【72】世界遺産ストーンタウンと奴隷貿易の跡地を歩くザンジバル初日(2025.6.19)

タンザニア

ダルエス・サラーム空港でカフェにこもり、ブログを書きながら夜を明かしたタンザニア初日。

寝不足のまま朝のフライトで向かったのは、美しいインド洋に浮かぶ島・ザンジバル。

まずは世界遺産の街・ストーンタウンに滞在し、アラブ風情漂う路地を散策。

かつて東アフリカ最大の奴隷市場があった跡地を訪れ、地下牢などの展示に胸が痛む。

その後は気持ちを切り替え、海辺へ。

インド洋に沈む夕日を眺め、少しずつ心が落ち着いていく。

夜は日本食レストラン「政」で、まさかのマグロ漬け丼をいただき、疲れた体と心がようやく癒された。

空港野宿から始まった長い一日、ザンジバルの歴史と自然と食にふれた濃い初日となった。

空港野宿からスタート!早朝便でザンジバルへ

ジュリウス・ニエレレ国際空港T3のカフェ

ジュリウス・ニエレレ国際空港では、ターミナル2と3の両方に足を運び、どちらで夜を明かすか悩んだ末、建物内に24時間営業のカフェがあるターミナル3で過ごすことにした。

カフェでブログ執筆

テーブルには電源もあり、ブログ作業にもぴったり。

結局、一睡もせず朝までここで粘ることになった。

搭乗エリアのレストラン

朝5時前にはターミナル2へ移動。

チェックインと保安検査を終え、搭乗エリアのレストランで朝食タイム。

朝食

トーストとオムレツにラテというシンプルなセットだったが、空港価格で18,000シリング(=987円)とややお高め。

眠気と闘いながらゲート前でひたすら待機

搭乗は遅れ、眠気と闘いながらゲート前でひたすら待機。

寝不足のまま、うっかり乗り遅れないよう神経を張り詰めていた。

小型のプロペラ機で出発!

ようやく搭乗した飛行機は小さなプロペラ機。

離陸して間もなく、もう到着という短距離フライトで、空の旅はわずか30分だった。

ザンジバル上陸!ダラダラ移動と安宿での洗礼

ザンジバルは、近年観光客向けの保険加入が義務化されており、2024年10月からは全入島者に対して指定の海外旅行保険ZICへの加入が必須となっている。

事前に専用サイトから申請し、保険料44ドルをオンラインで支払い、PDF形式の保険証明書をスマホに保存しておく必要がある。

空港到着後に、そのPDFを係員に提示することで入島が許可される仕組みだ。

もし事前申請を忘れてしまっても、空港内にはその場で手続きできる窓口が設置されているようだった。

ただ、スムーズに入島するためにも、やはり事前申請を済ませておくのが安心だ。

アビード・アマニ・カルーム国際空港ターミナル2

到着したのは、アビード・アマニ・カルーム国際空港のターミナル2。

建物を出て右手に進むと、ローカル交通「ダラダラ」の乗り場が見えてくる。

ローカル交通「ダラダラ」の乗り場
空港とストーンタウンを結ぶ「505番」のダラダラ

「ダラダラ(Daladala)」とは、ザンジバルを含むタンザニアで広く使われている乗り合いのミニバスのこと。

とにかく安くて、地元の人々にとっては生活に欠かせない足だ。

いちおう番号ごとに大まかな路線は決まっているが、発車時間や停留所のルールはけっこうゆるめ。

とにかく混むので、バックパックを抱えて乗るのはなかなか大変だけど、その分、ローカルな空気を存分に味わえる移動手段でもある。

空港とストーンタウンを結ぶのは「505番」のダラダラ。

運賃はたったの500シリング(=27円)という驚きの安さ。

ベンジャミン・ムカパ・ロード沿いの適当な場所でダラダラを降り、そこからは狭く入り組んだストーンタウンの路地を、地図を頼りに徒歩で宿まで向かう。

とあるゲストハウス

今回ストーンタウンで2泊したゲストハウスは、残念ながら外れだった。

Wi-Fiは壊れたまま、シャワーはお湯が出ず、なかなかに厳しい環境。

あまりにもトラブルが多かったので宿名は伏せるけれど、「安い宿にはそれなりの理由がある」という教訓をあらためて実感した。

ザンジバルは島ということもあり、もともとインフラが不安定。

停電も日常茶飯事で、Wi-Fiは微弱。

Wi-Fiはネット検索がやっとのレベルで、ブログに写真を上げるのはほぼ不可能。

テザリングでなんとか対応した。

ザンジバルでは、安宿ほどこうした環境に悩まされることが多く、快適さを求めるなら宿代をケチってはいけないと痛感する。

わかってはいたけれど、長旅の予算事情がそうもさせてくれず──節約と快適さのはざまで、ちょっと切ない気持ちになる滞在初日だった。

世界遺産ストーンタウンの街歩きと名物ランチ

ストーンタウンの街並み

宿に荷物を置いてひと息ついたあとは、まずはさっそく街歩きに繰り出すことにした。

せっかく世界遺産の街に泊まるのだから、迷路のような路地を実際に歩いてみたくてうずうずしていた。

ストーンタウンは、ザンジバル島西部にある歴史地区で、世界遺産にも登録されている旧市街。

かつてアラブ、ペルシャ、インド、ヨーロッパなど多様な文化が交わった地で、その影響が色濃く残る街並みが魅力。

迷路のように入り組んだ石造りの路地には、異国情緒あふれる風景が広がっている。

美しい彫刻が施されたザンジバルドア

街歩きでひときわ目を引くのが、重厚な木製の「ザンジバルドア」。

富や地位を象徴するステータスシンボルで、アラブやインドの意匠が融合した独特な彫刻が施されている。

このドアを見て回るだけでも、ストーンタウンを訪れた甲斐があるというもの。

Old Fort(オールド・フォート)

Old Fort(オールド・フォート)は、 17世紀末にオマーン人が建てたザンジバル最古の要塞。

防衛拠点として始まり、その後は牢獄や鉄道駅としても使われた。

中庭のステージ

現在は中庭が開放され、囚人がいた場所がステージへと姿を変え、イベントやコンサートが行われるカルチャースポットになっている。

フレディ・マーキュリーの生家

また、この街にはフレディ・マーキュリーが幼少期を過ごした家もあり、現在はミュージアムに。

中には入らなかったけれど、外壁の巨大なポートレートが印象的で、写真スポットとして人気だった。

Lukmaan Restaurant

昼食は、シーフードが美味しいと評判のLukmaan Restaurantへ。

タコカレー

人気メニューのタコカレーは15,000シリング(=822円)。

大粒のタコがゴロゴロ入っていて美味だった。

ザンジバルでは全体的に観光客向けレストランの値段が高めだが、ここはローカル寄りで比較的リーズナブルに食事ができる。

ソフトクリーム

食後にはソフトクリームを買い食い。

なんだかんだで、久しぶりに食べたソフトクリームは嬉しかった。

奴隷市場跡と地下牢…歴史に向き合う午後

東アフリカ奴隷貿易博物館(East Africa Slave Trade Exhibition)

食後は、かつて奴隷市場があった場所に建てられた東アフリカ奴隷貿易博物館へ。

解説パネル

ザンジバルが東アフリカ奴隷貿易の一大拠点だったことを伝える展示が並び、当時の奴隷たちの過酷な現実が、写真や図解で淡々と語られている。

“くびき”で拘束され、逃げられないようにされた人々

木の枝をそのまま使った“くびき”で拘束され、逃げられないようにされた人々。

売買の場で鎖につながれて並ばされる姿。

そして、彼らが運ばれた小型船「ダウ船」の図解など、見るのがつらくなる展示も少なくなかった。

奴隷たちが運ばれていた小型船「ダウ船(Dhow)」の図

奴隷たちはこのザンジバルから、ダウ船に乗せられてインド洋を渡り、遠くはオマーンのマスカットやさらに北の港町まで連れて行かれたという。

かつてマスカットで奴隷貿易の歴史を学んだことがあったが、今回ザンジバルを訪れたことで、その出来事が地続きでつながり、より立体的に感じられた。

奴隷収容の地下室の入口

博物館の奥には、実際に奴隷たちが押し込められていた地下室が残っている。

奴隷収容の地下室

じめっとした空気に包まれた、ひんやりと暗い空間。

中は2つの狭い部屋に分かれており、こんな場所に何人も詰め込まれていたのかと思うと、胸が締めつけられた。

当時を再現したと思われる鉄の鎖

部屋の片隅には、当時を再現したとされる鉄の鎖が残されていて、その鈍い光と重みが静かに過去の重さを伝えていた。

奴隷市場跡地に建てられた教会

隣接する教会は、かつての奴隷市場跡地に建てられている。

「SIGN OF WHIPPING POST」と書かれた写真パネル

中には「SIGN OF WHIPPING POST」と書かれた写真パネルが展示されており、売買前に奴隷の耐久力を試すためムチ打ちされた柱の土台の写真が使われている。

祭壇前にむち打ち柱の石が残されている

その柱の一部が、今も教会の祭壇前の床に、赤茶色の円形の石として埋め込まれている。

美しい幾何学模様の中心に、過去の暴力の痕跡が静かに息づいている。

奴隷たちの銅像

教会の横には、鎖でつながれた奴隷たちの銅像が半地下の囲いの中に設置されている。

無表情で立つその姿は、静かでありながら強い衝撃を与えてくる。

実際の鉄の鎖が巻かれた像の前では、自然と声を失った。

過去の痛みを今に伝える、忘れられない記憶のモニュメントだった。

夕日に癒され、日本食レストラン「政」で締めくくり

ビーチを歩く

その後は気持ちを切り替えて、海沿いへ。

インド洋に沈む夕日

夕暮れ時のビーチでは、インド洋に沈む太陽と、その前で次々と海に飛び込んでいく地元の若者たちの姿が目に映る。

次々と海に飛び込んでいく若者たち

その無邪気さと、空をオレンジ色に染めながら沈んでいく太陽に、沈んでいた気持ちもゆっくりほどけていった。

日本食レストラン「政」

夕食は、ストーンタウンにある日本食レストラン「政」へ。

マグロ漬け丼と味噌汁

まさかのマグロ漬け丼に味噌汁。

そこへたまたま日本人の旅人たちがやってきて、相席から会話が弾み、二軒目に中華レストランで餃子をシェアする展開に。

宿に戻る頃にはすっかり夜も更けていたが、ザンジバルは夜も比較的安全に歩ける。

ここは本当にアフリカ?と思うくらい治安がよく、人も優しい。

アフリカ旅の疲れを癒すにはぴったりの島。

ザンジバルには少し長めに滞在して、ゆっくり心と身体を整えるつもり。

まだ1日目だけれど、すでにこの島に惹かれている自分がいた。

6月19日:使ったお金

航空券、ビザ、ザンジバル保険料だけで合計73,170円の出費に。

予定外の出費が約3万円弱もかさんでしまったので、今後は航空券の購入・日付の確認をより慎重に行いたい。

・航空券代(ルサカ→ザンジバル):34,293円(キャンセル返金4,890円を差し引くと29,403円)
・航空券変更手数料(ルサカ→ダルエス・サラーム):160ドル(=24,797円)
・航空券追加購入(ダルエス・サラーム→ザンジバル):5,140円
・タンザニアビザ代:50ドル(=7,296円)
・ザンジバル保険料:44ドル(=6,534円)
・SIMカード(24.6GB):53,000シリング(=2,907円)
・ジュース代(レシート紛失のためおおよそ):8,000シリング(=443円)
・朝食代(オムレツ等):18,000シリング(=987円)
・ダラダラ(空港→ストーンタウン):500シリング(=27円)
・宿代(2泊分):75,000シリング(=4,114円)
・洗剤:1,000シリング(=54円)
・水:1,000シリング(=54円)
・昼食代(タコカレー):15,000シリング(=822円)
・日焼け止め:12,000シリング(=658円)
・リップクリーム:3,500シリング(=191円)
・奴隷市場跡と博物館の入場料:11,500シリング(=630円)
・夕食代(まぐろ漬丼等):31,000シリング(=1,700円)
・夕食代(餃子等):6,000シリング(=329円)

合計:86,086円