クルーズ2日目の朝は、エドフ神殿からスタート。
馬車で向かうのが定番とはいえ、その価格は高すぎて納得できず、あえて徒歩で挑むことに。
思ったより遠い距離、そしてチケット売り場の大行列。
神殿にたどり着くまでがすでに冒険だった。
見学を終えたあとは猛ダッシュで船へ戻り、無事に間に合って一安心。
午後には、ナイル川を進む船がエスナの水門に差しかかり、水門の仕組みに従って水位を調整されながら、ゆっくりと通過していった。
夕方には屋上のプールで泳いでクールダウン。
夜はベリーダンスショーに続いて、カラフルなスカートをひらひら舞わせて回り続ける男性の「タンヌーラ」ダンス。
ぐるぐると止まらないその姿に、観客の目は釘づけだった。
クルーズ最後の夜。
屋上デッキに寝転び、ナイルの風に包まれながら、気づけば眠っていた。
観光よりも、“船の時間”そのものが印象に残った一日だった。
道中ハードすぎ!徒歩で攻めたエドフ神殿の早朝探訪

今日の観光は、早朝に訪れるエドフ神殿のみ。
なんと、観光開始は朝5時から。
……早すぎ。(‘A`)
でもこの時間帯に行かないと、7時を過ぎる頃には日差しがどんどん強くなって、暑さで観光どころじゃなくなってしまう。

停泊できる桟橋の数が限られているため、船が3〜4隻も横並びに連結して停まっている。
そのため、他のクルーズ船のエントランスを抜けて、桟橋まで歩いていく仕組み。
どこに自分の船があるか、周辺の位置関係をしっかり覚えておかないと、戻れなくなる危険も。

エドフ神殿は停泊所から少し離れた場所にあり、移動手段は馬車が定番。
でも馬車代が高すぎて納得できず、意を決して徒歩で向かうことに。
最短ルートなら20分ほどの距離だけど、街灯も少なくて雰囲気がやや不穏だったので、あえて大通りを通るルートで行くことに。
結果、歩行距離は2倍になり、40分以上も歩くことになってしまった。

歩いていると、次々に馬車が横を駆け抜けていく。
夜が明けるにつれて気温もどんどん上がり、神殿に着く前からすっかり疲れてしまった。

チケット売り場と入場ゲートのオープンは朝6時。
私が到着したのは5時50分だったけど、その時点でもう長蛇の列ができていた。
「これ、何分かかるんだろう…」と不安になったけど、実はほとんどの人がすでにチケットを持っていたみたいで、10分ほどで無事に入場できた。
エドフ神殿は、ハヤブサの姿をした神・ホルスを祀った神殿。
プトレマイオス朝時代に建てられたもので、エジプトに現存する神殿の中でも保存状態は随一と言われている。

まず目を引くのが、神殿の入口にそびえ立つ巨大な第2塔門。

その先には、堂々としたホルス神の石像が待ち構えている。
つぶらな目が、まるで遠くの空をじっと見つめているようだった。

その奥には、重厚な柱が整然と並ぶ第一列柱室。

壁面には、ホルス神に捧げ物をする儀式の様子がびっしりとレリーフで描かれていた。

さらに進んだ先の前室の天井は、真っ黒にすすけている。
これは、後の時代にこの部屋がキリスト教徒たちの台所として使われていた名残。
火を焚いた煙が、天井にしっかりと染みついたままになっていた。

一番奥にあるのが、神の力が宿るとされた至聖所。
中央には、かつて神を運ぶために使われた「聖船」のレプリカが置かれていて、静かながらも儀式の厳かな空気を感じさせる空間だった。
ふと時計を見ると、もう7時を回っていた。
急いで船に戻らなければ。
帰りは、スペイン人の3人組と一緒に、行きに断念した最短ルートで戻ることに。
もう日も昇っていて、道の様子も確認しやすかった。

ただし、その道はちょっと治安が悪そうな雰囲気で、車も通れない細道。
途中、なんと犬の前足だけが切断された状態で落ちているのを見つけてしまい、内心パニック。
なにがあったの、ここ……!(‘A`)
でも、男性3人と一緒だったこともあり、ビビりながらもなんとか通過。
最後は猛ダッシュでクルーズ船に滑り込み、ギリギリで間に合った。
朝から食べすぎ注意!豪華モーニングで満腹に

朝から歩きっぱなしでお腹もペコペコ。
さっそく朝食会場へ。
目の前でシェフがパンケーキやオムレツを焼いてくれて、できたてをそのまま皿にのせてくれるスタイル。


パンも何種類もあって、どれを選ぶか迷ってしまう。
クロワッサン、砂糖のかかったパン……思わず全種類制覇したくなった。

朝食のドリンクはフリー。
ジュースが2種類、紅茶とコーヒーも用意されていて、旅の疲れを癒してくれるひとときだった。

満腹になったところで、午後までは少しお昼寝タイム。
昨夜はクルーズ船の豪華さにテンションが上がって、夜中まで眠れなかったから、ちょうどいいリセットになりそう。
見逃すな!ナイルクルーズ最大の見どころ、エスナ水門

12時を過ぎたころ。
ふと目が覚めて、ぼんやりと窓の外を見たら、遠くにエスナ水門の姿が。
「やばい!」と飛び起きて、あわててデッキへ向かった。
ナイル川を南北に航行するクルーズ船にとって、このエスナ水門の通過は、まさにハイライトのひとつ。
水門はアスワン側とルクソール側の二重構造になっていて、まずアスワン側のゲートを抜けたあと、ルクソール側で水位をゆっくりと下げ、次のエリアへ進んでいく仕組み。

まずはアスワン側の水門を通過。
水門の上に、なぜか物売りたちの姿が。

「どうやって売るの!?」とツッコミたくなるような低い場所から、彼らは船に向かって布を必死に投げ込もうとしている。
その執念に、思わず圧倒された。
アスワン側のゲートを抜けると、次はルクソール側の水門へ。

こちらのゲートが閉まると、船の下の水位がゆっくりと下がっていく。
この水門に入れる船の数は一度に2隻までと限られており、混んでいると通過までにかなり待つこともあるそうだ。

前を進む船が、じわじわと沈んでいく様子を、デッキの手すりにもたれてじっと見つめる。
その動きがなんとも不思議で、ずっと見ていたくなる。
名残惜しくも、ちょうど昼食の時間がやってきたので、後ろ髪を引かれる思いでレストランへ。

今日も美しく盛りつけられたサラダに、目の前でシェフがラップサンドを巻いてくれるライブ調理。


デザートも種類豊富で、見ているだけで心が躍る。

そしてその食事中、ちょうど船はゆっくりと水門を抜けていった。
わずかに揺れる感覚とともに、「ああ、いま自分は船旅をしてるんだな」と、じんわり実感がこみ上げてきた。
ルクソール到着|夕方のプールでひと泳ぎ
夕方、船はルクソールへと到着。

エントランスではMontyの部下が待っており、明日の観光スケジュールの説明を受ける。
朝は西岸の王家の谷、午後は東岸のルクソール神殿などをまわる超ハードな行程とのこと。
私は「西側だけで離脱します」と即答。
40度を超える遺跡群を1日中歩き回る気力と体力は、さすがに私にはない。

夕方、日差しがやわらいできた頃にプールへ行くと、そこにはスペイン人の仲良し3人組。
彼らは朝からほぼずっとここで泳いだりビールを飲んだりしていたらしい。

40度越えの炎天下で1日中デッキにいるなんて、私から見たら正直狂気の沙汰だけど、彼らはそれを満喫しているようだった。
一緒に泳いだあとは、サンベッドでごろごろ。

デッキにはほとんど人がおらず、皆ルクソール観光へ出かけたようだった。
同じツアーのイタリア人夫婦や中国人夫婦は、明日の晩にはルクソールを発つそうで、急ぎ足で観光をこなしている様子だった。
クルーズ最後の夜|ベリーダンスと幻想のタンヌーラショー
今回のクルーズ最後のディナー。




相変わらず豪華で、サラダや前菜に加えて、エジプト料理、パスタはシェフが目の前で調理してくれた。
クルーズ中、毎日食べすぎていたせいでちょっと太った気がする。
「今日は控えめにしよう」と思っていたのに、美味しそうな料理を見ると、手が勝手におかずを山盛りにしてしまっていた。

夕食のあとはラウンジでベリーダンスショー。

観客もステージに呼ばれ、一緒に踊る時間があり、私も誘われてしまった。
結果、「魔法陣グルグルのキタキタ踊り」みたいな珍妙なダンスを披露することに……。
こういうのは欧米人の女性のほうがノリが良くて上手。
即興でも見事に踊れるのがすごい。

そして続いて始まったのが、タンヌーラ・ダンス。
カラフルなスカートを広げて、くるくると回り続ける男性ダンサー。
スカートにはライトが仕込まれていて、回転とともに光の残像が浮かび上がる幻想的な光景に、観客は釘づけだった。

彼は私たちの席のすぐ近くまで来てくれて、間近でスカートが回る様子を見上げる。
迫力がすごくて、思わず見とれてしまった。

部屋に干していた洗濯物がまだ生乾きだったので、屋上デッキの椅子にかけて外気にさらすことにした。
乾くのを待ちながら、サンベッドに身を預けて空を見上げる。
ナイルの風が心地よくて、いつのまにか眠りに落ちてしまう。
今日は、観光よりも“クルーズの時間”そのものが、心に残った。
明日は灼熱のルクソール観光。
王家の谷をちゃんと回りきれるか──少しだけ、自分の体力に期待しながら、静かにまぶたを閉じた。
5月18日:使ったお金
今日の出費は、部屋付けにしていたクルーズレストランで飲んだ水4本と、エドフ神殿の入場料のみ。
船内の支払いはユーロ建てだが、エジプトポンドでも支払うことができる。
・水:6ユーロ(=355ポンド/1,026円)
・エドフ神殿入場料:550ポンド(=1,663円)
合計:2,689円