今日の午前中は、ナイロビ最大のスラム街「キベラ」を訪れるツアーに参加。
といっても参加者は私と、日本人旅行者のマコトさんの2人だけのプライベート感あふれる内容。
案内してくれたのは、キベラ在住のガイド・Elijah(アライザ)。
彼自身がこの地域で育ったからこそ語れる、生きた言葉で、スラムのリアルな暮らしを安全に、丁寧に案内してくれた。
昼食を終えたあとは、マコトさんと別れてナイロビ中心地へ。
ビルの屋上にある展望台から街を見渡し、歴史ある教会やモスク、ローカル感満載の市場を一人で散策。
スリや強盗が多いとも言われるエリアなので正直ビビりながらの探索だったけれど、常に警戒を怠らなかったおかげか、何事もなく無事に1日を終えることができた。
ナイロビの貧困と活気、緊張と開放感、その両方を一気に体感した濃い一日だった。
地元ガイドと合流!ローカル市場を歩いてウォームアップ
ナイロビでどうしても訪れたかった場所──それが、東アフリカ最大級ともいわれるスラム「キベラ」だった。
さすがに個人では危険すぎるので、「GET YOUR GUIDE」アプリで、現地のツアー会社「Visit Kibera Expeditions」の3時間スラムツアーを予約。
料金は3,360円。
現地集合・現地解散の形式だ。
集合場所の「Greenhouse Mall」までは、マコトさんとUberをシェアして向かうことに。
彼もたまたま同じ宿に滞在していて、キベラに興味があるというので一緒に申し込んだのだ。
移動も心強かったし、費用も節約できてありがたかった。

集合時間は朝9時。
少し早めに到着して、モール前の噴水で待っていると、現れたのがガイドのElijah(アライザ)さん。
彼はキベラで生まれ育ち、今もスラム内で暮らしている地元出身の青年。
そんな彼に案内されるからこそ、スラムの深い部分にまで安心して踏み込める。
何より、普段なら絶対にできないような行動──たとえば、ケニアの街中でスマホを出して写真を撮るなんていう“危険行為”すら、アライザと一緒なら可能になるほどの安心感があった。
彼はツアー全体の流れを事前に丁寧に説明してくれ、安全面への配慮も常に怠らない。
久々に「大当たり!」と思える最高のガイドだった。
アルーシャやマサイマラでガイド運のなかった日々が嘘のよう。
今日はきっと良い一日になる──そう思えた瞬間だった。

まずは集合場所のすぐ近くにある、ローカルマーケット「Toi Main Market」へ。
ここは古着や生活雑貨などの中古品が並ぶ庶民のマーケットだ。

アライザに連れられて市場の奥へ進むにつれ、風景はどんどんディープに。
頭の上に大きな荷物を乗せ、軽やかに歩く女性たちの姿が当たり前のように行き交い、ローカルの日常にどっぷりと浸る。

市場の一番奥には、地元民向けの野菜市が広がっていた。
吊るされた札には手書きの数字が書かれており、これが商品の価格表示なのだという。

そのすぐ外には炭を売るお店があり、向かい側には生きた鶏をそのまま売る鶏屋も。

食卓の素材がそのまま売られている光景に、リアルな暮らしの手触りを感じる。
ついにキベラ突入!スラムのリアルな暮らしに触れる

市場を抜け、ついにキベラスラムの入口に到着。
そこで出迎えてくれたのが、「Visit Kibera Expeditions」の責任者・ルーカスさん。
ツアー予約時からWhatsAppで連絡を取り合っていたので、「ようやく会えたね」と笑顔で挨拶を交わす。
彼とその仲間たちは、スラムの子どもたちのために保育園などを支援しており、ツアーの収益の一部がその活動に充てられているという。
GET YOUR GUIDEには他にもキベラツアーはあるけれど、そういった支援の姿勢に惹かれて、このツアーを選んだ。
ガイドのアライザは、普段はバイクタクシーで生計を立てていて、週に数日は交代でガイドとして活動しているとのこと。
ナイロビを訪れる多くの旅行者はサファリや観光地に目を向けがちだけれど、私はぜひキベラも日程に組み込んでほしいと思う。

最初に案内されたのは、動物の骨を使った雑貨を売るお店。

キーホルダーやアクセサリーが並び、私は牛の骨から作られたキーホルダーを350シリング(=402円)で購入。
もっと値切れたかもしれないけれど、このお金が少しでもスラムの収入になるなら、それでいいと思えた。

次に訪れたのは、古雑誌を材料にアクセサリーを作っている女性たちの工房。

雑誌の紙を細く切り、糊でくるくる巻いて固めると、まるでビーズのようなネックレスの部品になる。
「これが古雑誌から作られているなんて」と思うほど完成度が高く、生活の中から知恵と工夫で価値を生み出そうとする姿勢に感動した。

スラム内を歩いていると、保育園の壁に描かれた、妙にお腹がぽっこりしたミッキーに遭遇。
あまりのシュールさに思わず笑ってしまう。

一方で、別の保育園の壁画はクオリティが高く、同じキャラクターとは思えない仕上がりだった。

やがて視界に入ってきたのは、鉄道の線路と、その脇に積まれた大量のゴミ。
一応ここは「ごみ集積所」らしく、週に1回、政府が回収に来るそうなのだが、その無法地帯ぶりに圧倒される。

キベラは一つの大きなスラムではなく、13のビレッジからなる集合体。
もともとはヌビアンと呼ばれる、スーダンにルーツを持つ人々が最初に住みついた場所で、「キベラ(Kibra)」という名前も、ヌビアン語で「森」を意味するという。
今ではケニア各地から移住してきた多様な民族が暮らしており、実際の人口は公式統計よりもはるかに多いと言われている。

線路沿いには、ケニアのドーナツ「マンダジ」が売られていた。
外はカリッと中はふわもち、ほんのり甘くて素朴な味わい。
1個20シリング(=22円)だったので、マコトさんとシェアして味見した。

入り組んだ路地を進んでいると、強烈な異臭に頭が痛くなる。
路肩の溝にはゴミが溢れ、中を覗くと何かの動物の死骸まで…。
この地域は上下水道の整備が不十分で、衛生環境はかなり厳しい。

集落の一角にあったこの建物は、住民が共同で使うシャワー&トイレ施設。

利用時にはカウンターで料金を支払うシステムで、トイレは1回5シリング(=5円)、ホットシャワーは1回15シリング(=17円)だった。
「人間って1日に6〜7回くらいトイレに行くって言うけど、もしそのたびにお金払ってたら、結構な出費じゃない?」とアライザに聞いてみたところ──
「スラムの人たちは昼間はマーケットなどに働きに出てるから、ここで使うのは基本的に朝と夕方の1日2回だけだよ」と教えてくれた。

シャワーも1日1回が基本らしい。
光熱費の代わりとはいえ、低収入の中でこれらを毎日支払うのは、なかなかに厳しい現実だ。

キベラの住居は、トタン屋根の簡易な家が密集して建てられている。

川にはごみが浮いていたが、地元の人たちが政府の雇用プログラムで清掃作業をしていた。
ゴミと格闘しながら、少しでも環境を良くしようと努力する姿に頭が下がる。

ふと漂ってきた香ばしい匂いに誘われて、チャパティ屋さんへ。
1枚20シリングで、マコトさんと半分こ。
もちもちでとても美味しかった。

路地ではお母さんたちが道端で洗濯中。
手洗いした洗濯物が家の軒先に干されていて、上からポタポタと水滴が落ちてくるのもスラムならではの光景。

ルーカスたちが支援する保育園も見学させてもらった。
2〜7歳の子どもたちが通うこの施設は、毎朝8時から15時半まで預かってくれる。

子どもたちは元気いっぱい!
先生の号令で一斉に席に座り、英語の歌を元気に歌ってくれた。
こうして幼い頃から教育環境が整っていれば、将来の仕事の選択肢も広がる。
やっぱり貧困の連鎖を断ち切るには、教育しかないのかもしれない──そんな想いが胸をよぎる。

保育料は3ヶ月で4,000シリング(=4,595円)。
スラムに暮らす家庭にとっては決して安い金額ではない。
というのも、この地域の平均月収は18,000〜20,000シリング(=22,000円)程度といわれており、保育料はその1ヶ月分の約5分の1にもなる計算。
実際、経済的に払えない家庭も少なくないそうだ。
そうした場合は、ルーカスたちがツアーの収益などを活用して保育料を補助し、子どもたちが通い続けられるよう支援している。
助け合いで成り立っている、温かいコミュニティだと感じた。

ツアーの最後は、アライザが生まれ育った家へ。
小さな一間にベッド、ソファ、机だけの質素な部屋。
そこに毎晩6人が寝ているという。
決して楽とは言えない生活環境だけど、アライザもお母さんも、なぜか悲壮感がなくて明るい。
みんなで支え合って生きている──
スラムという言葉が持つネガティブな印象を、いい意味で裏切ってくれたのがキベラだった。
ツアーの終わり、アライザは私たちがUberに乗り込むまで見送りをしてくれ、最後までチップの要求ひとつせず、誠実に案内してくれた。
アルーシャやマサイマラでガイドたちの“$の目”にうんざりしていた私には、その姿が本当に心に沁みた。
感謝の気持ちを込めて、少しだけどチップを渡し、笑顔で別れを告げた。
──心が震えるような出会いだった。
静かな庭カフェでひと息。緑に癒やされるランチタイム

3時間のスラムツアーを終えて、Uberでやってきたのは、緑に囲まれた静かなレストラン「Amani Garden Cafe」。
ナイロビの喧騒を忘れさせてくれるような、お庭のある落ち着いた空間だ。
ついさっきまでのスラムの風景とはまるで別世界。
優雅すぎて、ちょっと申し訳ないような気持ちになる。
でも、慣れない環境と空気の悪さでずっと頭が痛かったので、正直こういう場所でひと息つけるのはありがたかった。

ランチには、ブルーチーズとチキン入りのサラダと、野菜スープを注文。
サラダはマコトさんとシェアしたので、少し出費も抑えられた。
ヘルシーで味もバッチリ、美味しかった!

食後にはカフェラテを飲みながらのんびり休憩。
その後、マコトさんは先に宿へ戻ることに。
私はひとり、ナイロビ中心地の散策へと出発した。
ナイロビ中心地を一人で満喫!展望台と街歩きスポット巡り

まず向かったのは、ケニアのランドマーク「ケニヤッタ・インターナショナル・コンベンション・センター」。
円柱形の独特なデザインで、最上階にはナイロビ市街を360°見渡せる展望台がある。
さっそく1階のチケットカウンターで展望台のチケットを買おうとすると、「現金は使えません、カードのみです」と言われてしまった。
スラムに行く予定があったのでカードは持ち歩いておらず、現金も必要最低限しか持っていなかった私は、ここで完全に詰む…。
呆然としていたら、なんとスタッフが事情を察してくれて、「今日は特別にいいよ」と無料で通してくれた。
優しさに感謝しかない…本当にありがとう…。

専用エレベーターと螺旋階段を乗り継ぎ、展望台へ。


屋上にはヘリポートもあり、ナイロビの街並みがぐるりと見渡せる。

このあと訪れる予定の教会やモスク、図書館や市場の位置関係も、ここでしっかり目に焼きつけておく。
街中ではスマホをあまり出したくないので、展望台からの“俯瞰”はとてもありがたかった。
さて、展望台を降りて、いよいよナイロビ中心街の散策スタート!

展望台のすぐ隣にあるのが、「Cathedral Basilica of the Holy Family」。

カトリックの大聖堂で、近代的なデザインと荘厳なステンドグラスが印象的だった。
内部は静かで、祈りの空気に満ちていた。

そのまま徒歩数分で「マサイマーケット」へ。
ケニア布のカラフルなワンピースやバッグ、アクセサリーなどがずらりと並ぶ青空マーケット。
とくにケニア布を使った服や雑貨はとてもかわいくて、見るだけでも楽しい!
ただし、観光客向けなので価格は少し高め。
値段交渉はマストで、交渉込みで楽しむのがこの市場の魅力だ。
気に入った服があったけど、手持ちの現金が足りずに泣く泣くスルー…。

マーケットから徒歩5分ほどで、「マクミラン・メモリアル図書館」へ。
重厚な外観と、どこか植民地時代の名残を感じさせる建物は、それだけで知的好奇心をくすぐってくる。

中に入ると、高い天井と整然と並ぶ木製の書架。
自然光が差し込む静かな空間で、市民たちが静かに本を読む姿にほっとする。
観光地というより、ちゃんと「今も使われている図書館」というのがまた良かった。

そのすぐ隣には、「ジャミア・モスク」。
緑色のドームとミナレットが美しい、ナイロビ中心地にある象徴的なイスラム建築。
ムスリム以外は中には入れないため、外からその荘厳な佇まいを堪能した。

最後に立ち寄ったのが、ジャミア・モスク近くの「シティマーケット」。
生鮮売り場には精肉や魚が並び、なかなかの迫力…!

奥へ進むと、マサイ布雑貨や木彫りの動物などのお土産屋さんがぎっしりと軒を連ねる。
ここでももちろん値札はなし。
値段交渉をしながらお土産探しを楽しむのが、この市場のスタイル。
買い物のあとはスーパーに寄って食材を調達し、Uberで宿に戻った。
夕食は自炊パスタとフルーツでしめくくり

夕食は、自炊で野菜たっぷりのパスタと、ラズベリー&ブルーベリーのフルーツをデザートに。
今日はめずらしくお酒もちょっとだけ。
朝からスラム、午後は街歩きと、ナイロビの光と影を行ったり来たりするような一日で、心も体もフル回転。
夕食後にブログを書いている途中で眠気に勝てず、そのままぐっすり就寝…。
7月9日:使ったお金
マコトさんとタクシーや食事をシェアできたおかげで、思ったより出費は抑えられた。
・タクシー代(宿→ツアー集合場所):285シリング(=283円)
・キベラスラムツアー代:3,360円
・キーホルダー:350シリング(=402円)
・マンダジ:10シリング(=11円)
・チャパティ:10シリング(=11円)
・ガイドチップ代:300シリング(=344円)
・タクシー代(キベラスラム→レストラン):240シリング(=337円)
・昼食代(サラダ等):1,750シリング(=2,011円)
・タクシー代(レストラン→ナイロビ中心地):270シリング(=319円)
・スーパー買い物代:1,112シリング(=1,278円)
・酒代:430シリング(=494円)
・タクシー代(ナイロビ中心地→宿):660シリング(=779円)
合計:9,629円