今日は、中世の面影が色濃く残るカイロの下町・イスラーム地区を観光。
広大なこのエリアを徒歩だけで回るのは難しいので、配車アプリでタクシーを呼びながら見どころを巡っていった。
まず訪れたのは、ムハンマド・アリー・モスクや軍事博物館があるシタデル。
続いて、スルタン・ハッサン・モスクとリファーイー・モスクが並ぶ荘厳な風景、死者の町の静寂、そして活気あふれるハーン・ハリーリ市場へ。
荘厳なモスクの美しさと、迷路のような路地裏の混沌を行き来する、不思議な一日。
最後は、ゲズィーラ島の高級住宅街にある日本食レストラン「牧野」で、天ぷら定食を堪能。
アフリカ縦断前に、ほっとする味に癒された。
歴史と信仰、市井の暮らしと高級住宅街──。
カイロという都市の多面性を、モスクと天ぷらという組み合わせで味わった一日だった。
要塞とモスクの絶景|シタデルから始まるカイロ散策

朝は宿でゆっくり朝食をとってから、まずはタクシーでシタデルへ。

チケット売り場で入場券(550ポンド=1,650円)を購入して中へ。

この「シタデル(城塞)」は、12世紀にサラディンによって築かれたイスラーム地区を象徴する要塞で、高台に位置し、カイロの街を一望できる絶景スポットとしても知られている。

中でもひときわ目を引くのが、白い大ドームと2本のミナレットがそびえる「ムハンマド・アリー・モスク」。
オスマン帝国風の優雅な建築は、イスタンブールのブルーモスクを思わせる。

内部は巨大なシャンデリアが輝いていた。

階段状の説教壇(ミンバル)も印象的。

中庭には、エジプトがフランスにルクソール神殿のオベリスクを贈った返礼として受け取った時計塔が立っている。


シタデル内には「軍事博物館」もあり、制服や武器が展示されていた。

外には戦車やミサイルまで並び、まるで兵器のテーマパーク。
壮麗なモスク、歴史ある要塞、そして戦車──シタデルは、カイロという街の多様さを象徴するような不思議な空間だった。
時を超えて向き合う|二つの巨大モスクの静けさと重厚感
シタデルから坂を下ってスルタン・ハッサン・モスクへ向かおうとしたが、近い出口が見つからず、結局タクシーで向かうことに。
距離は短いけれど、炎天下では徒歩でも体力を消耗する。

すぐ近くに並んでそびえる、ふたつの巨大モスク。
ひとつは14世紀の傑作「スルタン・ハッサン・モスク」、もうひとつは20世紀に建てられた「リファーイー・モスク」。
異なる時代の建築が、重厚な石造りの外観を並べて静かに呼吸しているようだった。

共通のチケット売り場で入場券を買い、まずはスルタン・ハッサン・モスクへ。


高い天井、広々としたお祈りスペース、そこに差し込む光が内部を神聖な静けさで満たしていた。

奥にはスルタン・ハッサンの霊廟とされる部屋があり、外の喧騒を忘れるような、深い静寂が漂っていた。

隣にあるリファーイー・モスクは、より新しく、装飾も豪華。

美しいシャンデリアがきらめく大広間には、精巧な説教壇やミフラーブ(聖なる壁のくぼみ)が並ぶ。


奥には、ファルーク王やイラン最後の王・パフラヴィー2世などの霊廟がひっそりと佇む。
見学中、案内の男性がアザーンを唱えてくれた。
澄んだ声が石の壁に反響し、空間を祈りの波で満たしていく。
思わず息を呑むほどの美しさだった。
わたしも一節を口ずさんでみたら、彼は驚いたあと笑顔になり、うれしそうに頷いてくれた。
言葉や宗教の枠を超えて、ふと心が通じたような瞬間だった。
死者の町の静寂とスークの喧騒|カイロの裏と表を歩く
モスク巡りを終え、次にタクシーで向かったのは「死者の町」と呼ばれる墓地エリア。

墓と住宅が入り混じるこの不思議な場所には、実際に人が暮らしているとも言われ、カイロでも異彩を放つエリアだ。

「Egypt’s Dar Al Ifta」の前にかかる陸橋からは、その町の全景を見渡すことができた。

ただ、治安があまり良くないとも聞いていたので、奥には入らず、手前だけを少し歩いて雰囲気を感じ取ってから引き返すことにした。
思っていたより人影は少なく、静まり返った空気が流れていた。
そのあとは徒歩でハーン・ハリーリ市場へ。

香辛料やランプ、お土産が所狭しと並び、地元の人と観光客がごった返す賑やかなスーク。
まさにカイロの喧騒とエネルギーが凝縮されたような場所だった。

帰り道、タクシーを呼ぼうとしたけれど、人混みと渋滞で断念。
炎天下の中を歩いて宿まで戻ることに。

汗だくでたどり着き、冷えた部屋で食べたカットメロンとスイカジュースが、この上ないごほうびになった。
まさに生き返る瞬間。
旅の締めくくりは日本の味|レストラン『牧野』で天ぷら定食
夕方、宿でひと休みしたあと向かったのは、ナイル川に浮かぶゲズィーラ島の高級住宅街。

ヒルトン内にある日本食レストラン「牧野」で、久しぶりの和食をいただくことにした。

店内には寿司ネタがずらりと並んだカウンター。

まるで日本の料亭のような落ち着いた雰囲気。
注文したのは天ぷら定食。

サクサクの衣、優しい味の味噌汁──どれも日本と変わらないクオリティで、ここがカイロであることを忘れそうになった。
お値段は705ポンド(=2,050円)。
ヒルトンの中にあるだけあって高級だけど、満足度も高く、心から癒される食事だった。
帰りは暑さも落ち着いていたので、地下鉄で帰ることに。

ところが、乗り換えが面倒でAttaba駅で降りて歩くことにしたのが、まさかの迷宮のはじまり。

出口を出ると、なぜかローカルマーケットのど真ん中に出てしまった。
道を変えても、地下道の出口を変えても、何度も同じマーケットにたどり着いてしまう。
まるで「マーケット無限地獄」に迷い込んだような感覚。
しかもこのマーケット、外が柵で囲まれていて、正しい出口を見つけないと出られない構造になっている。
だから余計に焦った。

それでも途中、平積みされた本の上で気持ちよさそうに撫でられている猫を見つけて、少しだけ癒された。
何度目かの挑戦で、ようやくマーケットとは反対方向の出口を発見。
そこから地上に出て、無事に宿へと帰還した。(‘A`)
気づけば今日は、朝から晩まで本当に歩きっぱなしの一日だった。
5月24日:使ったお金
ヒルトン内の高級レストランだけあって、お値段は張るけれど、日本と変わらない味に心から満足できた。
・タクシー代(宿→シタデル):55ポンド(=159円)
・シタデル入場料:550ポンド(=1,650円)
・タクシー代(シタデル→スルタン・ハッサン・モスク):50ポンド(=145円)
・スルタン・ハッサン・モスク&リファーイー・モスク共通入場料:220ポンド(=639円)
・靴チップ(2回分):15ポンド(=43円)
・モスクチップ:20ポンド(=58円)
・タクシー代(スルタン・ハッサン・モスク→死者の街):72ポンド(=209円)
・昼食代(フルーツ等):90ポンド(=261円)
・タクシー代(宿→レストラン):70ポンド(=203円)
・夕食代(天ぷら定食):705ポンド(=2,050円)
・メトロ切符代:8ポンド(=23円)
合計:5,440円