのは、このフィンチたち。
島ごとにくちばしの形を変え、環境に適応していった姿は、この場所を語る上で欠かせない存在だ。
だからこそ、本当は写真におさめたかった。
ガラパゴスのフィンチは人間をあまり恐れないと聞いていたのに、思っていたよりもずっとすばしっこくて、なかなか近づくことすらできなかった。
話が違う(T_T)

鳥を見ながら遊歩道を歩いていると、ミラドール・ラテラル・セロ・ティヘレタス(MIRADOR LATERAL CERRO TIJERETAS)展望台にたどり着く。
ここは海を見下ろすことができる小さなスポット。
崖下は溶岩の岩場で、荒々しい景色の中にガラパゴスらしさを感じる。
ここでは、運がよければアオアシカツオドリの姿を見ることができるらしい。

いくつかの展望台を回りながら、ムエジェ・ティヘレタス(Muelle Tijeretas)へ。
静かな入江のような場所で、波は穏やか、水面も驚くほど静か。
人気のシュノーケリングスポットで、魚たちがすぐ近くを泳ぎ、ガラパゴスらしい豊かな海を身近に感じられる。

ここにもたくさんのアシカがいる。
アシカと一緒に泳いでいると、エイの姿も見つけた。
透明度の高い海で、水深のある場所までよく見え、たくさんの魚を観察することができた。

泳いだあと、ミラドール・セロ・ティヘレタス(Mirador Cerro Tijeretas)展望台へ。

ここでは、グンカンドリが風に乗って優雅に飛ぶ姿を見ることができる。
大きく広げた翼でほとんど羽ばたかず、すーっと滑るように空を漂う姿が印象的。
オスは発情期になると赤い喉袋を風船のように膨らませることで知られている。
それを見たくてやってきたのだけれど、この日は見られず。
どのオスも喉袋はしぼんだままだった(T_T)
それでも、広い空を自由に舞う姿を眺めているだけで、この場所の心地よさは十分に伝わってくる。

そして、散策路の途中にあるサン・クリストバル環境解説センターにも足を運ぶ。
島の歴史や環境について、パネル展示で紹介されている施設。
見応えがあり、サン・クリストバル島を訪れるならぜひ立ち寄りたい場所だ。
ガラパゴスの歴史は、いくつかの時代に分けて見ることができる。
海賊の隠れ家として使われていた時代。
流刑地や過酷な刑務所の島だった時代。
そして第二次世界大戦では、戦略的な基地として利用された時代。
その後、ダーウィンの研究をきっかけに「科学の島」として注目され、現在では「自然の楽園」として世界中から観光客が訪れる場所になった。
一方で、世界的な観光地となった今のガラパゴスにも、いくつかの課題がある。
観光収入の内訳を見ると、64%がガラパゴス到着前の支出(航空券など)、30%がクルーズ、そして港や島でのサービスに使われるのは、わずか6%にとどまるという。
つまり、観光客が使うお金の多くは島の外へ流れてしまい、実際に島に残るのはごくわずか。
そのため食料は輸入に頼り、物価は高く、地元の暮らしは決して楽とはいえない。
本来、観光による利益は、この自然を守る立場にある地元の人々の生活や、島の保全活動に還元されるべきもの。
島に滞在するスタイルの旅は、宿や食事、ツアーを通して、直接ローカル経済にお金が落ちる。
もし訪れるなら、この島のことを思って、クルーズだけでなく、島に滞在する旅も選択肢のひとつとして考えてみてほしい。

最後にプラヤ・マン(Playa Mann)に立ち寄り、ひと泳ぎしてから宿へ戻る。
波も穏やかで泳ぎやすく、アシカもすぐ近くにいる。
のんびり過ごすのにちょうどいいビーチだった。

14時過ぎ、少し遅めのパンと梨の昼食。
早朝から炎天下の中を歩き回り、展望台を巡り、3つのビーチで泳ぎ、環境解説センターではじっくり展示を読む。
さすがに、もうクタクタだ。
午後はエアコンの効いた部屋で、ゆっくりと体を休めることにした。

昼寝のあと、キッチンで夕食作り。
カット野菜を炒め、ツナとトマトソースを絡めてパスタを作る。

今日の夕食も、トマトソースパスタにトマトサラダ、そしてパン。
安定の美味しさ。
明日、丸一日サン・クリストバル島を観光したら、明後日はいよいよガラパゴスを離れ、エクアドル本土の首都・キトへ戻る。
毎日たくさんの動物に囲まれ、自然の中を歩き、海を泳ぎ、自炊したご飯を食べる——そんな日常も、そろそろ終わりだと思うと、少しさみしい。
そして何より、この世界一周の旅そのものも、終わりが近づいている。
そう思うと、なんだかじんわりと、いろんな思いがこみ上げてくる。
次回のブログでは、サン・クリストバル島でマウンテンバイクを借りて島を駆け巡り、アオアシカツオドリを探す旅へ。
そしてキトの旧市街での教会めぐりと、夜景のきれいな宿で過ごした一夜について書く予定。
3月14日〜3月16日:使ったお金
3月14日
・パン:2.25ドル(=358円)
合計:358円
3月15日
・ボート代(港→定期船):1ドル(=159円)
・ボート代(定期船→港):1ドル(=159円)
・ロッカー代:3ドル(=478円)
・トイレ代:0.5ドル(=79円)
・昼食代(マグロセビーチェ等):22.25ドル(=3,546円)
・水:0.9ドル(=143円)
・ボート代(港→定期船):1ドル(=159円)
・ボート代(定期船→港):1ドル(=159円)
・宿代(3泊分):41.4ドル(=6,598円)
・野菜等:4.15ドル(=661円)
合計:12,141円
3月16日
・パン:1ドル(=159円)
・果物等:1.55ドル(=247円)
合計:406円

